天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「リートのお師匠さんだってさ」

ディンガ「ほう、それは実に興味深いね」


第七話 天才くんと相棒、氷竜の師匠と戦う

「ディンガ……誰かな?あのオネーサン」

 

「ふむ…記憶にないね。見た感じは女性だが……魔力の質を見た感じはかなりの手練れと考えた方が良いかもしれないよ」

 

見覚えのない女性の登場にマキナは首を傾げるが、ディンガは桁違いの魔力の質を感じ取ったらしく、警戒を促す

 

「アタシはアクナ・グレンジャー、周りは《聖十大魔導士にならない女性》なんて言ってるがくだらねぇ肩書きに興味がないだけだ」

 

「要約するとじっちゃん並に強ェってことかな」

 

「女性の時代だね」

 

「兎に角、あのオネーサンを倒すのが先かな……行くよー!」

 

双刃剣を手に地を蹴るマキナ、小柄な体格故に身軽な彼は瞬く間にアクナの懐に迫る

 

「あめぇ」

 

「ぐっ…!?」

 

マキナが斬撃を放つ為に一瞬の溜め動作を行った瞬間、アクナは好機と言わんばかりに拳を突き出す。その瞬間、勢いよく打ち出された拳が拳圧を生み、見えない打撃がマキナに打ち込まれる

 

「博士!大丈夫かい!?」

 

「いたた………見えねぇ打撃とか聞いてねぇかな……あのオネーサン、《聖十大魔導士にならない女性》とか言われてんのは伊達でも謙遜でもない……すげぇ強い」

 

「当たり前だ、アタシは仮にもリートと、ついでにバカ1人を鍛えた女だからね。弟子に負けてりゃ世話がねぇからアタシ自身も強くねぇと」

 

肩を回し、首を左右に傾けながら数回に渡り鳴らすアクナ。周りに実力のある女性は尊敬してやまないカナを筆頭にエルザ、マナツ、ルーシィ、レビィ、全盛期のミラ等が存在するが彼女は別格だ。マキナの記憶にある女性魔導士の常識を軽々と超え、桁違いの力を見せつけてきた

 

「リートを鍛えた……なるほど、謂わゆるお師匠さんみてぇなもんかな」

 

「それなら納得だ。リートの実力は同じ滅竜魔導士のナツにマナツ、博士が霞む位の高い実力を持っていると推測していた……言うなら、ラクサスにも匹敵する」

 

知り合って間もないが、リートの強さを知るマキナとディンガにはアクナの発言に合点がいく。それもその筈、高い実力を持つリート・イクシーズという魔導士を鍛えた師に該当する人物、其れが弱い筈がない。しかし、マキナは妙な違和感を感じていた

 

「そうかもしれない………なのに、違和感を感じるんだ………記憶から再現されたアクナ・グレンジャーなんだとしたら、リートが想い描く最強魔導士はあの人って事になるハズ……でも、可笑しいかな」

 

「可笑しい?何が可笑しいんだい?博士」

 

頭のゴーグルに触れ、瞳を細めるマキナ。その姿と発言を理解出来ないディンガは首を傾げる

 

「確か、ゴローさんはボクたちが最強と認識した者を記憶から再現し、変化する事が可能だって言ってたかな。なのに、あのアクナってオネーサンの攻撃には何かが足りないような気がする」

 

「それは魔法を使用していないからとかじゃないのかい?純粋な力だけで僕たちを制圧しようとしているが故に決定打に欠けるという類いの」

 

「違う、上手く言葉には出来ないけど………あの拳を受けた時に聞こえたんだ(・・・・・・)

 

「聞こえた?」

 

マキナの言葉を鸚鵡返しのように反覆したディンガだが、その意味が理解出来ずに首を傾げる。純粋な滅竜魔導士ではないが制限を解除した状態のマキナは五感が研ぎ澄まされ、異変を察知する能力が格段に上昇する、故に目の前のアクナが拳を突き出した際に何かを聞いたのである

 

「それが何かは分からない………でも…上手くは言えないけど、あの声はゴローさんの声だった」

 

「ゴローさんの声………ふむ、理屈は分からないが検証したい……その解釈で間違いないかい?」

 

「理解が早くて助かるよ……相棒(ディンガ)

 

「当たり前だろう?キミとは長い付き合いだ。さぁ、実験を始めよう」

 

「オーケー」

 

其々の頭にあるトレードマークに触れ、一人(マキナ)一匹(ディンガ)の顔には意味深な笑みが浮かぶ

 

「何をガタガタと言ってるか分からねぇけど……余所見とは良い度胸だね、トレース!」

 

「「なっ…!!」」

 

敵を前に思考を巡らせるマキナとディンガに痺れを切らしたアクナは近くに転がっていたロボットを蹴り上げ、一人と一匹目掛け蹴り飛ばす。そして、目の前に迫る瞬間、轟音が響き渡り、爆風が巻き起こる

 

「魔科学ってのも大したことねぇな……この程---ん?」

 

爆風に呑まれ、跡形もなく消し飛んだかに思われたマキナとディンガ。しかし、爆風が晴れると同時にアクナは目を疑った

 

物質魔法(アポートマジック)……発明No.0037……銀造形棒(シルバーロッド)……モード・シールド……ギリギリ間に合ったかな」

 

「原理は異なるが博士の魔法と似通った魔法……トレースとは実に興味深い魔法だ」

 

銀色の盾を構え、爆風を受け止めるマキナ。その背後では瞬時に魔法を解析したディンガが頭のガスマスクに触れていた

 

「今の僅かな時間に何かしたな?アタシの魔法を防ぎ切る程の盾を造形する魔法は聞いたこともねぇ……しかも、銀を造形するなんてのは太古の魔法にもないハズだけど」

 

「魔法?あー、そうかー……そうだよねー、普通はそう思うよね。でも、これは造形魔法じゃないかな」

 

「ほう、造形魔法じゃねぇなら他の魔法か、ぶち殺す前に聞いておいてやるよ」

 

造形魔法だと思っていた銀の盾が魔法ではないと口にし、けらけらと笑うマキナ。その様子にアクナは面を喰らったような表情を浮かべた後に、彼に問う

 

「なに?なんだ?って聞かれたら、答えは一つかな…………………科学(・・)

 

「…………あぁ?」

 

またしても意味深に笑う彼にアクナは素っ頓狂な声を挙げる

 

「銀は一定量の熱を与えると融解し、形状を維持する組織に影響が現れる。反対に冷やせば、常温になり、分解された組織が結合し、個体化する。この銀造形棒(シルバーロッド)は融解温度に人の体温を、凝固温度に室温を設定する事で、即座に銀製の武具を造形する簡易的な擬似造形魔法。此れを再現出来てしまう……頭脳が我ながら恐ろしいかな。でも出来るのがボクかな……何故かって?天才だからに決まってるかなー!」

 

科学的に解析した魔法又は現象を起こす発明品を物質移動(アポーツ)で呼び出す。正に魔法と科学の融合、其れ即ち魔科学である

 

「ははっ!良いね!アンタ!!嫌いじゃないよそーゆーの」

 

「そいつはどーも」

 

(イヤだ……戦いたくない……オレはこんな事をしたくない………)

 

マキナの魔科学を前にアクナが笑う、頭のゴーグルに触れながら投げやり気味の礼を述べたマキナの耳に確かに届いた、もう一つの声。この空間にいる者たちの中ではマキナだけに聞こえる声、彼の目付きが鋭さを増す

 

「やっぱり……聞こえた。ゴローさんの声が」

 

「検証の結果は上々で何よりだけれど、どうするんだい?博士。あのアクナという魔導士を相手に博士が勝てる確率は皆無だ。さっきも言ったが仮にもリートを鍛えた人物だ」

 

「そうだね……でも、ボクが不可能を可能にするのをディンガは知ってるハズかな」

 

「そうだったね、キミは《天才(ジーニアス)》の異名を持つ奇想天外の体現者……任せるよ、相棒(マキナ)

 

「サンキュー」

 

「気ぃ抜いてんじゃねぇ!!!」

 

三度、双刃剣を手に走り出すマキナ。同時にアクナも地を蹴り、眼前まで迫るが瞬間、目の前から白衣の少年は忽然と姿を消す

 

「一刀竜」

 

見当違いの方向、天井近くから聞こえた声。その声の主は双刃剣を持つ手を後方に引き、重力と共に落下する姿は正に飛竜の如く。アクナだけではなく、ディンガもその姿に言葉を失い、見惚れていた

 

竜焔天(りゅうえんてん)!!!」

 

重心を加えた斬撃は摩擦熱を発生させ、発火現象を起こす。マキナが持ちうる現時点での最強技、その斬撃にアクナの姿を維持出来ずにゴローさんは片膝を付いた

 

「くっ………オレの変身が解けただと…!?くそっ!!次だ!次の最強を!!何故だ!!何故っ!!」

 

「ゴローさん」

 

不意に名を呼ばれ、ゴローさんは目の前に佇む白衣の少年に視線を向ける。双刃剣を手に寂しそうな瞳を向ける彼の姿、その双眸は楽しそうに笑っていた時とは裏腹に静かにゴローさんを見下ろしていた

 

「誰かの真似をしても、それはキミの力じゃないよ。その力を持つ人たちが最強なのは、誰かを守りたいと想う気持ちがあるから、前に進むための勇気があるから、未来を語る明日があるからなんだ。上手くは言えないし、言うつもりもないけど………それが〝 ()〟なんじゃないかな」

 

「そうか………〝 ()〟か……次に会う時は……また……飯を奢らせてくれるか?その時は………きっと………」

 

全てを言い切る前にゴローさんは完全に動きを止めた。歯車の動かなくなった機械のように、〝 ()〟は意識を手放した

 

「行くよ……」

 

「ああ、行き先が地獄だろうが共に行くよ」

 

頭の其々のトレードマークに触れ、揃いの白衣を翻し、一人(マキナ)一匹(ディンガ)は歩き出す

 

「「実験開始だ」」




遂に最終決戦!!Dr.ケミストリーをぶっ倒せ!瞬きしてると見逃すよっ!!
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