天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……まぁ、ボク自身はあんまり活躍してねぇかな。其れでもマナツの頑張りは褒めてあげなきゃだよね、えらいかな」

マナツ「えへへー!ありがとう!マキナ!それよりも今日はカナねぇの話なんだよねー!」

マキナ「ネエちゃんメインの話でネエちゃんのファンが増えるのは間違いなしかな」


第五十話 天才くんのお姉ちゃん、戦いの中にある想いを汲み取る

「……こっちから着流しヤローの匂いがするかな」

 

「滅竜魔法を使える時の博士は鼻が効くから、索敵が上手い具合に捗るね」

 

楽園の塔内部を走り回っていたマキナとディンガ。彼等は闇雲に走り回る訳ではなく、滅竜魔導士特有の五感を活かし、匂いを頼りにヤギュウの居場所を探りながら、塔内部を移動していた

 

「ディンガ…止まって…何か変な気配がするかな」

 

「気配…言われてみれば……博士!アレを見るんだ!」

 

「……かな?」

 

異様な気配を感じ取り、足を止めたマキナの呼び掛けに応じ、周囲を警戒していたディンガが彼らしくない声量で壁際を指差しながら、叫んだ、つられるように視線を向けたマキナは首を傾げた

 

「…………口が壁から生えてるかな……」

 

「なんとも気味が悪い光景だ……引きちぎるべきだろうか?これは」

 

「いや、触らない方が良いかな。何が起きるかも分からないし……」

 

壁を皮切りに天井まで出現した大量の口、目を疑う状況に流石の一人と一匹の天才も呆然と立ち尽くす

 

『ようこそ、みなさん楽園の塔へ』

 

「知らねぇ声かな」

 

「確かに聞き覚えのない声だね」

 

突如、喋り出した口は拡声器のように誰かの声を響き渡らせる。ジェラールの存在を知らないマキナとディンガは疑問に思いながらも、警戒心を剥き出しにする

 

『俺はジェラール この塔の支配者だ……互いの駒は揃った。そろそろ始めようじゃないか……楽園ゲームを』

 

楽園ゲーム、聞き慣れない単語にマキナは表情を顰めながら、頭のゴーグルに触れる。思考を巡らせ、ジェラールの次の言葉を聞き逃さないように耳を傾ける

 

『ルールは簡単だ……俺はエルザを生け贄としぜレフ復活の儀を行いたい……即ち、楽園への扉が開けば、俺の勝ち。もし、それを阻止できればそちらの勝ち。ただ…それだけでは面白くないのでな、こちらは五人の戦士を配置する。そこを突破できなければオレにはたどり着けん。つまりは5対11のバトルロワイヤル』

 

「5対11……此方側の戦力が増強しているのは確実だけれど、彼方側が五人という極端な戦力なのが、如何にも腑に落ちない……」

 

バトルロワイヤル、それが示すは何方かの勢力が完全に倒れるまでの総力戦を意味する。しかし、ディンガはふと疑問を抱いた

 

「多分だけど、その内の一人はボクとネエちゃんを襲った着流しヤローに間違いないかな」

 

「なら、他の四人もあの襲撃班の中に居たということかい?博士」

 

頭のガスマスクに触れながら、思考を巡らす相棒(マキナ)に問いを投げかけると彼は首を横に振る

 

「一人はそうだと思うけど、残りの三人は違うと思うよ。現に襲撃を掛けてきたであろうメンバーの三人はハッピーが捕まっている可能性がある部屋に集まってたかな。今の口振りから察するにその三人はマナツたちが倒した可能性が高い……つまり、残りの三人は隠し玉的な奴等だと考えるのが妥当だね」

 

「なるほど……確かに、そう考えれば妥当な考えだ」

 

『最後に一つ特別ルールの説明をしておこう。評議院がでここを攻撃してくる可能性がある、全てを消滅させる究極の破壊魔法エーテリオンだ』

 

「「!!」」

 

エーテリオンの名を聞いた瞬間、一人(マキナ)一匹(ディンガ)の顔付きが変わる。その魔法は別名を超絶時空破壊魔法という評議院が保有する兵器魔法にして、上空に描く衛星魔法陣(サテライトスクエア)から発射される大規模魔法である

 

「何故、評議院はエーテリオンの発動を許可したんだい?本来ならば有り得ない事だよ」

 

「ディンガ。科学的な観点から言わせてもらうけど、有り得ないなんて事は有り得ないかな。事象には必ずしも理由が存在するから、何事も成り立つんだ」

 

耳を疑う発言にディンガは、隣で思考を巡らせるマキナに問い掛けた。すると、彼は科学者らしい解答で相棒の発言を咎めた

 

「つまり…エーテリオンの発動にも理由が存在する……博士はそう言いたいのかい?」

 

「あくまでも推測だけどね。でも、そう考えると辻褄が合うと思わない?」

 

「確かに…理に適ってはいるね」

 

他の者たちならば、マキナの発言に疑問符を浮かべるがディンガは相棒であると同時に猫たちの中では高い知性を持つ頭脳派。故に自分の相棒の発言の意味を瞬時に理解し、肯定する

 

「ネエちゃんたちもこれを聞いてるハズかな」

 

「カナが何かをしでかしそうで気が気じゃないね」

 

「ディンガ……こーなったら、ネエちゃんが何かをやらかす前にやるしかねぇかな。ちょっと狡いけど…裏ワザやるよ」

 

「はぁ……キミには敵わないね」

 

頭のゴーグルに触れ、意味深な笑みを見せるマキナ。その表情から何を考えているのかを理解しらしく、肩を竦めながらも(エーラ)を発動させ、翼を広げたディンガは相棒の背を掴み、宙に浮かび上がる

 

「なる早でお願いするかな」

 

「了解した」

 

今日日聞かない死語を放つマキナに対し、ディンガは彼を掴んだ状態で楽園の塔頂上を目指し、羽ばたいた

 

「残念ながら……貴殿がこの上に行くことは敵わぬことなれば…」

 

塔の中腹に差し掛かる寸前、その声は耳に届いた。聞き覚えのある気怠るそうな声にマキナは視線を動かす

 

「見つけた!着流しヤロー!」

 

「ちょっ!?いきなり暴れないでくれっ!落ちるじゃないかっ!!」

 

「彼奴だけはぶった斬る!!」

 

「はぁ……分かったよ、キミのやりたいようにやりたまえ」

 

何を言っても無駄だと悟ったディンガはその声が聞こえた階層に飛び込む。其処に待ち構えていたのは黒い着流しを風に靡かせた射干玉色の短髪に赤い瞳の少年、腰に帯刀した刀に触れる彼は其処に佇んでいた

 

「改めて……ボクはマキナ・アルベローナ、キミを倒す天才魔科学者かな」

 

「某はヤギュウ、ジェラールの刀とでも名乗っておこう…」

 

天才と剣客、二人の少年は互いに名乗り、腰に帯刀した其々の得物に手を触れる

 

「「いざ!尋常に勝負!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「占いの結果だとこっちにマキナが居るって出たんだけどね…何がどうなってんだい?これは」

 

(カード)片手に愛弟の居場所に向かっていたカナ。先程の一件もあり、仲間たちと散り散りになった彼女は目の前に広がる異質な光景に驚きを隠せずにいた

 

「ようこそ…私の領域(テリトリー)に……奇術師(ディーラー)さん」

 

刹那、背後から甲高くもゆったりとした口調の声が聞こえ、カナは振り向いた

 

「………アンタは……そのキツネの面……ははっ、なるほどね。アンタかい?スコルを痛めつけたヤツってのは」

 

其処に佇んでいたのは、キツネの面を頭に乗せた藤色の髪をした女性。直接的に見た訳ではないが、スコルが話していた特徴を頭の中で整理し、目の前の人物が一致したらしく、問いを投げ掛ける

 

「スコル……ああ、あのタンクトップの子どものこと?なに?あの子、貴女の弟かなにかなの?」

 

「冗談はよしとくれよ、私のマキナ()は超天才だよ!スコルみたいな脳味噌まで筋肉なのと一緒にしないでほしいわね」

 

愛弟を彼の宿敵と間違えられ、カナの額に怒りマークが浮かぶ。彼女からすれば、自分を馬鹿にされる事よりもマキナが関係する事柄に関する間違い等の方が頭に来るのだ

 

「そうなの?見た目がはしたないから同類だと思ってたわ」

 

「誰の見た目がはしたないんだいっ!?」

 

「肌を晒す理由が理解出来ないわ」

 

割と薄着なのは理解していたが、イッシュからの発言に思わず吠える。肌を晒す理由が理解出来ないと語る彼女の服装はカナと対照的にワンピースにコートを羽織った露出を極端に抑えた服装である

 

「何処の誰かも知らないヤツに服装をあれこれと言われる筋合いはないね。何を着ようと私の勝手だろ」

 

「それもそうね……それじゃあ、見せてもらえる?噂に名高い奇術師(ディーラー)の力を……接収(テイクオーバー)

 

刹那、イッシュの姿が変化を始める。頭からは狐耳が生え、腰回りには九本の尻尾が生え、服装は着物姿に変化していく

 

「此奴は随分と不思議(ワンダー)な姿になったわね……アンタ、接収(テイクオーバー)を使うのかい。見た感じだとキツネか」

 

「見た目だけなら、そうね。けれど……私の場合は唯のキツネじゃないわ……九つの尾に九種の力を宿した大妖怪・妖狐(・・)、地方によっては呼び名や伝承に差異があるみたいだけど…。それに私は後天的に魔法を手にした妹たちとは違うのよ、この塔に連れてこられる前は闇ギルドに出入りしてた…故にこの魔法は付け焼き刃なんかじゃないのよ」

 

「そう……なら、見せてもらおうじゃないのよ!アンタの魔法ってのをね!札魔法(カードマジック)!!雷桜将来!!」

 

啖呵を切ったカナがホルダーから取り出したカードを地面に投げた瞬間、轟音と共に大量の落雷が発生する

 

「一尾・狐火不知火!」

 

「なっ…!尻尾から火!?」

 

落雷を相殺するかの如く、イッシュの九尾の一本から放たれた狐の形をした炎は雷を飲み込み、巨大な火球に姿を変える

 

「三尾・風来怒涛!」

 

「ぐっ……しまった」

 

突如、突風が吹き荒れ、火球の前に飛ばされたカナは呑み込まれていく。大敗を喫したヤギュウとは異なるが、予想を遥かに超えるイッシュの力の前では、S級魔導士であるカナも赤子の手を捻るかの如く扱いだ

 

「二尾・華天雪景色!」

 

「今度は氷っ!まるで、一度に複数の魔導士を相手にしてるみたいな気分だ…!」

 

次から次へと臨機応変に属性を変化させるイッシュ。一人であるにも関わらず、その戦法は統率の取れた複数の魔導士を相手にしていると錯覚してしまう

 

「当然よ…さっきも言った筈だけど、私の尾は全部で九本あるのよ。その其々に固有の能力が宿っている……こんな事も出来るのよ!!一尾二尾複合・狐火雪景色!!」

 

更なる追撃、辺り一面を氷の世界に変化したかと思えば、蒼くゆらめく蒼炎がカナの周囲を取り囲んだ

 

「先に進むことも、戻ることも不可能。貴女には悪いけど、チェックメイトよ」

 

前進はおろか後退することも叶わないカナを前にイッシュは妖艶さを感じさせる笑みで儚く笑う。しかし、カナの瞳には違った表情にも見えた、その笑みは彼女が溺愛している愛弟が周囲に気を遣わせないように浮かべる偽りの笑顔と重なって見えた

 

「イッシュって言ったわね……アンタはエルザの仲間なんだろ?あの子と話し合おうとは思わないのかい」

 

「今更、話すことなんかないわ。エルザは私たちを裏切った……それ以上のことも、それ以下のことすらも話す必要なんかないわ」

 

「私の知ってるエルザ・スカーレットは誰かを見捨ててまで、自分だけが幸せになる道を歩むような魔導士じゃない。アンタは何かを誤解してるだけなんじゃないのか?」

 

古参メンバーであるが故に様々な魔導士を見てきたカナ。その眼は確かな信憑性があると定評がある、故に彼女は自分が知るエルザ・スカーレットという魔導士をイッシュに語る

 

「分かった風な口を聞かないで……アンタに私たちの気持ちが理解出来るの?自分の命が、大切な誰かの命が、今日か明日かも分からない状況で、只管に恐怖に怯えるしかない不甲斐なさがっ……!!希望を持つことも許されない絶望の日々が…!!」

 

しかし、返ってきたのは予想とは違う反応。クールな雰囲気を感じさせていた彼女の表情は歯噛みする程に険しいモノに変化していた

 

「だからって、エルザを生け贄にしていい理由なんかない……その先にある世界にエルザがいないのを理解してんのかいっ!!アンタは!!」

 

「……さい……る…さ…い……うるさい……うるさい!うるさい!何も知らないクセに!!裏切られたのよっ!!エルザは!!私たちを裏切った!!アイツだけは許さないっ!!三尾四尾複合・怒涛雷鳥!!」

 

雷を伴う暴乱の嵐が吹き荒れ、彼女の心を代弁するかのように景色が荒れ狂う

 

「確かに…私は何も知らない。それでもエルザはアンタたちを、仲間を忘れた事は一度もなかったって言ってたわ。それとも……アンタが知ってるエルザは誰かの犠牲を餌に喜ぶようなヤツなのかっ!!」

 

「仕方ないじゃない!!ジェラールがそう言ったんだからっ!!エルザが私たちを見捨てた挙句に一人だけ逃げたって!!私たちの八年を!苦労を!絶望を!知らないクセに!!アンタに何がわかるのよっ!!親友(エルザ)に裏切られた私の気持ちが!!分かってたまるかってんだ!!!」

 

攻撃の手を止め、感情のままに叫ぶイッシュ。其処には大人びた雰囲気から一転し、子どものように喚き散らす年相応の彼女がいた

 

「甘ったれんのも大概にしなっ!!人に敷かれたレールを歩いただけで世界を知った風な口を効くんじゃないよっ!!私はある目的の為に故郷を飛び出してから、沢山のモノを見てきた!その全てに意味があって、世界は成り立ってんのよっ!!エルザが裏切った?其れはアンタが知ってるエルザの話か?違うだろ!アンタ自身の目で確かめろ!!親友なら尚更だっ!!」

 

襟首を掴み、凄みを感じさせる表情で、カナは捲し立てる。その時、イッシュの脳裏に光景が、懐かしい光景が浮かんだ

 

『そっか〜、エルザは将来、魔導士になりたいんだ』

 

『だ、誰にも言わないでよ?ロブおじいちゃんから聞いた話ではギルドっていう組合に入るんだって!ねぇ!イッシュも一緒に魔導士やろうよ!』

 

『私が?あっはっはっはっ!無理無理!魔導士なんて柄じゃないって〜!』

 

『えぇーっ!イッシュならなれるよ!それでね!私と一緒にコンビを組むのっ!』

 

『エルザとコンビ?ちょーウケるー!』

 

他愛もない会話、二人で笑い合っている時だけは奴隷だったことを忘れ、未だ見ぬ明日という未来についてを語り明かした。何時からだろう、その明日を迎える日が怖くなったのは。何時からだろう、彼女との夢に蓋をしてしまったのは。何時からだろう、彼女を信じられなくなってしまったのは。八年のという歳月は彼女の中にある全てを変えてしまう程に、長く、辛く、暗く、彷徨い歩く彩りを忘れた黒一色の世界となっていた

 

「会いたいよ……エルザ……」

 

長く閉ざされていた心、冷たい氷に囚われていた彼女の想い。其れは正に彼女が抱く本来の気持ちだった

 

「会えるよ…アンタはまだその為の道を歩く為の足を持ってるじゃないかい」




楽園の塔最上階に急ぐエルザたち、その前に現れた更なる刺客!遂に野生の牙が本領を発揮する!見せてみろ!傭兵の力を!!

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