オバロ転生ただし日本【オバロ二次】   作:taisa01

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第二話 久しぶりの再会

 二一二六年 ユグドラシルがサービス開始してから十ヵ月ほどが経過した。

木々の合間を駆け抜ける天使と堕天使の二人組は、眼前に差し迫ったオーガに向けて、颯爽と襲い掛かる。

 

「音改! フォロー」

「全能力強化(フルポテンシャル)」

 

 天使が構えたランスによる突進攻撃に合わせ、堕天使が補助魔法をかける。魔法の後押しを受けた一撃は、オーガの脇腹を抉り取り、そのまま吹き飛ばす。だがオーガのアバターは消えていない。

 

「炎Ⅲ」

 

 堕天使が腰の赤い液体の入った試験管を思いっきりオーガに向けて投げつけると、大きな炎となってオーガを焼き尽くす。天使はそれを見届けると、堕天使に向き直るのだった。

 

「や・り・す・ぎ」

 

 姉木由香里のアバター、天使の由美は腰に手をあてながら、姉木多々良のアバター堕天使の音改に向かって抗議をするのだった。

 

「別にあのぐらいいくらでも作れるし」

「そりゃーあれだけ課金すれば、素材なんていくらでも」

 

 音改は商人兼錬金術師兼料理人である。一日の最初にバフ料理を作って食べ、錬金術で作ったアイテム投擲で支援し、ときどき攻撃を行い、商人は各種金銭やり取りに補正がかかる。重課金で大量の錬金術アイテムや料理を作成する関係で、商人スキルは金貨の節約だけでなく、売買補正まであるので大いに役立っている。

 

 対する由美は天使・クレリック系重戦士というリアルと真逆ともいえる脳筋仕様。いろいろと弱点はあるものの、二人パーティーであることが前提であるため、今のところ何とかなっている。

 

「それにしても、いないな」

「運営権限で調べればいいのに」

「それは出来るだけやらない方針で」

「そのくせ、あのワールドアイテム貰ってるくせに」

「それはそれ、これはこれ。オーナー優待(嘘)。できるとヤルは違うの」

 

 音改と美由が、なぜあちこちの狩場をうろうろしているのかと言えば、アインズ・ウール・ゴウンの前身であるナインズ・オウン・ゴールに接触するためである。

 

 本来は運営権限を使ってモモンガなどの位置を特定し、偶然を装って会うこともできる。なのに、あえてそうしない音改に、美由は「なにめんどくさいことしてるのよ」と突っ込むのだった。それでもこうやって行動を共にしてくれているあたり、音改は頭が上がらない。

 

「ナインズ・オウン・ゴールがギルド一覧に登録されて、ギルマスがたっち・みーとあったから、間違いないと思うのだが……」

「異形種保護をうたっているのもあって、結構いろんな世界で目撃情報あるのよね」

 

 ユグドラシルにおける競争要素の一つとして、人間種と異形種の闘争という要素がある。分かりやすく言えば、非戦闘地域でなければ、人間種は異形種をPKしてもいわゆる赤ネーム(犯罪者)にはならないのだ。そしてその逆もしかりである。

 

 そのため異形種は自分たちが有利なニヴルヘイム、ヘルヘイム、ムスペルヘイムを中心に行動している。しかし、ナインズ・オウン・ゴールはそんなの知ったことかと、全ワールドで楽しんでおり、そのため日々の目撃情報にあわせて多々良と美由も移動する日々が続いているのだ。

 

「そういえば、この間見つけた浮島ってギルドホーム対応だっけ?」

「アインズ・ウール・ゴウンに入れないことを想定して、確保したままだけど」

 

―――っ。

 

 そんな雑談をしていると、草をかき分け進む音を察知した二人は、すかさず武器を構え、迎撃の準備をはじめる。

 

「バフは?」

「料理以外切れているわ」

 

 そういうと美由はアイテムボックスから筋力UP、防御力UP、素早さUPのポーションを惜しげもなく飲み込む。音改もポーションを飲み、腰のポーションホルダーへの補充も完了するころ、相手を視認することができた。

 

 先行するフルアーマーが三人手に剣や槍を持っていることから推定前衛系。後方にどれだけいるか不明だが、この時点で数的不利が確定している。

なにより相手は人間種だ。

 

「一当てしたら、そのまま三時方向に離脱」

 

 多々良の言葉に美由は頷く。

 

「三」

 

 音改は矢守りの護符(ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ)を発動し、二人の遠距離防御を準備する。

 

「二」

 

 美由は幻影体(イリュージョンボディー)を自分にかけ、少なくとも一撃は躱せるようにした。もっとも残る二人の連撃を、防御なり回避しなくてはならない。

 

「一」

 

 音改はフラッシュフラムを片手に、逃げるための攻撃をしようとした時、眼前に迫った三人が一刀のもとに倒されたのだ。

 

「「え?!」」

 

 二人とも、目の前で敵が消えたことに驚き動きがとまる。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 若い男性の声で確認してくるプレイヤーは、赤いマントを翻し、白い甲冑に身を包んだその姿は物語にでてくる騎士そのもの。なによりその強さは今まで見たどのプレイヤーよりも圧倒的なものであった。

 

「ああ、ありがとうございます。襲撃されると思い」

「いえいえ、先ほどのプレイヤー。もとは私たちの打ち漏らしでしたので」

 

 そういうと、さらに後方から様々な異形種プレイヤーがぞくぞくと現れたのだった。

 

「たっちさん。逃げた相手間に合いました?」

「ええ、たけさん。ギリギリ間に合いました」

「拘束魔法がレジストされて逃がしてしまって申し訳ない」

 

 刀を腰に指した半魔巨人。それに骸骨姿のマジックキャスターとしゃべっていないが悪魔のマジックキャスターの異形種三名が追って現れた。

 

 音改と美由が探し求めた、モモンガその人と仲間たちであった。

 

 

 

***

 

 

 フィールドで立ち話も何だからと、ニヴルヘイムの第一都市である死者の街に移動したナインズ・オウン・ゴールの面々に、音改と美由は改めてお礼を述べるのだった。

 

「ありがとうございました」

「いえいえ。それにこんなにいただいてしまって」

 

 そういうとギルドマスターのたっち・みーが代表して答礼する。ちなみに各種ステータスバフポーションや回復ポーションを音改が大量にお礼として押し付けたのだった。

 

「商人兼錬金術師兼料理人なので、この手のアイテムは倉庫に山詰みなので」

「もしかして堕天使の皮を被った踊る宝石って音改さんのことでしょうか?」

「堕天使の皮を被った踊る宝石?」

 

 そんなやり取りを見ていたモモンガがそっと手をあげて質問してくる。

 

「ええ、最近攻略掲示板やSNSでそんな話題が出てるんですよ。PKすると時々とんでもない量のゴールドやポーションをドロップする堕天使がいるって」

 

 音改はそういわれてみると、自分のことか? といぶかしむのだった。その横で美由は笑いを堪えている。そして、周りの人間も美由のリアクションでほぼ確定と認識してしまうのだった。

 

「お二人ともクランに入ってらっしゃらないようですから、同じ異形種ですので、うちにはいりませんか?」

 

 たっち・みーはこのタイミングで本命の話題を切り出したのだ。

 

 まず美由と音改の天使・堕天使ペアは、自分たちが思っている以上に有名だった。くわえてたっち・みーとしては、もともと自由に冒険したいという思いと、困っている異形種の救済という二つの想いからクランを立ち上げたので、二人のように人間種からのPKに屈せず冒険を続ける姿に共感したのだった。もっとも目的は全くの逆なのだが、この手の誤解はよくあることなので割愛しよう。

 

 その言葉に内心ガッツポーズをした音改だが、一拍おいて返答した。

 

「ぜひ参加させていただきたいのですが、できれば少しだけお時間をいただくことができますか」

「人間種が幅を利かせる世界でも、ひるまず冒険する気骨のあるプレイヤーはぜひ参加してほいので、待つのは構いませんが理由を聞いても?」

「はい。先日小サイズのギルドホーム系の浮島を入手して保有している状態です。そこで一度だけ内装してみたくって」

「ああなるほど。何もせずに手放すにはもったいないと」

「なので、そちらの対応が終わり次第、合流という形でよいでしょうか? その代わりといっては何ですが、私がレベル上げのために作る大量のポーションを、定期的にお送りします」

「そんな気遣いは不要ですよ」

 

 そういうとたっち・みーは二人にフレンド申請を送るのだった。

 

「わかりました。ぜひよろしくお願いします」

 

 フレンド申請を承認したっち・みーのプロフィールを何となく表示させた音改、いや多々良は驚くのだった。

 

「誰かが困っていたら 助けるのは当たり前!って……」

「ああプロフみたんですね。祖父から学んだ信条みたいなものです」

「たっちさんのそれ、初めて会った時から変わってませんね」

「そりゃー信条だからほいほい変わるものじゃないよ」

 

 音改の言葉にモモンガやたっち・みーが反応しているが、マナー違反ということを忘れ聞いてしまう。

 

「なあ、満か?」

「えっ」

 

 その言葉にあからさまに驚くたっち・みーの姿。

 

「この後電話する」

 

 そういってこの場はお開きとなるのだった。

 本当にこの世界はどうしようもない。よりにもよってたっち・みーが満とは。警察。子供の頃のエピソード。思い返せばそれはそうだと言わんばかり。たぶんだが、この世界でできた最初の男友達ということで、無意識に避けていたのかもしれない。

 そんなことを音改は思いながらログアウト後に電話を手に取るのだった。

 

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