異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第48話 呪いのカード

 助けに行く。それに迷いはないがどちらのルートで行ったものか。降りるか。登るか。

 

 降りて主を退治すれば、試験は合格となる。だが、もしイレギュラーエンカウントが現れたら話が変わる。

 Cランクの強さを持つイレギュラーエンカウントと戦えば、負傷は免れない。救助に向かう戦力はなくなるだろう。

 

 アヤカをロストさせてからイレギュラーエンカウントに遭遇していないが、確証があるわけじゃない。

 

 確実な方法で行くべきだ。俺は『転移』のカードを使用して、1階層まで移動する。

 

 そこから電車とバスを乗り継いで目的の迷宮に向かう。移動中に迷宮の情報集めも欠かさない。

 

 

 

 2時間もすれば目的の迷宮……を内包するダンジョンマートまで着いた。

 俺は二ツ星冒険者。このDランク迷宮に入れるライセンスは持っていない。ダンジョンマートの中には入れても、迷宮には入れない。

 

 俺はダンジョンマートの裏手に周り、監視カメラがないことを確認する。そして2枚のカードを取り出す。

 

 1枚は普通の付喪神、もう1枚は色あせた付喪神のカード、アヤカだ。2つを重ね合わせればアヤカのカードには色が戻る。

 

「アヤカ、力を貸せ」

(うん。いいよ)

 

 呪いのカード、それは通常のカードのルールに縛られないカードのことを指す言葉。

 思念を送りつける。マスターの体を動かす。恐怖心を植え付ける。何ができるかはその呪いのカードによって変わってくる。

 

 かつてアヤカは頻繁に思念を送ってきた。俺はそれに対抗して無視した。アヤカは体を操ることで対抗し、俺はシャットアウトでさらに対抗する。

 

 俺たちは競い合った。それを通してアヤカは呪いのカードとしてあらゆるルールを破る無法の存在となり果てた。

 

 例えば地上での召喚。

 

 目の前に黄金の指輪が現れる。それを指にはめれば、語感は冴え渡り、全身に力が漲っていく。

 

 そして俺がダンジョンマートの壁を殴りつけると、壁は発泡スチロールでできていたかのように吹き飛び、大きな穴が空いた。

 

 その穴からは迷宮の入口が見えている。

 

 

 

 

 

 

「凛月、無事か」

「なんで秀羽がここに?!」

 

 凛月たちは浅い階層の安全地帯で休んでいた。凛月以外にも若い冒険者が数人いる。

 どうにか間に合ったようだ。さて、三ツ星の知り合いってのはどいつだ。

 

 俺たちの声に気がついたのか中年の男がテントから出てきた。

 

「凛月君の友達かい?こんな所まで追いかけてくるなんて仲良しなんだね」

 

 明らかにこいつだ。1人だけ年齢が違いすぎる。

 

「虚偽察知のスキル持ちがいる」

 

 俺がその一言を言うと、中年はカードを召喚した。後ろめたいことがあり、抵抗したいようだ。

 つまりはやつは若い冒険者を集めてなにか悪いことを企んでいたのだ。

 

 

 ひとまず武力制圧といこう。

 

 俺はトロールを召喚した。トロールは中年へと襲いかかる。

 

「皆さん!頭のおかしい冒険者が襲撃をかけてきました!力を貸してください!」

 

 中年の言葉に従うように若い冒険者たちは次々とカードを召喚していく。

 

 彼らの意識がトロールへと向いている間に凛月を連れ敵と距離をとる。そして十分に距離が離れてから、トロールをカードに戻す。

 

 そして、6枠全部使ってトランペッターを召喚する。彼女らが演奏を開始すると、敵目掛けて魔法が降り注ぐ。

 加えて、敵カードたちの動きは鈍重になり、さらに彼らと俺たちの間にトランペッターの眷属である騎兵が続々と現れる。

 

 現れた騎兵たちが敵へと突進していく。その上を越えていく飛行モンスターは魔法で撃ち落としていく。

 このまま制圧できるのが理想だが……。

 

 

 突如、爆音が鳴り響く。

 

 中年の前に召喚された数多の腕を持つ巨人が騎兵立ちを吹き飛ばしていた。ヘカトンケイルか?だとするとBランク、面倒だ。

 

「ヘカトンケイル!トランペッターを狙え!」

 

 眷属である騎兵を倒したところで状況は変わらない。敵はトランペッターを狙うのが定石。

 だから、当然対応は考えている。

 

 巨人は騎兵を押し退け、真っ直ぐ突進をしかけてくる。それに合わせて俺は顕明連を携え真っ直ぐ突撃し迎え撃つ。

 

 巨大な拳が俺目掛けて振り下ろされる。

 

 俺は刀を振り上げる。当然、それらはぶつかる。

 

 

 そして、巨大な拳が吹き飛ばされた。

 

「なぜだ!?そいつが召喚しているのはトランペッターだけのはずだ!」

 

 

 俺の指には黄金の指輪が輝いている。そして俺は今アヤカのカードを所持していない。

 

 

 アヤカはルールに縛られない。マスターなしで現界する。故に召喚枠に囚われずその力を振るうことができる。

 敵が驚いている間に決着をつけよう。

 

 巨人は6人のトランペッターによりあらゆるデバフを受けている。ワンランク下の付喪神でも十分に張り合えることが先の一合でわかった。

 

 また、数多の腕を持つ巨人に比べ、俺は酷く小さい。故に同時に攻撃できる腕は多くて2つ。

 さらに既に振り下ろされた腕が邪魔になり、その付近にはほかの腕で攻撃することはできない。

 

 サイズは小さいが力は上、巨人にとって俺は戦いにくいことこの上ないだろう。

 

 

 俺は巨人の腕をかいくぐり、その巨大な股を潜りながら、足をきりつける。

 対して巨人は蹴飛ばそうと片足を上げた。

 

「今です!巨人に!」

 

 トランペッターは潤滑油の号令のもと、一斉に巨人へと魔法を放つ。片足立ちで不安定な巨人は、せめて俺を潰そうとこちらに倒れ込んでくる。

 

 俺は再び股をくぐり、巨人に向けて向き直る。俺の背後からはトランペッターが巨人に向けて魔法を放っている。

 つまり、巨人が倒れた方向は……。

 

 悲鳴が響く。だが、バリアのあるマスターたちは無事だ。そこにいるのがマスターとしての経験が浅い者たちなのがわかる。

 

 地に伏した巨人に騎兵が畳み掛かける。下敷きになった仲間を救うためか、若い冒険者たちのカードもそれに加勢する。

 数の暴力により、瞬く間に巨人は消え去った。

 

 巨人、Bランクの敗北は若い冒険者たちの心を折るには十分だった。ひとり、またひとりとカードに自身を守らせながら命乞いを始めた。

 

 彼らの中心で中年もまた、同じだった。ここで彼を殺せば簡単に足がついてしまう。戦力を奪い、拘束しよう。

 

 俺は凛月を引き連れ、その集団に近づいていく。中年は前に控えていたカードたちの召喚を辞め、そのカードを差し出してきた。

 

 

 凛月の背後に敵が潜んでいる。

 

 俺は振り返り、何もないその空間に刀を振り下ろす。するとそこからは毛深い精霊が姿を表し、そのまま倒れていった。

 

「そんな?!」

 

 アヤカが気配察知で知覚した情報を全て俺の脳に送り込まれることにより、俺は擬似的に気配察知のスキルが使える。俺に奇襲は効かない。

 

 俺は中年の頬に刃を当てた。そこから血が垂れていくのが確認できる。彼はもう召喚していない。

 彼を拘束し、地上へと連れ帰った。




【Tips】白峰綾香
 第二時アンゴルモアでサマナーとしてモンスターと戦っていた女性。日夜続く戦闘の中で疲弊していき、やがて野良モンスターに追い詰められた。最後の抵抗として所持していた付喪神に自身の魂を取り込ませた。
 その付喪神は偶然通りかかった秀羽とともにモンスターを撃退し、以後アヤカと名乗るようになった。
 秀羽の持つカードホルダーや冒険者登録時に売った魔導具は彼女の遺品である。
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