天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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スコル「前回のあらすじ、最強のファンキー魔導士のスコルこと俺は……髪長ゲキダサヤローとの戦いに勝利!なっーはっはっはっ!俺に不可能はねぇぜ!」

ルーシィ「よく言うわよ、あたしたちも手伝ったのに。それはそうとナツとマキナたちは何処に行ったのかしら…」

ハッピー「ルーシィ。汁が出てるよ」

リアン「まぁ、ばっちい。触っちゃダメよ?ハッピー」

ディンガ「ルーシィ。是非、その汁が出る原因を研究させてくれないかい?無論、頭が割れるかもしれないが気にしないでくれ」

ルーシィ「ヒゲ抜くわよ!?ドラネコたち!!というか、ディンガは発想がエグいわ!!」


第五十二話 武闘家くん、食べられる

「………う〜ん?何処だ?ここは……アマノとジュビアは迷子になりやがったのか?それに斬撃竜や桜髪たちもいねぇ。なんなんだぁ?この塔は」

 

楽園の塔内部、早々にマキナたちと逸れたセイランは周囲を見回し、状況把握を試みるが塔内部のこと等を彼が知る筈も無く、只管に彷徨っていた。しかし、自分が迷子になっているという自覚は彼に無く、迷子なのはマキナたちという極論に至っている

 

「ホーホホウ、我が名は正義(ジャスティス)戦士の梟!!正義の為に犠牲となれ!侵入者よ!」

 

「んなーーーーっ!!と、鳥が喋ったぁぁぁぁーーーっ!!すんげぇ〜〜!!」

 

突然、目の前に姿を見せた珍妙な格好の男、梟と名乗る彼の体には二つのロケットが装備され、肩からは翼が生えている。正に梟と人間のハイブリッドと呼べる珍獣が其処に佇んでいた

 

「アニキ!アニキ!トリが喋ってる!あのトリ飼おうよー!」

 

「無茶言うなよ……マナツ……あんなトリ飼うのをじっちゃんが許してくれるワケねーだろ?」

 

「えぇ〜〜〜っ!!アニキのケチ!」

 

「マナ?トリなんかよりも可愛いあたしがいるんだから、我慢しにゃさい」

 

「そうだよ、オイラたちも飛べるから猫だけどトリみたいなもんだよ」

 

背後から聞こえてきたのは、賑やかな声たちをセイランは知っていた。彼が一方的に敵対視する白衣の少年の幼馴染とその兄、更に相棒たちである

 

「桜髪にちんちくりん!無事だったのか!」

 

「おー……洗剤!」

 

「おいコラ、誰をちんちくりん呼ばわりした?何処を見やがったかを正直に言ってみろ」

 

まさかの人物たちの登場にセイランは歓喜するが、ナツは彼の名を覚えておらず、マナツは身体的な特徴に触れられた事で今にも噛みつきそうな勢いで唸っている

 

「洗剤?ねぇ、リアン。ナツはなんの話をしてるの?オイラ良くわかんない」

 

「大丈夫よ、ハッピー。今のはお姉ちゃんも理解出来なかったわ。こういう時にマキとディンガはにゃにをしてんのよ?解説役が居ないとしっかりとした本筋に戻れないわ」

 

「リアンも良くわかんないよぉ〜」

 

その様子を側から見ていたハッピーが姉貴分に問えば、返ってきたのは求めていた反応とは異なる答え。普段は此処で兄貴分のディンガからの指摘が入るのだが、今は不在であるが故にハッピーの頭には疑問符が飛び交う

 

「桜色の方は火竜(サラマンダー)……緑色は花竜(アイドル)だな?そうか……お前たちが悪名も名高い竜兄妹(ドラグニルブラザーズ)か…我が正義の前に貴様等を葬る!」

 

「アニキー!あのトリってば、草生えるんだけどー、正義のトリなんだってー!」

 

「正義のトリだかなんだか知らねぇが……邪魔するなら容赦しねぇさ。やるぞ!!マナツ!!」

 

「あいあい!」

 

名を馳せるからには訳がある、其れが名声だろうと悪名だろうとナツには関係はない。故に彼は義妹に呼び掛け、梟の前に立ち塞がる

 

「先手必勝!!火竜の鉄拳!!」

 

「花竜の舞踊脚!!」

 

「ホーホホウ……」

 

我先にと駆け出したナツに続き、マナツも得意の蹴り技を活用し、梟に肉薄しようとする。しかし、その時、怪しい鳴き声を挙げた梟が動きを見せた

 

「桜髪!避けろ!ソイツからはイヤな気配がする!!!」

 

「助言等……今更、遅い!ミサイルホーホホウ!!」

 

セイランの呼び掛けも虚しく、梟の放ったミサイルがナツとマナツを目掛け、真っ直ぐと向かって来る

 

「ちぃ………!!竜衝!!」

 

「「いっ………!?ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」

 

ミサイルが直撃するよりも前にセイランの放った滅竜の力を持つ衝撃波が二人を弾き飛ばす。突然の裏切りにハッピーは目を疑う

 

「何するんだ!ナツたちは仲間だぞ!!」

 

「やめなさい……ハッピー。今のはセイランが正しいわ」

 

「り、リアン……だけど!」

 

「よぉ〜く見なさいよ」

 

「…………なっ!」

 

抗議するハッピーを咎め、リアンが示した方向を見ると未だに止まらないミサイルはセイランを捕縛した状態で飛び続けていた

 

「うぷっ…………乗り物………さ、最悪………」

 

「の、乗り物!!!」

 

「「うぷっ…………」」

 

「ソコ!想像だけで酔わないの」

 

ミサイルがセイランを掴み上げた事により、滅竜魔導士特有の乗り物酔いが発動する。更に乗り物を回避した筈のナツとマナツは想像だけで気分を悪くしていた

 

「狙いは外れたが………弱った相手を確実に仕留めるはハンティングのセオリー!」

 

狙いに定めていた竜兄妹とは異なる人物の介入に最初は驚いたが、ハンティングに於いては何が起きるかは分からないのは当たり前。故に梟は焦らずに狙いをセイランに変える

 

「今だ!!キャプチャーホーホホウ!!」

 

「んなっ!!」

 

「ゔぇっ!?」

 

「下品ね」

 

梟が起こしたまさかの行動に誰もが目を疑う。その行動とは落下したセイランを丸呑みにするという有り得ない行動である

 

「食べた………食べたよ!アニキ!!」

 

「アイツは食いもんだったのかーーーっ!!」

 

「違うわよ」

 

「ていうかなんで食べたんだろ………セイランを……」

 

「私は補食した者の魔力を消化する」

 

ハッピーが抱いた疑問に答えた梟。まさかの発言に二人と二匹は言葉を失った

 

「兎に角………ソイツも今は仲間だ!!返せ!トリ!!」

 

「そうだー!アーちゃんの友だちに意地悪するなー!!」

 

「マナ!ナツ!待ちなさい!」

 

関係は薄くとも、仮にも仲間であるセイランを救う為に梟に向かっていくナツとマナツ。リアンの呼び掛けも虚しく、彼等は止まらない

 

「ショッキングホーホホウ!!」

 

刹那、向かい来るナツとマナツを前に梟が拳を構えると巨大な衝撃波が放たれた。その技はセイランが放つ打撃が霞むレベルの圧倒的な力に昇華されていた

 

「今のは……セイランの技!!」

 

「魔力を力に変えたみたいね………ハッピーはマキたちを探しなさい」

 

「あいっ!リアンはどうするの?」

 

「あたしはなんとかして、このトリをマナたちと食い止めるわ」

 

的確な指示を弟分に飛ばしたリアンは得意の変身魔法で、姿を人型に変化させ、吹き飛ばされた竜兄妹の元に駆け寄る

 

「リアン!アイツ!強いよー!どうしよう!」

 

「落ち着きにゃさい。どんな相手にも必ず弱い点は存在するの……冷静に考えれば、倒せない相手じゃないわ」

 

「弱い点?マキナが泳げないみたいにー?」

 

「ちょっとニュアンスは違うけど……似たようなモンね。行くわよ!」

 

「うん!咲かすよっ!」

 

「よっしゃあ!!燃えてきた!!」

 

「おいらも直ぐに戻るよ!」

 

並び立つ三つの背中を見届け、ハッピーは指示通りにマキナとディンガたちを探す為に一時的な離脱。強敵の梟を前に真剣な表情で向き合う二人と一匹(一人)は戦闘体制を取る

 

(俺はどうなった……クソ………なんだこれ……!!ヤベェ………意識が………)

 

梟の腹の中で目を覚ましたセイランは、薄れる意識で自分が如何なる状況であるかを把握しようとする。しかし、体の自由を奪われた彼の判断能力を鈍らせていく

 

(ギヒッ……お前、強いらしいじゃねぇかよ。俺の相手しろよ)

 

(セイラン……食べ過ぎはダメですよ。アマノから言われてるでしょ)

 

(セイラン!アタイと一緒にギルドに入らないか?一緒に暴れよう!)

 

打撃の滅竜魔法、その力を得てからは誰も傷つけないように孤独を愛した。しかし、彼の周りには次第に大切な人々が集まり、知らぬ間に孤独では無くなっていた。今も一時的ではあるが協力関係のかつての敵たちが自分の為に闘っている

 

「ウガァァァァァ!!!俺を簡単に捕まえた思うなっ!!トリ野朗がァァァァ!!」

 

「ホボォホォ!!?」

 

次から次へと浮かぶ走馬灯を振り切り、強引に意識を覚醒させたセイランは自力で梟の体内から這い出る

 

「ふぅ………舐めんな……こちとら、伊達に武闘家たぁ呼ばれてねぇんだよ…!」

 

「セイラン!無事だったんだー!」

 

消化液に塗れながらも生還を果たしたセイランは堂々と啖呵を切る。友人の生還にマナツは花が咲いたように笑う

 

「さぁ…こっからが本領発揮だぜ…ギヒッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所詮はこの程度………本気を出すにも値せんとは……愚かゆえ」

 

刀を鞘に戻し、身を翻すヤギュウ。その足元にはまるで辻斬りにでもあったかの如く、体中を切り傷を刻まれた白衣の少年が力無く倒れていた

 

「ネコの御人。これ以上の戦闘は双方の為にもならぬゆえ……早々に立ち去れ」

 

「断る…………マキナは絶対に諦めない……だから、僕は逃げないよ」

 

意識を失ったマキナを庇うかのように巨大スパナを構えるディンガは、ヤギュウからの忠告を突き返す

 

「その心意気……見事ゆえ。せめてもの手向けだ、苦しまずに逝かせてやるとしよう」

 

拒まれるとは思っていなかったのか、意外そうに瞳を見開いた後、ヤギュウは刀を向けた

 

「待てよ………オメェの相手は……ボクだろ……何処見てやがるかな…」

 

「博士……!?」

 

「まだ立つか……マキナ・アルベローナ」

 

傷だらけの体に鞭を打ち、無理矢理に立ち上がるマキナ。その姿にディンガは驚き、ヤギュウも彼に視線を向ける

 

「仲間たちの声が聞こえた……エルザの帰る場所は妖精の尻尾(ボクたちの家)だ。泣くなら、ボクたちの側で……笑うなら、ボクたちと一緒に……その為なら、ボクは妖精の女王(エルザ)の剣になる。来なよ、〝X(見えないもの)〟が見える時……全ては終わりを告げる。瞬きしてると見逃すよ……〝X(見えないもの)〟が見えるのはこっからだ」




仲間の為に刃を振るうマキナ、己の為に刃を振るうヤギュウ。二つの刃が交差する時に起こる化学反応とは……!

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