「迷惑かけた詫びだ。俺の奢りで好きなだけ食ってくれ」
凛月の言葉に従い俺は遠慮なくちょっといい値段のパンケーキを頼む。ファミレスなのでそこまでの額ではない。冒険者として軌道に乗っている凛月であれば容易く払えるだろう。
ただ、気がかりなのは先日も同様のことが行われたということだ。違いがあるとすれば先日は颯太や慎吾など凛月心配していた面々がいたのに対して、今日は俺だけだ。
「なんの用事なんだ?」
「秀羽は俺のせいで免停になったからな。特に詫びておきたくて」
貰えるものは貰っておくが、免停は俺の判断ミスであり詫びる必要なんてない。それに飯奢られても免許返ってこないし。
「それと、その指輪についてなんけど」
凛月の視線は俺の右人差し指に嵌めた金の指輪に目を落とす。あの時近くにいた凛月は普段付けていない金の指輪に気がついたのだろう。
俺は指輪を回し、内側についたルビーを見せる。
「幸せの王子の魔道具だ。ほかの魔道具を強化する効果がある」
アヤカの情報は漏らさない方が都合が良い。相手の戦力がわからないゆえに見せてしまったが、誤魔化せるならそうしておきたい。
「それが強さの秘密かと思ったけど違うのか。……秀羽の秘密を知ってしまったのかと怯えてんだんだよ」
怯え……、秘密を知られたからってそんなすぐに行動を起こしたりしない。華音と颯太には口封じとして軽く人形によって強化した筋力を見せたぐらいだ。
「まあ、誰だって隠し事くらいあるよな」
そうだ。隠し事のない人間など隠す対象がないか、隠すための能力がない弱者だ。万事に備えて奥の手の一つや二つ持っておかねばならない。
「でもそれじゃ信用は得られない。"すぐに"とも、"俺に"とも言わないけど秘密を話せる相手はいた方がいいと思うぜ」
それなら心配はいらない。俺の行動を今も見届ける呪いのカードがいる。彼女らに隠し事をするのは難しい。
むしろ、災いを内に秘めていたり、隠し事があったり、記憶消してきたりと俺が相手を信じきれない要因の方が多い。
「1人ではできないこともある。人手が必要なら呼んでくれよ。いつでも駆けつけるからな」
それはありがたい。この世の中、頭数が必要なことは多い。俺の肉体が1つしかない以上こなせる容量には限りがある。これから頼ることもあるだろう。
例えば、昼食を食べてきたばかりなのに、大きなパンケーキを注文してしまった時とか。怒らないでくれ、すまないとは思ってる。
「あんまりファミレス来ないから、サイズを見誤った」
「馬鹿なん?」
パンケーキをなんとか平らげ、お開きとなった。迷宮には行けないし、何をしようか。
(シュウって分量間違えがちですよね。この前のそうめんなんてとくに大変でしたよ)
しまった。シャットアウトが解けていたようだ。まあ、いいか。
そうめんがあんなに膨れると思わなかったよな。トランペッター総動員で何とか食べきれてよかった。トロールが肉以外食べない弊害がここで来るとは。
(前から自炊勧めたよ?)
その誘いに乗った結果、危ないから包丁に触るなと怒られただろ。……それは何年も前か。この歳ならもう家の包丁使っても許されるよな。明日から頑張ってみるかな。
スーパーによって食材を買うか?いや、遠回りだからまた今度でいいな。自炊は次家出た時に検討しよう。
(先延ばし癖)
やはりどうにかしてこいつをロストできないものか。結菜を呼び出して倒させる?そのためには彼女を地上に出す必要がある。
呪いのカードの発生条件がわかれば、先に進めるはずだ。ではリリとアヤカはどうして呪いのカードになったんだ?
(前のマスターを取り込んだからかな?)
(何故かは分かりませんけれど、私は最初に蘇生された時からできるようになりましたね)
マスター取り込んだ……それがトリガーである可能性はある。だが、再現するには取り込ませるために、結菜を一度召喚するという本末転倒だ。
一方で蘇生はトリガーではない。もしそれなら冒険者たちのお気に入りのカードは軒並み呪いのカードになっていないとおかしい。
蘇生ではなくロストしたタイミングか?イレギュラーエンカウントが干渉したとか。いや、リリのロストは自滅だった。
……リリは2度目の蘇生で地上での俺に干渉できるようになった。呪いが強くなったわけだ。その時の蘇生には呪いのカードが用いられていた。
もしかしたら1度目の蘇生に用いた物も呪いのカードであり、その性質を受け継いだということか?あからさまに安かったし有り得る。
こちらを試すにはロキの呪いのカードが必要になる。これも無理そうだ。