ディンガ「しかし、博士が何かを閃いたんだよね」
マキナ「まぁねー」
「ふむ………これが台本かな」
「なんというか酷い内容ね……」
「ハイ……ありがとうございます」
演劇に多少の知識を持つマキナ、小説家志望のルーシィは台本に目を通すが、あまりにも酷い内容に絶句した。しかし、ラビアンは相も変わらずに意味不明な語尾で礼を述べていた
「取り敢えず、舞台はネエちゃんたちに任せるかな。ボクたちは舞台の改造をやっていくよー」
「多少の不安はあるけれど、参加するからには大成功させたいね」
「ですけど……博士、舞台の改造って何をするつもりなんです?」
「ロクな改造じゃねぇのは確かだ」
結果的に演出を一任されたマキナは
「ねーねー、リアン。アタシは何の役なのー?」
ナツたちが稽古に励む中、呑気なマナツは未だに自分の配役を理解しておらず、台本を読んでいた黒髪ポニーテールが特徴的な猫耳美少女のリアンに問い掛ける
「マナの役は謎の女盗賊ね。しっかりと稽古しにゃいとダメよ」
「うん!じゃあ、よろしくお願いします!リアンコーチ!」
「任せなさい」
妖艶に笑うとリアンは本番までの一週間を利用し、マナツだけには限らずにエルザ、ナツ、ルーシィ、グレイ、カナ、スコル等の面々に演技指導を行った。格闘技を得意とする彼女の指導は苛烈を極めたが、その甲斐もあり、素人同然だったメンバーは、本番を迎える頃には驚くべき変貌を遂げていたのは言うまでもない
「ふぅ………一週間なんて早いものかな」
「今のって回想シーンだったんですかっ!?」
「言っとくがよ、デウス。巻き戻しはしねぇぜ」
「何の話だっ!?」
「まぁ、長引くよりはマシだろうね。さて……劇の方はどうなっているだろうか、僕たちは舞台袖から見守るとしよう」
今までのは流れが回想という事実に驚愕を示すデウスを他所にディンガの言葉にマキナは頷き、舞台袖から劇を見守ることにした
「遠い~遠い~昔の事~西国の王子は敵国の姫に恋をした~」
先ずは手始めに琴座の星霊リラによる語りから、物語は幕を上げる
「なんてキレイな声…」
「うっとりする〜」
出だしは上々、リラの歌声を交えた語りに観客たちは癒しにも似た心からの安らぎを見せている
「そして……王子は姫君を助けに行きました〜」
「「「「って!姫捕まってたんかいっ!!」」」」
初っ端から、怒涛の展開に観客たちは黙っていられずに突っ込みを放つ。これはルーシィにも匹敵する素晴らしい突っ込みだったと後にとある天才魔科学者は語った
「わ……わ……わわ…わ……我が名はフレデリック~。ひ……姫…た……たた……たす…助けに…ました」
「「「ガチガチじゃねぇかっ!!」」」
西国の王子役のエルザは、本番に弱いタイプだったらしく、緊張を絵に描いたような角張った動きと辿々しい口調で練習の日々が無駄になってしまっていた
「ああ………助けてくださいフレデリック様。私は『あの』セインハルトに捕まってしまいました~」
「「「いや、『あの』って誰だよ!!?」」」
姫役のルーシィ、エルザよりは名演技であるが台本の中にある台詞に当然と言わんばかりに組み込まれた『あの』という言葉に突っ込みが入る
「我が名はジュリオス。姫を返してほしくば、私と勝負したまえ」
「「「ジュリオス!?セイハンハルトじゃねぇの!?」」」
次に現れたグレイ、期待を裏切るという意味では大成功であるが配役名が違う為に観客は突っ込みが冴え渡る
「いざ、尋常に勝負!」
「おぉ!すげぇ!」
「どうやったんだ?それに下から出てきた白い煙はなんだ?」
グレイが出現させた氷の剣に観客たちは盛り上がりを見せる。その際に舞台下から、冷気が発生したのは、マキナが発明した冷却システムを利用した演出効果の一環である
「博士、狙い通りの反応だよ。掴みは上々とは正にこの事だね」
「当然かなー、何故ならボクは天才だからねー」
「博士の発明が役に立つ日が来るとは……このデウス、感無量です…」
「良かったな」
舞台袖から様子を見守るマキナは相棒たちに褒め称えられ、上機嫌にけらけらと笑う。但し、公演中である為に小声での笑い声、これこそが彼が気配り上手の別名を持つ所以だ
「な……な……なんの……わ……わたし……の…10の剣を…く……く…くら…え…」
「ぐわーーっ!?」
「「「何がどうなったんだよっ!!」」」
未だに緊張の冷めないエルザが十振りの剣を出現させた瞬間、グレイが倒れた。展開に付いていけない観客たちは既にモブの脇役の気分である
「「ちょっと待ったぁ!!」」
「「「今度はなんだ?」」」
刹那、その声は響いた。幼くも逞しい声と美しくも綺麗な声、観客たちはルーシィの方に視線を向ける。突っ込んではいるが、観客たちは既に物語の虜になっていた
「いついかなる時も挨拶を忘れずに!挨拶はいつだって元気よく!おはようございますからのいってきます!今日も元気にこんにちは!魔法の都で人気急上昇の美少女大怪盗!!ドラゴンガール!」
「酒に溺れても人には溺れないが私の座右の銘!その手から繰り出すは摩訶不思議なワンダーランド!私の前に敵はない!大怪盗ワンダーウーマンの御登場だよ!」
「立てば可憐な猫、座れば魔性の猫娘、歩く姿は絶世の美少女……私よりも可愛い存在は認めにゃない♪絶対可憐な大怪盗!レディキャットよ♪」
「「うぉぉぉぉ!!美女に美少女!!」」
効果音が鳴り響きそうなくらいに決め台詞を放つマナツとカナ、リアン。美女と美少女の登場に男性観客は熱気にも似た歓声を挙げる
「姫は我々がいただくよ!」
「美しい姫には我々のような可憐な花の側が似合うわ。そうよね?お姉さま」
「そうよ、我々こそが真打ちにしてセイハンハルト様最強の部下……さぁ!姫を攫うんだよっ!妹たちっ!」
「「あいあい!」」
「そ……そうは……さ……させ……せるか…く…….く…くら…え……」
「「「ぐわーーーっ!?」」」
「「「結局は弱いのかよっ!?」」」
マナツ、カナ、リアンに十振りの剣が降り注ぎ、三人はマキナの発明品である全自動風車により、舞台袖に消えていく
「ふっふっふっふっ………なーっはっはっはっはっ!!ジュリオスも、怪盗娘たちも単なる前座に過ぎぬわっ!!今こそ、このセインハルトの従兄弟の弟の娘婿の孫の友人の兄であるナインハルトが引導を渡してやろう!!覚悟せよっ!!ジュリオス!!あっ…違う!フレデリック!!」
「「「複雑すぎんだろっ!!!しかもなんか台詞間違えとる!!」」」
次に現れたのはスコル。しかし、余りにも複雑な家庭環境の彼に突っ込みという名の横槍が放たれる
「おお!親戚なのかもわからないナインハルト!助けに来てくれたのかっ!」
「触るなっ!穢らわしい!このマントはシルクだぞっ!」
「「「プライド高いなっ!?ナインハルト!」」」
「くっ……よもや、裏切られるとは……出でよ!我が下僕のドラゴン!」
役に入り込むスコルのプライドの高さに突っ込みが放たれる中、グレイが舞台袖に呼び掛けるとマキナ特性の照明と効果音装置の演出で、舞台は豪華に彩られる
「ぐぉがぁあっ!!がおおぉ!!俺は全てを壊すドラゴンだ!!」
「「「な、なんだあれ!!ドラゴン!?」」」
突然、舞台袖から姿を見せたドラゴン姿のナツ。彼を運ぶ翼の代わりになっているのはハッピーとディンガである
「こうなったら…仕方ない。共に戦おう」
「そ……それは…心強い…ナインハルトも…きょ…協力……し…して……してくれ」
「致し方あるまい!怪盗娘たちよっ!お前たちも協力するが良い!!」
「あいあい!」
「イヤよ、ハッピーの初めての演技を撮影するのよ。ついでにディンガも」
「一昨日来な。私はマキナの活躍を褒めるので忙しいんだ」
「「「団結力があるのか、ないのかわかんねぇっ!!!」」」
ドラゴンの登場に団結を始めたグレイ、エルザ、スコル、マナツであったがリアンは演技よりもプライベートを優先し、カナは弟の裏方に徹する姿を只管に褒めることを優先し、拒否の意を示す
「私が足止めします!皆さまは逃げてください!」
「「「姫が何時の間にか自由になっとる!!!」」」
「それは助かった!とんずらだー」
「「「あいあい」」」
「「「逃げんのかよっ!!」」」
最早、何がしたいのかすら理解不可能な演劇に観客たちは疑問符の嵐。舞台袖から様子を見ていたマキナは頭のゴーグルに触れる
「うーむ……頃合いかな」
「何がですか?博士」
「おい、まさか…博士…何かやろうとしてねぇか?」
「えー?何かってー?なにかなー?」
傍観者を貫いていたマキナ、その意味深な笑み。デウスは理解していないが、エクスは何かに勘付いたらしく、僅かに口元が引き攣る
「という訳で………ポチッとな♪」
けらけらと笑いながら、白衣から取り出したボタンを押す。その瞬間、耳を劈かんばかりの轟音が響き渡り、劇場に亀裂が生じる
「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」
「ああ……避難させるのを忘れてたー」
「「このバカ科学者ァァァァ!!!」」
崩れゆく劇場を逃げ惑いながら、けらけらと笑うマキナに仲間全員からの突っ込みが飛ぶ
「「「すげぇけど、とんでもない劇だなっ!?」」」
「あははー、いやぁ〜偶には爆発も悪くないねー。またやりたいな〜」
「「「二度とやるかぁっ!!!」」」
しかし、彼等の劇がまさかの大ヒットを極め、劇団員が戻るまでの間はこき使われたのは言わずもがなである
仕事の関係で鳳仙花村を訪れたマキナたち、其処にはロキの姿があり……何だか様子がおかしい?しかし、マキナは事情を理解しているらしく……
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