天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……ししょーが用意した謎を解明し、着実にししょーの元に向かっていたかな」

ディンガ「師匠は博士に似て偏屈だからね」

マナツ「早く見てみたいなー、マキナのししょー!」

リアン「マキを育てんだから、かなりのチャランポランね」

ディンガ「否定しかねるね…」


第九十一話 天才くん&傭兵くん、師匠から激励を送られる

「三つの扉……金、銀、銅……ふむふむ……実に興味深いかな、これは」

 

「スコルの首にあるのとおんなじ!ねーねー、なんか知らないのー?」

 

「知らね。師範からの貰いもんだからな、コイツは」

 

三つの扉と酷似したスコルのドックタグ。それをヒントになるのでは?と考えたマナツが問いを投げかけるも、食いに気味に本人は貰い物故に詳しいことは知らないと説明する

 

「おや、ここに何か書いてあるよ?なになに……『三つの扉に描かれし獣、共通するモノを見抜かれたし。その謎を解き明かし者現れし時、道は開かれん』とあるね。どういう意味だろうか」

 

「扉に獣がどうのとか書いてあるわね……アレのことかしら?それににゃんか扉自体にも絵が描かれてるわ」

 

扉の近くに書かれた文章を読み上げたディンガが意味を理解出来ないが故に首を傾げていると、同じように内容を読んだリアンが扉の上部に描かれた三つの絵と扉そのものに気付いた

 

「虎に鳥……あれは魚?」

 

「は?共通点とか無くね?魚に至っては獣でもねーじゃん」

 

「食物連鎖の縮図……ってわけでも無さそうだね、こいつは」

 

「しょくも……?なにそれ?」

 

扉に描かれた三つの絵に共通点が無いかと思考を巡らせるウェンディとレティ、アマノの三人。マナツは聞き慣れない言葉に疑問符が飛び交っている

 

「殴ればいーだろ、殴れば」

 

「アホか。そんな単純じゃないから謎って言うんじゃないかい」

 

素っ頓狂な解答を繰り出すセイランの頭をアマノが引っ叩きつつ、呆れたように文句を放つ。その力が強かったのだろう、余りの痛みに流石にセイランも声が出ないほどに蹲っていた

 

「共通点か……う〜ん?なんだろ…」

 

「えぇーっ!?マキナにもわかんないの!?」

 

「鬼ヤバじゃん、それ」

 

「なんなの…アンタたちのオスチビに対する信頼は…」

 

マキナさえもお手上げの状態にマナツとレティが驚くのを側から見ていたシャルルが呆れたように突っ込みを放つ。無理もない頭脳明晰な彼が理解不可能な問題を他の誰かが解けるはずもなかった

 

ツバサ(・・・)じゃねぇのか?」

 

「「「……!?」」」

 

意外な人物が口を開いた、マキナも疑問符を浮かべる程の難問に答え?と思われる単語を口にした人物は獣と揶揄される程に頭の使い方を知らない少年。それを知る者たちは驚き故に言葉を失った

 

「スコルくん。わかるの?」

 

「鳥、魚、虎の三つに関係あることだろ?鳥には翼があって飛べる。魚は羽魚って珍種がいんだよ」

 

「スコルが謎解きしてる!!おバカなのに!」

 

「………バカにボクのアイデンティティ取られた……ぐすん…」

 

「兄弟子!?泣かないでください!」

 

「バカってたまにスゲーし」

 

「人は見かけによらないね……アンタも見習いなよ?」

 

「は?なにをだ?」

 

「おかしいね、エイプリルフールはまだの筈だが…」

 

「空耳よ、きっと」

 

「バカオスに対する信頼の低さもなんなのよ…」

 

まさかの出来事にある者は戦慄し、ある者は涙を流す。人は見かけによらぬものを体現したスコルはマキナたちが何故、このような反応を示しているのかを理解出来ずに首を傾げる

 

「だけど、虎に翼はないよ?」

 

「師範の虎がツバサって名前なんだよ。なんか背中に羽みてーな模様があったから、その名前にしたらしいぜ?つーわけだ、翼の絵がある銅の扉を開け」

 

「おうよ!任せろ!あん?開かねーぞ!?つーか錆びてる!!」

 

翼の絵が描かれた扉を開こうとセイランが力を込めるが、錆びついた扉は不動の如し。押しても引いても開く気配は見られない

 

「錆びた扉………空気………あぁ……なぁ〜るほど!!」

 

その時だった。スコルに手柄を取られたことに悔し涙を流していた白衣の少年の目に生気が戻り、更に意味深な笑みが浮かび、その手は頭のゴーグルに触れた

 

「なになになぁに〜?マキナ!なんか気付いたのー?」

 

「とーぜん!このボクにわからねーことなんかあるワケねーかな!」

 

幼馴染が何かに気付いたのを理解したマナツは彼に駆け寄り、期待の眼差しを向ける。それに気分を良くしたマキナはけらけらと笑いだす

 

「すごーい!流石はマキナだね!今日もナイス不思議(ワンダー)だね!正に天才だね、博識だね、鬼才だね!」

 

「なーっはっはっはっ!!なにせ、ボクは天才(ジーニアス)!つまりは天才だからね!」

 

マナツに褒め称えられ、益々機嫌を良くしたマキナは高笑いを交えた決まり文句を口にする。彼の気分を上機嫌に出来る者は姉を除けば幼馴染であるマナツ以外には存在しないのだ

 

「どうするの?マキナくん」

 

「まぁ、見てなよ。アマノにお願いあるんだけど、レモンとか出せたりしない?」

 

「レモン?まぁ、出せなくはないけど……植物造形(プラントメイク)!」

 

唐突な申し出に戸惑いを覚えながらも、アマノは造形魔法でレモンを造形し、マキナに手渡した

 

「先ずはレモンを絞って、その絞った汁にタオルまたは布状のモノを染み込ませる」

 

「あっ!マキナ!絞ったレモンはいらないよね!それ、ちょうだいだ〜い!」

 

解説を交えながら、実践するマキナは絞ったレモンを強請るマナツの手にレモンを置き、更に動作を継続する

 

「そして、染み込ませたタオルで銅の扉を磨く。すると……ほれこのように、見事にピカピカになったかな」

 

「「「な、なにこれ!?魔法!?」」」

 

「いーや、魔法じゃないよー………科学(・・)

 

「「…………は?」」

 

頭のゴーグルに触れ、意味深に笑う彼にマナツたちは素っ頓狂な声を挙げる

 

「そうか!酸化還元反応だね!博士!」

 

「せーかい!さっすがはディンガだねー」

 

「さんか?かんげー?なになになぁに〜?それー」

 

「兄弟子!説明を求めます!」

 

酸化還元反応。ディンガが口にした聞き慣れない単語に誰もが首を傾げる中、好奇心旺盛なマナツと知りたがりのサザンカは興味を示したのか、如何なる現象であるかの説明を要求する

 

「オーケーオーケー、説明するかな。銅が錆びつく原因は空気中の酸素と銅の成分が結びついて、酸化による化学変化を起こすからなんだ。ここにレモンの果汁またはマヨネーズ、梅の実を塩漬けした梅干しっていうとのかに浸したりすることで、酸性が持つ酸化の逆の反応である還元と呼ばれる反応が起こるかな。還元は酸化した銅から酸素を取り除いて、銅が持つ本来の性質に戻す反応を言うんだ。因みに銅の錆には黒い錆と赤い錆が存在するんだけど、この扉の場合は赤い錆の方だから、亜酸化銅って呼ばれてるよ。僅かな謎から、明確な答えを簡単に導き出してしまう……頭脳が我ながら恐ろしいかな。でも出来るのがボクかな……何故かって?天才だからに決まってるかなー!」

 

科学と魔法、二つの知識を持ち合わせるが故にあらゆる現象は彼の前では解明され、無効化されてしまう。それこそが魔科学、彼の生み出した最強の知識であると同時に唯一無二のアイデンティティなのだ

 

「すっご〜〜い!やっぱり、マキナは天才だね!なんでも分かるんだぁ〜!」

 

「なっーはっはっはっ!!当たり前かな!このボクに解明不可能な謎なんかは存在しねーかな!」

 

「そうでしょう!兄弟子はホントにすごいんです!」

 

「何故、キミが誇らし気なんだい?サザンカ」

 

幼馴染からの尊奉の眼差しを受け、機嫌が最高潮に達するマキナ。それを見ていたサザンカはまるで自分のことのように誇らしそうに胸を張る

 

「難しいことはわからねーが、これで開くってことだよな?」

 

「そういうことになるね」

 

「つーか、今の説明を聞いて理解出来るヤツなんか早々にいねーし」

 

「マキの話を理解出来るのはディンガくらいよ」

 

「そうかい?実に分かり易いけどね」

 

首を傾げるディンガ以外は酸化還元反応についての説明を受けても、意味を理解するまでには及ばず、疑問符が飛び交う。それでも、マキナの頭脳が優れていることは火を見るよりも明らかだ

 

「セイラン。てな訳だから、開いてもいーよ」

 

「おっしゃ!」

 

謎を解いたことで満足したのか、何時ものように軽い口調に戻ったマキナが指示すると扉を開きたくて仕方がなかったセイランは勢いよく開いた

 

「二時間と三十分……貴方にしては随分と時間を掛けたわね?マキナ」

 

扉を開いた先に広がっていたのは、花弁が舞い上がる程に美しも壮観な一面の花畑。そして、その中央に佇む一本の桜の木の前に佇む二つの影、その内の一人が親し気にマキナに声を掛けた

 

「………やっぱりね。呼び出すにしても、サザンカに依頼を出させるのは流石にやりすぎでしょ…ししょー(・・・・)

 

「「「えっ…!?あの人が!?」」」

 

声の主である黒い長髪を風に揺らす女性にジト目を向けたマキナは彼女を「ししょー」と呼んだ。マナツたちが驚きを見せていると、女性はゆっくりと歩み寄って来る

 

「初めまして、マキナのお仲間さんたち。私はマキナを育てた親であり師でもあるサクラ・ティプロン。まわりくどい真似して、ごめんなさいね?」

 

「実はサクラさまのお使いで兄弟子を呼びに行くことになったのですが、普通では再会に花がないからと一芝居打たせていただきました」

 

改めて名乗ったサクラに抱き上げられたサザンカは律儀にことの詳細を語る。全てが仕組まれた芝居、予想外の発言にマナツたちは面を食らったかのように驚きを浮かべた

 

「えー!芝居だったの!?サザンカのあれって!」

 

「鬼役者じゃん」

 

「見た目だけじゃ判断はつかないもんだね」

 

「あひゃひゃひゃひゃ!まんまと騙されちまったワケか!俺たちは!」

 

「流石はマキナくんのお師匠さんと妹弟子さん……頭が良いんですね」

 

何も知らない妹弟子という役を演じきったサザンカは勿論ながら、全てを仕組んだサクラにも賞賛が贈られる。しかし、渦中の人物でもあるマキナは頭のゴーグルに触れ、意味深に笑っていた

 

「ししょーの芝居も謎解きも最初から分かってたよ。それにサザンカは顔に出やすいから、もうちょっと隠す努力をするべきかな」

 

「やっぱり、マキナにはお見通しだったみたいね」

 

師匠のことは弟子が誰よりも理解している。故に全てを見抜かれていたと知り、サクラは苦笑を浮かべる

 

「とーぜんだよ、ししょーのそういう手に何回も引っかかってきたからね。でも一つ、分かんないんだけど……どーして、あのバカのお師匠さんと知り合いなの?」

 

天才であるマキナにも理解出来ない事、それはスコルの目線の先に佇む見覚えの無い男性。雰囲気から察するるにそれが彼の師であることは一目瞭然だ

 

「どうして、そう思ったかを聞かせてくれるか?サクラの弟子」

 

名乗りもしていないのに素性を見抜かれた男性は興味を示したのか、感心しながらも問いを投げかける

 

「聞かせるもなにも、サザンカが言ってた人の特徴と一致してるからだよ。それにそこのバカ猿が震えてるのが何よりの証拠かな」

 

「なっ…!別に震えてねーぞ!!これはアレだ!武者震いだ!!」

 

推理にもならない程に簡単な答えを口にしながら、視線を向けた先には怯えるかのように震えるスコルが取り繕ったような言い訳を口にしていた

 

「良い弟子を育てたな?サクラ」

 

「貴方もね…タイガ」

 

その光景に優しく目を細めた男性基タイガが笑いかけるとサクラも優しく笑った

 

「師範。俺……妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入って良かったと思ってる。最初は師範に無理矢理、入れられて……なんにもやる気がなかった。でも!最近は違うんだ!俺、もっともっと強くなりてぇ!師範みてーに!仲間を!家族を!守りたいんだ!」

 

師を前に溜まっていた気持ちが爆発したスコルは自らの心中を叫ぶように口にする。その姿にタイガは優しく笑い、その手を弟子の頭に置いた

 

「急に何を言い出すかと思えば………お前は強いよ。仲間のために強くなりたいと思える優しい気持ちがある……それが本当の強さだ。今のお前を俺は誇りに思う」

 

「師範………!!」

 

師からの暖かくも優しい言葉、それはスコルの気持ちを落ち着かせ、安らぎを与える。その様子をウェンディを筆頭に仲間たちも静かに見守っていた

 

「マキナ。貴方も前より強くなったわね、滅竜魔法を常に使えるようになったらしいじゃない」

 

そして、サクラも愛弟子のマキナに笑いかけ、優しく言葉を掛ける

 

「色々とあったからねー。でも、今はそれも必要な経験だったんだって分かるよ」

 

「剣の道に終わりはない……貴方が信じる自分の剣の道を真っ直ぐに歩みなさい。その先にきっと、貴方也の剣道が見つかる。私はそう信じているわ、マキナ」

 

「ししょー………たまにはいーことも言うんだね」

 

「どういう意味よ!!」

 

「ぐもっ!?」

 

暖かい言葉を掛けたつもりがマキナの心には響かなかったらしく、悪気の無い一言が突き刺さったサクラの頭突きが襲い掛かる

 

「出た!!師匠の伝家の宝刀(頭突き)…!!」

 

「兄弟子!?大丈夫ですか!?」

 

「死なないでぇぇぇ!!マキナぁぁぁぁぁ!!」

 

「ディンガ!!容態は!?」

 

「脳しんとうです」

 

気絶しているマキナをマナツが揺すり、サザンカが心配する。その容態をリアンが問うと、何時もはマキナの役目であるが代わりに診断したディンガが診察する

 

「ししょー……ボク……今ね……すっごく楽しいよ!これからも自分の剣道を突き進むね!」

 

「それでこそ…我が弟子!期待してるわよ」




師との再会を終えたマキナ、当たり障りのない毎日を過ごしていた彼の元に報せが届く……それは父の帰還だった。今、マグノリアを巻き込んだ親子喧嘩が幕を開ける…!!

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