ディンガ「作者は筆が遅いけど、これはタイキック新さんと一緒だから、ストックは十分なんだろうね」
「ちょっと高いかな」
「キミは先程、あの辺りに居たけどね」
「まぁ、目で把握した範囲なら
落下地点の上に空いた穴を見上げ、頭のゴーグルに触れるマキナ。流石のお手上げ状態に持ち前の頭脳を悩ませる
「やれやれ……流石の博士もお手上げかい?仕方がないね、猫の手で申し訳ないが貸してあげようじゃないか」
固有魔法の
「なる早でお願いするかな」
「了解した」
今日日聞かない死語を放つマキナに対し、ディンガは彼を掴んだ状態で勢いよく天井を突き破る。彼が石頭なのか、それとも天井が脆いのか、願わくば後者であると信じたい
「すんげぇ石頭かな」
しかし、幼い少年にそれだけの配慮は存在しない。自分を掴む赤い猫に対し、さらりと言い放つ
「おやおや、これがリアン又はラリカなら地面に落とされた挙句に放送禁止レベルの肉塊に成り果てているよ」
「今日もディンガは物騒かな」
「博士にだけは言われたくないよ。ふむ、次で最後らしいね……しっかりと掴まっているんだよ」
軽口という名の物騒な会話をしながら、更に二枚目の天井を突き破り、目的地と呼べる地上?にマキナとディンガは降り立つ
「よしっ!ここか」
「目の前に扉があるところからして、恐らくここで間違いありませんわ」
一人と一匹が降り立ったと同時に耳に聞き慣れた二つの声が入る。視界を巡らせ、辺りを見回すと青い髪の青年と茶色の猫が視界に映る
「あれ?リートだ」
「おや…確かにあそこに居るのはリートだね」
離れてからの時間はそれ程であるが、リートとラリカの姿を見つけたマキナたちは彼等に声を掛けた
「マキナ」
「五体満足でなによりかな」
「あぁ、なんとかな」
名を呼ばれ、振り返ったリート。その視線の先に立つ白衣の少年は何時もと通りにけらけらと笑いながら、物騒な事を言い放つ
「それでこの向こうにDr.ケミストリーがいるのー?如何にもって感じの雰囲気だけど」
「あぁ、あのクソ科学者の嫌な匂いがプンプンしやがる」
「そっかー、じゃあケリつけなきゃだねー」
「あぁ、最期の戦いだ」
最終決戦目前にも関わらず、緊張感の欠片すらも感じさせない白衣の少年は能天気に笑う。本当の笑顔、其れを見せない彼ではあるが、その貼り付けた道化の如き仮面を外さない相棒にディンガは追随する
「あっーほっほっほっ!!!まさか、ここまで辿り着くとは思わなかった!まぁ、敢えて言おう!待ちくたびれたぞっ!」
扉を潜った先に待ち構えていたのは、特徴的な笑い声を挙げる白衣の老人。聞き慣れてしまった笑い声さえも不協和音を奏でられているかのように感じ、マキナの顔から笑みが消えた
「ごめんねー、待たせてー。ホントはもっと早くに着く予定だったんだけど、ワケわかんねぇトラップに巻き込まれちゃったんだ」
「博士、それは誰かを待たせた時に使う決まり文句なのは確かではあるけれど、今の場面に使う台詞ではないよ」
「そっかー、間違えちゃったかな。じゃあ、気を取り直して………その耳障りな口を閉じやがれかな、クソジジイ」
「テメェの趣味に付き合う時間はもう終わりだ。ここからは、オレ達の戦いに付き合ってもらうぞ、クソ科学者」
「それはどうかな?AKAGIとNAGUはやられたが、私にも戦闘の手段はあるのだよ」
パチンとDr.ケミストリーが指を鳴らすと、ケミストリーの後ろから人1人が乗り込めるほどの大きさの戦闘用ロボットが出現する。
「あーっほっほっほっ!コレが私の最後の兵器なのだよ!さぁ!一思いに叩き潰してあげよう!」
「叩き潰されるのはお前だよ」
「ボク達が負けるなんてありえないかな」
『あーっほっほっほ!!!自意識過剰も程々にするといいよ!!!』
バシュウゥ!!
Dr.ケミストリーの乗るロボットが、腕をマキナに向けて飛ばしてくる。
ヒョイ!
マキナは体をかがめて腕をかわすが、ロボットの腕と本体を繋げる鉄製の紐がマキナの身体に絡みつく。
「!」
「氷竜の剛拳!!!」
腕に何重にも氷を纏わせたリートが、巨大な拳をケミストリーに向けて突き出す。
ガシッ!
だが、ケミストリーはそれを空いた片手でアッサリと受け止める。
「ふーん?なんか絡みついてるかな。取り敢えず……えいっ!」
その様子を動きを封じられた状態で見ていたマキナは手にしていた双刃剣を一振りし、自分を拘束していた鉄製の紐に振り下ろす
『あっーほっほっほっ!無駄だ!そのワイヤーは特殊な合金にカーボンファイザーを混ぜ合わせた合成金属!!!鈍如きでは傷一つ付かんよ!!』
「言ってくれるねー?デウスとエクスはボクの最高傑作なんだけどー?」
『最高傑作?笑わせてくれる!我が頭脳を総動員させたこのケミストリーキングには及ばんっ!!貴様等の攻撃では私を引きずり出すことも不可能に等しい!!さぁ、抜け出せるものなら抜け出してみるがいい!』
「
自分を拘束していた鉄製のワイヤーに触れ、体内の魔力が均等に行き渡る様に流し込む。刹那、拘束していた筈のワイヤーからマキナの姿が忽然と消えた
『なんだとっ!!?私のケミストリーカイザーの拘束を破った!?なにをしたっ!!』
「なにって移動魔法だけど?一応、言っておくと滅竜魔法はあくまでも二番煎じな上に諸刃の剣、ボクの本来の魔法は
「
「切り札は最後まで見せねぇ方が
「おい、クソジジイ」
『!』
リートは掴まれていた氷を自信で砕き、ケミストリーのロボットの腕から抜け出しており、懐で拳を構えていた。
「誰か忘れてんじゃねぇか?」
『しまっ!』
「氷河螺旋拳!!!」
ズドォン!!!
『ぐぉぉぉぉ!!!』
リートは、冷気の渦を纏った拳でケミストリーロボを殴りつける。
だが、ケミストリーロボは踏ん張りを効かせて、地面に足をつけて後ろにズリ下がる。
ズザザァァァ!!!
ケミストリーが顔を上げると、リートとマキナの2人が剣を振り上げて迫ってきていた。
「「くらえぇぇぇ!!!」」
ズバン!
2人が剣を振り切り、ケミストリーロボにダメージを与える。しかし、ケミストリーロボは一瞬ひるんだだけで体制を立て直す。
「なかなかどうして……一筋縄ではいかねぇかな。あのロボットの動きを封じないと、当たる攻撃も当たらない………かと言って、闇雲にやるだけじゃどうにもならない……なにかしらの弱点はないもんかな」
攻防戦が続く中、マキナは思考を巡らせ、ケミストリーロボに対する攻撃を当てる為に策を練る。機械とはいえ、人の手で生み出された人工物、故に完璧、完全等という言葉は該当しない。人の手で生み出された物体には必ずと言っていい程に改善すべき弱点又は欠陥が存在する、思考を巡らせつつ、視界を巡らせる
『あっーほっほっほっ!無駄な足掻きはやめたまえ!機械こそが世界を支配し、醜い人間は淘汰される!これこそが科学の進歩!!』
「うるせぇ………」
『なに?』
Dr.ケミストリーの言葉に、マキナの中で何かが音を立て、崩れた。理屈よりも先に激しく、ゆらめき、何かが湧き上がる
「お前が科学を語るな………科学も……魔法も……人々の暮らしを支える大事な技術だ……そんなことも理解出来ねぇヤローに……科学者を名乗る資格も、科学を語る資格もねぇ!!お前はボク
「マキナ…フッそうだな」
リートは拳に氷を纏い、ケミストリーを睨みつける。
「オレは、化学なんて全くもって分からねぇ、けど、お前が間違っている事は分かる。ギルドの仲間を潰したテメェに何かを語る資格なんてねぇ」
「「オレ達がお前をぶっ潰す!!!」」
『遺言はそれでよいかな?ならばもう君達は死んでよし!私の科学力の前に手も足も出ないことを思い知らせてあげよう』
ケミストリーが手元のスイッチを押すと、ロボットの両手が変化する。
片手はドリルへと、もう一方の手は赤く高温になり明らかに熱を発していた。
「物質移動!!爆裂魔水晶!!」
マキナはケミストリーロボの目の前に、魔水晶を転移し目の前で爆発を起こそうとするが、
ギュッ!ボンッ!
「なっ!!」
ケミストリーロボは熱を発する片手で魔水晶を握り込み爆発を抑え込む。
「氷竜の凍剣!!!」
スキを見せたと思ったリートは、ケミストリーロボに向けて氷の剣を振り下ろす。
ギャリリリリ!!
「ぐっ…くっ」
バキィン!!
「しまっ…」
ドリルの回転で剣が砕けたリートは、体制を崩して、ケミストリーロボにスキを見せる。
『まずひとりィィ!!!』
ドスッ!!
「がふぅっ!!」
「リート!!!」
巨大なドリルを腹に突き立てられたリートは、後方へ勢いよく吹き飛んでいった。
「大丈夫!!?リート!!」
「ガフッ…あぁ、なんとか腹に張った氷で防ぎきった…」
リートはゆっくりと立ち上がり、マキナと肩を並べた。
「あのロボット、見た目の割に厄介な装備が満載かな……爆裂魔水晶は熱を発する手で止められる……氷の刃はドリルの回転で砕け散る……考えろ…考えるんだ………熱……そうかっ!ひらめいたっ!」
ケミストリーロボの構造を観察し、思考を巡らせ、弱点を探るマキナ。一度は怒りで破棄した思考を鮮明にした瞬間、その脳裏に何かが浮かび、手を叩いた
「何かあるのか?作戦が」
「上手く行くかは微妙なんだけど、あの熱を発する方の手をどうにかする方法があるよ。熱を発する原理は二つ、一つは火などの自然エネルギーが該当する」
「なるほどな、もう一つは?」
「物質を利用する化学エネルギーだね、あのロボットは後者に該当するかな。でも化学エネルギーは自然エネルギーとは裏腹に膨大な量の物質を燃焼させる必要があるんだ。あの熱を発する力は其れの応用と考えた方がいいね……でも、だからこそ利用出来るんだ」
「敵の利点を弱点に変える……みたいな感じか?」
「うん、ロボットを急激に冷やすことでケミストリーは確実に機械を一定の温度まで温めるハズ…そこを更に急激に冷やせば、どうなると思う?」
頭のゴーグルに触れ、意味深に笑うマキナ。彼が見据える先にはサイエンスギルドで僅かばかりの科学的発想を受け入れたリートの姿があった
「そうか…!逆に機体に負荷が掛かり、脆い部分が生まれる…!」
「その通り!物質移動!!
リートの答えにニヤリと笑ったマキナは無数の魔水晶を呼び出す。しかし、其れは十八番芸の爆裂魔水晶とは色味が異なる魔水晶。何が起きるのか、理解不能な其れはロボットの周囲に包囲網を生み出した
「爆発するのが火だけなんてのは大間違いかな。液体、気体、個体、凡ゆるモノが組み合わせ次第で爆弾に変化する!それは水もおんなじだよっ!!さぁ!喰らいなよっ!
マキナが指をパチンと鳴らした瞬間、無数の魔水晶が連鎖爆発を起こし、空間全体的に爆発が巻き起こした煙が立ち込め、互いの姿を視認出来ない程に
白一色に染まった
『おのれ!小癪な真似を!!しかし、何処に隠れようと無駄だ!煙が晴れた時がお前たちの最後だ!!』
「聞いてなかった?だったら、仕方ないから、もっかいだけ言っとくよ……〝
煙が晴れる瞬間を待っていたDr.ケミストリー。だが、視界に捉えたのは爆風に白衣を棚引かせる深紅の髪の少年一人。数秒前までは確認出来ていた青髪の青年の姿が何処にも見当たらない
『リート・イクシーズは何処に消えたっ!!』
「準備はいいですの?!!リート!!」
「あぁ、頼む!」
リートはラリカに空中に運んでもらい、ケミストリーの真上に移動していた。
「それじゃあ、行ってらっしゃいまし!!」
ラリカはリートを、真下にいるケミストリーに向けて全力で投げつける。
『!上かぁぁぁ!!!』
「凍てつけぇぇぇ!!!」
バキィィン!!!
『な…なにィィッ!!!!』
リートは、落ちてくタイミングを見計らいケミストリーロボの熱を発する腕を凍らせた。
『こんなものぉ!!ケミストリーキングの熱で溶かしてくれるぅぅぅ!!!』
「オォォォォォォォ!!!」
シュゥゥゥーッ!!
パキパキパキパキ
ケミストリーロボの発する熱で氷をとかそうとするが、リートはそれでも魔力を送り続けて氷を張り続ける。
『舐めるなぁぁ!!!』
「ォォォォォォォォ!!!!」
ビシビシビシ
次第に、ケミストリーロボの腕が限界を迎え始め、腕にヒビが入ってゆく。
『なっ!!?』
「こ!わ!れ!ろぉぉぉぉ!!!!」
バリィィン!!!
『バカな…!!!』
ケミストリーロボの腕がついに壊され、それと同時にリートが地面に着地しマキナを呼ぶ。
「マキナァァァ!!!」
「準備オッケーかな!!」
マキナは剣を構え、既にケミストリーロボを狙っていた。
「一刀竜・竜災天!!!」
マキナが斬撃を飛ばし、それに続くようにリートも両の手を合わせて巨大な剣を作り出す。
「滅竜奥義!!!氷刀飛影斬!!!」
「「合体魔法!!!天災斬影双!!!」」
リートとマキナの斬撃が合わさり、ケミストリーロボに向かって飛んで行く。
『そんなものぉぉぉ!!!』
ケミストリーロボは、残ったドリルを斬撃に向けて突き出した。
「「オォォォォォォォ!!!!」」
『ぬぅぅぅぅぅん!!!』
ギャリリリリ!!!
斬撃とドリルの激しいぶつかり合いは、どちらも拮抗しているように見えた。
「「いけぇぇぇぇ!!!!!」」
ズッズズッ
ケミストリーロボのドリルに、徐々に切れ込みが入り込む。
『そんなっ!!!馬鹿なぁぁ!!!』
ズッパァン!!!
ついに斬撃はケミストリーロボの胴体事切り裂いてケミストリーロボは大爆発を起こした。
ドカァァァン!!!
「はぁ…はぁ…」
「はぁ……はぁ」
残った魔力全てをぶつけ全力を出し尽くした2人は、同時に地面に膝をつく。
「へへっ…」
「あははっ」
顔を見合わせ、笑いあって拳を合わせる。
「やったな」
「だね!!」
次回は遂にエピローグ、果たしてマキナとリートは自分たちの世界に帰れるのかっ!!