異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第9話 懐かしいよね

 電話がかかってきた。相手は浅黄さんだ。

 ならば要件は、復活用カードのことだろうか。

 まだ3日しか経っていないのに、仕事の早い人だ。

 

「もしもし、比嘉です」

『浅黄です。復活用のカードが手に入りそうなので連絡させてもらいました。価格は50万円となりますが、よろしいでしょうか?』

「え、安すぎないですか?」

『ギルドを介さない、冒険者間の売買はそんなものですよ』

「なるほど。それを買います」

『はい。お金については、魔石の代金から引いておきます。今日の正午に届けに来てくれるそうなので、それ以降で受け取りに来てください』

「はい、わかりました。ありがとうございます」

 

 そんなに安く手に入るなんて、冒険者界隈は伝手が重要すぎる。

 

 それにしても、今日の正午か。あと2時間程度ある。

 

 この迷宮の主を倒して、移動すればちょうどそのぐらいだろう。

 相手の方にもあってお礼を言うとしよう。

 

 とりあえず主の階層に挑むべくメンバーを入れ替える。

 背の低い木々の多いこの迷宮なら、一反木綿は移動に便利でも戦闘には参加しづらい。

 ここは水虎に交代しておこう。

 

「相撲か!」

「これから主と戦う。敵を見つけたら、一反木綿を召喚する。そうしたら、水虎は眷属召喚なしでメインで戦って。一反木綿はバフと俺の護衛。」

「相撲だな!」

 

 作戦を共有した後、階段を下る。

 迷宮の主はいくつかの候補の中からランダムな単体。

 戦闘に苦戦することはないだろう。

 

 しかし、数度の迷宮攻略の中で問題を見つけた。

 借りてきたDランクは戦闘要員と移動要員。

 索敵要員がいなかったのだ。

 

 今までは適当なFランクで対応していたが、そのせいで戦力が落ち、効率も落ちる。

 

 そのため、一応Dランクであるリリの復活が望まれていた。

 

 

 主であるホブゴブリンを発見し、索敵役から一反木綿を交代する。

 

 そうしている間に、水虎がホブゴブリンと組み合う。

 

 水虎を巻き込みかねないので、攻撃魔法もできず、ひとまずはバフを送るだけにとどめる。

 そして、力が強くなった水虎が一気に引き寄せ、投げ飛ばす。すかさず攻撃魔法を撃ち込む。

 

 ホブゴブリンは空中で散っていき、宝箱が現れる。

 宝箱の中身は魔石とローポーション。ハズレだ。

 

 ローポーションは軽い怪我を治せるが、そんな怪我はほっといても治る。

 使われるのは専ら、美容関連だ。その上結構な数が出回り、買取価格は低い。

 

 浅黄さんの見立てによれば、俺の怪我を治すには最低でもハイポーションが必要とのことだ。道のりはまだ長い。

 

 

 

 ギルドにたどり着き、受付の人に浅黄さんがいるか聞くと、奥で休憩中と教えて貰えた。

 その上奥まで通してくれた。

 

 職員用の休憩室には、浅黄さんと少女がいた。

 その少女は1週間ほど前に待合室で見た同年代の子だ。

 

「比嘉さん、お早いですね」

「相手の方にお礼を言いたくて」

「残念なことに私はパシリなんだ」

「そうなんですか。わざわざありがとうございます」

「お姉ちゃんにも伝えとくから」

 

 そう言うと、少女は部屋を出ていった。

 姉妹揃って冒険者なのか。家族ぐるみとは羨ましいものだ。

 

「今の子は元チームメイトのケモナーの妹なんですよ。ケモナーからカードを引き継いだので、手持ちだけは四ツ星なんです。」

 

 え?何を急に語り出したんだ?

 その話からして、姉の方はもう引退しているのか。チーム全員で引退したのか?

 

「実力に不相応な力を持ち危なっかしいとケモナーから相談を受けまして。比嘉さん、チームを組むのはどうですか?」

「構いませんよ」

 

 恩もあるし断れない。

 予定が合う時だけチームを組むのなら普段の攻略に支障はないだろう。

 その上、四ツ星の戦力を借りれると思えば、有益に違いない。

 

「それと、こちらが妖狐のカードです」

「ありがとうございます」

 

 受け取ったカードで早速復活を……このカード、リリより性能がいい。

 半額なのに…。まあ、関係ない南無三。

 

 そうするとリリのカードが色彩を取り戻していく。これで復活は完了だ。ところで、

 

「今から昇格試験受けたいんですけど」

 

 

 

 

 そうしてやってきたEランク迷宮。ここを踏破すれば、二ツ星へと昇格できる。

 

 Eランク迷宮では、Fランク迷宮と違い、道中には罠やモンスターハウスが仕掛けられている。

 その上、主はDランクであり、手持ちと対等。この壁を越えられず、一ツ星に留まる人も多いようだ。

 

 迷宮に入り、1番最初にリリを召喚する。聞きたいことがあるからだ。

 

「久しぶり」

「お久しぶりです」

「なんであんな策をしたの?」

「こうして、復活する所までが策の内でしたので」

 

 急な質問にも、まるでわかっていたかのように答えてくる。

 強かだ。彼女はあの状況を生き延びるための策を、その先のこの質問すらも想定していたのだ。

 けれどもそれは全てを他者に委ねたということだ。

 

「シュウを信じておりました」

 

 欲しかったのはそんな信頼ではなかった。

 

「俺に任せてくれれば、全員で生き残れた」

「では他の2体は備えていなかったのですね」

 

 彼女の言い分は少し違う。

 

 俺は初めからこの危険性はわかっていたはずだ。

 ただ、間に合わなかった。俺は無力だった。

 

 これは彼らのせいではなく、俺の失態だ。

 

 早く強大な力を手に入れなくては。

 

 足りない力を補うためにも、公開されている情報は全て頭に入れた。

 もう二度と失態を犯さないために。

 

「攻略を始めよう」

 

 俺はそう伝え、水虎と一反木綿を召喚する。

 

 そして、リリを抱え一反木綿へと乗り込んだ。

 

 自身が戦力として見なされていないことに気づいたリリは、何も言わずに索敵へと集中した。

 

 Eランク迷宮では4体までカードを召喚できるものの、Fランクを召喚しても足でまといなので1枠は空いている。

 

「水虎、10m先の通路中央に罠があるよ」

「ああ、こりゃあ落とし穴の類だな。一反木綿はそのまま通過して良さそうだ」

「なにか違うんですか?」

「わかりませんねぇ」

 

 目利きのスキルを持つ水虎は罠を見破ることが出来るのに対して、後衛2体がからっきしすぎる。

 濃淡やズレなどの周囲とのギャップがあるだろ。

 

「マスター、モンスターハウスがあるがどうする?」

「挑む」

 

 モンスターハウスに入れば、ほかの地点よりも多くのモンスターと戦うことになる。

 その反面、モンスターを倒し切れば、宝箱が現れる。それを狙って突入する。

 

 敵は4体、水虎が引き止められるのは2体までだろう。ならば、

 

「水虎、眷属1体召喚して」

「おうよ」

 

 水虎の返事とともに、水虎より一回り小さい河童が姿を現す。

 

 水虎が2体相手をし、河童が1体、最後に抜けてきた1体を一反木綿が魔法で迎え撃つ。

 

 戦闘が終われば、被害もなく完勝であった。

 

「私の出番……」

 

 索敵要員が、戦闘に出しゃばる必要は無い。

 それでも可哀想なので頭を撫でておく。

 

 その後、宝箱と向き合う。

 モンスターハウスの宝箱は、主の宝箱と違い罠が仕掛けられており、それを解く必要がある。

 

「マスター、俺がやった方がいいんじゃねえか」

「いや、僕がやるよ」

 

 罠が発動すれば近くにいるものが危険だ。

 しかし、マスターであればダメージは分散されるため、致命傷になることはない。

 

 この宝箱はピッキングタイプのようだ。

 鞄から針金を取り出し鍵穴へと差し込む。僅かな手応えの違いを感じとり針金を回す。宝箱が開き中にあるのは石の破片だ。

 

「それに触るな!」

「急になんですかぁ?」

 

 水虎が慌てて静止を呼びかける。

 

 それもそのはず、この石は殺生石、触れるもの全てを毒で蝕む。

 大きさの割に攻撃性がとても高く、暗殺に適している。

 

 偶然にもそれは、見覚えのある石だ。

 

 俺は殺生石をハンカチで包みカバンにしまった。

 

「え、だから触るなって!」

「大丈夫」

 

 この石は直接触れなければ効果は薄くなり、吐き気や頭痛などが止まらなくなる程度のものだ。

 

 武器にもなるので、護身用に持ち帰る。

 状態異常を一反木綿に移す訳には行かないので、ここからは徒歩となる。進行速度は落ちるが仕方ない。

 




【Tips】殺生石
 近づく鳥獣の命を奪うとされている石。
 効果としては、直接触れたものはみるみるうちに衰弱していく。また、近づくだけでも体調不良を起こす。

 魔道具やスキルによる回復で大抵の怪我や病気が治るようになったことで、殺生石などの即効性のある毒物が悪いことに使われるようになった。
 それを阻止するため、ギルドはそれらの危険物の買取価格を高く設定している。

 また、1話で主人公がギルドに売ってた石である。
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