天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……何とかギルドに帰りついたけど、外注に任せたからか、仕様が違うことに不満を覚えたかな」

ディンガ「やはり、自分の手でやらなければならないということだね」

デウス「業者委託あるあるですね」

エクス「まだ壊れるかもな」

マキナ「エクス……不吉なことを言わないでほしいかな」


第五章 とある魔科学の天才少年R
第五十六話 天才くん、取材される


「…………もうすぐ完成しそうかな……これでまた……笑い合えるかな…ニィちゃんと」

 

マグノリア郊外にあるマキナの自宅。その一角に設けられた研究室で、巨大な機械を前に黙々と手を動かすのは他ならぬマキナ・アルベローナである

 

「精が出るね、博士。これは収穫祭に向けての準備かい?」

 

「う〜んまぁね…ホントは違うけど、似たようなモンかな」

 

「ラクサスやフェルマ、ガルムたちにも見てもらえると良いね」

 

「そうだね……でも…なかなかどうして…上手くいかないかな」

 

昔を懐かしみながら、何かを作る手を止めようとしないのは流石であるが、マキナの表情は僅かに曇っていた。姉や幼馴染、仲間たちには見せない弱い自分、それを唯一の意味で曝け出せる相手がディンガだった。相棒にして助手という妙な肩書きはあるが、マキナにとっては親友と呼べる大切な存在なのだ

 

「きっと、大丈夫さ。いずれはラクサスたちと昔みたいに笑い合える日が来るよ」

 

頭のガスマスクに触れ、優しく笑うディンガ。不思議と彼が言うなら、いずれは昔のように本当の兄弟のように笑い合える気がする、そうマキナは感じていた

 

「あっ!マキナ!ここにいたー!もうっ!今日は大事な日なのに!」

 

「マナツ?今日ってなんかあったー?」

 

背後から聞こえた元気に溢れる幼馴染(マナツ)の声に気付いたマキナは、何時もの笑顔の仮面を貼り付け、呑気に問い掛ける

 

「えぇ!?忘れたの!?今日は週刊ソーサラーが取材に来る日だよ!」

 

「あー……そういえば……そんなのを聞いた気がする……ボクも行かなきゃダメ?」

 

「ダメだよ!デウス!エクス!急げー!」

 

乗り気ではないマキナを引き摺り、リビングで寝転んでいたデウスとエクスに呼び掛けるマナツ。何とも献身的である

 

「仕方ありませんね。ほら、博士は顔を洗ってください」

 

「オカンかよ」

 

「誰がだ!!」

 

何時ものように口煩くマキナの世話を妬こうとするデウスに、エクスが呟けば、その言葉に突っ込みが放たれる

 

「記者に目を付けられた理由が分かる?あたしが可愛いからよ」

 

「リアンは今日も自分大好きかな」

 

「それが彼女の魅力だよ」

 

「自信のある女の人カッコいい!さっすがはリアン!」

 

「今の何処に褒める要素が?」

 

「今更だろ」

 

ギルドに向かいながら、相も変わらずに自分大好きなリアンにマキナは呆れるが、ディンガとマナツだけは彼女を褒め称えており、デウスが突っ込みを放つも、エクスが真面な意見を返す

 

「新装したのは構わないけど………昨日今日で、既にごちゃごちゃになってるかな……」

 

「落ち着くじゃないか、この方が」

 

「えっ?なんか変わったの?」

 

「マナったら、もうギルドが造り直されたのを忘れてるわ」

 

ギルドに着くや否、何時も通りの騒がしさを見せる仲間たちを前にマキナは呆れるが、ディンガは居心地の良さを感じており、マナツはきょとんしと表情で首を傾げる

 

「…………そうだった!ギルドを建て直したんだ!!」

 

「「「ホントに忘れてたのかよっ!!!」」」

 

本当に忘れていたらしく、驚愕するマナツに一人と二匹の突っ込みが飛ぶ

 

「相変わらず、朝から元気ねー……おチビちゃんたちは」

 

「ルーシィかな。おはよー」

 

「ホントだー!おはよー!ルーシィ!今日は髪型が何時にまして変だね!」

 

会話を聞き付け、姿を見せたのはルーシィ。普通に挨拶するマキナとは裏腹に、挨拶と同時に貶すマナツ、これで本人に貶している自覚が無いのだから、驚きである

 

「朝から何気に貶さないでくれるかしらぁ!?全く……これは、ファッションよ。キャンサーに切ってもらったのよ」

 

「星霊を私欲に使ってるかな」

 

「郷に入っては郷に従えよ、使えるのはなんだって使うわ…!!あたしの週ソラデビューのために!!」

 

「わぁールーシィが燃えてるよー?リアン」

 

「欲に塗れるとああなるのよ。マナは良い子だから、分別を弁えた大人になりなさい」

 

「わかったー……」

 

((多分、よくわかってないんだろなぁ……この娘は…))

 

欲望の為に燃えるルーシィを反面教師にしろと教授するリアンに対し、適当な相槌を打つマナツを見ながら、彼女が状況を理解していない事を心中で誰もが呆れていた

 

「ohーー!!ティターーニア!!!」

 

刹那、正面玄関から甲高い声が響き渡る。聞き慣れない声にマキナたちは首を動かし、視線を向けた

 

「収穫祭の準備をしたいから、帰りたいんだけど……ダメかな」

 

「ダメだってばー!」

 

「なんか何時ものマキナらしくないわね。何時もなら、取材するならボクの発明を見るかなー!とか言うのに」

 

消極的な態度を見せるマキナをマナツが引き留め、ルーシィは意外そうに驚く。何時もならば、誰よりも目立つ事に心血を注ぎ、天才である事を誇るには有り得ない態度だ

 

「今回ばかりは博士の気持ちを思うと取材よりも優先するべきだ」

 

「マキナの気持ち?」

 

「ディンガ。余計なことは言わなくていいよ」

 

「すまない……失言だ、忘れてくれたまえ」

 

煮え切らない態度のマキナ、それに首を傾げるルーシィを前に喋り過ぎの相棒を咎める。その瞳には翳りが見え、何時もの笑顔ばかりの彼とは正反対に見えたが、ルーシィはこれこそが本来のマキナ・アルベローナではないかと密かに感じていた

 

「ファンキー魔導士のスコルゥゥゥ!今は何をしてるんだい?」

 

「あ?誰だオメェ?」

 

一方で、甲高い声の主である記者は次から次へと魔導士たちに質問を繰り返し、カウンターに胡座を掻いていたスコルに行き着く

 

「少しだけ質問いいですか!!」

 

「質問?構わねぇぜ、よく分からねぇけど」

 

「キミとジーニアスはライバルらしいけど、戦績はどうなってるんだい!?」

 

正に禁句、強さに拘るスコルと頭脳明晰なマキナ。その戦績を聞くという事は、喧嘩の火種を生み出すということだ

 

「はんっ!んなもんは俺の勝ち越しに決まってんだろ!」

 

「計算もできねぇかな、戦績はボクの勝ち越しだ」

 

「あんだとゴラァ!?やんのかボケェ!!」

 

「おー!ジーニアス!!!俺が一番会いたかった魔導士の一人!!キミの理想は誰だい?やっぱりギルダーツ?それともカナ?」

 

「教えないよー」

 

「相変わらずウゼェ喋り方だぜ」

 

「山に帰れ」

 

「ほーら、ケンカしないのよー。おチビちゃんたち」

 

何時通りに火花を散らしあうマキナとスコルを前に取材を続ける記者、その様子を見兼ねたルーシィは二人の仲裁に入るが視線は記者に向いており、取材を受けるつもり満々である

 

「キミはマナツ!アイドルと呼ばれるキミに質問だ!」

 

「その呼び名はやめてよ!!恥ずかしいから!!」

 

「そうか?マナにピッタリだろ」

 

「いいなぁ〜!レティも呼び名が欲しくなっちゃったぁ〜!」

 

「アーちゃんとレーちゃんは黙ってて……」

 

「マナツに近付くんじゃねぇ!!オメェが記者か!!いっつも俺の事を悪く書きやがって!!!」

 

「YES!!!」

 

「俺が何か壊したとか、壊したとか、壊したとか!!」

 

「事実かな」

 

「cool!!cool!!cool!!」

 

正にその通りなのだが、マキナの横槍等は気にせずに記者は興奮を隠し切れない様子だ

 

「ヤッベ、超カッケェ!!!あ…握手してください!!!」

 

「うっせぇ!!」

 

「まぁ、野蛮な握手ね。ハッピーは見習っちゃダメよ」

 

「あい!」

 

「リアン。あれは握手ではないよ?あれは顔面破壊右ストレートさ」

 

握手という名の暴力を見ながら、ティータイムに興じる三猫。我関せずな態度を貫く姿は猫らしいと言えば、猫らしいとも言える

 

「オー!そこに居るのはハッピーにリアン、ディンガの三猫!!キミたちは何故、羽があるんだい?」

 

「「「猫だからです」」」

 

「関係なくない!?というか猫にまで負けた…!!」

 

三猫にまで負けたルーシィは床に崩れ落ち、声にならない程の声量と共に涙を流す

 

「ルーシィ。さっきから何を騒いでるの?はしたないわよ」

 

「そうそう、イッシュの言う通りだよ。それよりもアンタちょっと飲みな」

 

「おぉ!ディーラーのカナ!!それに新人さん!?cool!!cool!!cool!!」

 

「カナも記者もはしたないわね」

 

「とか言って、イッシュねぇってばカメラ目線じゃ〜ん!鬼ウケる〜!」

 

「あ?なんか言ったか」

 

「ぴえ……!ご、ごめんなさい!うわ〜ん!エルねぇ!イッシュねぇがいじめるぅ〜〜!!」

 

「イッシュ、レティを泣かせるんじゃない。可哀想だろう」

 

姉に睨まれ、涙目で震えるレティがエルザに飛び付くと、彼女はイッシュを咎める

 

「それでは歌います。ガジルwithセイランでBest Friend」

 

「聞きやがれ!アーイエ!」

 

何時の間にかステージに上がっていたフォーマルな姿のガジル、その隣でマイクを片手に場を盛り上げるアフロ姿のセイラン。其処から先は何時も通りにケンカになり、予想通りに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の悪評が広まったのは火を見るよりも明らかである

 

「…くだらねぇ……弱者が馴れ合いやがって……」

 

「笑えねぇな……コイツは…」

 

「ラクサス。そろそろじゃない?始めましょうよ……ゲーム(・・・)を」

 

「ああ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)は俺がいただく。フェルマ、ガルム!奴等を呼び戻せ」

 

「「了解」」

 

そして、歯車は回り出す。マキナの想いとは反対に、最悪の逆回転という形で回り出すのであった




遂に来たる収穫祭、しかしマキナは何時に無く笑顔に翳りがあり………

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