オバロ転生ただし日本【オバロ二次】   作:taisa01

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 ユグドラシル最終日

 

 一度、友梨佳と共にユグドラシルにログインしモモンガと思い出に花をさかせたが、いったんログアウトし、下層のある場所に向かうのだった。

 

 過去にテロがあり、汚染物質が流入したことで完全閉鎖された場所。いまでこそ当時破壊された外壁などは修復され、除染も済んでいるが、誰も立ち寄らず無人の場所となっていた。

 

 そんな場所に、灰色のロングコートを羽織り、いまではめずらしいタバコを吹かす男性が一人佇んでいた。

 

「おひさしぶりです。ウルベルトさん。それとも本名でお呼びしましょうか?」

「ウルベルトでいい。名前をお前に言われるのは正直いい気がしない」

 

 そういうと、ウルベルトはたばこの火を携帯灰皿で消し、多々良に向き合うのだった。

 

「なぜ、こんな時に呼び出した? アンタの処にもモモンガさんの招待状がきてたんだろ?」

「ええ、ですので少し前にお会いしてきました。この用事が終われば、もう一度ご挨拶に行く予定です」

「ちっ。無視してるなら嫌味の一つもいえたのに」

 

 ウルベルトはため息をつく。その姿は在りし日、たっち・みーと言い合いをし、悪態をついていた姿そのままであった。

 

「で、要件はなんだ?」

 

 ウルベルトは、右手をコートの内側に忍ばせながら要件を聞いてくる。その右手の指はホルスターに掛かっているのだろう。

 

「鈴川レポート。いえ、あなたにはベルリバーさんから預かったファイルと言った方がいいですかね。あれを破棄していただきたい」

 

 多々良の言葉にウルベルトは眉を顰める。

 

「メガ・コーポの若き幹部が直接でばってくるってことは本物か」

「私の顔はそんなに売れていないとおもったのですが、まああれはあと数日であなたにとっての意味のなくなるものです」

「意味がなくなるなら放置してもよいだろう。どうせ電脳倫理法違反なんておまえら巨悪にとってはどうとでもなるのだから」

 

 ウルベルトは吐き捨てる。多々良の意味のなくなるという言葉の意味を正確に理解しているのだ。

 

 つまり、ユグドラシルにゴーストダビング関連の機能が埋め込まれていたという事実を世間に公表され足切りがされるということだ。

 

「まったくお前らのやりそうなことだ。だが……」

 

 ウルベルトの視線が強くなる。

 

「それでだけでお前が出張ってくる理由がない」

「あのレポートの本質はレンラクどころか十大メガ・コーポの予算に影響しない。本来はウルベルトさんのような人が興味を示すようなものでもない」

 

 あくまでゴーストダビング技術が法に触れるという意味でマイナスとなるが、問題はそんなレベルではない。

 

「政、官、企業どこの意向だ?」

「あのレポートで損をする存在は、あのレポートを知る立場にはない。そして知らない者は探しもしない」

 

 多々良の言葉にウルベルトは大きなため息をつく。

 

「あのレポートは、メガ・コーポがそれぞれの方針で実施している人類救済プランに関係しているということか」

「その言葉を知っているということは、あなたも受益者ということだ」

 

 その言葉に反応するようにウルベルトはおおよそ人間に反応できない速度でウージーを引き抜き多々良の胸につきつける。

 

 だが、多々良は反応しない。

 

 驚くや逃げるといった銃を向けられた存在がおおよそ取りそうな行動の一切をしないのだ。

 

 その姿をみてウルベルトはチッと舌打ちをする。

 

「レンラクのレッドサムライ御用達のリジェネーターか」

「むしろ、その原点にして到達点さ」

 

 多々良の回復能力をもってすれば、サブマシンガンの弾丸を受けたところで、たちどころに回復してしまい傷らしい傷を残すことさえできない。ゆえに脅威に感じることもない。

 

 しばしにらみ合いをしてウルベルトは銃をおろして問いかける。

 

「ベルリバーさんはなんで死んだ? 知る立場になかったってことか?」

「まあ、知る立場になかったのもある。しかしなまじ有能だったのもあるが、彼がこの情報をあの時点で拡散しようとしていたことかな」

 

 ウルベルトもわかっているのだ。この世界はすでに人間がまともに住めないことを。

その上で、国家がなしえなかった救済をメガ・コーポが実現しようとしているのだ。現行法における犯罪、現在の価値観からの倫理違反、数多の問題を押しのけて。

そして、情報が今拡散されれば、多くの犯罪や倫理違反は是正されるだろうが、最終的な救済を失うことになりかねないのだ。真の意味でディストピアが完成するのだ。

 

「気に食わん」

 

 ウルベルトの心情としても、企業の行動を理解できないわけではない。ただ一つ。その過程で切り捨てられる人々がいることが、心情的に納得できないだけなのだ。

 

 ウルベルトは左手に持っていたデータスティックを多々良に投げ渡す。

 

「コピーはとってない」

「ありがとうございます」

 

 ウルベルトは用が済んだとばかりに立ち去ろうとするが、その背中に多々良は一つの言葉を投げかける。

 

「ちなみに、ベルリバーさん今も生きてますよ? うちの執事兼秘書として。あ、あと今度の週末のナザリックOFF会に参加してくださいね。私も妻の美由も、ベルリバーさんも参加しますので」

 

 

「はあああああああああああ」

 

 静かなアーコロジーの僻地にウルベルトの叫び声がこだますのだった。

 

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