天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……ヤギュウ・シンゲツとの激闘に勝利を果たすが、気が抜けたのか気絶しちゃったかな」

ディンガ「大丈夫かい?博士。まぁ、今回は仕方がないね……しかし、かなり話が飛んだね。体感だと四話は飛んでそうだ」

デウス「なんの話ですかっ!?」

エクス「今更だろ」


第五十四話 天才くん、三日分を食い損ねる

『ねぇ、もしも……もしもだよ?わたしと貴方に子どもが生まれたら、どんな子になるかな?』

 

何も無い空間、響くのは優しい女の子の声

 

『そうだなぁ……キミに似て、優しくて、友だち想いな良い子じゃないか?やっぱり』

 

其れに応えるように物静かな青年の声も聞こえる。誰だろう、知らない声、けれど、懐かしいとも感じる声。不思議だ、知らないハズなのに、自分はこの声を知っている

 

『じゃあ、貴方に似たら……研究熱心な天才になるわね』

 

『来るといいねぇ……そんな未来が』

 

誰かは知らないし、知ろうとも思わない。其れでも二つの声を聞くだけで、自分の中にある知らない感情が湧き上がるのを感じる。何だろう、幼馴染に抱く気持ちでも、姉に抱く気持ちでも、義父が向ける気持ちのいずれとも違う感情。だけど、懐かしく、心地良い子守り唄のような声が暗闇に響き渡る

 

『此処まで潜るほどに力を解放したか……我が心臓を受け継ぎし、人の子よ……』

 

次に聞こえたのは、貫禄のある低い声。聞き覚えのない声だが、彼はこの声も知っていた。滅竜の力を使う度に流れ込む意識、その姿を明確に視認した事は無いが、声だけは知っている

 

『〝炎竜王(イグニール)〟の子が竜の力に目覚めた……(うぬ)にも同じ力が宿っている。第二世代?其れは、人が名付けた哀れなる総称に過ぎぬ……(うぬ)は我が心臓を受け継ぎ、才に溢れた者……高みに至る日を期待しておこうぞ……目覚めの時だ、行くがよい』

 

声に導かれ、彼は顔を上げた。暖かく、優しく、包み込むような光と明るく、元気に溢れた光が導くように輝きを放っていた。其処に真っ直ぐと手を伸ばそうとした時、彼の意識は途絶えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ…………お……お……お腹空いたかなぁーーー!!」

 

アカネビーチのホテル。高らかに響き渡る少年の声。久方振りに聞く元気な声に、その場にいた全員が彼に駆け寄る

 

「マキナ!起きたのかい!?」

 

「ネエちゃん。おはようかな」

 

「ぶぇぇぇぇ!よがっだぁぁぁぁ!!マギィバァァァァァ!!」

 

「マナツはなんで泣いてるかな?」

 

自分を抱き締める姉、泣き喚く幼馴染を前に状況が理解出来ずに困惑するマキナは首を傾げる。自らを天才と自負する彼をしても、理解不可能な状況が存在するとは驚きの一言である

 

「マキ。アンタ、かれこれ三日は寝てたのよ」

 

「三日?三日かぁ……………はっ!という事はボクは十五食も食べ損ねてるかな!?どーりで、お腹が空いてるワケだ」

 

「博士は食いしん坊だね」

 

「いや、先ずは一日五食計算な事を突っ込みなさいよ」

 

「ルーシィ?五食はまだ大人しい方よ、普段のマキは十食計算よ」

 

「どんな胃袋よっ!!」

 

「あい!其れがマキナです」

 

最早、突っ込むだけ野暮ではあるが、ルーシィは染み付いた性分故に突っ込まざるを得ない

 

「マキナ。私の為に慣れない力を使わせた……いくらでも、食べるといい。夕食までは時間がある、暫くは其処にある果物を摘んでいろ」

 

「うん、ありがとう。もぐもぐ……ごちそうさま」

 

「「胃袋どうなってんだ!!お前はっ!!」」

 

労いの言葉を掛けてきたエルザの好意に甘え、身近にあった果物を食べ始めたと思った瞬間、瞬きもしない間に果物は姿を消した。余りの速さに全員から突っ込みが放たれる

 

「………セイランとアマノにジュビアはー?」

 

「三人はギルドに向かったよ。一刻も早く、私たちの仲間になりたいんだとさ」

 

「アーちゃんが仲間かぁ〜!楽しくなりそ〜!ねっ!リアン!」

 

「そうね」

 

「セイランのヤローとは、まだ決着が着いてねぇからな……帰ったら、早速ケンカだ!」

 

見当たらない人物たちを探すマキナの疑問にカナが答えると、嬉しそうにマナツは笑い、セイランは拳をぶつけ合う

 

「…………誰これ?」

 

「あぁん?もっかい寝るか?このもやしが!!」

 

「ウルセェ、山に帰れ」

 

和やかな雰囲気から、何時もの景色に変わる。火花を散らしあう天才と獣、其れは普段の風景が帰ってきた証拠である

 

「…………エルザ、少しだけ話せる?」

 

「イッシュ…!」

 

仲間たちの声に耳を傾けていたエルザは自分を呼ぶ声に気付き、部屋の前に佇む親友の名を呼ぶ

 

「ねぇ、エルザは前に言ってくれた事を覚えてる?私とコンビを組みたいって言ってくれたわよね」

 

其れはいつの日か、交わした大切な約束。忘れている訳がない、親友と交わした約束を。未だ見ぬ明日という未来についてを語り明かした日を。だからこそ、緋色の髪を靡かせ、彼女は笑う

 

「忘れるハズがない。今も私は同じ気持ちだ……イッシュ、お前が望むなら、私は……イヤ……妖精の尻尾(私たち)はお前たちを歓迎する。一緒に行こう」

 

「お願いしていい?」

 

「イッシュねぇがギルド!?無理無理!協調性ねぇじゃん。ちょーウケるー!」

 

「あ?なんか言ったか」

 

「ぴえ……!ご、ごめんなさい!うわ〜ん!エルねぇ!イッシュねぇがいじめるぅ〜〜!!」

 

「泣くな、レティ。お前は本当に泣き虫だな」

 

姉に睨まれ、涙目で震えるレティはエルザに飛び付く。久しぶりに呼ばれた愛称に笑い、優しく彼女の頭を撫でる

 

「全く……ホントに甘いわね…エルザは…」

 

「レティ。ショウたちはどうした?」

 

「…………あの子たちは行かないみたい…残念だけど…」

 

「そうか………ナツ!グレイ!マキナ!マナツ!カナ!スコル!直ぐに〝花火〟の準備だ!!」

 

「「あいあい!」」

 

妹分に問えば、他の仲間たちは共に歩む事はしないと知る。その言葉だけで、何かを察したエルザは即座に仲間たちに呼び掛け、部屋から飛び出す

 

「さぁ〜てと………起き抜けで状況は分からねぇけど、不思議(ワンダー)にぶちかましてやるかな!ディンガ!」

 

「準備は万端だよ………」

 

「さぁ!マキナ!仲間たち(・・・・)の門出だ!!不思議(ワンダー)に行くよ!」

 

「あいあい!」

 

エルザを追随し、砂浜に辿り着いたマキナは姉からの呼び掛けに応え、両手を打ち鳴らす

 

物質魔法(アポートマジック)!!発明No.009!爆裂魔水晶(ボムラクリマ)!!」

 

札魔法(カードマジック)!!爆破(エクスプロージョン)!!」

 

「点火」

 

マキナが両手に出現させ、高らかに放り投げた爆裂魔水晶(ボムラクリマ)にカナが掲げた(カード)から発せられた爆発が重なり、更にディンガの投げた金属粉が形を生み出し、夜空に巨大な花火を打ち上げる

 

「あたしもやるー!花竜の花吹雪!」

 

「火竜の咆哮!!」

 

「あら、綺麗ね」

 

「あい!」

 

「牙狼砂塵爆燐!!」

 

続くように、マナツの出現させた花吹雪にナツが火の息吹で点火させ、更に其処へスコルは砂を爆風で巻き上げると巨大な花火が夜空に浮かび上がる。色とりどりの花火、旅立つ仲間たちを送り届ける〝(道標)〟、其れを導くは緋色の髪を靡かせた妖精の女王と呼ばれる女性、その名をエルザ・スカーレット

 

「何処にいようと私たちは仲間だ………忘れるもんか………忘れてなどやらないさ……強く歩け……私も強く歩き続ける!!また会う日まで………約束だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御久しゅう御座います……我が君…ヤギュウ・シンゲツ、任を終え、帰還致しました」

 

空に浮かぶ魔導戦艦、その一室に鎮座する男性を前に傅くのは、着流しの少年。その名をヤギュウ・シンゲツ、彼は本来の居場所であるこの場に舞い戻っていた

 

「久しいな…ヤギュウよ。ウルティアに報告は受けている……ジェラールは死んだとな」

 

「事の顛末を見届けることは出来なかったゆえ…全ては知りませんが…。しかし、八年の歳月は長過ぎたゆえ……微量ではありますが…仲間意識を覚えてしまいました……おっと…本音が」

 

「相も変わらず……喋り過ぎる男よ…。して、ヤギュウよ……お前に聞く」

 

「なんなりと…我が君」

 

傅きながらも相変わらずなヤギュウは男性の問いに頭を下げたまま、聞き入れようと問いを促す

 

「あの哀れな科学者が生み出した傀儡(・・)は如何なる強さであった」

 

「……………誰のことです?其れは」

 

「知らぬならば構わん……退がれ」

 

「はっ……」

 

傀儡(・・)、其れが誰を指すかはヤギュウにも分からない。しかし、其れは後に彼の運命を変える一人の少年を示していた事を今は知る由もない

 

「古き友たち………お前たちの傀儡(息子)は我が終生の願いたる大魔法世界(・・・・・)実現のための礎としてやろうぞ」

 




休暇を終え、新たな仲間であるイッシュとレティを連れ、ギルドに帰還を果たしたマキナたち。彼を待ち受けていたのは新しいギルドだった!

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