天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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今回はマキナの隠されたもう一つの魔法が判明しちゃったりするかな


第十八話 天才くん、秘めたる力を解放する

「来いよ。物騒な笛ごと燃やしてやる」

 

「蹴り壊してあげるんだから!」

 

拳を構えるナツ、脚を構えるマナツ。その瞳は真っ直ぐとエリゴールを見据える

 

(魔風壁は…カゲヤマ共はどうしたんだ…あと少しでジジイ共のいる場所に着くというのに…本当に邪魔なハエ共だぜ!)

 

「「……くっ!?」」

 

襲いくる突風は風の刃となり、ナツとマナツの体を切り刻む。体制を整えようにも不安定な足場の橋では上手く立ち回ろうにも動きが制限され、気付いた時には橋からの落下を始めていた

 

「イヤァァァァ!落ちるぅぅぅ!!」

 

「マナツ!くそっ!ハッピーとリアンは気絶してるし…………そうか!こうすりゃいいんだ!マナツ!」

 

「ほへ………ふぅ……た、助かった……」

 

妹を助ける為に何かを思いついたナツは火の性質を変化させ、橋の縁を掴み、マナツと共に復帰したのだ

 

「火の質を変えるか……最初は意味分かんなかったけど、やってみるモンだなぁ」

 

「アニキ!すごーい!何々?今のー!てか!マキナも戦いなよ!」

 

「ん……ああ、ごめんねー。考え事してたかな。でも、お陰様で考え事は纏ったよ。アンタ等の狙いは定例会が行われているクローバーの町……対象にしているのはマスターたちだよね?」

 

白衣の少年は目の前の騒動を気に求めずに思考を巡らせていたが幼馴染の声で我に返ると脳内で纏めた情報から判明した目的を口にする

 

「だったらなんだ?俺が何をしようとお前たちには関係ねぇだろ……ここでくたばるんだからなぁ!!暴風波(ストームブリンガー)!!!」

 

目的が知られてもエリゴールは表情を変えずに、巨大な竜巻を発生させると三人に打つける

 

「…………疲れるけど、出し惜しみをしてる場合じゃないよね……制限解除(リミットパージ)………〝X(見えないもの)〟を喰らわせてあげるよ」

 

「な……なに…!?なにをしやがった!?」

 

衝撃の光景にエリゴールは自身の目を疑う。竜巻は二つに割れ、その中心には白衣を靡かせた少年が佇む。一瞬の現象に何が起きたかを理解出来ずに呆気に取られる

 

「あー……何時もは科学って断言するんだけど……これはちょっと違うんだよねぇ…」

 

何時もならば、科学と断言する筈が煮え切らない態度を見せるマキナ。同じギルドの魔導士でも知る者は少ない、魔科学とは異なるもう一つの魔法。魔力の大半を消費する弱点があるが故に普段は抑制しているが、流石に強敵を前に出し惜しみをする訳にはいかないと力を解放したのだ

 

「マキナ!その技!久しぶりに解禁か!お前の滅竜魔法(・・・・)!!」

 

興奮気味にナツの放った魔法の名は滅竜魔法。今の竜巻を二つに割った力こそがマキナのもう一つの魔法、斬撃の滅竜魔法なのである

 

「風と火は相性的に最悪だからねー。それにマナツの花も風には弱い……必然的にボクの力が必要になるかな。〝X(見えないもの)〟……つまりは斬撃がね」

 

X(見えないもの)〟。其れはマキナが放つ斬撃、全てを斬り裂き、万物を悉く斬り刻む竜の力。だがマキナの力はナツとマナツの様にドラゴンから教授された訳ではない。体内に埋め込んだ魔水晶(ラクリマ)から得た擬似的な力である故に多用は厳禁、言わば諸刃の剣と呼ぶべき力なのである

 

「やっぱりすごーい!流石はマキナだね!じゃあ久しぶりにアレやろうよー!アレー!」

 

「おおー!良いなぁ!やるか!なっ!マキナ!」

 

「はぁ……この魔法って疲れるから多用はしたくないんだけどなぁ…」

 

盛り上がる兄妹を他所にマキナは反動の大きい力の使用に躊躇いを見せるが出し惜しみはしないと決めたが故に二人の隣に並び立つ

 

「火竜の」

 

「花竜の」

 

「斬撃竜の」

 

「「「咆哮ォォォ!!!」」」

 

火の息吹、花の息吹、更に斬撃の息吹が三位一体となり、エリゴールに迫るが素早い身のこなしで躱す

 

「くそっ…ふらふら飛びやがって!」

 

「ずっこいよ!降りてこい!」

 

「はぁはぁ……やっぱり…キツい……どうすれば……」

 

抗議するナツとマナツの背後で、魔法の反動に息を荒くしながらもマキナは思考を巡らせる。相手は風、自分は斬撃、相性的にはナツやマナツよりも立ち回れるが反動の大きい力は多用が効かず、制限時間が存在している

 

「少しはやるみてぇだな。ここからは全力でいこう…お互いにな」

 

不敵に笑うエリゴールの言葉に、マキナの思考は考えるのを止めた。強敵を前に高鳴る闘争心、忘れていた魔導士としての昂りに自然と笑みが浮かぶ

 

「「「燃えてきた」」」

 

三人同時に湧き立つ闘争心を奮い立たせる決め台詞を放つ。強敵を前に昂っていたのはマキナだけではなかったのだ

 

暴風衣(ストームメイル)

 

刹那、エリゴールが動きを見せた。全身を風で纏い、鎧の様に死神の体を守り始める

 

「なんだぁ!?」

 

「風の……鎧!?」

 

「少し厄介かな……ナツ、マナツ!警戒し----って!既に走り出してる!?」

 

警戒を促すマキナであったが隣に並び立っていた筈の二人は既にエリゴール目掛け走り出しており、話を聞くつもりは微塵もなかった

 

「火竜の鉄拳!」

 

「花竜の鉄蹴(てっしゅう)!!」

 

エリゴールに拳と踵落としを叩き込もうとするナツとマナツ。然し、ナツの拳に纏われていた炎は掻き消され、マナツの脚に纏われていた花弁も切り刻まれた

 

「あれ?」

 

「な、なんで!?」

 

「やはりな……あの白衣のガキは理解出来んがお前たちの力の源は炎と花弁なんだろ?だったら、最初からこうすりゃ良かったんだ。暴風衣(ストームメイル)は常に外に向かって風が流れている。分かるか?炎は向かい風に、花弁は風そのものに逆らえねぇのさ。つまりだ!お前等じゃ勝てねぇ!!」

 

相対する敵との相性が不利な状況は今迄の経験から言えば、幾度もあるが大抵の場合は何方か一方に対するケースが多く、今回の様に二人揃っての状況は流石に予想していなかった兄妹は驚きを隠せない

 

「どうしよう!アニキ!」

 

「やるっきゃねぇ!!でもどうすりゃいいんだ!風が凄すぎて近付けねぇ!」

 

「……………ナツとマナツは彼奴に出来るだけの風の斬撃を飛ばさせてくれる?ボクがなんとかする」

 

二人の目の前に棚引く白衣、その頭に乗せたゴーグルに触れる彼の顔には悪戯を思い付いた笑みが浮かんでいた。何をするつもりかは理解していないが長い付き合い故に、これだけは知っていた。彼が指示を飛ばす時は攻略法(クリアルート)を見つけた時であると知っている

 

「任せたぞ」

 

「咲かしてやりなよ」

 

「言われなくても……天才に不可能はないかな!」

 

地を蹴り走り出す三人。指示通りにナツ、マナツの二人はエリゴールが放つ風の斬撃を只管に飛ばさせる。切り刻む力の強い風は橋を破壊し、ナツの体、マナツの体に無数の切り傷を負わせていく

 

「喰らえ!全てを切り刻む風翔魔法!翠緑迅(エメラ・バラム)!!」

 

翠緑迅(エメラ・バラム)!?そんなのを喰らったら!!」

 

「ハッピー。大丈夫よ、準備は出来たみたい」

 

エリゴールの放とうした魔法の名を聞き、飛び起きたハッピーが驚くがリアンは冷静に状況を見極め、ある一点に視線を向けると意味深に笑った。そして、翠緑迅(エメラ・バラム)が放たれた先に佇む白衣の少年の姿にハッピーも気付いた

 

「………もぐもぐ……ふぅん?風の斬撃も悪くないなぁ。あーでも…エルザの斬撃には劣るかも……」

 

翠緑迅(エメラ・バラム)は跡形もなく消え、残っていたのは口に何かを含みながらも意味深に笑うマキナの姿。何が起きたのかを理解出来ないエリゴールは呆然としていたが直ぐに我に返る

 

「なっ……なんだ……何をした!!」

 

「何がって……食べた(・・・)

 

「は……はぁ!?」

 

衝撃発言に本日何度目になるかも分からない素っ頓狂な声を挙げるエリゴール。当の本人は未だに口を動かし、食べる動作を止めようとしない

 

「ふぅ……ごちそうさま…食べたら力が湧いてきた!天才斬撃(ジーニアスラッシュ)!!」

 

「ぐっ………!?」

 

放たれた斬撃は暴風衣(ストームメイル)を斬り裂き、エリゴールの体を斬り刻む。地に落ちる死神を前に、天才と呼ばれる少年は白衣を靡かせ、彼を見下ろす

 

「悔しいでしょ。お前がハエと呼んだギルドに負けるのは……でもね、お前たちは触れてはならないモノに触れた、妖精の尻尾(ボクたち)の逆鱗に。ナツ、マナツ、終わらせるよ」

 

「おう!」

 

「派手に咲かすよ!」

 

その言葉と共にマキナは走り出し、ナツとマナツは大きく息を吸い込み、口から火の息吹と花の息吹を放つ

 

「な、なんだ!この魔法は!!なんなんだ!!お前等は!!」

 

竜巻を投げながらも叫ぶエリゴール。然し、彼の疑問に答えが返って来ることはない。その代わりに炎と花弁を纏う斬撃が迫っていた。三位一体の技、合体魔法(ユニゾンレイド)と化した斬撃はエリゴールの眼前に飛来する

 

「「「火花斬竜撃(かかざんりゅうげき)!!!」」」

 

(まさか……実在したのか……あの太古の魔法を操る魔導士が……滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が……!!)

 

斬り裂かれながら、エリゴールは気付いた。目の前に実在する滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の恐ろしさに、自分が喧嘩を売ったのが竜であると気付いたが気を失い、その手から笛が転げ落ちる

 

「あ……ヤバい……魔力切れた…最悪かも…」

 

「マキナ!死なないでェェェェ!!」

 

「相変わらずだね。マキナの燃費の悪さは」

 

「仕方ないわよ。純粋な滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)とは違うんだから……でもまぁ、マキにしては頑張った方じゃない?」

 

「博士も逞しくなりましたね」

 

「というかよ、この力があんなら発明いらなくね?」

 

「おいおい、ナツ。言ってくれるじゃねぇか……ウチの博士はお前みてぇなヤツとは違って繊細なんだ」

 

魔力切れで倒れ込むマキナを必死に揺するマナツ。周囲からの言われようは散々であるが今は休んでばかりもいられないとばかりに彼は立ち上がる

 

「発明品だけが力じゃないのは当たり前だよ……なんたって、ボクは天才だからね」




クローバーの街に襲うは呪いの歌にして悪魔。誰が呼んだかゼレフ書の悪魔が遂に姿を現す

次回はいよいよ鉄の森編クライマックス!マキナの賑やかさに元気をもらえたら、お気に入り登録お願いしまーす。コラボとかも気軽にメッセージ飛ばしてくれたら、反応しまーす
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