天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

101 / 109
スコル「前回のあらすじ、最強のファンキー魔導士のスコルこと俺は……マスター・ローバウルがウェンディについてた優しい嘘ってのに触れた…あるんだなぁ…こんな嘘も…」

ウェンディ「スコルくん!今日から、よろしくね」

スコル「おおよ!」

シャルル「ぷいっ…」


幕間 とある魔科学の天才少年の日常
第八十七話 天竜ちゃん、新しい仲間に迎えられる


「マナツ……船って潮風が気持ちいいんだなぁ」

 

「そうだね!アニキ!咲き誇ってるねー!」

 

「最近は乗り物酔いになっちゃうから、世界全部の乗り物を破壊してやろうかなんて考えたりもしたけど…乗り物の利便性には勝てねーかな」

 

大海原を進む巨大な帆船。乗り物酔いをせずにゆったりとし船旅を楽しめる幸せを噛み締める火竜()と花が咲いたように同意する花竜()、その隣には白衣を潮風に棚引かせた科学者(幼馴染)が物騒な発言しながらも乗り物の利便性を再確認している

 

「どーなってんだ……乗り物酔いしてねーぞ」

 

「わたしの魔法のトロイアだよ、スコルくん」

 

「とろ……なんだ?そりゃ…」

 

滅竜魔導士特有の乗り物酔いをしていない三人の竜を前に疑問符を浮かべるスコルに対し、その理由をウェンディが語るも、聞き慣れない魔法に彼は首を傾げる

 

「トロイアよ、トロイア。乗り物に酔わない為の補助魔法よ。そんなことも知らないワケ?バカオス」

 

「あぁ?んだとコラ、白猫てめぇ」

 

呆れた眼差しで説明しながらも棘のあるシャルルに眼を飛ばすスコル。彼女の中でスコルは一番に敵対視する部類に分類されているようだ

 

「でも、マナが元気そうで良かったし。いっつも辛そうにしてたかんな」

 

「えへへー!これで大丈夫だね!」

 

自分を心配するレティに笑顔で応えたマナツ。初めての快適な船旅を彼女也に満喫している様子だ

 

「あ、でも……そろそろトロイアが切れるよ?マナちゃん」

 

「「「おぶぅ…!」」」

 

しかし、現実とは残酷也。トロイアの攻略が切れたことで顔色を悪くした三人は倒れ込み、先程の元気は何処に?と言わんばかりに死にかけていた

 

「ま、マキナ……お……おくすり……ちょうだい…だい……」

 

「む……むり…はきそーで……ま……魔法……つかえな……い…」

 

「も…もう一度…かけ…て」

 

「連続すると効果がうすれちゃうんですよ」

 

連続の使用は効果が薄くなる。故に船旅の間、三人は放置状態という形に落ち着き、妖精の尻尾(我が家)に帰る為の帰路に着く

 

「本当にウェンディとシャルルも妖精の尻尾(ウチ)に来るんだね」

 

「滅竜魔導士のバーゲンセールね。何人になるの?これで」

 

「そうだね……博士にマナツにナツ、ガジルにセイラン…ウェンディ……それと今は居ないが()もだから…七人だね。おやおや…これは本当にバーゲンセールだ」

 

「滅竜魔導士がそんなにいるの…?まぁ…私には関係ないけど…。そもそも、私はウェンディが行くって言うからついていくだけよ」

 

増えゆく滅竜魔導士の多さに笑いあうディンガとリアン。それを聞いていたシャルルは意外にも多かった存在に驚きながらも、自分が同行する理由を語る

 

「楽しみです!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!」

 

「楽しみにするよーなトコでもねーぞ?ウルセェだけだ」

 

期待に胸を躍らせるウェンディを前に自分のギルドを騒がしい場所と認識しているスコルは困ったような表情で、期待にそぐわない場所であると教えた

 

「それでも……スコルくんやマナちゃんにレティちゃん…あと、マキナくん(・・)も一緒だから、わたしは嬉しいよ」

 

「そうか?それなら…良かった」

 

それでも、ウェンディにとっては年齢が同じスコルたちと同じギルドに所属出来る嬉しさの方が上らしく、満遍の笑顔を見せた。彼女に訪れた別れを内心では誰よりも心配していたスコルは、その笑顔に安堵し、優しく笑う。今まで、獣のようにしか生きることを知らなかった彼が浮かべた初めての優しい笑顔、その意味を本人は理解していないが、その奥底にある感情には名前が存在する。しかし、それを彼が自覚するのは今はまだ先の話だ

 

「エルザ。ジェラールは最後に思い出した……ようやく、貴女と彼は一歩を踏み出した……。だから、笑って?貴女の笑顔が私は好きよ」

 

悲しみを乗り越えても、別れは辛い。緋色の髪を潮風に揺らす親友に寄り添い、優しい言葉を掛けるイッシュは正に大人。甲板で酔い潰れているカナとは雲泥の差だ

 

「ああ……ありがとう。お前はやはり、優しいな。昔も私をそうやって慰めてくれた」

 

「そうだった?私は今も昔もやりたいようにしているだけよ」

 

以前にも似たようなやり取りをした記憶が甦えるエルザに対し、自分は変わっていないと口にするイッシュ。昔馴染みの二人だからこそ、分かり合えるのだろう。少しだけ、僅かに軽くなった気持ちにエルザは憑き物が落ちたかのように胸を撫で下ろす

 

「いやぁ〜楽しみですなぁ〜!ぼっちゃん(・・・・・)のギルド!」

 

「アンタがなんでいんの!?」

 

カタカタと笑うクロドア。その存在が居ることに目を見開き、驚いたルーシィは最も疑問を打つけた

 

「そういえば、ニルヴァーナを壊した時からいたね」

 

「変なのがいるのは慣れっこよ」

 

「あい」

 

「落ち着きすぎよ!!ドラネコトリオ!」

 

慣れ故に気にも留めずにティータイムに興じる三匹を相手にルーシィは突っ込みを放つ。何時もながらに見事な突っ込みは彼女だからこその伝家の宝刀になりつつある

 

「ハルジオンが見えてきたし」

 

「よーやくか」

 

港が近付き、レティが声を挙げた。声に導かれるように視線を向ければ、見慣れた光景が広がり、久方振りの街並みに各々が気持ちを落ち着かせる

 

「う〜〜ん…!やっぱり…安心するわね〜!この感じ!」

 

「鬼帰ってきた感じがするし」

 

「や……やっとか……」

 

「うぷっ……こ、これで……船に乗らなくて………大丈夫……だね……」

 

「二度と乗らねーかな……あんなもん……」

 

案の定、乗り物酔いが持続中の三人は風を肌に感じるルーシィたちとは裏腹に顔色は優れず、乗り物には二度と乗りたくないと固く誓う

 

「でもマグノリアまでは列車だよ?」

 

「「「さ、最悪だ……!!」」」

 

しかし、現実は残酷にも三人に試練を与える。更なる乗り物に乗らなければならないことに項垂れ、絶望感に打ちのめされる

 

「マキ。アンタの酔い止めは?今なら魔法使えるんじゃにゃい?」

 

助け船にリアンは今ならば、マキナが魔法を使えるのでは?と疑問を打つけたが彼の顔色は優れず、目を逸らした

 

「……しょーじき…今は魔法を使おうにも使えねーかな……。滅竜魔法を使う機会が多かったから、魔力が安定してないんだよね…」

 

「常時解放になると、そういうデメリットが生まれるワケだね」

 

「うん。だから、先にデウスとエクスには帰ってもらったんだよ。研究室でなら、魔力補給も簡単に出来るからね」

 

「流石は博士、素晴らしい判断だね」

 

酔いを少しでも醒まそうと研究話で盛り上がるマキナとディンガ。一人と一匹の間に割って入れるような者は存在しない。しかし、それは約一名を除いての話だ

 

「ほら、行くよ?アンタたち」

 

潮風に当たり、酔いが醒めたカナは弟たちに声を掛け、手を差し出す。すると、一人と一匹は顔を見合わせた後に差し出された手を掴む

 

「あいあい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……というわけで、ウェンディとシャルルを妖精の尻尾へと招待した」

 

「文句があるヤローは俺がぶん殴る!」

 

「よろしくお願いします」

 

妖精の尻尾(ギルド)に帰還すると同時にウェンディとシャルルの紹介をするエルザ、その隣には獣の如き唸り声を挙げるスコルが居り、今にも噛み付きそうな勢いだ。一方でウェンディは律儀にお辞儀をしており、謙虚な姿勢を貫いている

 

「かわいーっ!!」

 

「白いリアンがいるぞ!」

 

「おジョーちゃんいくつ?」

 

新たな仲間に興味津々な男性陣はウェンディに群がり、質問を投げかける。今までに無いタイプの彼女を前に興味は尽きず、次第に周りが騒がしさを増してゆく

 

「騒がしいと思ったら、帰ってたんだね。マナにレティ」

 

「うみゅ?アーちゃん!ただいまー!」

 

騒ぎを聞きつけたのか、カウンターで植物を愛でていたアマノが声を掛ける。親友の姿を見るや否、マナツは彼女の胸に飛び込んだ

 

「おかえり」

 

優しく抱き止め、笑いかける。親友からの暖かい迎えにマナツは花が咲いたように笑顔を浮かべた後、囲まれたウェンディの方に走っていく

 

「アマノも来ればよかったじゃん」

 

「アタイは別の依頼があったからね。それで、あの子はなんだい?」

 

カウンターに体を委ね、来ればよかったのにと口にするレティに別の依頼を優先したと答え返しながら、アマノはマナツが手を引くウェンディに関する疑問を投げかける

 

「この子はウーちゃんだよ!新しい家族!ウーちゃん!こっちはアーちゃんだよ!アタシの親友なの!」

 

「えっと…ウェンディです。マナちゃんとは仲良くさせてもらってます」

 

「アタイはアマノだ。よろしく頼むよ、ウェンディ」

 

「はい!」

 

「まぁ、マナの周りに友だちがあんなに…!」

 

可憐の一言が似合う和やかな雰囲気を醸し出す美少女四人。その姿を微笑ましそうに見守る男性陣の足元には相棒が友を増やすことに感極まるリアンの姿があった

 

「じっちゃん。もう一人の仲間も紹介するかな」

 

「なんじゃ、まだおるのか?」

 

「うん」

 

もう一人の仲間、そう言われたマカロフがマキナに問えば、彼は首を縦に振る。そして、彼の背後から何かが姿を見せる

 

「にょほほー!これはこれは貴方が噂に名高いマスター・マカロフですか!私はこの度、マキナぼっちゃんに勧誘していただいたクロドアと申します!よろしくどうぞ!」

 

「…………は?な、なんじゃーーーー!?これは!?」

 

姿を見せた何か基クロドアを見た瞬間、口を開けたマカロフが驚きの声を挙げる。それは他のメンバーも同様で、先程まで、ウェンディに群がっていた者たちも動きが止まった程だ

 

「六魔将軍の七人目かな」

 

「六魔で七人目!?なんちゅーモンを連れてきとるんじゃ!?」

 

更なる驚きの発言にマカロフは開いた口が塞がらず、放心状態に陥るが頭に触れる慣れ親しんだ気配に気付く

 

「いーじゃん別にー。おじじはかたいなー」

 

「ぺしぺしするでないわ」

 

「おじじはジュラを見習うべきじゃね?あの人の方が柔軟だったし」

 

「受け入れる以前の問題じゃろうに…」

 

両側から頭を叩くマナツとレティ、何時も通りの二人に軽くため息を吐きながらも、優しく目を細める

 

「ああ…グレイ様…!ジュビア心配で心配で…目から大雨が…!!」

 

「だあぁーっ!?」

 

「溺れるー!!」

 

「グレイ止めろーっ!!」

 

「何で俺がぁー!!」

 

「んでよォ、ヘビが空飛んで…」

 

「ヘビが空なんか飛ぶかよ!!漢じゃあるめーし」

 

「今のどこに漢が関係あんだよ」

 

「全く……はしたないわね」

 

やはりというべきか、次第に騒がしさを増してゆくギルド内。しかしそれはある意味であるべき形であると同時に妖精の尻尾(フェアリーテイル)らしい光景と呼ぶに相応しく、日常風景とも呼ぶべき風景だ

 

「シャルルは多分ハッピーやリアンにディンガと同じだろうけど…ウェンディはどんな魔法を使うの?」

 

「うわぁ~!本物のミラジェーンさんだ…!」

 

「ちょっと!オスネコたちと同じ扱い!?」

 

目線を合わせ、優しく問うミラ。憧れの女性に出会えてことに興奮気味のウェンディとは裏腹に自分の扱いがハッピーたちと同一視されていることに抗議しており、不満さが垣間見える

 

「あ……それと私は天空魔法を使います。天空の滅竜魔導士です」

 

刹那、滅竜魔導士という言葉を聞いたギルドの面々が静まり返る。それと同時に信じてもらえないと眉を下げるウェンディ、自分なんかが…と落ち込む彼女の肩に手が触れた

 

「顔…上げてみろよ、ウェンディ」

 

「えっ……あ…」

 

優しく言葉をかけられ、上を向いたウェンディ。其処には落ち込んでいた彼女を優しく見守る新しい仲間たちの姿があった

 

「スゲェ!!」

 

竜兄妹(ドラグニルブラザーズ)やマキナと同じか!!」

 

「ガジルやセイランとも同じだな!!こいつはスゲェや!!」

 

「珍しい魔法なのにな!!」

 

衝撃を受けた故に言葉を発するのに時間を有しただけであり、其処に彼女を信じないという選択肢は存在していなかった。盛り上がる仲間たちを前にウェンディの顔には笑顔が溢れる

 

「………おい、セイラン」

 

「もぐもぐ……むぐむぐ……」

 

騒がしいギルド内を二階から見下ろしていたガジルは隣にいたセイランに呼び掛けるも、彼は手にした大量の甘納豆を食べることに夢中であり、その手を止めようとはしない

 

「食うのをやめろ!!」

 

流石に痺れを切らしたガジルが怒鳴れば、彼は口内に含んだ甘納豆をごくんと呑み込んだセイランは軽く首を捻る

 

「んだよ…ガジル。なんかあんのか?」

 

「見ろ、新しく入った小娘にもネコがいる……」

 

「おぉ……そういや………ゴーグルにもポニーテールにもいんだよな…」

 

同じ魔法を使う者達には存在する相棒のネコたち。しかし、自分たちにはそれが居ないと分かると不思議と虚しさを感じる。其処へ何かを嗅ぎ付けたハッピーが飛んで来る

 

「あい!天馬のバレルにもネコいたよ」

 

「「なにぃ!?」」

 

更なる情報、バレルが二人は誰であるかを知らないがネコが居るという発言から察するその人物も滅竜魔導士であることは明白。まさかの出来事に二人は驚きを隠せない

 

「今日は宴じゃー!!!」

 

「「「おおおおおっ!!!」」」

 

「ウェンディとシャルル!ついでにクロドアの歓迎会じゃー!!騒げや騒げっ!!」

 

楽しくも騒がしい。誰もが笑い合うギルド、それが、それこそが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)。新しい居場所に笑顔が溢れて止まらないウェンディは嬉しさが溢れていく

 

「どーだ?ウルセェだろ?」

 

「うん……だけど……すっごく楽しいよ!!ね?シャルル?」

 

「私は別に…」

 

苦笑するスコルからの問いに笑うウェンディに対し、素直になれないシャルルは澄ました表情で答えを返す。その騒がしい様子を見ていたマキナは頭のゴーグルに触れる

 

「………」

 

「どうしたんだい?博士。浮かない顔だ」

 

相棒の表情から何かを読み取ったディンガは彼の隣に腰掛け、手にしていた煮干しを差し出す

 

「ニィちゃんたちも居たらなぁ……ってさ…。あれから……何ヶ月も過ぎたけど……やっぱり…まだ…気持ちの整理がつかないんだよね」

 

「それは僕も同じさ。フェルマにシャルルを紹介してあげたかった……」

 

物思いに耽るマキナの呟きにディンガも双子の姉を思い出す。その会話を聞いていたのか、一人と一匹の影に二つの影が重なった

 

「俺たちもおんなじ考えだぜ?」

 

「ガルムが見たら……どんなイヤミを言うでしょうねぇ」

 

「デウス……エクス…」

 

二体の相棒も自分たちの兄弟分を思い出していたのか、笑う。名を呼べば、二体はマキナの足元に寄り添うように寝転がった

 

「おーい!マキナ!一緒にプリンたべよーよ!」

 

「マナ?走ると転ぶわよ」

 

プリン片手にマキナの元に駆けていくマナツ、その肩には呆れたように彼女を咎めるリアンが定位置と言わんばかりに腰を落ち着けている

 

「だいじょーぶだよ!リアンは心配しょーなんだからー!」

 

「マナが心配かけすぎにゃのよ」

 

「ぶー!そんなことないもん!ねっ!マ--あれ?」

 

心配症の相棒に口を尖らせたマナツは幼馴染に同意を求めようとするが、急に首をこてんと傾げた

 

「……すー……すー……」

 

「マキナってば……寝てる」

 

「きっと…疲れたのよ」

 

相棒たちと寝息を立てるマキナを前に愛らしい瞳を瞬きさせるマナツにリアンは彼等が疲れたのだろうと口にする

 

「そっかー……じゃあ、起きるまで一緒にいよっと!はい!リアンにあげるね!プリン!」

 

「あら、ありがとう」

 




ウェンディを迎えてから数日。マキナを訪ねて一人の少女がギルドに現れた……その少女はマキナの妹弟子を名乗り……そして、マキナの師匠も登場…!?

マキナの賑やかさに元気をもらえたら、お気に入り登録お願いしまーす。コラボとかも気軽にメッセージ飛ばしてくれたら、反応しまーす
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。