異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第5話 会話が苦手そう

 ギルドにて換金をする。昨日と今日で11万円。

 スパルトイの装備を買うには心もとないか?相場がよく分からないな。

 

 こういう時には、話を聞ける相手が欲しくなる。

 

「お久しぶりです。比嘉さん」

「お久しぶりです。浅黄さん。なにかありましたか?」

 

 ちょうどよかった。何故か声をかけてきた浅黄さんに話を聞くことにしよう。

 

「いえ、用がある訳では無いのですが、少し心配で……。比嘉さんのように足りない戦力で冒険者になる方は割といるんですよ。けれど、その大半は再びギルドに顔を出さなくなってしまうものです」

「そうなんですか」

「ええ、ですから、そういう方には個人的に目をかけているんですよ」

 

 Dランクカード。それは冒険者になるのに最低限必要なものであり、低いランクの迷宮ならば攻略できると国が判断したもの。

 敵を軽く見れば、足元をすくわれることもあるだろう。

 

 浅黄さんがやたら親切な理由がわかった。

 元冒険者ということも考えれば、本人の過去にも似たようなことでもあったのだろうか。

 

「ところで、聞きたいことがあ──」

「よお、鏡介」

 

 浅黄さんに声をかけてきたのは筋肉質で大柄な男性。

 

 ここら辺を拠点として活動する四ツ星冒険者、赤塚剣一。

 よく地域ボランティアに参加していて、近所で有名な人だ。

 

 浅黄さんとは仲が良いようでとても親しげな様子だ。

 俺に気づいて少し申し訳なさそうだが、邪魔にならないよう話はまた今度にしよう。

 

「では、僕はこの辺でお暇します」

「すまんな」

「ご武運を」

「はい」

 

 俺はギルドを後にする。

 

 装備の相場は自分で調べるとしよう。それと明日攻略する迷宮、獣の戦い方もだ。やることが多いな。

 

「あいつ、どっかで見たような……?」

 

 後ろからそんな声が聞こえてくる。あんな筋肉を見たら忘れない。きっと人違いだろう。

 

 

 

 

 

 今日挑む迷宮は全10階層。Fランクでは最大の深度だ。

 

 休憩を取りつつ攻略し、1泊してしまう予定だ。両親に連絡を入れてある。

 食料は多めに買っておこう。それに寝袋、多少のアメニティ、あとドッグフードも忘れずに買う。

 

 買い物を終えて、迷宮へと侵入する。そこは沢山の木に囲まれている。この迷宮もまた森である。

 

 そして、リリとスパルトイを呼び出す。

 初めて気づいたが、リリのカードに変化がある。

 

 

 

【種族】妖狐

【戦闘力】155(5UP!)

【先天技能】

・化け狐

・初等攻撃魔法

【後天技能】

・野心

・渾身の一撃

・臆病

・運動音痴

 

 

 

 少しではあるが、成長をしているようだ。

 この調子で戦闘力を上げて欲しい。彼女にも何らかのトレーニングを課そうか。

 スパルトイにも、早く武術スキルを習得してもらいたいものだ。

 ならいっそ、この場でトレーニングしてしまおうか。

 

 

 

 小一時間のトレーニングは、リリの魔力切れで終わりとなった。

 

 スパルトイには余裕があるようなので、リリをワイルドウルフと交代し、迷宮攻略を始める。

 

 ワイルドウルフには、実践の中で死角の目安や、急所の位置なんかを教えている。

 彼にはこれからも完全な奇襲要因として働いてもらう。

 

「ワォン」

「……」

 

 2体揃って何を言っているのか分からない。

 正確に言えば、ワイルドウルフについては感情は感じられる。だがそこまでだ。

 スパルトイに至っては何も分からない。

 

 言語って大事なんだな。リリが人語を話すありがたさを噛み締める。

 

 この2体もいつか、会話できるようになったら、その時名付けをしよう。

 そうでなくては、本人の気に入らない名前をつけてしまうかもしれない。

 

 そういえば、リリは自身の名前について何も言及してこなかったが、実際どう思っているのだろうか。

 本人から求めてきたのだから、貰って喜ばしいのだろうか。後で聞くとしよう。

 

 それにしても、サクサク進む。この調子なら日が暮れるが、今日中には踏破できる気がする。

 むしろ、今までがおかしかったのか?

 

 Dランク1枚あれば、Fランク迷宮を攻略できるというのは国の判断だ。

 戦闘力に限れば、DランクとFランクの間には最低でも2倍の差がある。

 

  こう振り返れば、浅黄さんが気にかけてくれていたのも頷ける。

 いや、むしろ心配かけて申し訳なくなってきた。

 

 その心配を払うためにも、今日中に攻略して、ギルドに顔を出すとしよう。

 まあ、都合よく勤務してるとも限らないけども。

 

「ワォン!」

 

 敵が近いようだ。 連戦を続けてきたスパルトイを下げ、回復したであろうリリを呼び出す。

 

 攻撃役を2体に増やし、攻略のペースをあげる。敵が攻撃役に気を取られれば、俺もナイフで攻撃する。

 

 スパルトイの装備については検討中だが、俺でも使えるような武器にして、共用にするのもいいかもしれない。

 

 だとしたら剣か槍か、スパルトイの怪力なら剣を片手で使い、もう片手で盾を持てるだろう。

 よし、購入するのは剣と盾で行くとしよう。

 

 まあ、お金が溜まったらの話ではあるが。

 

 

 

 今頃外は日が傾いているだろう。

 

 俺は、最下層への階段を前に、休憩を取っている。

 リリたちは休みのない攻略で疲れているだろうから、一旦カードに戻している。

 

 迷宮の中で1人になるのは、最初に入った時以来となる。

 戦力が増えていけば、今回みたいな攻略はすることはないだろう。

 

 だとすれば迷宮の中で1人になるのはこれが最後だろうか。

 

 静かだ。遠くからモンスターと思われる鳴き声がするが、都会の喧騒とは程遠く、田舎に出かけたような気分だ。

 

 

 

 さて、休憩も終わりにして、主へと挑むとしよう。

 

 この迷宮の主はトレント、簡単に言うなら動く木だ。樹皮が厚めで防御力が高いらしい。

 

 植物ならリリの火球が有効だろう。リリとスパルトイを呼び出し階段を下る。

 

 

 異様な気配がする。感じ取ったのは俺だけではなかったようで、リリは縮こまり、スパルトイは臨戦態勢に入った。

 

「シュウ、辺りの様子がおかしいです」

 

 リリは怯えた声で言ってきた。

 

 静かだ。何も聞こえない。見た目は変わりなく、ただの森なのに、まるで全てが死んでしまったかのようだ。

 

 振り返れば、そこには降りてきたはずの階段が無くなっている。

 

 イレギュラーエンカウント、本来の迷宮主を食らい、その座を奪う特性を持つ固有のモンスター。

 ここはFランク迷宮、故に敵の戦闘力はEランク相当まで制限を受ける。

 しかし、制限を受けるのはステータスのみであり、スキルは本来のAランク相当だ。

 

 勝ち目は薄い。外部への連絡を試みるも、携帯も冒険者ライセンスの救難信号も、反応はない。

 

 両親には一泊すると伝えてあるので、少なくとも明日までは、動かないはず。

 

 しかし、裏を返せば、明後日になれば両親が捜索願を出すはずだ。そこからギルドが処理し、救助が出動するまでどのくらいかかる?

 

 プロの冒険者ならFランク迷宮程度攻略するのにそう時間はかからないだろう。であれば遅くともその日の暮れ頃には救助が来ると考えられる。

 

 3日だ。それを生き延びれば、俺たちは助かる。

 

「持久戦をする。目標は3日間」

「「……」」

 

静かな森の中、俺の声だけが響いている。

 

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