天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……ニィちゃんことラクサスの言葉にギルドは険悪ムードに包まれたから、大変だったんだよねー。まぁ、ネエちゃんが水を差したから、大惨事にはならなかったけど…なかなかどうして…上手くいかないもんだね」

ディンガ「大丈夫さ、いずれは分かり合えるよ。因みに今回は一話完結の予定だったけど、長くなりそうだから二話構成に変更されてるよ」

マキナ「何の話をしてるかな……ディンガは…」



第三十九話 天才くん、ひらめく

「なにかないかなぁ〜」

 

「報酬が高いと食費以外にも当てられるから、助かるわね」

 

依頼板の前で、依頼を探しているマナツとリアン。彼女たちは度重なる出費が嵩み、金欠気味になっていた

 

「マナツ、リアン。なにかあった?物が壊れそうにない安全な仕事とか」

 

背後から声を掛けてきたルーシィは、マナツの頭を優しく撫でながら、問い掛ける。何故かは分からないがファントムとの抗争以来、彼女は無意識にマナツを可愛がる様になっていた

 

「う〜ん……探してるけど、あんまりないかも……」

 

「それもこれも主にナツとグレイが色んなモノを壊しちゃうのが原因なのよね……何をどうやったら、村が半壊すんのよ」

 

「今に始まったことじゃにゃいわよ。見なさいよ、アレ」

 

呆れた様に軽いため息を吐くリアンが指差した先には、ビリヤード台を囲むマキナたちの姿があった

 

「先ずは俺からだ!」

 

「オメェには無理だろ」

 

「ビリヤードってなにやんだ?ルールとかあんのか?」

 

「説明書を見るかな。先ずは棒を構える」

 

「ふむふむ……分かった!こうかっ!!」

 

ルールを理解せずにビリヤードを楽しもうとしていたナツたち、マキナが説明書片手に説明を始める。しかし、時既に遅かった、棒を構えたナツがボールを突き、その振動で他のボールは粉砕された

 

「ちぇーなんだよ、六個か」

 

「さっすがナツー!」

 

「負けてられっか!俺は全部壊してやらぁ!!」

 

「おい!待て!一つはヒビが入ってるだけだ!この場合はどうなるんだ?」

 

「粉砕五個とヒビ一個で5点と半分かな」

 

「ふむ、難しいんだね。ビリヤードとは」

 

「遊び方がそもそも違うわっ!!」

 

誰一人としてルールを把握していない面々に、御約束のルーシィの突っ込みが冴え渡る

 

「ん〜……こいつは一度、マキナにビリヤードを教えてやらないといけないね」

 

「そもそもだけど、説明書を持ってるマキが把握してないのは大問題だと思うわ」

 

「わぁー、たのしそ〜!アタシも混ぜて〜!」

 

「ああ……マナツが純真過ぎて、バカたちに染まるのが心苦しい………あーん!!このままじゃ、今月の家賃払えないよぉーーっ!」

 

疑うことを知らぬが故にビリヤードなのかも理解不能な娯楽に混ざりたがるマナツの背に突っ込みを放ちながら、ルーシィは今月の家賃の心配をしていた

 

「じゃあ、とっておきの仕事紹介しちゃおうかなー。すっごくルーシィ向きだし、何かが壊れる心配もないヤツなんだけど……興味ある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何時も通りの乗り物酔いです」

 

「あい!診断するまでもないよ」

 

「マナもナツもだらしがにゃいわよ。しっかりしなさい」

 

「おやおや、博士の未来が思いやられるね」

 

例によって、乗り物酔いで初手からの躓きを見せる竜兄妹。其れを診察していたマキナの返事にハッピーは見れば理解できると発言し、リアンはやんわりと叱り付ける。一方でディンガは何時かは訪れうるかもしれない相棒の未来に僅かな不安を感じていた

 

「なるほどね、客足の遠のいた劇場を魔法で盛り上げようって話かい。早々に上手く行くとは思えないね」

 

「もぉ〜カナはまたそう言うことを……先行きが暗くなることを言わないでよね」

 

「冗談だよ、本気にしちまったかい?ルーシィは真面目だねぇ」

 

先行きが不安になる発言をするカナに、ルーシィがジト目を向けると彼女は軽く笑いながら、口に酒を流し込む。余談だが、チームになって以降、ルーシィはカナに敬称付けをやめた、チームになったからには対等であるべきだとはカナの名言である

 

「盛り上げんのは構わねぇけどよ、俺の魔法は演出に不釣り合いじゃねぇか?」

 

「確かにな、スコルは裏方決定だな。演出は俺の氷に任せとけ」

 

「ああん?てめぇなんかに出来るワケねぇだろうが、身の程を弁えろや!カチコチパンツ!」

 

「んだと?バカ猿!!体を動かすしか芸がねぇくせに!!」

 

「所かまわずに脱いでる変態に言われたかねぇよっ!!」

 

「安心するかな、二人には期待なんかしてないよー。ぶっちゃけた話がボクが居れば何も心配はいらないから、タレ目氷と迷彩バカは帰っていいよ」

 

「「やんのかっ!!もやしゴーグル!!」」

 

結局は乗り物酔いのナツを除いた三人が何時も通りに喧嘩を始める。チームを組んで以降、隙あらば彼等は歪み合っていた、元が仲の悪い四人が同じチームというのが普通に考えれば、無理のある話なのだが、言うだけ無駄である

 

「なんでケンカになんのよ………あれ?エルザは?」

 

「エルザはあそこだよ」

 

「あそこって…………何してんの?」

 

カナに誘導され、視線を動かしたルーシィの目線に見慣れた緋色の髪が飛び込んで来る。しかし、その見慣れた女性は口を動かしており、妙な声を挙げていた

 

「決まっているだろう?発声練習だ」

 

「あたしたちが出演するんじゃないんだけどっ!?」

 

「エルザってこういうのをやりたがる子だったのね」

 

「女性は奥深いということだね」

 

「アンタ等は緊張感を持ちなさいよっ!!」

 

発声練習に励むエルザを見守りながら、紅茶を嗜むリアンとディンガ。三人の自由さに、三度、ルーシィの突っ込みが火を吹いた

 

「兎に角!!仕事の内容はあくまでも演出がメインよ!マキナの発明品だったり、カナの札魔術だったり、ナツの火とかマナツの花だったり、あたしがリラの詩で情感出したり…素敵な舞台になりそうな予感しかしないわ〜。あたしの小説が舞台化した時にも頼もうかしら……」

 

「マキナ〜、ルーシィが変だよー?」

 

「ルーシィが変なのは何時ものことかな」

 

「それもそっか!ルーシィはいっつも変だもんね!」

 

「おだまり!おチビちゃんたち!」

 

熱のある語りにより、普段よりも遥かに饒舌なルーシィ。その姿にマナツとマキナが彼女が変だと主張したのを聞き逃さず、四度目の突っ込みが放たれる

 

「おや、これはなかなかの佇まいだね。何時かは潰れると理解していても褒めずにはいられないよ」

 

「客足が遠のいてるにしては綺麗すぎるかな。もしかしたら、不正な利益を得てる可能性も否めないかな、裏帳簿を探そう」

 

「さすがは気配り上手な博士だ、発想が不思議(ワンダー)だね」

 

「はいはい、マキナもディンガも野暮なことを言わずに行くよ」

 

辿り着いた劇場を前に野暮な発言をするマキナとディンガの背中を押しながら、劇場に連れていくカナ。姉という肩書き故に彼等の扱いを誰よりも理解している

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さんですかな?引き受けてくださり誠にありがとうございます」

 

建物の影から顔を覗かせたのは今回の依頼者であるシェラザード劇団の団長、名をラビアンという男性だ

 

「はい!演出なら任せてください!」

 

「それがですねぇ………ちょっと困ったことになってしまいまして……」

 

「「「困ったことってて?なになになぁにぃ〜?」」」」」

 

意気揚々と返事を返すルーシィに対し、不吉な前置きと共に口を噤むラビアン。その発言が気になったマキナたちは声を揃え、問いを投げかける

 

「実は……役者が全員逃げ出してしまいまして……ありがとうございます」

 

「なにがっ!?」

 

「変な語尾で草生えるんだけど〜!」

 

「変わったオジサンかな」

 

「博士の語尾もたまにややこしいけどね」

 

意味不明な語尾のラビアンの話を掻い摘むと、30年前に脱サラして夢の演劇の道へと入ったものの、公演する舞台は不評続きで、妻は夢を追い続ける自分に愛想を尽かし出て行ったというなんとも感謝の念すらも感じられない無慈悲な話である

 

「役者もいない今、私には舞台を披露する手段もないのです。ありがとうございます」

 

「ありがたくはねぇだろ!?」

 

「諦めろよ、スコル。こういう語尾の人なんだよ……多分…」

 

「う〜ん……どうしたもんかね?マキナ。アンタの持ち前の不思議(ワンダー)な発想でなんとかしてやれないのかい」

 

最早、真面目に話しているのかも疑わしいラビアンに対し、スコルでさえも突っ込みに回っていた。その様子を見ていたカナは良い案はないかと、天才的な頭脳を持つ(マキナ)に問う

 

「う〜ん……なかなかどうして………あっ、ひらめいたかな」

 

「ホントかい!?流石はマキナだね!今日もナイス不思議(ワンダー)だよ!正に天才だね、博識だね、鬼才だね!」

 

「何を思いついたのー?」

 

手を叩き、意味深な笑みを浮かべるマキナをカナが褒め称える隣でマナツは首を軽く傾げる

 

「居ないんなら、作っちゃえばいいんだよー」

 

「その通りだ!よくぞ言ってくれたな!マキナ!」

 

「ぐもっ!?」

 

突飛もない発言に誰もが口を大きく開けるが、乗り気なエルザはマキナを抱き寄せ、物言わぬ屍に変える

 

「団長さん!我々が役者になろうではないかっ!」

 

「「「なんか変な方向に行ってる!!?」」」

 

「まぁ、やらせてやってもいいか…………チッ……素人か」

 

「「「そこはありがとうじゃねぇのかよっ!!!」」」




マキナの閃き、エルザのやる気に巻き込まれたマナツたちが舞台に挑戦!しかし、その舞台が普通なワケがない!どうなるのっ!?

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