天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……雪山に万能薬になると言われる薬草を探しに出かけたかな」

ディンガ「しかし、ルーシィが風邪を引いてしまったね」

エルザ「なぜ、風邪を引く?」

マナツ「薄着だからじゃないかなー」

イッシュ「はしたないわね」

マキナ「逆に風邪を引かない三人が不思議(ワンダー)かな」


第九十五話 星霊魔導士は虹の桜に夢抱く

「マキナー、ルーねぇは大丈夫なのー?」

 

花見の当日。公園に広げられたシートの上には所狭しと談笑は勿論ながら、飲めや歌えやの大騒ぎ。その間も、昨日のルーシィの体調が気になったマナツは自分の隣で大量の料理を小さい口に次から次へと放り込んでいく小さな科学者に問う

 

「安静にしてれば大事には至らないよー」

 

一応は医学の知識を持ち合わせているが故に診断も可能な彼は、今日も今日とて、何時ものようにけらけらと笑いながら、答えを返す

 

「そっかー……ルーシィは風邪なのか…」

 

「あいつ楽しみにしてたのになぁ」

 

「ルーシィさん……可哀想です…」

 

「何故風邪をひく……?」

 

「エルザ……普通はそういうものよ?」

 

「エルねぇは風邪とか昔から無縁だったから仕方ねぇし」

 

「…………そうなのか?ふむ……」

 

ルーシィの体調を心配するお馴染みの面々。しかし、エルザだけは何故、風邪を引いた?と疑問を感じており、親友と妹分からの突っ込みに疑問符を浮かべていた

 

「それではこれより、お花見恒例のビンゴ大会を始めま~す!!」

 

「今年も豪華な景品が盛り沢山じゃ!皆、気合入れてかかってこーい!!」

 

「ビンゴだ!ネエちゃん!」

 

「ああ!!ビンゴは私たちがいただくよ!!不思議(ワンダー)な景品は私たちのもんだ!」

 

「あいあい」

 

「おっ?ビンゴか?楽しそうじゃねーか」

 

「おやおや、僕たちの家族は今日もお祭りごとに敏感だね」

 

「博士たちらしいですねぇ」

 

「血が繋がってねぇのにここまで似てやがんのは、コイツらくらいのもんだぜ」

 

酒に料理、其々に舌鼓を打っていたアルベローナ姉弟と父がビンゴと聞いた瞬間に、盛り上がっていく姿に相棒たちは困ったように肩を竦めた

 

「みんな、用意はいい?それじゃ、真ん中の穴を開けてくださーい!」

 

司会進行役のミラの指示に従い、最初の一歩とも呼べるビンゴシートの真ん中を開けていく面々。エルザは楽しみにしていたビンゴが始まるのを今か今かと待ち侘びており、親友の姿を横目ではあるがイッシュは微笑ましそうに見守る

 

「24番!」

 

「おっ!いきなり来たぜ!!」

 

「スコルくんすごい!わたしはなかなかだよ…」

 

「たかだか一回だけでしょ?すごくなんかないわ」

 

「あん?なんだと?テメー」

 

開始早々にビンゴが開いたスコルを褒め称えるウェンディとは裏腹に、シャルルは今日も素っ気ない態度を見せる。それに反応したスコルも何時も通りに彼女を睨んでいた

 

「続いて5番!」

 

「ぅおーーっ!開いたァーー!!漢だーーー!!」

 

「わーい!アタシも開いた!咲き誇ってるぅ〜!!」

 

「よかったわね、マナ」

 

「うぬぬ……ぐぬぬ……全然開かねーかな……このビンゴシートは不良品かな」

 

「博士、ビンゴは当たるも八卦当たらぬも八卦だよ。占いのように当たらないこともあるんだ」

 

エルフマンが雄叫びを挙げる隣で兎のように上下に跳ねるマナツの喜びを理解したリアンは優しく彼女に笑いかけた。その足元でビンゴシートと睨めっこをしているマキナは全く開かない現状を難色を示し、呆れた様子のディンガに最もな意見を放たれていた

 

「えっ?ネエちゃんの占いは百発百中だよ?」

 

「それはカナだからだよ」

 

あくまでも判断基準は姉であることだけは何があろうと揺らがないマキナに、ディンガは更に呆れた様子で肩を竦めた。長い付き合い故に彼の性格、思考、趣味といった要素は誰よりも把握しているが、最近は姉に対するシスコン度合いが着実に上がってきているのは火を見るよりも明らかだ

 

「68番!!」

 

そして、更に進みゆくビンゴ。未だに開く気配の無いシートを前にマキナは諦めたのか、隣に積み重ねていた皿の増量に既に気分を向けていた

 

「ビンゴだーーー!!!」

 

高らかな叫び。それは誰よりもビンゴを楽しみにしていたエルザの声。未だにリーチさえも見えないマキナは既に興味を無くしたらしく、皿を積み上げるという得意の作業に精を出していた

 

「マジか!?」

 

「ノリノリだな……」

 

「リーチが三つも!」

 

「はしたなくはないわね。ああいうエルザは好きよ」

 

「イッシュねぇの基準がよくわかんねぇんだけど……なに基準なワケ?マジで」

 

盛り上がる仲間たちを前にイッシュは知らない親友の姿に優しく微笑み、レティは姉の感性の基準値が分からないらしく、疑問符を浮かべる

 

「初ビンゴはエルザね!」

 

「運も修練の賜物だ!で……け、景品はなんだ……!?」

 

一番最初ということもあり、高揚した気分を隠せないエルザ。期待が膨らんでいるのか、景品に対する希望は高まるばかりだ

 

「は~い、これ!一時的に魔力をアップさせると噂の、薬草で~す!」

 

しかし、現実とは稀有なモノであると同時に残酷だった。エルザが思い描いていたであろう景品とは月とスッポンの差がある代物。その手にされた物体は見覚えのある薬草、自分たちが採取した薬草が其処にはあった

 

「な………なにーーっ!?」

 

更に寒冷地から急に暖かい場所に移動させられたが故に薬草は枯れ果て、効力もあるかどうかも疑わしい。期待していたが故にエルザの落ち込みは相当なものであり、肩から崩れ落ちる

 

「私の……ビンゴが……!!」

 

「あらあら……」

 

「エルザが不憫ね」

 

「エルねぇのあんな姿見たことねーし」

 

絶望感に打ちひしがれるエルザを前にイッシュは肩を振るわせ、レティは苦笑を浮かべる。掛ける言葉が見つからないとは正にこのことだ

 

「なんでだっ!?アレから全然開かねー!!どーなってやがる!?」

 

ビンゴも中盤に差し掛かる中、最初に一度だけ開いただけのスコルは苛立ちが募り、自然と愚痴をこぼしていた

 

「うるさいわよ?バカオス。このくらいは勘の範囲内よ」

 

「シャルルの勘は当たるんだよ、スコルくん」

 

睨むようにシャルルが諭せば、苦笑しながらもウェンディはスコルに勘が当たることを教える

 

「ビンゴーー!!」

 

「ネエちゃんはビンゴの達人だねー」

 

弟とは違って、ビンゴ勝ち抜けとなったカナ。マキナは姉に賞賛の拍手を送り、横目で隣に座る父を見る

 

「一つも開かねぇ!!壊れてるのか!?このビンゴシートは!」

 

「それはトーちゃんの頭かな」

 

「あんだと!?バカ息子!!」

 

ビンゴシートに眼を飛ばすギルダーツの叫びを聞いていたマキナはさらりと罵倒を放ち、それを耳にした父の苛立ちは息子に向く。しかし、それはあくまでも親子の戯れ合いであるが故に誰も気には止めようとはしない

 

「ふむ……僕はトリプルリーチではあるんだけど、なかなかどうして上手くはいかないね」

 

「あたしはリーチにすら、なってないわ」

 

「むむ〜!あと一つ……あと一つ…」

 

「当たるといいねぇ?マナ」

 

「甘納豆うめ〜!」

 

ビンゴシート片手に魔導士が真剣な眼差しを向けるのは、側から見ると異様にも映るがマグノリアは毎年恒例であるが故に何時も通りに行き交う人々は「相変わらずだなぁ」と受け流す程度である

 

「115番!」

 

「「「ビンゴーー!!………えっ?」」」

 

次にビンゴを宣言したのは、エルフマンとレビィ、ジュビアの三人。景品は残り一つ、既に諦めたマキナの手にはビンゴシートは無く、更にギルダーツも酒を流し込んでいた

 

「三人同時か?じゃあ一発芸で一番面白い奴に景品をやろうかの」

 

「「「一発芸…!?」」」

 

まさかまさかの提案に三人は驚きのあまり、目を見開く。その様子に手を止めた白衣の少年が徐に立ち上がる

 

「一発芸かー、審査員やるよー?ボク」

 

「おお、頼めるか?マキナ」

 

「いいよー」

 

名乗り出たマキナをマカロフが快く受け入れると、彼はけらけらと笑い、一発芸を行う三人の前に佇む。その眼差しは審査員の眼に切り替わっており、何時もよりも真剣だ

 

「一発芸……!それは、一度きりギリギリの戦い……つまり、俺の出番って事さ、相棒……」

 

「アーイエ!!俺たちだろ?」

 

「部外者は立ち入り禁止かな」

 

「博士。彼等を摘み出そうか?」

 

「お願いするよー」

 

何を勘違いしたのか、ビンゴになってもいないガジルとセイランが何時ぞやのライブ衣装を着込み、一発芸を始めようとするが直ぐに審査員のマキナに指示を仰いだアシスタントのディンガが二人をつまみ出すために動いた

 

「うみゅ〜………ルーねぇも来れたらよかったのになぁ〜」

 

「……………なぁ、マキナ。ちょっと頼まれてくれねぇか?」

 

「なにー?」

 

姉貴分にも花見を見せたかったと呟くマナツの意図を汲み取ったナツは、一発芸の審査員を進行中のマキナに頼み事をしようと話しかける。其れに疑問符を浮かべながらも、何かを感じ取った彼はきょとんとしながらも、聴く姿勢を示す

 

「実はさ」

 

「ふむふむ……いいねー、そういう不思議(ワンダー)なのは嫌いじゃないよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜………見に行きたかったな……」

 

風邪を引き、花見に参加出来なかったルーシィは自室で布団に潜り、楽しみにしていた虹の桜を見れなかったことを後悔していた。任務に於ける弊害の結果であるのは致し方ないが、楽しみにしていただけに虹の桜を見れないことは彼女にとっては思い出を作り損ねたという想いが心中に渦巻いていた

 

「おい!なんだ!?アレ!」

 

刹那、夜の街を行き交う人々が口々に叫ぶような声を耳が捉えた。何事だろうか?と疑問を抱きながらも、恐る恐る窓を開け、夜の街に視線を向けた

 

「…………ウソ………きれい………アレが……マグノリアの……虹の桜…」

 

街の運河をゆっくりと進む小舟、その上には夢にまで見た虹色の花弁を舞い踊らせ、月明かりに照らされた花弁を虹色に輝かせた幻想的な桜の木。夢か現かは分からない、それでも確かにルーシィは見たのだ、夢に見た虹の桜を目撃したのだ

 

「ふぅ………町長に怒られるよ?これ」

 

「いーじゃねぇか、ルーシィも喜んでんだしよ」

 

「あい!そうだよ、細かいことは気にしちゃダメだよ」

 

「えへへー!ルーねぇに見せてあげられたね!」

 

「怒られるわね、これ」

 

「確実にね」

 

その様子を物陰から見守っていた三人と三匹は後日、マカロフ並びに町長からのお叱りを受けることになるのだが、ルーシィには感謝されたのは別の話だ




雨のマグノリア、悲しみを越えようとあの日を想起する妖精たち……しかし、それは新たなる世界への始まりだった


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