ディンガ「変わらないね、師匠は」
マキナ「変わらないのはいーことかな。それで今回は遂に」
ディンガ「彼が帰って来るんだね」
マキナ「そーかな」
「………この鐘の音は………ディンガ!マグノリア全体に通達!」
「あいあい」
マグノリア全体に響き渡る何かを告げる鐘の音。その音色に誰よりも早くに気付いた白衣の少年は相棒の赤猫に呼び掛け、市民全体に通達指示を下す
「博士。久しぶりの
「抜かるなよ?博士。たまには博士のすごさを見せつけてやらねーとな」
「言われなくても分かってるかな。さぁ………どっからでも来やがれ!!
両脇に控えた白と黒の機械仕掛けの狼からの激励に応えるかのように白衣を翻し、懐から取り出したボタンに指を触れる
「なにがどうなってるの?なんかマキナがすごいやる気に溢れてるけど……それにトーちゃん?」
「マキナくんのお父さん……ってことですか?」
「そーいや前にそんな話を聞いたことあるし。確か名前はギルバートだっけ?」
「マキナのお父さんということはカナのお父さんでもあるのよね?」
「ああ、みんなはまだ知らなかったね。私とマキナの親父……ギルダーツ・クライヴを」
加入から一年にも満たない面々が疑問を抱く中、渦中の人物の血縁者でもあるカナが酒樽片手に名を告げる。〝ギルダーツ・クライヴ〟、それはカナの実父であると同時にマキナの養父でもある男の名だ。ラクサスが破門となった今では妖精の尻尾最強の呼び名が最も相応しい存在と呼ばれている
「ギルダーツ・クライヴ……!?」
「なんと…!あの男ですか!?」
「イッシュにクロドア。二人は知ってるの?ギルダーツを」
ギルダーツの名を聞き、反応を示したのは闇ギルドに在籍していた過去があるイッシュとクロドア。ルーシィは自分が知らない故に彼等に問いを投げかける
「前に闇ギルドに在籍してた頃に名前だけは聞いたことがあるわ……確か、彼の歩いた後には何も残らないって…」
「いやはや、あのマスター・ゼロでさえも、ギルダーツはヤバいと言っておりましたが……その男がぼっちゃんのお父上だとは初耳ですなぁ」
「そ、そんなにヤバい人……なの?ギルダーツって……」
「すごい魔導士なんですね……」
噂が噂を呼ぶ、ギルダーツの伝説にルーシィは息を呑み、ウェンディも驚きを隠せないでいた
「へぇ……エルねぇよりも強い系なん?まさかの」
「そのまさかだ、レティ。私では足元にも及ばないさ」
「マジ!?鬼ヤバじゃん!それ!」
普段は他人を軽んじてばかりのレティも自分の姉貴分に強いと言わしめるギルダーツに驚きを隠せず、目を見開く程に驚愕する
「でもまぁ、三年振りじゃない?この雰囲気」
「うぇ?もうそんなになるんだっけ?最後にギルダーツを見た時はプリンもらったんだよね」
「あのオヤジはなんだかんだでマナツには甘いからな」
「カナにもべたべたしてるわよね」
「鬱陶しいだけだよ」
ギルダーツの帰還に沸き立つギルド内、実の娘は酒樽を抱え込みながら悪態にも似た嫌味を吐くが内心は満更でもない様子なのは一目瞭然だ
「三年も何してたの……?」
「確か……仕事だ。S級クエストの上にSS級クエストがあってよ、その更に上に10年クエストがあんだよ」
「じゃあ、ギルダーツさんはそれに?」
「いいや、違う。あのオッサンが行ってたのは……」
ルーシィとウェンディの疑問に定位置のカウンターに胡座を掻いていたスコルがギルダーツの仕事の内容を説明していると、その前に白衣が棚引いた
「
そう口にした少年の手は頭のゴーグルに触れ、意味深な笑みが浮かび、誰よりも帰還を待ち侘びていたと言わんばかりに表情に緩みが見えた
「マキナ……100年クエストってなに?」
「100年間誰も達成できなかったクエストだから、100年クエスト。だからこそ、今日は久しぶりに親子喧嘩をするんだ………さぁ、
「それでは誠悦ながら……発明No.049…
ルーシィの疑問に答えながらも、ボタンを片手に今か今かと瞬間を待ち侘びていたマキナの呼び掛けに呼応したディンガは拡声機型の発明品片手にマグノリア全体に呼び掛けを行った
「「「ギルダーツシフトって………なになになぁに〜〜!?」」」
「外に出てみれば分かるわよ」
「マキナの一番の発明なんだよ!とにかくすっごいの!」
ギルダーツシフト、またしても聞きなれない単語に疑問符が飛び交うルーシィを始めとした新参者たち。それにミラが外に出るように促せば、マナツが興奮気味に疑問の正体を簡潔に説明してみせる
「では………毎度お馴染みのあのセリフ!!ポチッとな♪」
けらけらと笑いながら、手にしていたボタンを押す。その瞬間、マグノリア全体に変化が生じる。街全体が競り上がり、建物の間には一つの道が一直線に現れ、その道中には刃物の振り子に巨大な壁、電気が迸る柵といった人を迎えるには御世辞にも思えない鬼畜な回廊が姿を見せた
「ま、街が…割れたぁーーっ!!?」
「というか鬼ヤベェ道が出来てんだけど…!?」
「はしたない道ね……これは…」
「マキナくんはお父さんをどうするつもりなんでしょうか……」
「少なくとも迎える態度じゃあ……ないねぇ…。穏やかじゃないよ、これは」
「あっひゃひゃひゃ!!すんげぇ〜!なんだコレ!」
有り得ない光景にある者は驚き、ある者は呆れ、ある者は興味を持つ。しかしながら、このようにしなければならない理由は明確に存在しているのだ
「ギルダーツは『クラッシュ』という魔法を使う」
「触れたものを粉々にしちゃうから、ボーっとしてると民家も突き破って歩いてきちゃうの」
「そのせいで毎度毎度、ギルドに苦情が殺到しちまってね。見かねたマキナが街全体を改造したのよ」
「でもタダの改造だと面白くないからって、色々な罠を仕掛けるようになって、今に至るんだよ」
「親子揃ってバカなの!?」
街全体を改造した理由を聞き、ルーシィは街を破壊する父と街を改造してしまう息子の思考回路に突っ込まずにはいられなかった。話題の一人は白衣を棚引かせ、ギルドの入り口に佇んでいる
「さぁ…!来なよ!トーちゃん!」
「博士!壁と振り子が破壊されました!」
「大丈夫!まだ電気柵に有刺鉄線!更にはピアノ線に鉄球があるかな!」
「おっ?その全部が破壊されたぜ?今」
「ぐぬぬ…!だけど…さすがに金属の壁五十枚重ねは無理かな!」
「おや、それも破壊されたようだね」
「……………トーちゃんのバカヤロー!!うわーん!ネエちゃーーーん!!」
「よしよし……可哀想に」
自信作全てを最も簡単に破壊されたことで悔し涙が溢れたマキナが
「ふぅ…………まーた……マキナの仕業だな?あんなに罠を……全く…あのバカ息子め」
そして、黒いコートを棚引かせた男はギルドに姿を現した。茶髪にオールバック、義理の親子故に当たり前だがマキナには微塵も似ておらず、更に言えば、実の娘であるカナにも似ているとは言えない男。その男こそがギルダーツ・クライヴ、妖精の尻尾最強の魔導士である
「ギルダーツ!俺と勝負しろォ!!」
「ずるい!アニキ!先にアタシがおみやげもらうんだもん!」
「いきなりソレかよ!?お前らは!?」
帰還早々に勝負を吹っ掛けるナツと土産の催促をするマナツに思うところがあるらしく、エルフマンが突っ込みを放つ。しかし、当の本人は意識ここに在らずのように立ち尽くしていた
「おかえりなさい」
「む?」
唯一の意味で常識人のミラが迎えの言葉を掛けると、ギルダーツが疑問を抱いたように首を傾げた
「お嬢さん、確かこの辺りに妖精の尻尾ってギルドがあったハズなんだが」
「ここよ、それに私ミラジェーン」
「ミラ?」
自分のいる場所がギルドだと理解していなかったらしく、更に記憶の中に存在するミラと目の前に佇む彼女が同一人物であるとも思わなかったようで、ギルダーツの表情に変化が現れた
「おお!随分変わったなァお前!!つか、ギルド新しくなったのかよー!!」
「外観じゃ気付かないんだ…」
「そんだけバカなんだよ、このオヤジは」
「頭の中味がゼリーみてーかな…相変わらず」
何を今更と言わんばかりの発言にルーシィが呆れていると、久しぶりの再会にも関わらず、カナとマキナが表情を引き攣らせる
「ん?そこに居んのは愛娘にバカ息子!久しぶりだなぁ〜!」
「「げっ………引っ付くな!!このオッサン!!離れろ!!」」
聞き覚えのある声にギルダーツの視線は娘と息子に向けられ、二人を抱き寄せる。当の本人たちは騒ぐように抱擁から逃れようとしているが力が強く、簡単には抜けられないようだ
「そう釣れねーこと言うなよ?親子だろ。カナはますます……母親にコーネリアに似てきたな」
「…………うん……まぁ……親子だから…」
優しく笑い、今は亡き愛する妻に似てきた娘の頭を優しく撫でる。そして、次に血の繋がりはないが大事なことに変わりはない小さな科学者に視線を落とす
「んで……マキナ。お前は」
「な……なんだよ…」
久しぶりの父に若干の照れが作用しているのか、何時もの笑顔を忘れ、口調も砕ける程に素が表面化したマキナは頭に触れる手の温もりに心が落ち着くのを感じていた
「あんな変な改造しやがって!!あれが俺じゃなかったら、どうすんだ!!このバカ息子!!」
「うるせえ!!だったら、無意識に魔法使うんじゃねーかな!!そのせいで莫大な改造費掛かってんだ!!あと借金返せ!!クソオヤジ!!」
「だぁぁぁぁ!!可愛くねーな!?お前は!!少しはオヤジを労えや!!」
「労って欲しいんなら賭け事すんじゃねーかな!!!どーせまたドックレースで負けたんだろ!!」
感動の再会とはならず、口喧嘩を始めるマキナとギルダーツ。その姿にカナは苦笑し、見慣れている面々も笑い出す
「ギルダーツ!!」
「おみやげ!プリンはー?買ってきたー?約束したよね!」
「おーナツにマナツか。久しぶりだなァ」
「俺と勝負しろって、言ってんだろーー!!!」
勝負を仕掛けるナツを片手で軽くいなしたギルダーツは反対側の手で自分をぽかぽかと殴るマキナを抑える。片手間にナツを瞬殺してしまう程に強い魔導士、その姿が全てを物語っていた
「ほらよ、マナツ。シロツメの街で買ってきたプリンだ」
「わーい!ありがとー!」
「ギルダーツ。何時もありがとね」
プリンを貰い受けるとマナツは花が咲いたように笑い、直ぐに口に運ぶ。すると、相棒に代わり、申し訳なさそうに眉を下げたリアンが感謝を告げる
「気にすんなって、リアン。マナツはウチのバカ息子の未来の嫁さんだからな」
「変なこと言うな!!」
「マキナのお嫁さんかーアタシ、なってもいーよ?」
普段は揶揄う側であるが故に揶揄われる側には慣れていないマキナは意中の相手との仲を揶揄われたことに顔を真っ赤にして、飛び蹴りを放つ。それを聞いていたのか、マナツは花が咲いたように笑い、自分は構わないと口にする
「マナツは嫁にやらーーーーん!!マキナ!!ギルダーツよりも先にお前だ!!」
「ぐもっ!?なにしやがるかな!!」
「ケンカなら混ぜろやゴラァ!!」
ギルダーツよりも先にマキナを倒す為にナツが喧嘩を吹っ掛けると、騒ぎに気付いたスコルも参加する
「ギルダーツ……変わらないね」
「お…ディンガ、久しぶりじゃねーか。それにマスターも」
「仕事の方は?」
「ん~…がっはっはっはっは!!」
ディンガの存在に気付き、息子の相棒である彼の頭を撫でた後、カウンターに座っていたマカロフに声を掛ける。そして、100年クエストの成果を問う問いに罰が悪そうに笑うギルダーツ。何も聞かずに答えを待ち、誰もが息を呑む
「ダメだ。俺じゃ無理だわ」
「「…………は?」」
衝撃の答えにギルド全体に衝撃が走り、
「すまねーな……名を汚しちまった」
「いや、無事に帰ってきただけでよいわ。ワシが知る限り、このクエストから帰ってきたのは主が初めてじゃ」
名を汚した、破門も覚悟していた。故に優しい言葉はギルダーツの心に響く
「ありがとよ…さてと、カナ!マキナ!ディンガ!デウスにエクス!久しぶりに飯でも食うか!親子水入らずだ」
「いーけど…トーちゃんのおごりね」
「朝まで呑むよ!残念会だ!」
「やれやれ」
「元気ですねぇ…相変わらず」
「似た者親子にも程があんだろ」
歯車は回り出す。竜在る処に竜殺し在り、世界はゆっくりと動き出していたのを今はまだ誰も知らない
(…………マキナには話さなきゃならねーな……コイツの正体と……本当の親について…)
「ん?なに、トーちゃん」
顔を見ていたことに気付いたのか、目線を上に上げたマキナが疑問符を浮かべる
「マキナ。夜にトーちゃんと話をしねーか?明日はナツとマナツに話さなきゃならねーことがあるからよ」
「うん?まぁ、いーよ。夜食はわたあめね」
「ああ……それじゃあ呑みにいくかぁ!」
「「あいあい!」」
マキナの出生の秘密、彼はなぜギルダーツの息子となったのか?今、彼の隠された過去が明らかとなる……
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