ディンガ「実に感動的なラストシーンだ。涙が出るね」
マキナ「ディンガにも涙があったのは驚きかな」
ディンガ「失礼だね…キミは」
「わぁ!!かわいい!」
「すごいね!にるぶべんとう族だっけ?確か」
「にゃんか惜しいけど、正解はニルビット族よ。マナ」
「そう!それ!」
「ルーシィよりも私!私の方が可愛いですわ」
六魔討伐を終えた翌日。化猫の宿に招待を受けた連合軍一行は民族衣装に着替え、異文化交流に胸を踊らせていた。シェリーだけはルーシィに対抗心剥き出しであるが今更である
「ここは集落全部がギルドになっていて、織物の生産も盛んなんですよ」
「へぇ?こーいうのも悪くねーし」
「そうね。ニルビット族に伝わる織り方って解釈で良いのよね?」
「う〜ん……今、思えばそういうこと……なのかな?」
自慢気に語るウェンディであったがイッシュからの問いには煮え切らない答えを返す。それもその筈、彼女は自分以外を除いた仲間たちがニルビット族の末裔であることを知らずに育ってきたのだ
「エルねぇも着てみなよ」
「似合うよー!きっと!」
「ああ…そうだな」
「エルザ……」
妹分たちからの無邪気な勧めに寂しさを宿した瞳で答えたエルザ。その瞳に宿った彼女の心情を理解しているイッシュは呟くように名を呼ぶ
「そう言えば……このギルドは何時から連盟に加入してたんだい?」
「私もカナさんと同じことを言おうと思っていましたわ。失礼ながら、この作戦が始まるまでギルドの名を聞いたことがありませんでしたもの」
化猫の宿、その名を耳にする機会に恵まれなかったカナが問えば、同じようにシェリーも作戦が始まるまで知らなかったと口にする
「そう言われると聞いたことなかったわね、あたしも」
「アタシもー」
「レティもだし」
「そうなんですか?そう考えると……ウチのギルドって本当に無名なんですね…」
矢継ぎ早に放たれる知名度の低さにウェンディは苦笑し、自分のギルドが今更ながら無名であったことを再認識する
「どーでもいいけど、みんな待ってるわよ」
「早くしろよな」
話し込む女性陣を呼びにやってきたシャルルとトリガー、彼女たちも一応は女性にカウントされるのだろうが、今は然程気にすることではないので割愛しておく
「あら、生意気にちんくしゃ。出迎え?」
「ぷいっ」
「はんっ…言ってろ」
そして、恐らくは同族?に間違いない二匹を意地が悪そうに呼ぶリアン。彼女也に二匹との距離を縮めようとしている様子だ
「妖精の尻尾……青い天馬……蛇姫の鱗……そして、ウェンディにシャルル…よくぞ六魔将軍を倒しニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表して、このローバウルが礼をいう。ありがとう、なぶらありがとう」
全員が集まったことを確認したマスター・ローバウルが代表の一人として、六魔討伐を讃え、同時にギルドを救ってもらった礼を告げる
「なぶら?どーいう意味かな」
「きっと満開的な意味だよ!」
「余計に意味わかんねーよ」
「おチビちゃんズは静かにしてなさい」
ローバウルの口調が気になって仕方がない妖精組の年少三人をやんわりと叱るルーシィの姿はすっかりと保護者的な立場が板に付いている
「どういたしまして!!!マスター・ローバウル!!!六魔将軍との激闘に次ぐ激闘!!!!楽な戦いではありませんでしたがっ!!!仲間との絆が我々を勝利に導いたのです!!!!」
「「さすがはおやっさん!」」
「「「お見事です!!先生!」」」
誰よりも早くに礼に対する返事を返した一夜を讃えるのはバレルとトリガー、トライメンズ。彼等の中に一夜を無碍に扱うという選択肢は存在していないようだ
「おっさんはなんもしてねーし」
「なんで居たのかもわかんないレベルよね…」
しかし、レティとルーシィは煮え切らない気持ちがある様子で突っ込みを放つ
「終わりましたのね」
「お前達もよく頑張ったな」
「ジュラさん」
「マキナもえらかったね!傷は大丈夫かい?」
「起き抜けにそこら辺に生えてたパイナップルを食べたから問題ねーかな」
「アンタはどんな胃袋をしてんの?ホントに…」
「この流れは宴だな!」
「宴!てことはいっぱい食べていいんだね!やったー!」
「あいさーっ!」
「マナもハッピーも腹八分目にしないとダメよ」
「キミは相変わらず過保護だね?リアン」
「にょほほ!宴ならばこのクロドアも参加しましょうぞ!」
「なんで棒切れのヤローがいんだ?まぁ…今は肉だ!肉食おうぜ!」
「宴かぁ」
「グレイ。はしたないから脱ぐのはやめなさい」
「そうだ。イッシュさんに失礼だろう」
「アンタも脱いでんじゃん」
互いを労い合う連合軍。癖がある者たちばかりの集まりであるが故に突っ込みが追いつかず、ルーシィは頭を抱えていた
「では…バレルよ!あの曲をBフラットで頼む!」
「任せろ…おやっさん。では、一曲」
「俺はカスタネットだぜ」
「ハーモニカとカスタネット出したぞ…なんか」
「あの変なとこがなかったら、普通なんだよ?バレルも」
「トリガーもね」
一夜に促され、懐からハーモニカを取り出したバレル。その動作にグレイが引き気味に表情を引き攣らせ、マキナとディンガも苦笑を浮かべる
「あっ、それ!一夜が♪」
「「「一夜が♪」」」
「活躍♪」
「「「活躍♪」」」
「それ、ワッショイ!」
「「「ワッショイ!」」」
「ワッショイ!ワッショイ!」
「「「ワッショイ!ワッショイ!」」」
バレルとトリガーの演奏に合わせて踊り出す天馬組。テンションと演奏が明らかに合っていないが、余りにも突然の状況に誰も突っ込みを放つことが出来ないでいた
「はしたないわね」
「すんげぇダセェ」
「わぁー!なにアレー!草生えるー!」
「俺もやるぞー!」
しかし、それはフラクタル姉妹、竜兄妹を除いての話だ。イッシュはため息を吐き、レティは鼻で笑い、マナツは笑い転げ、ナツに至っては参加するというまさかの展開。正にこれは彼等だからこその芸当と言える
「さぁ!化猫の宿の皆さんもご一緒にィ!?」
「「「ワッショイ!ワッショイ!」」」
「ワ…」
妖精組も巻き込んでの盛り上がりも最高潮に達しかけていたが、一夜が更なる盛り上げ要員にウェンディ以外の化猫の宿のメンバーを誘うが誰も誘いには乗ろうとはしなかった
「皆さん…ニルビット族の事を隠していて本当に申し訳ない」
「そんなことで空気壊すの?」
「全然気にしてねーのにな」
「そうだよー!アタシだったら、明日には忘れてるよー?」
「それはマナだけよ」
「反省してるなら八つ裂きにするのは勘弁してやるかな」
「博士は発想がエグいね」
空気を壊されたことに約一名は物騒なことを口走ったが、特に気に留めている素振りも無く、些細なことであると全員が割り切っていた
「マスター…気にしてませんよ?わたしも」
「…………匂うな。じいさん、なんか隠してんじゃねーか?」
「スコルくん……?」
ギルドに関する秘密を知らなかったウェンディでさえも気に留めようとしなかったが、誰よりも鼻が効く彼だけは、スコル・ダスターだけは違った。その視線はローバウルに向けられていた
「皆さん、ワシがこれからする話を、よく聞いてくだされ…」
「勿体ぶらずにさっさと言いやがれかな」
「マキナ。今はちょっとだけ横槍を入れるのはやめておきな」
「あいあい」
重い口を、硬く閉ざされた秘密を、本当の真実。それを語る為にローバウルは口を開いた。マキナの横槍等も気にならない程に重い空気は次第に張り詰め、誰もが息を呑む
「先ず……初めにワシらはニルビット族の末裔などではない。ニルビット族そのもの…400年前、ニルヴァーナを創ったのは…このワシじゃ」
「「「……………なに!?」」」
語られた真実、ウェンディだけには在らず、連合軍全員が思考を止めた。400年前、気の遠くなる長い年月を生き、ニルヴァーナそのものを作った者が目の前にいる、それに思考を止めるなという方が無理である
「嗅ぎつけたクセに予想はしてなかったかな」
「そういうテメーはどうなんだよ!?」
しかし、それは〝
「400年前の文献に記されていたのはニルヴァーナが何であるかという記述とニルビット族がそれを創り上げたという事実だけ……だからこそ、ボクは推理した。ゼロは何故、化猫の宿を狙ったのかを。それは末裔が存在していたから…だけど、厳密には違った。マスター・ローバウル、アナタのいうことが真実ならば……ニルヴァーナは、善悪を反転させる魔法は、二つのバランスを均等に保とうとするが故に、失われた闇がニルビット族を滅ぼした……ってことだよね」
紐解いた真実、全てを理解し、解明したが故にマキナの推理は的を射ていたのだろう、ローバウルはその推理を聞いた後に再び口を開いた
「なぶら……今も尚、その光景はワシの瞼の裏に焼きついておる……地獄じゃったよ……仲間を、家族を……殺すことを誰が望んだ……その結果が招いたのは全滅…」
「全滅だぁ?アンタは生きてんじゃねーかよ!」
全滅、それが示すのがニルビット族そのものを意味するならば、ローバウルが生きていることは腑に落ちない。代表したスコルが疑問を打つけるも、その先を理解していたマキナは口を閉ざした
「いや……我が肉体はとうの昔に滅び、今となっては思念体に近い存在。ワシはその罪を償う為…また、力なき亡霊の代わりにニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで400年………見守ってきた。その役目も今、終わった」
「そ…そんな話…!!」
400年の荷を下ろす時が来たのだろう。そう告げたローバウルの表情は清々しく、ゆっくりと体が揺らぐ。それを意味するのが何であるかをウェンディも理解し、涙を堪え、体を揺らす
「ふざけんな!!アンタはマスターだろうが!!マスターは親だ!!そのアンタが消えたら…!ウェンディはどうする!!シャルルはどーなる!?無責任にも程があんだろうが…!!」
「スコルくん……」
愛を知らぬが故に育ったからこその叫び。消えゆくローバウルに詰め寄り、親であるからこその責任を問う眼差し、初めて受けた愛情は今も尚、魂に、心に、その身に宿っていた。名をくれた、居場所をくれた、家族をくれた。かつて、名も無かった獣は誰かを愛する気持ちを、愛される気持ちを知った。それ故の叫び、その気持ちを知っているからこその叫びが溢れた
「スコル……やめろ」
それを止めたのは、彼が敵対視する白衣の少年。その眼差しは何時にない程に真剣にスコルを見据えていた
「止めんなっ!!マキナ!!テメーになにがわかる!!親にも家族にも恵まれたお前になにがわかるってんだ!!こいつはウェンディの気持ちを---あがっ!!」
全てを言い終わる前にマキナの拳がスコルの頬を捉えた。意味の無い暴力を好まない彼らしからぬ行動に殴られた本人も、妖精の尻尾の仲間たちも驚きを隠せずに、まさかの光景に目を疑った
「マスター・ローバウルがどーして、ギルドを創り上げたと思ってんだ!!概念になってまで…!どーして、ウェンディに嘘を吐き続けたと思ってんだ…!!親だから………マスターだからだろうが…!!!」
「…………すまねぇ……ローバウルのオッさん……俺はアンタの気も知らねーで……」
凄味を見せるマキナの叫び。その震える声に隠された真意を垣間見たスコルは自分の胸倉を掴む彼の手をゆっくりと離し、ローバウルに頭を下げた
「良い仲間だ……ウェンディとシャルルを頼まれてはくれまいか?キミたちの未来にワシ等の子どもたちを連れて行っておくれ」
かつて、ニルヴァーナを創り上げた一族があった。その果てに掴んだ望まない孤独の中に現れた光、その光に応える為に仮初のギルドを創り出し、笑顔を守ろうとした。その光は新たな居場所を得た、新たな仲間を得た。優しいだけの嘘は彼女には必要なくなった
「お前たちの未来は…始まったばかりだ」
「マスターー!!!」
天高く消えた嘘という名の優しい光は幻として、消えていく。刻まれた家族の証と共に優しい嘘は消えていく。少女の伸ばした両手が、その体を掴むことは叶わず、天高くに優しい嘘は昇ってゆく
「マスタァーーーーーー!!!!」
愛に理由など存在しない。少女を想うが故に紡がれた嘘は何時からか本当に本物となっていた。愛を知らなかった自分とは違い、彼女は愛の中で育ったからこその涙。その涙の意味を知ったからこそ、緋色の髪を靡かせ、彼女は歩み寄る
「愛する者との別れの辛さは…仲間が埋めてくれる」
愛する者を失った経験を誰よりも知っているからこその言葉。その悲しみを知っているからこその優しい言葉。他ならぬ彼女だからこそ、掛けてあげられる言葉に涙を流したウェンディが振り返る
「来い、妖精の尻尾へ」
一言。それ以上の言葉は不用だった、告げられた言葉にウェンディの涙は止み、空は彼女の新たな門出を祝福するかのように澄み渡っていた
「なぁ……マキナ。優しい嘘ってのも悪かねーな」
「お前に同意したくはねーけど……
「ああ……そうだな…。マスター・ローバウル……アンタの代わりにウェンディとシャルルは俺が守る…約束だ」
優しい嘘の意味を知った獣は空高くに拳を突き上げる。その悲しみを拭う為に、彼女を守る為に彼は一歩だけであるが確かに前へと、未来へと、明日へと進んだのであった
新たな仲間を迎え、帰路に着く妖精の尻尾。見るもの全てが新鮮なウェンディとシャルル。しかし、新たな仲間に仲間たちは興味津々な様子で……
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