天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……実は自分が人間じゃなくて、人造人間だったことをトーちゃんに教えられたかな」

ディンガ「だけど、博士は恵まれているね。キミを大切に思ってくれている人々に囲まれている」

マキナ「ありがたいことにねー。これからもよろしくねー、ディンガ」

ディンガ「当選だろう?僕はキミの相棒だからね」


第九十四話 天才くん、薬草採取に行く

「皆!この一年、よーく頑張ってくれた!!その労を労うべく明日はいよいよ……超お楽しみの花見じゃ!!」

 

マグノリアに訪れたのは、街中に桜の花が一斉に開花する桜の季節。その花弁は夜になると美しも幻想的な虹色に変化し、夜の街を彩る

 

「花見ですかぁー!なんとも平和ですなー!」

 

「何だかんだで馴染んでるねぇ?クロドア」

 

「にょほほー!そうでございますか?いやぁ!私、花見は初めてで!楽しみで仕方がないんでございますですよー!はい!」

 

花見と聞き、盛り上がるのは最近加入したクロドア。喋る杖という珍妙さ故に最初は浮いていた彼も今では普通にギルドに馴染んでいた

 

「花見ってことは!大量に食ってもいいんだよな!?」

 

「セイランは何時も食べてるじゃないですか。それよりもグレイ様は何処に!?ジュビアを置いてくなんてぇ〜〜!」

 

「久しぶりに帰ってみりゃあ、花見に参加できるとはなぁ。たまには悪くねぇか」

 

「あっ、ギルダーツにマキナからお手紙があるわよ」

 

盛り上がるセイランと涙を流すジュビア、騒がしいギルド内を見渡すように染み染みとギルダーツが呟いていると、カウンター越しにミラが彼の息子からの手紙を手渡した

 

『拝啓トーちゃん、ネエちゃんたちと山に行きます。だから、今日の夕飯当番を代わってください』

 

「…………あんのバカ息子!!オヤジをなんだと思ってんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「開け、時計座の扉!ホロロギウム!!」

 

此処はお馴染みのハコベ山。依頼に出向いたマキナたち最強チームは極寒の大地を踏み締め、降り頻る雪の中を歩いていた

 

「『う~!あたしってば、またここに薄着で来ちゃった……!!寒すぎるぅ……!!』と申しております」

 

時計座の星霊であるホロロギウムを呼び出したルーシィは、その中で毛布に包まった状態で震えていた

 

「ルーシィは学習能力がねーかな」

 

「ルーねぇ!ズルい!アタシも寒いの我慢してるのに〜!ウーちゃんからも言ってやってよ!」

 

「えっと……寒くても…マナちゃんは元気なんだね…」

 

「ウェンディ、その答えだとマナの話に噛み合ってなくね?意味わかんねぇし」

 

「うみゅ?なんの話ー?」

 

「おいテメー!!どうにかしろよ!科学者だろーが!」

 

「自然に逆らうのはよくねぇってのを知らねーかな、バカ猿」

 

「『寒くても元気なおチビちゃんズが羨ましいわ……さ、寒い……』と申しております」

 

今日も今日とて、寒さにも負けずに元気いっぱいの年少組にホロロギウムの中から、ルーシィの突っ込みが飛ぶも、寒さ故に彼女の突っ込みには何時もの切れ味が見受けられない

 

「何よこれくらいで。だらしないわよ?」

 

「そうね、シャルルの言う通りよ。はしたないわ」

 

「シャルルとイッシュさんは寒くないんですか?」

 

その中を寒さをものともしないシャルルとイッシュが歩みを止めないのを見たウェンディが疑問を投げかける

 

「余裕よ、このくらいは」

 

「私の場合は魔法で冷気を扱うこともあるから、多少の耐性はあるのよ」

 

その疑問に素っ気ない態度ではあるが答えを返すシャルルに対し、イッシュは自分の魔法が及ぼす影響下に於ける耐性が関係していると口にする。極寒地帯は思考、体力等のあらゆるものを著しく低下させる。故に薄着は御法度なのだが、加入時期が浅いウェンディが其れを知る由もなかった

 

「『すっごく羨ましいんですけど〜〜』と申しております」

 

「わぁ!あの時計の星霊だぁー!やっぱり、何時見ても草生える〜」

 

「『ウェンディもおいでよ。外にいると風邪引いちゃうよ?あと、マナツはぺしぺししないのよ』と申しております」

 

「そうですか?じゃあお言葉に甘えて……」

 

ホロロギウムに興味津々なマナツを注意しつつ、ウェンディを中に招くルーシィ。その姉貴分の行動に腑に落ちない様子の少女は頬を膨らませ、口を尖らせる

 

「むぅ〜!なんで、ウーちゃんだけなの〜?」

 

「マナツはこっちにおいでー。毛布あるよー」

 

「わーい!マキナのそういう用意周到なとこだーいすき!」

 

不貞腐れた幼馴染を見兼ねたマキナが何時ものようにけらけらと笑いながら、彼女を自分の方に呼び寄せ、乗っていたエクスの背にある毛布を掛ける

 

「へっ……ヤダヤダ、頭でっかちと胸無しの戯れ合いなんざ見てると胸焼けしちまうぜ」

 

最早、態となのか?と言いたくなるような悪態にも似た文句を吐き捨てるスコルの視線はやはりというべきか、マキナとマナツを見ていた

 

「「あぁ?」」

 

その文句に二人は声を合わせ、彼を睨み付け、今にも殴り合いを始めそうな雰囲気が漂い始める

 

「実家に里帰り中だからって調子に乗ってんじゃねーかな、バカ猿」

 

「誰がバルカンだゴラァ!!張り倒すぞっ!もやしゴーグル!!」

 

「うるさいかな!迷彩ゴリラ!!」

 

「やめんかっ!」

 

「「ぐもっ!?」」

 

取っ組み合いの喧嘩を始めるマキナとスコルの間に入ったエルザが仲裁しようと二人の首を外側に押すと、明らかにしてはならない音が鳴り響く

 

「マキナ!?大丈夫かい!しっかりしな!寝たら死んじまうよ!」

 

「あ……なんか…川の向こうにカーちゃんが……あと…ししょーも…」

 

「博士。師匠は存命だよ?勝手に死人にするのはオススメしないね」

 

「エクス!博士が大変だ!どうしたらいいんだ!」

 

「知るかよ。まぁ、なんとかなんだろ」

 

雪の中で眠ろうとしているマキナを必死に起こそうとするカナ、その足元で相棒の見ている光景に異議を申し立てるディンガ、パニックを起こすデウスを冷たく遇らうエクス。相変わらずの賑やかさを見せるアルベローナ姉弟たちである

 

「『暖か~い!』『うぅ……は、早く帰りたい……!』と申しております」

 

「雪って不味いな」

 

ホロロギウムに避難したウェンディは暖を取れることに歓喜し、ルーシィは既に依頼よりも帰ることを視野に入れていた。その近くではエルザに再起不能にされた筈のスコルが雪を口に放り込んでいた

 

「なんでアンタはピンピンしてんのよ……バカオス」

 

「あん?なにかだ?」

 

余りにも異様な回復の速さに苦笑と同時に引き気味のシャルルが問うも、本人は何の事を言っているんだ?と言わんばかりに首を傾げる

 

「くそ………こんだけ積もってると歩き辛ぇな……」

 

「それ以前に服を着ろ」

 

「なっ!!?」

 

「はしたないわね」

 

「なんで気付かねぇし…」

 

寒さを訴えているにも関わらず、服を着ていないグレイにエルザが呆れ、イッシュも肩を竦め、手品なのか?と言いたそうな眼差しでレティも苦笑している

 

「ねぇ、リアン。そんな便利な薬草って本当にあるのかな?」

 

「う〜ん……どうかしらね。依頼書にあった以上は存在するんじゃにゃい?」

 

移動することに飽きたハッピーが自分の隣を並走ならぬ並翔していたリアンに投げかけると、彼女は少し悩んだ後に答えを返す

 

「でも、アタシの図鑑にも載ってなかったよ?あとね、マキナも知らなかった!」

 

「なにーーっ!?マキナも知らないだと!?」

 

頭脳明晰なマキナも知らないとされる薬草。お茶に煎じて飲んだり、ケーキに練りこんで食べれば、魔導士の魔力を一時的にアップさせることが出来る効能があるらしいのだが、実物を誰も知らないとなれば、その話が事実かどうかも疑わしい限りだ

 

「薬草とかの薬学は意外と奥が深いからねー、知らないこともあるのは当然かな。こーいうのを『おいしいわたあめには気を付けろ』って言うかな」

 

「違うよー!『旨い魚には毒がある』だよ」

 

「それを言うなら『うまい話には裏がある』だ」

 

「うわぁー!?エルザにツッコまれた!?」

 

「天然な人に突っ込まれるとなんか居たたまれー気持ちになるかな」

 

諺の間違いを指摘したのは、まさかのエルザ。作家志望のルーシィならまだしも、手紙を書くと相手側が乗り込んで来ると評判のエルザに指摘されたという事実にマキナとハッピーは驚きを隠せなかった

 

「おーい薬草ー!いたら返事しろー!!」

 

「するかよ、バーカ」

 

「んだとコラー!!」

 

「思ったこと口にすりゃいいってもんじゃねーだろ。しかもテメーのは意味分かんねぇのばっかだし」

 

「ギャーギャーうるせぇよ!!匂いに集中できねーだろうが!!」

 

「おめーもウルセェかな。バカ猿」

 

「んだとコラァ!!もやし!!」

 

薬草探しさえも真面に出来ない男性陣は極寒の大地での睨み合いを引き起こし、歪み合う。その姿にマナツを含めた女性陣は「懲りないなぁ」と苦笑を浮かべている

 

「やめんかっ!!」

 

「「「「あ……あい…」」」」

 

鬼の一括ならぬ女王の威圧、エルザに逆らうことは死を意味すると理解しているが故に震え上がった四人は一瞬で喧嘩を止め、借りてきた猫のように静かになる

 

「虹の桜ってマグノリアの風物詩ってヤツなんでしょ?そんなにキレイなワケ?やっぱ」

 

「うん!えっとね!夜になるとピカピカのキラキラなんだよ!あとね!花弁がおいしーの!」

 

「最後のだけはマナの主観的な問題だから、気にしにゃくていいわよ」

 

「うん、それは何となく分かるし」

 

「兎に角!今は依頼を優先しないか!全く…」

 

マナツの説明には個人的な主観が含まれている故に気にしない方がいいとレティにリアンが助言する。その先を歩くエルザは気を引き締めるように彼女たちを言い聞かせるが、唯一人だけは彼女の内心を見抜いていた

 

「エルザはそれよりもビンゴが楽しみなんじゃない?」

 

「なっ!なにを根拠に…!?」

 

それは他ならぬ親友のイッシュ。優しく笑いながらも、何かを含むかのような笑みは全てを見透かしているが故の表情であることは火を見るよりも明らかだ

 

「長い付き合いでしょ?そのくらいは分かるわ」

 

「敵わないな……お前には…」

 

親友だからこその分かり合い、流石のエルザも彼女の前では肩を竦める事しか出来ずに苦笑を浮かべてみせる。刹那、薬草の匂いを辿っていたエクスが足を止めた

 

「お?雪山に詳しそうな奴等がいやがるぜ?博士」

 

「わー、ホントかな。流石はエクスの鼻だねー………ボコボコにしてやるかな」

 

「あいよ」

 

そして、エクスが足を止めた理由に該当する生物を確認したマキナは頭のゴーグルに触れ、けらけらと笑った後、その生物基バルカンに攻撃を仕掛けるようにエクスに命を降す

 

「大槌兵!!」

 

「火竜の咆哮!!」

 

「牙狼天眼!!」

 

「ブラックネイル!!」

 

バルカン程度は最早、敵にもならない。氷の大槌が頭上から振り下ろされ、紅蓮の炎が身を焼き、暴れ回る獣の暴力の嵐を受け、最後は黒鉄の狼に斬り裂かれるという始末。その姿は正に生態系を破壊する悪魔の如しだ

 

「薬草はどこかな?スコル」

 

「博士。それはスコルではないよ」

 

「そうだよ!マキナ!スコルはこっちだよ!」

 

「マナも違うわよ、スコルはアレよ」

 

「態とやってんだろ!?オメーら!!」

 

戦闘不能になっているバルカンをスコルと間違えるマキナ、マナツ、リアンに本人からの突っ込みが飛ぶも、二人と一匹はバルカンとスコルを見比べるように視界を右から左に往復するように巡らせる

 

「「「………バルカン?」」」

 

「誰がだ!!」

 

行き着いた答えはスコルの方をバルカンと間違えるというまさかの結論。それに本人は獣の如く吠えるように突っ込みを放つ

 

「ん〜………岩陰とか崖の下にはないかな」

 

「見た目だけは分かってんだろ?マキナ」

 

「そりゃあね、依頼書に描いてあったかな」

 

陽も傾き始める中、該当しそうな場所を手当たり次第に探してみるが痕跡さえも見つけられない。見た目だけは依頼書に描かれており、別の薬草と見間違える事はないが、未だに成果は皆無に等しかった

 

「なんとかならねーのかよ?お前お得意の魔科学でよ」

 

「いやいや、魔科学もそこまでは万能ではないかな」

 

痺れを切らしたグレイが得意の魔科学に寄る解決策は無いのか?と尋ねるも、流石に都合の良い発明品を持ち合わせていないマキナも打つ手が無いと肩を竦める

 

「時間です。ではごきげんよう」

 

その時だった。唯一の安全圏であるホロロギウムの召喚可能時間も限界を迎え、その体内に避難していたルーシィとウェンディは極寒の大地に放り出される

 

「「さ……寒い…!!」」

 

「わぁー明日発売のソーサラーの見出しは雪山で魔導士が凍え死ぬに決定かな」

 

「相変わらず…エグい発想力だな…」

 

「お前たち!少しは探すのを手伝わんか!」

 

「だ、だってぇ……!!」

 

寒さ故に抱き合うルーシィとウェンディを前に安定の物騒な発言を繰り出すマキナにグレイが苦笑していると、思う所があった様子のエルザが睨みと共に喝を入れる。やはりというべきか、彼女を手玉に取れるイッシュは稀有な存在であると再確認した

 

「匂うぞ!これ絶対薬草の匂いだ!!」

 

「相変わらずスゴイ鼻だね……」

 

「くんくん…なんかおいしそーな匂いだよ!」

 

「マナ。拾い食いはダメよ?依頼のために持って帰るのよ」

 

「匂いはあっちからだ!!俺が一番乗りだ!」

 

「待ちやがれ!スコル!俺たちも行くぞ!マナツ!ハッピー!!」

 

「「あいさーーっ!」」

 

「………はぁ…ホントに…全く…」

 

いの一番に走り出したスコルの後をナツは妹と相棒を引き連れ、追随していく。薬草の匂いだという謎の確信を持つ彼等は既に姿が見えなくなっており、リアンは悩ましいと言わんばかりに額に手を当てた後に大きなため息を吐く

 

「もう見えねーかな」

 

「本能だけの奴等はこれだから困るわ」

 

「やれやれだ」

 

「はしたない子たちね」

 

「追いかける方の身にもなれし…」

 

「ったく……せっかちなヤローたちだ」

 

余りの短絡的な思考に呆れ果てるマキナたち。それでも、滅竜魔導士特有の嗅覚は信憑性が高いことは明白。故に、彼等の後を追い、雪道を進むという結論に至った

 

「嫌な予感……どうにも…このままで…終わる気がしないわね……」

 

「確かに…シャルルの勘はよく当たるけど…」

 

「今更、にゃにがあろうと驚かないわよ」

 

「それをフラグと言うんじゃないかい?リアン」

 

嫌な予感がすると漏らすシャルルに苦笑気味にウェンディが彼女の勘は当たると口にすれば、トラブルには慣れているリアンが今更なにをと言わんばかりに答えを返す。それにディンガは頭のガスマスクに触れ、フラグであると指摘を促す

 

「あったぁーーっ!!」

 

「すごーい!さっすがはアニキ!」

 

「ちくしょーー!!ナツなんかに負けたーーっ!!」

 

「え、もう見つけたの!?」

 

「鬼ヤバすぎじゃね?その鼻」

 

雪山の山頂付近から聞こえた歓喜の声。薬草らしき草を手にしたナツの隣では嬉しそうに飛び跳ねるマナツの姿があり、スコルが僅差で薬草を手に入れ損ねた悔しさ故に項垂れている

 

「ナツのアホみてーな嗅覚もたまには役に立つかな」

 

「早すぎないかい?それにしても」

 

「今更よ、そんなのは」

 

「ナツさんスゴイ!スコルくんも頑張ったよ!」

 

「獣かなんかなんじゃない?アンタ」

 

辛辣なマキナの言い分に今までの苦労を無にする早期発見を疑問視するディンガに呆れた眼差しのリアンが今更であると言及する。ウェンディはナツに賞賛を送りながらも、スコルを労うことを忘れない

 

「よーし!さっさと詰んじゃおう!」

 

「そうだな!」

 

「あいさー!」

 

マナツの号令を皮切りに薬草採取に乗り出すナツとハッピー。しかし、その頭上に光を遮るかのように大きな影が覆い被さった

 

「なぁー!?」

 

「もしかしてドラゴン!?」

 

「ラベンダリアの居場所とか知ってるかなー?」

 

「ドラゴンじゃないよー、それはブリザードワイバーンって言うハコベ山とかの寒冷地帯を縄張りにしているモンスターなんだよ」

 

突如、姿を見せたブリザードワイバーンをドラゴンと勘違いする竜兄妹に博識なマキナが空かさず、生態及び種族を説明する

 

「おや、雪のように白いから風景に溶け込まれると見失いそうだね」

 

「何でワイバーンがこんなところに!?」

 

「ブリザードワイバーンはね、草食のモンスターなんだよー。好物は薬草らしいよー」

 

「薬草………もしや、アレか?」

 

「そうなるねー」

 

ブリザードワイバーンの好物を解説しながら、何時も通りにけらけらと笑う白衣の少年。誰もが、そういう大事なことは先に言えよと突っ込みたくなったが呆れているのか、突っ込む気も起きなかった

 

「そういうことは先に言わんか!!バカモノ!!」

 

「ぐもっ!?」

 

「マキナの首が変な方向に!大丈夫かい!?マキナ!姉ちゃんが治してやるからね!」

 

事前に情報を持っていたにも関わらず、その開示が遅すぎたマキナの首に掌底が放たれ、曲がってはいけない方向に湾曲してしまった弟の首をカナは必死に戻そうと試みる

 

「しかし、これは困ったね。薬草が好物ということはだ…我々が狙う薬草も対象に該当するんじゃないかい?」

 

「なにぃーーーっ!!マナツ!さっさと持ってかえんぞ!」

 

「よしきた!」

 

「今度こそ、俺が勝つ!!」

 

「勝ち負けは関係ないよ!?スコルくん!?」

 

目的の薬草も対象に該当すると理解した瞬間、竜兄妹が我先にと薬草採取を張り切り、明らかに理解に乏しいスコルにはウェンディの突っ込みが放たれる。そして、首の治療を終えた白衣の少年は頭のゴーグルに触れていた

 

「思わぬ大金の山が目の前に転がってきたかな。ちょうど……研究費用が欲しかったんだよねー」

 

「そーいや…白いワイバーンの鱗は、高く売れるんだっけか?こいつは棚ぼたってヤツだな」

 

「大金……酒が飲み放題じゃないかい!!あのワイバーンは私がいただくよ!」

 

「ずるいよーネエちゃん、アレは僕の獲物だよー?」

 

「おーし!薬草ついでにこいつの鱗全部剥ぎ取ってやんぞ!!」

 

「たのしそー!アタシもやるー!」

 

戦闘体制に入りながらも、目の前に転がってきたネギを背負ったカモならぬ鱗を纏ったワイバーンに欲望が丸出しとなったマキナたちの瞳が妖しく光るのを見たワイバーンは危機を察知したように驚いたように体を震わせた

 

「あのワイバーンは私たちが引きつける!」

 

「ルーシィたちは薬草の採取をお願いするわね」

 

「は?棚ぼたにあやかろうとか許さねぇかんな?レティにもやらせろ」

 

「「なんか言ったか?」」

 

「ぴえ……ご……ごめんなさい……」

 

ワイバーンを引きつけることを棚ぼたにあやかろうとしていると判断したレティが文句を口にした瞬間、女王と女狐に睨まれ、その瞳には御約束の涙が浮かぶ

 

「なんか、それって一番危険じゃない!?明らかに」

 

「ルーシィ。口答えはしにゃい方がいいわよ?エルザの頼みを断ることは死にも等しいのよ」

 

「雪山で無惨に死にたくないなら、従うべきだよ」

 

「発想エグっ!?ま、まぁ……うん…そうよね……」

 

一番の危険な立ち位置に自分が居ることに気付いたルーシィにリアンとディンガが物騒な説得を行ったことにより、言いたいことはあるだろうが、ルーシィは腑に落ちないながらも薬草採取を始める

 

「わたしたちも頑張ろうね!シャルル!」

 

「まぁ、何もしないよりはマシね」

 

そして、同じように戦闘経験の浅いウェンディとシャルルも採取班に参加し、ワイバーンに相対するは最強チームの主力メンバーとも呼べる者たちが努めることになった

 

「マキナ!状況の把握次第、指示を飛ばせ!」

 

「あいあい」

 

ワイバーンと相対する中、エルザは誰よりも博識な頭脳を持つ小さな科学者に統括指示を任せる。それに応えるように決まり文句と呼べる返事を返したマキナは飛び回るワイバーンの動きを観察し、瞬間的に脳内で作戦を練り上げていく

 

「先ずはナツ!」

 

「おう!火竜の煌炎!!」

 

「不味い!ワイバーンが羽ばたく!」

 

特攻隊長のナツが火の球を撃ち出すも、ワイバーンの羽ばたきを受けた火の玉は方向を変える。それに気付いたディンガが声を挙げるも時既に遅かった

 

「な、なに!?」

 

「ちょっ!!鬼ヤバなんだけど!!」

 

「わわっ!?」

 

二次被害を受けたのは薬草採取班のルーシィとレティ、ウェンディたち。突然の被弾に驚きながらも、彼女たちは回避行動を取る

 

「にゃろう!!マキナ!さっさと指示を飛ばせ!!俺はヤロウをぶん殴る!!」

 

ウェンディが被害を受けたかもしれないと怒り故に血が上ったスコルはマキナの指示が飛ぶ前に駆け出し、その手に魔力を溜める

 

「牙狼爆閃光!!」

 

「あのバカが独断専行に走ることも予測済みかな。ネエちゃん!イッシュ!目眩し!」

 

「姉ちゃんに任せな!!」

 

「人遣いの荒い子は嫌いじゃないわよ」

 

独断専行するスコルの行動を先読みしていたマキナが指示した目眩しを任されたカナとイッシュは爆破のカードと九尾の狐火を合わせ、火の壁を生み出し、行手を遮る

 

「次はエルザ!ボクが避雷針を打ち込んだ場所に雷を!!」

 

「任された!」

 

目眩しとなる火の壁がワイバーンの行手を遮っている間に魔法で呼び出した無数の避雷針となる特殊な楔を打ち込んだマキナは雷帝の鎧に換装していたエルザに雷を放つように指示を飛ばす。楔に感電した雷はワイバーンの体を麻痺させる

 

「グレイ!氷の球体とか作れる?」

 

「任せろ!アイスメイク・ボール!!」

 

「マナツはそれに向かって思いっきり蹴りを叩き込んで!」

 

「よーし…!花竜の鉄蹴!!」

 

グレイに作らせた氷の球体をワイバーンの頭上に放り投げ、それにワイバーンの体を駆け上がったマナツが蹴りを叩き込み、頭上に叩き落とす

 

「トドメだ!!デウス!エクス!形態変化(カンビオファルマ)!!」

 

「「ワォォォォン!!」」

 

作戦の最後を飾る白衣の少年は最高傑作でもある二体に呼び掛けると創造主の声に呼応し、その形を二対の剣に変える

 

天才斬撃(ジーニアスラッシュ)…!!」

 

代名詞でもある双剣から繰り出された飛ぶ斬撃はワイバーンの意識を一瞬で刈り取り、その巨躯なる白き体を銀色の大地に落とす

 

「もやし!てめぇ!いーとこどりか!!」

 

「作戦を立てたんだから、これくらいはとーぜんかな。そんなことも分からないのー?バカ猿」

 

「んだとゴラァ!!」

 

「まぁ、何はともあれだ…。マキナ、見事な指示だったぞ」

 

「ぐもっ!?」

 

結局はマキナの指示は自分が活躍する為の布石であり、ラストアタックを決めた本人はけらけらと笑う。それを労うかのように褒めると同時に抱き寄せたエルザであったが、鎧着用中であったが故に物言わぬ屍と成り果てたのは御約束である

 

「採ったー!!見て見てー!!あたしだって、妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームの一人なんだからー!!」

 

巻き込まれていたにも関わらず、採取に専念していたルーシィは大量の薬草を収穫しており、手にした籠の中身は薬草で埋め尽くされている

 

「雪山で大きな声は出さない方がいいよー?ルーシィ」

 

「は?どういうこ………きゃーーーーっ!!」

 

薬草の採取を達成したことに歓喜するルーシィにやんわりとした口調で雪山に於ける注意を呼びかけるも、時は既に遅かった。振り替えろうとした彼女を目掛けるように轟音が響き渡り、大きな揺れが辺り一体に起こったのだ

 

「雪崩ーー!?」

 

「だから言ったのにー」

 

その正体は雪崩。雪山に於ける最強の脅威と言っても過言ではない大自然が引き起こす災害が眼前に迫る中、瞬間的に異変を察知していたルーシィ以外の面々は既に距離を取っており、反応が遅れた彼女だけが犠牲となる形で雪は辺り一体を呑み込んだ

 

「ルーねぇが消えた…!!」

 

「ルーシィさーーん!どこですかー!」

 

「ん?こっちから声が聞こえんぞ!」

 

雪の中に埋もれてしまったルーシィを探し、彼女の名を呼び続けていると、耳が誰よりも良いスコルが聞き覚えのある声を捉え、僅かに離れた場所を掘り起こす

 

「さ……さぶい……!!」

 

「マキナー!ルーねぇいたけど、さむそー」

 

「診察するねー」

 

マナツの呼び掛けに応え、今にも寒さで死にそうなルーシィに冷静な態度でマキナは聴診器を当てる

 

「どんな症状なのー?」

 

「急性上気道炎だねー。安静にしてれば治るよー」

 

「つまりは風邪だね?博士」

 

「そうなるねー」

 

「お花見は………」

 

「安静にしなきゃだから諦めてねー」

 




飲めや歌えやの大騒ぎの花見!ビンゴに意気揚々と望む面々の中に……しかし、ルーシィの姿はなかった?それはなぜなぜなぜぇ〜?

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