天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「物語も佳境かな」

ディンガ「見どころ満載だね」


第六話 天才くん&氷竜、トラップに嵌る

「前に来た時と…構造が違う」

 

「明らかに改変の跡があるね」

 

「お2人とも、気を付けたほうがいいですわよ」

 

『相手は博士と同じく科学者、何をどこに仕掛けてるか分かりませんからね』

 

『警戒するに越したことはねぇだろうな』

 

勢いよく開かれた屋敷の扉を潜った先に広がる光景は前回とは異なっていた。否、異なる等と生半可な答えで片付けることも容易ではない程に構造そのものが変化を遂げ、更にはDr.ケミストリーの姿形も何処にも見当たらない

 

『あーっほっほっほ!やっぱり来たね?君達』

 

「「「「!!」」」」

 

高らかに響いた特徴的な笑い声に、マキナたちは突如、目の前に現れた巨大なモニターに視線を向ける。その先に映るのはDr.ケミストリーの姿、推測通りの結果にマキナは頭のゴーグルに触れる

 

「やっぱりアンタが黒幕だったか」

 

『そう!私がロボットを暴走させたのさ』

 

「いったいどうしてこんなことを」

 

『私の目的の為だよ。諸君たち』

 

「目的?ギルドの奴らを始末してまで成し遂げたい目的だと?」

 

『そう!私の目的…それは!…ロボットだけの世界を作り上げることなのさ!!!』

 

「随分とスケールの大きな目的だね。その為に何故わざわざゴローさん達を暴走させてまでギルドの人達を傷付けないといけなかったの?」

 

『あのギルドには人間が多すぎたからだよ』

 

「は?」

 

『人間というのは、直ぐに老いて枯れて朽ちていく物、それのどこに美しさがあるんだい?そんな美しくもない存在は消えてしまった方が世のためだと思わないかい?』

 

「なん…だと…?」

 

Dr.ケミストリーの身勝手な言い分にリートの表情に変化が現れる。マキナも口には出さないが、目付きが僅かに鋭さを増す

 

『それに比べて機械はどうだ!!しっかりとメンテを怠らなければ人間の何倍も生きられる!老いて朽ちる事もない!素晴らしい存在だ!その子達のためにこそ世界があるべきだと思わないかね?!!』

 

「……ざけんな…」

 

『私の作ったギルドも本来はロボットの為だけに作りあげたギルド、だけど人間が増えすぎてしまったのだよ。だから1度リセットしたのさ』

 

「ふざけんな…」

 

『リセットして、人間共を潰し、もう一度ギルドを作り上げる!今度は人間の居ない機械だけのギルドを立ち上げて見せるのさ!!!』

 

「ふざけんな!!!!」

 

「リート…」

 

『!!』

 

リートの怒りが頂点を超え、息飄々と語るDr.ケミストリーの言葉を遮った。

 

「人間が要らねぇだ?ロボットだけのギルドだ?ふざけんなよ…そんなテメェの夢物語で、ベリアルやギルドの奴らはあんな姿にされちまったってのかよ…」

 

『私のギルドさ、どうしようと私の勝手----』

 

「テメェの家族だろうが!!!」

 

心からの叫び、ギルドは家族、マスターは親、其れを蔑ろにするDr.ケミストリーの言葉にリートは怒号を張り上げる

 

「テメェにとっちゃどーでもいい存在なのかもしれねぇ、けどな、ギルドの奴らからしたらテメェは親なんだよ…例え世界中の誰を敵に回しても、それでも信じたい親なんだよ…決して裏切られたくねぇ存在なんだよ!!!親が子を見放したらそこで終わりだろうが!!!」

 

「リートの言う通りかな……ギルドは家族なんだ、そして、アンタは仮にも親……親が子を裏切るなんてことは絶対にやっちゃいけない……それが理解出来ないアンタに(マスター)を名乗る資格はないよ」

 

「オレはお前が許せねぇ、絶対にぶん殴ってテメェのやった罪の重さを分からせてやる!!!!」

 

Dr.ケミストリーを睨み付けるリートは拳を硬く握り締め、マキナも双刃剣を握る手に力を込める

 

「そうですわね。私も協力致しますわよ」

 

「やれやれ……結局はこうなるのかい。仕方がない相棒だよ」

 

『言いたい放題言ってくれる。いいだろう、ならばここまで来てみたまえ。来れたら…の話しだがね』

 

その言葉に怪し気な笑みを浮かべたDr.ケミストリーが手元のスイッチに触れた

 

「「!!」」

 

刹那、マキナたちの足元の床が開き、穴が出現する。気付いた時には既に遅くリートとマキナは、奈落の底に姿を消す

 

「リート!!!」

 

「博士!!!」

 

そして、ラリカはリートを、ディンガはマキナを追って穴へと飛び込んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ………いたた……まさか、落とし穴なんて初歩的なトラップに引っかかるなんて……」

 

「全く……油断大敵だよ。キミは肝心な所で気を抜くクセがある」

 

奈落の底に落下したマキナが痛む体を摩りながら、初歩的な罠に気付けなかった事を悔いていると、頭のガスマスクに触れながら、翼を生やしたディンガがゆっくりと降り立つ

 

「う……何時聞いても……小言がうるせぇかな…」

 

「キミを心配しているからこそだよ。前にも言っただろう?キミを前にすると親心?が刺激されてしまうんだ」

 

宛ら、親のように小言を吐く姿は彼らしいといえば彼らしいが、聞き慣れ、聞き飽きた小言にマキナは普段ののんびりとした口調の下に隠された素が現れていた

 

「リートとラリカとは逸れたみたいかな」

 

「そうらしいね。あの時、二人はキミが落ちたのとは異なる穴に姿を消した……察するに分断されてしまったと考えるのが妥当だろうね」

 

周囲を見渡し、直前までは近くに居た筈のリートたちを探すが影も形も見当たらない。二手に分断されてしまったらしい、其々の頭にあるトレードマークに触れ、一人(マキナ)一匹(ディンガ)は思考を巡らせる

 

「「「「ニンゲン……イラナイ……ニンゲン……ハカイ……」」」」

 

「「!?」」

 

刹那、部屋の方々から物騒な機械音声が響き渡る。其れに気付いたマキナとディンガは思考を放棄し、周囲に視線を巡らせる

 

「「「「ニンゲン……イラナイ……ニンゲン……ハカイ……」」」」

 

「ロボット………アモルファスを襲ったのはコイツ等みてぇかな」

 

「そのようだね。しかし、不自然だ……以前は人間と遜色がない程に生き生きとしていたハズ……なのに、今の彼等からは感情をまるで感じない……実に不自然だ」

 

「言われてみると……微妙に生気も感じないかな。ロボットに生気があるのかは知らないけどね」

 

アモルファスを襲撃したであろうロボットの大群。だが、数日の間にこの世界で見慣れたモノとは明らかに異なる違和感、其れは感情表現の欠如である。人間と大差のない、若しかすると人間よりも人間らしかった筈のロボットたちの姿は無く、一つの命令を忠実に実行しようとする機械の操り人形が其処には居た

 

「「「「ニンゲンヲ破壊スル!!」」」」

 

「ディンガ!今は考えるよりも先にコイツ等を止める方に集中するかな!」

 

「致し方ない………心苦しくはあるけれど、やらなければならないようだ」

 

一斉に襲い掛かるロボットの大群を前に、マキナは双刃剣を構え、ディンガも何処からか取り出した愛用の巨大スパナを構える

 

「「ハカイ!ハカイ!」」

 

「一刀竜・竜速天!!」

 

「スパナインパクト!!」

 

壊れた機械の如く、同じ言葉を只管に繰り返し続けるロボットたち。その様子に表情を曇らせながらも、マキナは速度特化型の無数の飛ぶ斬撃を放ち、ディンガは身の丈以上はある巨大スパナを軽々と振り回し、ロボットたちを薙ぎ払う

 

「ちっ………次から次へとキリがねぇかな…」

 

「なかなかどうして、厄介だね…これは。どうやら、大元を探さなくてはならないらしいね」

 

倒しても休む暇を与えないと言わんばかりに次から次へと湧いてくるロボットたち。流石にキリがない攻防戦に苛立ちを募らせ始めるマキナに対し、ディンガは冷静に状況の分析を始める

 

『あっーほっほっほっ!!素晴らしい!!流石は魔法と科学の双方を極めた魔科学の第一人者なことだけはある!マキナ・アルベローナ!』

 

「その声はDr.ケミストリー!!」

 

「声はするとも姿は見えずか……なかなかに用心深いね」

 

響き渡る変わった笑い声と聞き覚えのある声、ロボットたちを薙ぎ払いながらもマキナとディンガは視線を巡らせるが何処にも姿は見当たらない

 

『しかし!私の科学力は君の頭脳すらも凌駕する!!来るがよい!我が秘密兵器よっ!!』

 

「「秘密兵器ってなになにぁに〜?」」

 

高らかに宣言された秘密兵器と言う単語に、科学者としての探究心が勝った一人(マキナ)一匹(ディンガ)の瞳がきらきらと輝きを放つ

 

ドゥルルルルルルル

 

その輝きに反応するかのように辺り一面に耳を劈かんばかりのドラムロールが響き渡る

 

「よぉ、マキナにディンガ。派手にやってくれてるみたいで何よりだ」

 

そして、暫くすると静寂に包まれた部屋の奥から見覚えのあるロボット、AKAGI563基ゴローさんが姿を見せた

 

「ゴローさんかな」

 

「おや、確かにあれは紛れもなくゴローさんだね」

 

親しい間柄の登場に張り詰めていた緊張の糸が切れたがロボットたちを薙ぎ払う手は止めずにゴローさんに視線を向ける

 

「此処に来たのが、お前たちで良かった。リートとラリカだったら、どうしようかと思ってたからな」

 

「………その口振りだと、此処にボクたちが来るように仕向けたのはゴローさんみたいな言い方だねー」

 

「流石に察しが良いな!マキナ!その通り……オレはDr.ケミストリーに生み出された最強の科学兵器!AKAGI563!何を隠そう……秘密兵器というのはオレのことだ!」

 

「「えーーーーーーっ!!?」」

 

ドヤ顔を決めるゴローさんの予想外の発言に、マキナとディンガの叫び声が木霊する

 

「驚くのも無理はねぇ……なにせ、オレほどのカリスマロボットが他にいるわけがねぇからな!さぁ!行けぇ!同胞たちよ!!」

 

ゴローさんが指示を飛ばすと統一性皆無な動きを見せていたロボットたち。その姿にマキナは頭のゴーグルに触れ、寂しそうな視線を向ける

 

「ゴローさん………なかなかどうして……ボクには理解出来ない………キミは優しい心を持ってるハズだ!!」

 

「少なくとも、博士に御馳走してくれたキミを僕も悪人とは思えない……目を覚ましてくれるかい、ゴローさん」

 

「はっはっはっ、面白いことを言うんだな?オレたちはロボットだ。心や感情なんかは存在しない……お前たちに見せていたオレは所詮、コンピュータが生み出した紛い物の意思表示だ」

 

「……会話は無理そうかな」

 

「博士……」

 

双刃剣を握る手に力を込め、翡翠色の双眸は真っ直ぐとゴローさんを見据える。その瞳に僅かではあるが涙が滴り落ちる

 

「科学は私利私欲の為に利用していいモノじゃない……科学は人々の暮らしを豊かにする知識だ。ゴローさん、キミが間違っていることをボクが証明してやるかな」

 

『あっーほっほっほっ!!間違い?違うな……科学は力だ!科学こそが至高!!AKAGI563!マキナ・アルベローナを抹殺しろ!』

 

モニターに映るDr.ケミストリーが消え、残されたのはマキナとディンガ、ゴローさん率いるロボットたちだけが残される

 

「Dr.ケミストリーの理想の為だ…犠牲となれ、マキナ・アルベローナ!!」

 

ゴローさんの掛け声を合図にロボットたちはマキナに狙いを定め、一斉に襲い掛かる

 

「〝X(見えないもの)〟が見える時……全ては終わりを告げる。瞬きしてると見逃すよ……〝X(見えないもの)〟が見えるのはこっからだ」

 

大群を前に、マキナはゆっくりと双刃剣に魔力を流し込む

 

「一刀竜・竜震天(りゅうしんてん)!!」

 

力に特化した竜災天と速度に特化した竜速天の双方とも違う斬撃。大地を蹴り、ロボットたちの懐に肉薄し、双刃剣を振り下ろす。その瞬間に巨大な斬撃がロボットを一掃する

 

「大技の割には傷の一つも付いてないな……手を抜いているのか?」

 

「やだなぁ〜、手ェなんか抜いてねぇかな」

 

「まさか……!!」

 

荒い口調ながらもけらけらと笑うマキナ。その様子に何かに気付いたゴローさんはロボットたちに視線を向けた

 

「気付いた?竜震天は単なる斬撃じゃないんだよねー。斬撃が生み出した振動は真空の刃を生み出し、正に〝X(見えないもの)〟を形成する。そして、真空の刃は的確に動力炉だけを破壊する。これが魔科学だよ」

 

X(見えないもの)〟と科学的に解析した現象を起こす力、正に魔法と科学の融合、其れ即ち魔科学である

 

「やっぱり、すげぇヤツだ……なら、オレも本気を出さないとだな。こー見えてもな、NAGUとオレは特殊能力を与えられた特別兵器なんだ」

 

「それはあの秘密兵器がどうとかの話かな」

 

「その通り!オレたちにはお前たちが最強と認識した者を記憶から再現し、変化する事が可能!!」

 

「変化!?すげぇ不思議(ワンダー)な特殊能力かなっ!」

 

「実に興味深いね」

 

またしても特殊能力と言う単語に、科学者としての探究心が勝った一人(マキナ)一匹(ディンガ)の瞳がきらきらと輝きを放つ

 

「オレが記憶を探ったのはリートだ。さぁ〜て、どんなヤツになるか楽しみだぜ!!」

 

突如、光を放つゴローさん。眩いばかりの光は体を包み込み、その姿を変えていく

 

「なんかすげぇ光ってるかな」

 

「リアンが見たら謎の発光病とか騒ぎそうだね」

 

「リートが思う最強………無難にトーちゃんかニィちゃん?あっ、エルザの線もありえるかな」

 

「ミストガンという可能性もあるね。いや、大穴でカナという可能性も捨てきれないか」

 

「ネエちゃんはありえねぇかな。だって、ネエちゃんはネエちゃんしかいないかな」

 

「おや、これは失礼。確かにカナは一人だけだね」

 

周囲に誰かが居たならば、確実に突っ込みを放たれている会話であるがマキナとディンガにとってはこれが日常的なやり取りであるが故に動じる素振りも見せない

 

「なるほどね……コイツがリートの思う最強魔導士かい。悪くないね」

 

「「………は?」」

 

そうこうしている間に変身を終えたゴローさんは光の中から姿を見せる。しかし、その姿は黒く長い髪に薄着の女性へと変化を遂げており、マキナも、ディンガも、目を丸くする

 

「「誰だよっ!!!」」




見知らぬ女性、彼女の正体とは!?

注意:ここからはマキナメインになります、リートサイドを知りたい方はタイキック新さんの元にレッツゴーかな!
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