異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第47話 三ツ星昇格試験

「12時、3時方向から敵が来るよ」

「12時方向、トロールが接敵しました」

「マスターはトロールの援護に。トランペッター部隊は3時方向へ攻撃を」

 

 俺たちはトランペッター(潤滑油)の指示に従い、動き出す。

 俺はトロールの背後を狙うモンスターに切りかかる。そのままトロールと背中を合わせ敵の攻撃を凌ぐ。

 

「前衛は後退。一斉放射で片付けます」

 

 3時方向の敵を片付けたトランペッター部隊がこちらに合流した。結菜の魔法で目くらましをしつつ、敵群から距離をとる。

 俺とトロールの間を複数の魔法が飛んでいく。4人がかりのそれらは瞬く間に敵群を蹴散らしていった。

 

(4人だけでも威力上昇はなかなかのものですね)

 

 

 トランペッターたちを育成した3ヶ月間で最大の収穫は、指揮官が増えたことだろう。

 元々は俺が担っていた役割だが、前衛として戦えば自然と戦場の死角が増える。後衛から全体を見回しつつ指示を出してくれるのはありがたい。

 

(シュウの負担が減りましたね)

 

 次点ではトロールが心を開いてくれた事だ。スキル蘭からも閉ざされた心が消え、支持を受け、行動できるようになっている。

 

(狂化が残ってるから、お話ができないのは残念です)

 

 Dランク階層ともなれば、眷属召喚してくる敵もおり、数的不利となることがある。だが、それでも難なく攻略を進めることが出来ている。

 

(この調子であと9階層抜けたら三ツ星です。気を抜かずに頑張りましょう)

 

 悩みがあるとすれば、暇を持て余したリリが延々と思念を送ってくるのが少し負担となっている。肯定的な言葉が多く精神的な負担はないが、思考の隙間に思念が差し込まれ考え事がしにくい。

 

(まあまあ、シュウならこれくらい問題ないですよ)

 

 確かに問題は起きてないけどさ。

 

 

 

 

 結局Dランク階層を攻略するのに6日もかかってしまった。途中まではかなり順調だったのに、だ。

 

 調子に乗ってトランペッター6人体制を試してしまった。眷属封印と眷属召喚による圧倒的な数の差で敵を蹴散らすことができた。

 

 しかし、眷属たちの隙間を縫った魔法攻撃のせいで演奏が中断され、一気に詰め寄られ甚大な被害が出た。

 幸いロストは免れたため、時間をかけて回復させることができた。

 

 やはり、護衛のためにも前衛であるトロールか変身した結菜は外せないな。

 

 それでも残りは最終階層のみ。主を倒せばはれて三ツ星となる。すると次は四ツ星だ。

 

 今の俺の戦力はBランク1枚、Cランク8枚、Dランク1枚。Cランク迷宮からはフィールド効果も加わるが、それぞれに対する対策アイテムも用意出来ている。残りの夏休みで実技試験は突破できるだろう。

 

 筆記試験も問題ない。大体全部覚えたし。

 

 

 そんなことを考えている間に皿洗いが終わった。キッチンからリビングを見渡せば、汚い。

 

 机の上には食べ終えた菓子の袋、空になったコップ。床には昨日結菜が着ていた部屋着、リリが出した時に散らばった米。

 

 今皿洗い終えたんだけど。そのコップ持ってこいよ。……まあ、いいか。

 

 俺は米を避けつつ、ソファに座る。汚さの中心、ソファにはその原因たるリリと結菜がいるのみで、トランペッターたちはゴミの少ない部屋の隅に座布団敷いて座っている。

 

 トランペッターたちは秩序を重んじる天使なため、階級や序列に厳しいらしい。

 

 それ故に神である結菜には逆らわない。神の使いであるリリは尊重する。結果として汚い部屋の隅で我慢しているそうだ。

 

 汚い部屋が嫌ならちゃんと話し合った方がいいと思うけどな。我慢なんて馬鹿らしい。そんなことしていても誰も救ってなどくれない。

 

 彼女らには常に小言を続けるアヤカのような精神性が必要なのかもしれない。

 

(それはあまり良くないんじゃないですか)

 

 確かに寝ても覚めても否定され続ける日々は確かに不快だった。だが、シャットアウトを習得して、楽になると思ったら両親から小言を言われるから大差なかった。

 ……これ環境が悪いな。一般的に考えたらアヤカはカスだ。

 

(そこまで言うのは良くないですよ)

 

 だってカスだもの。揚げ足取りと人格否定を会話だと思っているようなやつだぞ。

 

(えぇ……)

 

「さっきから2人だけで隠し事かい?」

 

 結菜にバレてしまった。別に隠すほどのことでもないが、彼女らの問題を適当につつくのもどうかと思うし、適当に誤魔化すか。……電話だ。

 

 ちょうどよく本当にかかってきた……。颯太からだ。急にいったいなんだろうか。

 

『凛月と連絡がつかないんだけど何か聞いてない?』

 

 別に何も聞いてない。思春期なんだから連絡がつかないことくらいあるだろ。

 

「女じゃね」

『それは確認とったけど違うらしい』

「そうか」

 

『慎吾から聞いたんだけどさ、凛月はネットの知り合いから迷宮攻略に誘われてたらしいんだ』

 

 ネットの知り合いって言い方的に顔も合わせたことも無さそう。そんな相手と迷宮攻略なんて正気じゃないな。

 

『相手は三ツ星だとか。Dランク迷宮に行ってるとしたら、凛月の戦力じゃ不安だよな』

 

 なるほど。たしかに不安だ。けれどどこに行ってるか分からなければ、助けに行くこともできない。

 

「なにか分かったら連絡する」

『ありがとう』

 

 俺は電話を切るとGPSアプリを起動する。凛月を含む新米冒険者たちが心配なのは颯太だけではない。予めGPSをしかけていた。

 正常に機能している。つまり機械破壊の類は受けていない。じゃあ連絡は単に無視してるだけだ。

 

 場所は山奥だな。地図を調べるとDランク迷宮がそこにある。

 

 ほかの冒険者の来ない山奥の迷宮で、よく知らない相手と会っている。怪しすぎるだろ。

 

 凛月は騙されているのか、加担しているのか。前者であるなら助けに行くべきだ。

 

「凛月って人はさ、自分の意思で連絡を無視してるんでしょ」

 

 結菜はお菓子をつまみながら適当に話し出した。

 

「干渉されるのを拒んでるんだから、何があったも自己責任。マスターは何もするべきじゃない」

 

 たしかに俺は拒絶されている。けれども、それは今始まったことじゃない。

 

『モンスターなんじゃないのか?!』

 

 モンスターに怯えて俺に縋って、脅威がされば次は俺を排除しようとする。人は愚かに、身勝手に俺を拒絶してきた。

 

 その在り方は酷く醜悪で嫌悪した。彼らを守る必要なんてないと、手に持つ刃を振りかざしてしまえと、どれほど考えたか。

 

 結菜への返事は、以前浅黄さんの問に対して答えたのと同じ。そしていつも自分を諌めるものとも同じだ。

 

 

「そんなことより、守りたい願いがある」

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