天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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本当は昨日の夜9時に投稿しようとしたのよ?でもねー、書き出したら止まらないから気付いたらこの時間だった……よくあるよね!


第五話 天才くん、猿と戯れる

「マキナ!アンタの白衣を貸しなさいよ!」

 

「子どもから追い剥ぎするつもりー?エクスの背中に掛けてある毛布なら貸してあげるよー」

 

寒さに耐えかねたルーシィはあろう事か、自分よりも歳下のマキナからトレードマークである白衣を奪い取ろうとするが即座に拒否され、代わりに彼は跨っていたエクスの背にある毛布を指差す

 

「仕方ねぇな……後で返せよな?無駄乳」

 

「誰が無駄乳よ!?」

 

毛布を渡しながら、ルーシィの象徴的な二つの果実を無駄乳呼ばわりするエクスに突っ込みを放ちながら、彼女は毛布に包まり、腰にぶら下げていた束から一つの鍵を取り出す

 

「ひ…ひ…ひ…開け…時計座の扉……ホロロギウム…!!!」

 

「わぁ〜時計だ」

 

「時計に顔がある!リアン!顔があるよ!」

 

「ホントね。というかマナは大丈夫?」

 

「えっ?なにが?」

 

ホロロギウムと呼ばれた時計に呑気に驚くマキナ、その隣では先程まで食当たりで死にかけていたマナツが盛り上がっているが、リアンが彼女を心配すれば、当の本人は既に自分の醜態を忘れ、首を傾げる

 

「「あたし、ここにいる」ともうしております」

 

「何しに来たんだよ」

 

「時計が代弁してる!草生えるんだけど〜」

 

「時計さんはどういうメカニズムで動いてるの?やっぱり歯車?それとも星霊だから、心臓?」

 

ホロロギウムが中で話すルーシィの言葉を代弁する姿にナツは突っ込みを放ち、マナツは爆笑し、マキナは機械と生物の化身であるホロロギウムに瞳を輝かせる

 

「「あたしよりもホロロギウムに夢中なのは何故?」と申しております。ちなみに私の場合は何方ともが当てはまります」

 

「なるほどねー」

 

「「そう言えば、マカオさんはこんなところに何しにきたのよ!?」と申しております」

 

「あれー?知らないで付いてきたのー?」

 

「草生えるを取り越して、花咲き誇ってるね!ルーシィは!」

 

「というかバカじゃない?普通は下調べするわよ」

 

「「何で罵倒されてるの!?あたし!」と申しております」

 

矢継ぎ早に放たれる罵倒の嵐に突っ込むルーシィ、その姿に見兼ねたナツが足を止め、振り返る

 

「凶悪モンスターバルカンの討伐だよ」

 

「「あたし帰りたい」と申しております」

 

「はいどうぞと申しております」

 

「あい」

 

「拾い食いしないようにねと申しております」

 

「マナじゃないのよ?と申しております」

 

「毛布はネエちゃんに渡しといてねーと申しております」

 

「デウス……お前の毛布をよこせ……俺様がさみぃ…」

 

「私も寒いんだが?」

 

「お前なんざどうでもいい」

 

「殴るぞ!?」

 

恐怖から帰りたいと告げるルーシィに対し、彼等は冷ややかだった。雪山よりも冷たい心で彼女を突き放し、雪道を進んでいく

 

「マカオー!!どこだー!!!バルカンにやられちまったのかー!!」

 

「八つ裂きされてないといいねー」

 

「「怖いことを言わないでくれる!?」と申しております」

 

マカオを探しながら、雪山に向かい、彼の名を呼ぶナツ。その隣ではマキナが相変わらずの笑顔で物騒な発言をしており、ルーシィが突っ込みを放つ

 

「ウホ?」

 

「………………スコルじゃん!何やってんの?ねぇ!マキナー!スコルがいたよー!」

 

「スコルって誰?」

 

先頭を歩いていたマナツが目の前に現れた人影に呼び掛ければ、スコルという名前を聞いた瞬間にマキナの顔から笑顔が消える。この表情から察するに名前に聞き覚えが無い訳ではなく、態とはぐらかしている様にも見えるが今は其れよりも優先事項がある

 

「人間の女!しかも二人!」

 

「……………バルカンだったー!似てるから間違えちゃった!助けてェェェェ!マキナーーー!!」

 

「言われなくても……物質移動(アポーツ)!!」

 

スコルだと思っていた人影がバルカンである事実に驚愕しながら、連れて行かれそうになりながらも助けを乞うマナツとデウスの毛布を入れ替える

 

「ふぅ……なんとかなった」

 

「ありがとぉー!マキナ!」

 

「「あたしも助けなさいいよおおおおおお!!」と申しております」

 

救出されたマナツがマキナに飛び付く中、誰もが安堵していたが約一名だけは違った。ホロロギウムに入ったままのルーシィはバルカンに担がれ、吹雪の中に姿を消す

 

「マキナ!どうしよう!?ルーシィが食べられる!」

 

「そうね。ある意味では食べられるわね」

 

「博士!バルカンから僅かにマカオさんの匂いが!」

 

「ありゃあ、接収(テイクオーバー)だぜ。どうするよ?博士」

 

「う〜ん………どうするもこうするも…やる事は一つじゃない?」

 

雪風に白衣を靡かせ、頭のゴーグルを触るマキナ。相変わらずに笑顔に変わりはないが彼特有の意地の悪さを出し、ナツたちも口角を上げる

 

「マキナ!ルーシィは何方だ!」

 

「デウスとエクスに乗れば、直ぐに見つかるよー。よろしくー!」

 

「「博士の御命令とあらば…!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なんでこんなことに…なってるわけぇ!!なんかあの猿テンション高いし!!」と申されましても………」

 

雪山の山中にあるバルカンの住処に連れ込まれたルーシィは周りで踊り狂う一匹を前にホロロギウムの中で叫ぶ

 

「女……」

 

「ひっ!」

 

自分を前に頬を染める色欲猿にルーシィは恐怖で硬直し、わなわなと震える。その時だった

 

「ちょっと!ホロロギウム!!消えないでよ!!!」

 

「時間です。ごきげんよう」

 

「延長よ!延長!!ねぇ!!」

 

時間切れとなり、星霊界に戻るホロロギウムにルーシィは抗議するが戻ってくる事はなく、彼女にバルカンの荒い息が当たる

 

「「ちょっと待ったぁ!!」」

 

刹那、その声は響いた。幼くも逞しい二つの声、ルーシィは洞窟の入り口に視線を向ける

 

「天が呼ぶ!地が呼ぶ!誰が呼んだか!最強にして最高!巷で大評判の天才児!マキナだよー」

 

「いついかなる時も挨拶を忘れずに!挨拶はいつだって元気よく!おはようございますからのいってきます!今日も元気にこんにちは!魔法の都で人気急上昇の美少女ちゃん!マナツだぜ!」

 

「「我等!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」」

 

効果音が鳴り響きそうなくらいに決め台詞を放つマキナとマナツ。年代的に好きそうな分野であるのは間違いないが、今やるべきことなのか?とルーシィは唖然とする

 

「オイ!!猿!!マカオはどこだ!!!」

 

「隠してると痛い目にあうよ!泣いちゃうくらいに!」

 

「あれがマカオだよ?理解してる?」

 

バルカンがマカオを隠したと決め付けるナツとマナツ。それにマキナが問い掛ければ、二人は目と口を開き、明らかにそうと言わんばかりの驚愕を見せていた

 

「話を聞いてなかったんだねー」

 

「下町のポポロとピピラじゃねぇのか!?あのバルカンは!」

 

「そうだよ!あの二人の悪名はかなりの有名だよ!?」

 

「知らないかなー」

 

見当違いな推理をしていた兄妹に、マキナのやんわりとした突っ込みが飛ぶ。その間にバルカンの側にいたルーシィをハッピーとリアンが救出し、彼女は猿を睨み付ける

 

「開け!金牛宮の扉!タウロス!」

 

鍵の束から、金色に輝く鍵を取り出した彼女が叫ぶと呼応する様に光の中から巨大な影が飛び出した

 

「MOーーーーーー!!!お呼びですか!ルーシィさん!相変わらずの良い乳ですなぁ!ややっ!乳はありませんが可憐な美少女が!」

 

飛び出した影基タウロスがルーシィの胸元の果実に興奮しながら、マナツの慎ましやしかな胸元を指摘する。刹那、ピキッと何かが音を立てた

 

「アァ?誰の胸が絶壁だ!アニキ!あの牛が今日の夕飯だよ!今すぐに焼いて!ミディアムにして!」

 

「ダメよ?マナ。焼き方はウェルダンにするべきよ、そうしないとお腹壊しちゃうわ」

 

「エロいけど味方だから!マナツもリアンも落ち着いてェェェェ!!」

 

「ナツ。雪は食べられないんだよー」

 

「そうなのか!?マナツに喰わせねぇようにしねぇとな」

 

「あい!女性の時代です」

 

タウロスに喧嘩を売るマナツとリアン、其れを止めるルーシィ。完成に蚊帳の外である男性陣は女性の時代の到来に傍観者となっていた

 

「ウホッ!オデの女を奪うな!」

 

「俺の女? それは聞き捨てなりませんな!「オレの女」ではなく「オレの乳」と言ってもらいたい」

 

「ルーシィ……アイツ、殴っていい?殴っていいよね?」

 

「気持ちはわかるけど味方だから……って!マキナ!?アンタは何をやってるのかしらぁ!?」

 

軽蔑の眼差しでタウロスを見るマナツを必死に止めながら、ルーシィが視線を巡らせれば、白衣の少年が洞窟内部に何かをばら撒く姿が目に入る

 

「これはね、爆発の魔力を封入した魔水晶(ラクリマ)だよー。バルカンごと消し飛ばしてやろうかなーと思ったんだー」

 

「アンタ……小さいけど、発想が明らかに犯罪者よりよね……」

 

「という訳で………ポチッとな♪」

 

けらけらと笑いながら、白衣から取り出したボタンを押す。その瞬間、耳を劈かんばかりの轟音が響き渡り、氷の洞窟に亀裂が生じる

 

「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」

 

「ああ……避難させるのを忘れてたー」

 

「「このバカ科学者ァァァァ!!!」」

 

崩れゆく洞窟を逃げ惑いながら、けらけらと笑うマキナに女性陣と二匹の突っ込みが飛ぶ。然し、一人だけバルカンを前に佇む青年がいた

 

「良く聞けよ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーは仲間で家族だ。だから、俺は仲間を守る為に………心火を燃やしてぶっ潰す!!

 

「やるしかないかぁ………デウス!エクス!形態変化(カンビオファルマ)!!」

 

「咲かせましょう!大輪の花を!!」

 

ナツが炎を纏った拳を構える姿に、呆れながらもマキナは双剣を構え、マナツは両手をぱんっ、と打ち鳴らす

 

「火竜の鉄拳!!」

 

天才斬撃(ジーニアスラッシュ)!!」

 

花竜(かりゅう)の花吹雪!!」

 

ナツの燃ゆる拳、マキナの飛ぶ斬撃に吹き飛ばされたバルカンを、マナツの舞い散る花の嵐が呑み込む。正に三位一体、恐ろしいまでに息の合った布陣にルーシィは驚く

 

「花竜!?てことはまさか!」

 

「察しの通りよ。マナもナツと同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、その息吹は花に命を与え、その羽ばたきは花に芽吹きを与え、その瞳は花に心を齎らす……彼女こそが妖精の尻尾(フェアリーテイル)花竜(アイドル)!マナツ・ドラグニルよ!」

 

効果音が響き渡るくらいの声量で叫ぶリアン。ルーシィは唖然としながらも渦中の人物であるマナツを視線を向けた

 

「その呼び名はやめてくれる!?恥ずかしいから!」

 

「可愛いよー?マナツにぴったりだよー」

 

「ちょっ!ホントにやめて!恥ずかしい!」

 

彼女は笑顔で褒めるマキナを前に顔を真っ赤に染め、手を左右に振りながら慌てふためいていた。その姿は正に花竜(アイドル)の呼び名に相応しく、可愛らしいとルーシィは思った

 

「まあ、一応は目的が達成出来たから良しとしようよー」

 

「「目的……あっ!マカオ!」」

 

「そうよ!マカオさんは!?」

 

「焦んなよ。博士が言ったろ?目的は達成してんだよ」

 

元来の理由であるマカオの存在を忘れていたナツたちをエクスが諭し、バルカンの吹き飛んだ方向を見るように視線を促す

 

「な、何ぃ!?」

 

「光出した!新手の病気!?」

 

「まぁ怖い」

 

光を放つバルカンを前に騒ぎ出す竜兄妹、リアンも口先だけではあるが見慣れない現象に怖がっていた。然し、彼は何時もと変わらない笑顔で、けらけらと笑っていた

 

「いやいやマカオだよー。エクスの読み通りに接収(テイクオーバー)だったねー」

 

「鼻には自信があってな」

 

接収(テイクオーバー)って……?」

 

「身体を乗っ取る魔法です。ミラジェーンさんやエルフマンさんも使っている魔法ですが……まさかバルカンも使用していたとは…」

 

「生物学的には新発見だから、ボクは嬉しいかなー。マカオもおつかれー」

 

疑問符を浮かべていたルーシィにデウスが解説する隣で科学者の観点から新発見を喜んでいたマキナは、バルカン基マカオに呼び掛けた

 

「………マキナか……すまねぇな……」

 

「直ぐに診察するね、ロメオが待ってる……一緒に帰ろー」

 

意識が混濁しながらも、自分に気付いたマカオの体を診察からの手早い動作で治療するマキナ。彼を待つ息子の名前を出し、エクスの背に乗せる

 

「情けねぇぜ……19匹までは倒したんだがよ……20匹目に接収(テイクオーバー)されちまった…」

 

「20匹も倒せるなんて、草生えるどころか咲き誇って花だよ!それも満開!ロメオもきっと喜ぶよ!ねっ!マキナ!」

 

「だねー。男が筋を通したんだ、誰も笑わないよー」

 

「あい!」

 

「褒めて使わせてあげるわ」

 

「何故にリアンは上から目線なんでしょう」

 

「アホだからだ」

 

「帰ろうぜ!マカオ!」

 

去り行く背、今はまだ追い付けない背中にルーシィは自分の無力さを痛感しながらも、彼等の後を追う

 

(いつかきっと……あたしも……あそこにいくんだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽が傾き、街を黄昏色に染め上げる時間帯。ロメオは一人でマキナたちの帰りを、父の帰りを待ち侘びていた

 

「ロメオー」

 

「………マキナ兄……それに……あっ!」

 

自分を呼ぶ兄貴分の声に気付き、顔を上げたロメオはナツに肩を貸されながらも歩く見慣れた男性に気付き、走り出す

 

「よっ……帰ったぜ」

 

「父ちゃーーーーん!!!父ちゃん!父ちゃんだよね!?ホントに!」

 

「当たり前だろ?他に誰に見えるってんだ。まぁ……アレだ……心配かけてすまなかったなぁ……ロメオ」

 

「いいんだ、俺は魔導士の息子なんだから……それにさ、男なら親父を信じるのがそれが一番の親孝行だからね!」

 

「おお!言うじゃねぇか!だったら、クソガキ共に絡まれたら言ってやれ、テメェの親父は怪物を19匹も倒せんのか?ってな」

 

他愛もない親子の時間、それを見守っていた面々は颯爽と身を翻し、足早に去り行く

 

「マキナ兄ーー!ナツ兄ーー!マナツ姉ーー!ハッピーー!リアン!デウスにエクス!それにルーシィ姉もーー!ありがとーー!!」

 

去り行く彼等に礼を述べるロメオ、それに応える様にひらひらと手を振るマキナは頭のゴーグルに触れる

 

「お腹すいたから、わたあめ食べようかなー」

 

「マキは食いしん坊ね。マナはにゃんか食べた---にゃぁぁぁ!マナぁぁぁぁ!!」

 

「み、道草……恐るべし……」

 

マキナの底無しに呆れていたリアンは、自分の隣にいた相棒にリクエストを求めるが、道端で蹲る彼女を前に悲鳴を挙げる

 

「デウス。マナツはどしたの?」

 

「公園に生えてた草を食べたらしいです」

 

「なるほど……診察するね」

 

死にかけている幼馴染を前に、デウスに理由を聞いたマキナは冷静な態度で彼女に聴診器を当てる

 

「マキ!容態は!?」

 

「食あたりです」

 

「「またかよっ!!」」

 

「あい!それがマナツです」

 

「やっぱり……アホだぜ…」




新居を手に入れたルーシィ、だが!彼女の前にまたしても奴らが!彼女の部屋の命運は如何に!

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