天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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今回は魔風壁の話になりまーす


第十七話 天才くん、考えるのをやめる

「あ、お、おい!!誰か出てきてるぞ!!」

 

「君は…さっき強引に中へ入った人だね?中はどうなっているんだい?状況は!?」

 

駅の外を埋め尽くす程の野次馬。中から出てきたのは白衣を靡かせた小柄な少年、駅員からの問いに対し、頭のゴーグルに触れた彼は意味深に笑う

 

物質魔法(アポートマジック)……発明No.049…拡声念話(メガホン)っと……すぅー……命を失いたくない人は早急にこの場からの退去をおすすめするよー!駅の中には邪悪な魔導士が蔓延り、占拠しているかなー!八つ裂きにされて、骨も残らない屍になりたくない人は尻尾を巻いて逃げる方が賢い選択だよー!」

 

物質移動(アポーツ)で呼び出した拡声機型の発明品片手に恐怖を煽る呼び掛けに、野次馬は混乱し、我先にと言わんばかりには一目散に散り散りに逃げ惑う

 

「き、君!!?何故そんなにパニックになるようなことを…!!」

 

「嘘も偽りのない本音を叫んだだけだよー。それに、ボクって人に死なれると食欲が湧かないんだよねー。勿論だけど対策はするよ?でもね、万が一の可能性も捨て切れないかな。という訳だから、おじさんたちも避難した方がいいよー……死にたくないでしょ?」

 

駅員の呼び掛けに対し、けらけらと笑いながらも理に適った状況説明をする彼は最後に翡翠色の瞳を、ギラリと光らせ、脅しにも似た発言で駅員たちまでも退避させた

 

「博士。駅周辺に高圧力の魔力を検知……何が来ます!」

 

「この匂い…風だぜ」

 

「ふむ……さっきの裸刺青おじさんの仕業かな」

 

駅周辺に異変を察知したデウスとエクスの呼び掛けに対し、マキナが思案していると周辺から巨大な音が響き渡る

 

「これは!竜巻!?博士!竜巻です!」

 

「見りゃあわかんだろうがよ。んで?どうするよ」

 

「魔風壁………風の壁。超振動の刃で高周波の音を当てても直ぐに力が分散する……氷みたいに冷やしたとしても水分だけじゃ意味が……水と音……二つを合わせれば……いやでも部品が足りない……くそ〜!悔しい!悔しいかな!」

 

「なるほどなぁ?少しは頭の良いヤツがいるじゃねぇかよ。妖精(ハエ)にも」

 

風の壁基魔風壁を突破しようにも頭に浮かんだ発明品を生み出すには部品が足りないと地団駄を踏むマキナ。刹那、背後から嘲笑う様な声が聞こえ、振り返る

 

「っ!お前は……確か……裸刺青おじさん!!」

 

「ステキネーミングをありがとよ。だがな、俺はエリゴールだ。中の役立たず共を片付けたのもお前か?まあ、なんにせよだ……中で遊んでろ!」

 

「ぐっ……!?」

 

「「博士!!」」

 

エリゴールが放った突風に煽られ、庇う様に飛び出したデウスとエクス諸共マキナは竜巻の壁の中へと押し戻される

 

「ぐぬぬ……中に戻された!ああもう!考えれば考えるほどに考えが纏まらない……どうすれば……デウスとエクスの他の形態(・・・・)で吹き飛ばすのも被害が出るし…うーむ…悩ましいかな…」

 

魔風壁の中に押し戻されたマキナは次なる手を考えようと思案するが、状況が状況故に考えが纏まらないと無造作に頭を掻き乱す

 

「マーキナ♪」

 

「マナツ…」

 

頭を悩ませていたマキナの背後から、マナツが飛び掛かり、呼び掛ける

 

「焦らずに冷静にだよ?ゆっくりと頭の中でイメージすれば、きっとマキナは突破口を見つけられる……だって、天才でしょ?」

 

花が咲いた様に笑う彼女の言葉で、頭の中に巡っていた思考の嵐が鮮明になっていく。天才、その言葉は何時も自分が自分である事を証明し、奮い立たせる為に口にする自己暗示。故に彼は頭のゴーグルに触れ、何かを思いついた様に笑う

 

「ハッピー。さっきのルーシィに言わないといけないことだけど、星霊が関係してたりとかしない?」

 

マキナの意味深な問い、其れにハッピーは数回に渡り首を傾げた後に何かを思い出した様に手を叩く

 

「ルーシィ………星霊………あーーーっ!思い出した!バルゴの鍵!コレだ!」

 

「それってまさかバルゴの鍵!?なんでハッピーが持ってるのよ!勝手に持って来ちゃ駄目じゃない!」

 

愛用の風呂敷から取り出した金色の鍵、其れは先日の依頼で激闘を繰り広げたバルゴの鍵であった。まさかの代物にルーシィがハッピーを叱り付ける

 

「勝手にじゃないよ、バルゴ本人が逮捕されたエバルーとの契約が解除されたから今度はルーシィと契約したいって家を訪ねてきたんだ」

 

「あれが来たのね……」

 

「バルゴって誰だっけ?」

 

「あのゴリラみたいなメイドよ」

 

「あぁーっ!あのメイドゴリラか!」

 

「メイドなのかい?それともゴリラ?」

 

「両方かな」

 

バルゴの鍵を手に入れた経緯を説明するハッピーにルーシィは頭の中で彼女を想像し、引き気味の表情を見せる。一方でマナツは完全に忘れているらしく、リアンに教えられた事で思い出したのか納得していた

 

「嬉しい申し出だけど今は脱出法方を考えないと」

 

「でも……」

 

「うるさい!!猫は黙ってニャーニャー鳴いてなさい!!」

 

「ルーシィがつねった……」

 

「可哀想なハッピー……お姉ちゃんが慰めてあげるわ」

 

嬉しい申し出と言いながらも最終的にハッピーの頬を抓るルーシィ。落ち込み涙目になる弟分の頭をリアンは優しく撫でながら慰める

 

「でもでもマキナはどうして、バルゴの鍵の事をハッピーに聞いたの?」

 

「うーん?まあ、正面突破が駄目なら下からの脱出なら安全かなと思ったんだよねー。ルーシィがハッピーをいじめたから水の泡だけどー」

 

「その手があった!!すごいわ!やるじゃない!ハッピー♪もぉ!どうしてもっと早く言わないのよぉ〜」

 

「ルーシィがつねったから」

 

マナツの問いに対し、マキナが出した結論を聞いたルーシィはハッピーを褒めながら、彼から鍵を受け取る。然し、当の本人は抓られた事を未だに根に持っていた

 

「我……星霊界との道を繋ぐ者。汝……その呼びかけに応え門をくぐれ! 開け!!!処女宮の扉!!バルゴ!!」

 

名を呼び、星霊出現の口上を紡ぐルーシィ。その呼び掛けに応じ、現れたピンク色の髪の美少女に誰もが目を見開く

 

「お呼びでしょうか?御主人様」

 

「え………誰?」

 

「前に見たメイドだと思うかな…でもちょっと違う気もする……」

 

「というか別人では?博士」

 

「驚くことか?あんまり変わってねぇだろ」

 

「だよなー。痩せたくらいか」

 

「というかダイエット成功って感じで草生えるんだけど〜」

 

受け入れ難い現象を前にルーシィとマキナ、デウスは疑問を抱くがエクスとナツ、マナツは普通に目の前の彼女がバルゴであると受け入れていた

 

「あの時はご迷惑おかけしました。私は御主人様の忠実なる星霊。御主人様の望む姿にて仕事をさせていただいております」

 

「前の方が強そうだよ?」

 

「マナツはちょっと黙ってて。兎に角!時間がないの!契約は後回しでいい!?」

 

「かしこまりました。御主人様」

 

「待って!御主人様はやめてよ!」

 

呼び方に威を唱えるルーシィに対し、バルゴは彼女の腰にある鞭に視線を向ける

 

「では「女王様」と」

 

「却下!!」

 

「それでは「姫」と」

 

「そんなトコかしらね」

 

「ルーシィは過大評価の傾向があるかな」

 

「ああいう大人にはなりたくないよねー」

 

「お黙り!おチビちゃんたち!」

 

自らを過大評価するルーシィに呆れた眼差しを向ける幼い二人。彼等を叱り付けながらも、バルゴに穴を掘らせ、外側との入り口を開通させる

 

「外ー……って!ぎゃぁぁぁ!風がすごいー!吹き飛ばされるー!!」

 

「まあ…煙たい」

 

「外から竜巻を見れるなんてのは貴重な体験かな。研究材料としては興味深い…」

 

「ぶほぉ!口に砂入った!マズっ!」

 

「姫!!下着が見えそうです!」

 

「自分の隠せば?」

 

外に出た瞬間の反応は様々だ。風圧で飛ばされそうになるマナツの近くでは砂煙を煙たがるリアン、冷静に目の前の現象を研究材料と見るマキナ、口に入った砂を吐き出すスコル、主人の捲れ上がるスカートを抑えるバルゴのスカートが捲れ上がっていた

 

「それで?マキナ。敵の狙いは分かったのかい?アンタの事だから見当は付いて………って!マキナ!何処に行ったんだい!マキナ!ああ!どうしよう!マキナが家出を!いや?外だから外出?って!どっちでもいいわ!」

 

弟に敵の狙いを問い掛け様とした瞬間、何処にも姿が見当たらない事に気付いたカナは慌てふためく

 

「カナさんってマキナの事になると面白い顔するのね…」

 

「弟離れが出来てねぇだけだ。というか……コイツはどうすんだよ」

 

「あん?知らねぇよ。それよりもよ、よく見りゃナツとマナツもいねぇぞ」

 

憧れの魔導士の百面相に苦笑するルーシィに、グレイが呆れた様に結論を告げながらナツが連れてきた解呪魔導士の男基カゲヤマの処遇を問い掛けるが、周辺を見渡していたスコルは軽くあしらい、ナツとマナツの姿も見当たらない事を告げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くくく、これで正規ギルドの野郎どもへの復讐を邪魔する奴はいねぇ」

 

「「ちょっと待ったァァ!!」」

 

「っ!?誰だ!」

 

鉄道の線路を飛んでいたエリゴールが呪笛(ララバイ)片手に不敵に笑っていると背後から声が聞こえ、突然の自分以外の者の登場に慌てて、振り返った

 

「誰だと聞かれて名乗るも烏滸がましいけど、答えてあげちゃうかな。天が呼ぶ!地が呼ぶ!誰が呼んだか!最強にして最高!巷で大評判の天才児!マキナだよー」

 

「いついかなる時も挨拶を忘れずに!挨拶はいつだって元気よく!おはようございますからのいってきます!今日も元気にこんにちは!魔法の都で人気急上昇の美少女ちゃん!マナツだぜ!」

 

「「我等!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」」

 

効果音が鳴り響きそうなくらいに決め台詞を放つマキナとマナツ。まさかの伏兵の登場にエリゴールは二人を睨み付けるが、その近くに佇むナツの姿に気付き、更に表情を歪ませる

 

「調子に乗るなよ……ハエどもがっ!!」

 

「それは俺たちの台詞だ。行くぞ!マナツ!」

 

「あいあい!合点だぜぃ!アニキ!」

 

「ボクも居るのを忘れないでもらいたいかな。デウス!エクス!形態変化(カンビオファルマ)!!」

 

「「ワォォォォン!!」」

 

死神の前に立つは二匹の竜と双剣を手に構える白衣の少年。その姿に力尽きたハッピーとリアンは笑う

 

「やっちゃえ〜……ナツ〜」

 

「マナとマキが組めば最強よ〜……」




エリゴールと戦うは竜兄妹と天才!果たして死神を前に彼等は如何に立ち回る……!?

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