天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……仲間たちをやられ、遂に堪忍袋の尾が切れたボクはファントムに殴り込みをかけることに……じっちゃんもまさかの賛同で、士気を高めたかな」

ディンガ「今回は新しいキャラが二人も出るみたいだね、実に興味深い」


第三十二話 天才くん、カチコミを掛ける

「だっはー!!最高だぜっ!!」

 

「妖精のケツはボロボロだってよっ!!!」

 

フィオーレ王国の北東、オークの街。其処に妖精の尻尾を敵対視するギルド《幽鬼の支配者(ファントムロード)》の本拠地は構えられていた。繰り広げられる話題は言わずもがなではあるが、昨日に決行された妖精の尻尾襲撃についての話題である

 

「ガジルの奴なんかよぉ〜、三人もやったらしいぜ」

 

「ヒュー」

 

「そーいや、マスターが〝奴〟には手を出すなとか言ってたけど、なんか知ってるか?」

 

「さぁ?オメェはどうだ?まーた飯食ってんのかよ?好きだなぁ」

 

酒盛りをしていた男たちは、カウンターで大量の皿を次から次へと空にしていく一人の少年に問いを投げかけた。すると、彼は手を止め、背後を振り返る

 

「…………………ぐぉ〜」

 

「「「食いながら寝るんじゃねぇよ!!!」」」

 

暫しの沈黙の後に大きな寝息を立てる少年に、突っ込みが放たれる。その声で鼻提灯が割れ、少年の紫色の瞳が開く

 

「………んあ?いけねぇ………もう少しで寝ちまうトコだった」

 

「「「寝てただろっ!!」」」

 

「えっ?誰が?」

 

「「「オメェだよっ!!!」」」

 

寝息を立てていたにも関わらず、無自覚の少年に何度も突っ込みが放たれる。しかし、当の本人は右から左に受け流し、食事を再開するという身勝手の極みを極めていた

 

「イカれてるぜ………おい、セイラン(・・・・)火竜(サラマンダー)には手を出すんじゃぇぞ?アイツだけは俺のエモノだ」

 

口を動かしながら、暴食を貪る少年基セイランに呼び掛けたのは、顔中にピアスを埋め込んだ青年、ガジル。誰あろう、シャドウギアの三人を襲った張本人である

 

火竜(サラマンダー)………なんだそりゃ?食えんのか?」

 

「食い物じゃねぇよっ!!!……ったく、コイツだけは扱いずれぇぜ……んで?オメェに至っては何をやってんだ」

 

素っ頓狂な答えを返すセイランに突っ込みを放った後、ガジルは自分の右隣に座る少女に興味を移す

 

「あん?見てわかんねぇのか?スットコドッコイ。まつ毛を抜いてんだよ、一本だけ気になって仕方ねぇ」

 

「オメェの醜女面なんて誰も見て-----ぐもっ!?」

 

口を開いた瞬間、少女らしかぬ言葉遣いを放つ彼女をセイランが罵倒した瞬間、頭上に巨大なスイカが落下。真面に喰らったセイランは床に減り込み、物言わぬ屍と成り果てる

 

「テメェ………女だからって、容赦しねぇぞ!!アマノ(・・・)!!」

 

「はんっ!ガキが粋がってんじゃないよっ!アタイが引導を渡してやろうじゃないっ!」

 

起き上がったセイランは、銀髪ショートヘア少女基アマノに啖呵を切り、それを売り言葉と認識した彼女も乱暴な返事を返す

 

「おい!セイランとアマノを止めろっ!!またギルドぶっ壊しやが----ぐおっ!!?」

 

一触触発の雰囲気を止めようとした男は突如、飛来したギルドの扉に巻き込まれ、壁際まで吹っ飛ぶ。瞬きもしない間に起きた出来事に誰もが動きを止め、唖然としていた

 

「あのさぁ………ボクは静かに開けろって言ったよねー?聞いてなかったかな」

 

「ああん?知るかっ!誰がてめぇみたいなもやしの言うことなんか聞くかっ!俺は暴れてぇんだよっ!!」

 

「そうそう!登場は派手にしないとねっ!まぁ………でも、アタシも怒ってんだけどね」

 

「なかなかどうして……作戦通りに行かないのもボクたちらしいかな……マスター、号令を」

 

一見すると和やかな雰囲気に見える二人の少年と一人の少女。しかし、その周りには憤怒の感情を隠しきれない青年たちと老人の姿があった

白衣の少年が頭のゴーグルに触れ、促せば、ゆっくりと歩み出した老人がギルド全体に凄まじいまでの怒気を放つ

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃああっ!!!」

 

妖精、その名に削ぐわない程に怒りの炎を露わにする彼等は誰一人として、優しい目付きをした者はいない。その瞳は怒りがゆらめき、心火が燃えていることは火を見るよりも明らかだ

 

「誰でもいいっ!!かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

先陣を切ったのはナツ。誰よりも先に飛び出した彼に追随し、マキナたちも暴れ出す

 

「調子にのるんじねぇぞっ!!コラァ!!!」

 

「やっちまえーーーーーっ!!」

 

対抗するべく、ファントムの面々も勢いよく駆け出す。所狭しと暴れる仲間たちを前に、マキナは違和感を感じていた、怒りに支配された脳内を落ち着かせる為に、頭のゴーグルに触れ、思考回路を鮮明(クリア)にしていく

 

「デウス!エクス!エレメント4を探すんだっ!」

 

「「博士の御命令とあらば…!」」

 

「………っ!?誰だっ!!」

 

二体の相棒に指示を飛ばし、違和感の正体を探ろうとしたマキナ。刹那、彼は背後に感じたこともない得体の知れない気配を察知する

 

「あ〜………よく寝たぁ〜〜〜〜っ!!なんなら、寝過ぎたくらいだ………あん?なんだぁ?オメェは」

 

「それはボクの台詞かな……この騒ぎの中で寝てられるなんて、なんだ?お前」

 

普段の口調が崩れるくらいに警戒心を見せるマキナの前に姿を見せたのは、水色の癖毛に紫色の瞳を持つ中華服の少年、セイラン。呑気に大口を開け、頭を掻く彼は異質な雰囲気と共に異常なまでの殺気を放っていた

 

「俺はセイランってんだ。巷では武闘家とか呼ばれてんぜ。んで?お前こそなんだ?見たことねぇのが、ちらほらといやがるが……何故か、テメェに興味が湧いた。名乗れよ」

 

「マキナ……マキナ・アルベローナ」

 

「アルベローナ………あっ!お前かっ!ジョゼのオッさんが言ってた頭の良いチビってのは!へぇ?お前がなぁ〜………来いよ、相手してやるぜっ!!」

 

和やかな雰囲気から一変、マキナの名を聞いた瞬間にセイランの目付きが鋭さを増し、拳法の構えを取り、大地を蹴った

 

「デウス!エクス!命令変更!!!形態変化(カンビオファルマ)!!」

 

「「ワォォォォン!!」」

 

即座にデウスとエクスを呼び戻し、迎撃体制に入るマキナ。魔力消費を抑える為に制限解除はせずに、純粋な剣術だけで迎え打つ為に迫るセイランの拳に斬撃を放つ

 

「斬撃なんか効くかよっ!!弾け飛べっ!!竜打連武掌(・・・・・)!!!」

 

「………ぐあっ!?」

 

斬撃を紙一重で躱し、セイランはマキナの腹部に掌底の嵐を叩き込む。一撃一撃が重く、単純な武術とは何かが異なる拳の重さに嗚咽を吐いたマキナは壁に叩き付けられる

 

「どーよっ!これが打撃を極めた竜の力を分け与えられた俺の!〝打撃竜(・・・)〟の力だっ!」

 

「なるほどね………ボクとおんなじ半端者か……いいよ、本気を出してあげるかな。制限解除(リミットパージ)………〝X(見えないもの)〟を喰らわせてあげるよ。喰らえ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

瓦礫の中から、立ち上がったマキナが制限を解除し、放った斬撃は無数の刃に分裂し、セイランに降り注ぐ。目の前に居るのが、自分と同じ立場の人間ならば、手を抜く理由がない、そう判断したマキナは双剣を構えた

 

「ほーん……斬撃の滅竜魔法か……なるほどねぇ?少しは楽しめそうだ」

 

「遊びなら、他所でやりな。バカセイラン」

 

「ああ?なんだと?アマノ」

 

「アタイは忙しいのよ…この手で潰さなきゃいけないからねぇ!!花竜(アイドル)をっ!」

 

「うぇっ!?アタシっ!?」

 

意気揚々と駆け出すセイラン、その背後で面倒そうに呟くアマノは意中の相手であるマナツを捕捉し、彼女に襲い掛かる

 

「マナツ!!ぐっ!?」

 

「オメェの相手は俺だろうがよ……白衣ヤローっ!!」

 

「ウルセェ………ボクの大事な人(マナツ)に傷でも付けてみろ、叩き斬るぞ」

 

冷静に考えを纏めようしていた矢先、幼馴染の危機にマキナの思考は怒り一色に染まった。息を吐き、体を込められた力を脱力し、指先に神経を集中させる、その時間は僅かに数秒の出来事である

 

「〝超竜斬撃(エクストリーム)〟!!」

 

超振動の影響を受け、更なる強さを増した飛ぶ斬撃はセイランの胸部を穿つかに思われた。しかし、それは頭上から迫る、有り得ない存在が迫るまではの話だ

 

「おじじっ!?」

 

真っ先に反応を示したのは、アマノと対峙していたマナツだった。目の前に落下してきたマカロフに駆け寄り、抱き起こす

 

「じっちゃん!!」

 

「どーなってやがるっ!?なんでジジイがっ!!」

 

余りの衝撃に我に返ったマキナが叫べば、暴れていたスコルも両目を見開く

 

「ディンガ!!リアン!今すぐにじっちゃんを安全な場所にっ!」

 

「任せてくれ。マスター、しっかりするんだ」

 

「二日酔いかしらね、おじいちゃんったら……」

 

「リアン?冗談を言っていい雰囲気ではないよ、今は」

 

「あら、失礼」

 

「ワ………ワシ………の…魔力が………」

 

「撤退だっ!!」

 

女王(エルザ)の一声で、マカロフを連れた妖精たちはファントムのギルドを飛び出す。認めたくはないが、其れは敗北を意味していた

 

「あーあ……折角のゲームを邪魔しやがって……あの目隠しヤローの仕業だな。にしても、あの白衣ヤローには興味が湧いたぜ」

 

「興醒めも良いトコよ、水を差すとかありえないんだけど……まぁでも構わないわ。次は潰してやるわ」

 




不在のマスター、ルーシィの涙、その全てが繋がる時、マキナたちは何を想う………

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