異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第46話 面接

「三ツ星昇格試験受けたいんですけど」

 

 最寄りの冒険者ギルドの受付にそう伝えた。

 

「接触禁止のはずでは……?」

 

 対応する職員、浅黄さんは困惑した様子だ。ただの口約束に拘束力はない。というか誰も覚えていないだろう。唯一の懸念点である赤塚さんは迷宮攻略中で地上にはいない。

 つまりなんの問題もない。

 

「夏休みに予約入れてください」

「気が早いですね。確かに夏休みは混雑しやすいですけど、まだ4月ですよ」

 

 昇格試験、Dランク迷宮を攻略するとなればまとまった休みが欲しい。ゴールデンウィーク5日間では少し心もとない。

 数日学校休めば連休が伸びるのだが、それは両親が許さない。

 なので夏休みまで昇格試験はお預けだ。

 

 つつがなく予約が取れたようなので、次の用事へ移る。

 

「こちらが欲しいカードのリストなんですけど、どれかありませんか?」

「1枚ありますね。少々お待ちください」

 

 浅黄さんはすぐ戻ってきた。その手に握られてるのはカードホルダーだ。

 それは所有者しか中身を取り出せない。つまりギルドのものではないだろう。普通に中身取り出したから浅黄さんの私物だ。

 業務中に個人的な取引したらダメじゃないか?……まあ、気にせず買い取るけども。

 

 ついでの要件は済ませたので本題を話そう。この話を聞くためにギルドまで足を運んだのだ。

 

「前のアンゴルモアで俺は何をしたんだ?」

 

 赤塚さんとアヤカ。その両者が口を閉ざす程の何かがあったはずだ。浅黄さんなら話が聞けるかもしれない。

 

「私から話せることは多くありませんが、比嘉さんはモンスターと戦いつつ、救助活動をしていました」

 

 それは記憶している。聞きたいのはそれよりもあとだ。

 

「そして恐れられ疎まれてしまった。比嘉さんはそんな市民の皆さんを酷く嫌悪していた」

 

 それも覚えている。付喪神を装備していたため、周囲からは俺がモンスターかのように思われていた。

 

「一つ聞かせてください。もし次のアンゴルモアが起きたら、比嘉さんは人とモンスター、どちらの側に立ちますか?」

 

 彼もまた俺をモンスターのように思っていたようだ。赤塚さんへの襲撃を忌避したのも、俺と人との敵対を警戒したためか。

 

 俺がそう考え、腹を立てるとでも思ったのだろう。浅黄さんからは緊張を感じ取れる。

 

 

 彼は大きな勘違いをしている。

 

 俺はモンスター扱いをされたから嫌悪したのではない。ただ、アンゴルモアが起こるよりも前からずっと、人が嫌いだっただけだ。

 

 アンゴルモアが予言されて喜んだのを覚えている。それに乗じて何ができるかと、毎日出歩き心待ちにしていた。

 あの日もハサミをカバンに忍ばせて公園にいた。

 

 物心ついた時から俺は人の味方じゃない。

 

 

 

 

 

 

 俺は帰り道に迷宮へ寄り道した。

 

 昇格試験の行われるDランク迷宮では6体まで召喚できる。そのスタメン選抜を行う。

 

 そのうちの3体は既に確定している。1体目は結菜。Bランクゆえに他のカードに比べ倍近い戦闘力の差を持つ。外すことはできないだろう。

 

 2体目はトロール。俺の所持する唯一の前衛カードであり、俺と交代で敵を引きつける役割を果たしてもらう。

 

 3体目は前回のトランペッター。後天スキルが戦闘向けのものしかない脳筋。料理はできないが7体のトランペッターの中で一番強い。

 

 

 よって、残りの6体のトランペッターとリリの中から3体を選抜し、集中的な育成を行う。

 

(私そっち側なんですか?!)

 

 文句をつけられてもマイナススキル3つ持ちはだいぶ弱い。他の強い後転スキルがあるとはいえ、無育成のトランペッターと肩を並べるだろう。

 

 家の中で面接官として結菜を召喚する。はっきり言うと、残りのトランペッターの強さに大きな差はない。なので差別化するのは重要なのは連携、コミュニケーション面だ。

 つまりは主力である結菜が気に入ったやつがスタメンである。

 

 エントリーナンバー1は後天スキルに掃除を持つ個体。たった一日の使用で散らかりきったこの家が救えるかもしれない。

 

「得意なことは清掃。嫌いなことは活動です。よろしくお願いします」

 

 自己紹介を頼みだところ、そう言われた。活動が嫌いってなんだ。

 試しに楽にするよう伝えたところ、背もたれに寄りかかり天井を見ながら、足を伸ばし、両手を雑に横に垂らしている。かなり自堕落なタイプか。

 

 

「記憶力、計算力には自信があります。帳簿をつけるなら任せてください」

 

 2人目は簿記ができるらしい。前のマスターのもとで勉強したんだろうな。なんでカードが簿記の勉強したのか分からないけど。

 

 

「手先の器用さなら誰にも負けません。人体についても多少は明るいので縫合ならできます」

 

 3人目は外科手術しようとしてる?裁縫スキルあるけど、そういうことなのか?まあ、解剖する機会があれば心強いかもな……。

 

 

「子供好きなので一緒に遊んだりしたいです。連れくることがあればお任せ下さい」

 

 4人目は育児スキル持ちだ。だが子供を迷宮には連れて来るわけないだろ。彼女の出番はなさそうだ。

 

 

「私は組織の潤滑油として、全体の作業が円滑に進行するようサポートしていきます」

 

 5人目は就活生のようだ。後転スキルには話術と虚偽察知を持ち、交渉役として優秀だ。だが結菜もそれらのスキルを持つため、能力面での需要は低いな。

 

 

「特技は速記です。一言一句逃さず書き留めてみせます」

 

 6人目は書記官だ。うん。俺は記憶力には自信あるから、書き留める必要ないかな。ノートとか普段取らなくても、全部覚えてるし。

 

 

 なんか全員戦闘に関係ないことしか言ってなくない?前のマスターはカードに日常業務を任せていたのだろうか。

 

 よく考えたら、演奏の連携は完璧なのに後天スキルが育ってないということは、演奏隊として育成されていたということか。

 

(演奏ばかりしてきた人たちよりも、戦闘してきた私を起用するべきですよ)

 

「リリちゃんは面接しなくてもいいよね。伸び代少ないし、育成の優先度低いから」

(えっ)

 

 結菜の言う通りだ。リリは成長限界が近いうえ、後天スキルも既に獲得したものが多い。伸び代はほぼない。

 

 それにトランペッターは同種が多いほど強くなる。リリには控えとして、不足の自体に備えていてもらおう。

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