天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……イヤイヤながらも記者の取材を受けたかな」

ディンガ「彼の記者魂はかなりのモノだね、見習いたいものだ」

マナツ「うみゅ?ディンガは記者じゃないよ?」

リアン「マナ、言うだけ無駄よ」


第五十七話 天才くん、収穫祭を満喫する

『マキナ、今日はお前の晴れ舞台なんだってな。仕事に行く前に見届けてやるから、俺を見つけたら、〝右手を上に上げて、人差し指と親指を立てろ〟。ソイツがお前と俺の合言葉だ』

 

『何の意味があるかな?それに』

 

初めての収穫祭でのパレード直前、兄貴分と交わした他愛もない会話。あの頃の彼は優しく、本当の兄のように自分を可愛がってくれた。其れが何時からだろう、知らない間に距離が生まれ、次第に会話をするのさえも少なくなり、今までのように〝ニィちゃん〟と呼ばれることすらも拒否するようになった

 

『〝例え、姿が見えなくても、遠く離れていようと、俺はお前を見てる〟って意味だ。随分と前に俺が考えた。だから、特別に…お前にだけは教えてやるよ、マキナ』

 

『特別?わーい!ありがとかな!ニィちゃん!』

 

『ったく……お前は直ぐに表情に出やがるな…それはそうと、がんばれよ』

 

『うん!』

 

懐かしい記憶、二年前の事なのに遠く感じる。それだけ、自分たちの間に生じた距離は深いのだろう。記憶の中で優しく頭を撫でてくれた彼は何処にも居ない、否、居るには居るが今の彼には誰の声も届かない。弟分(マキナ)の声も、幼馴染(カナ)の声も、それに祖父(マカロフ)の声すらも届かないのだ

 

「……はか……はかせ…博士……起きてください!博士!」

 

「ん………んんっ……あれー?デウス……もう…朝かな…」

 

自分の名を呼ぶ声に目を覚ましたマキナは視界に映る白き機械狼の名を呼ぶ。如何やら、発明の途中に寝落ちしていたらしく、外からは朝の日差しが差し込んでいた

 

「発明の途中に居眠りしてたんですよ…全く…やけにうなされていましたがどんな夢を?」

 

「えっとねー、激辛料理をマナツに振る舞われる夢かな」

 

「ホントにどういう夢ですか!?それは!!」

 

適当な夢を創り出し、けらけらと笑うマキナ。創造主にして主人である彼の心中を理解しながらも深くは切り込まずにデウスは律儀に突っ込みを放つ、其れは長年の付き合い故の気遣いに相違ない

 

「おう、博士。〝ファンタジア〟の準備は進んでるか?」

 

「やれやれ、発明中に寝落ちとは……キミらしいといえばキミらしいね」

 

その声を聞き付け、ディンガを背に乗せたエクスが姿を見せる。方向から察するに街で収穫祭に向けての準備を確認してきたようだ

 

「ディンガにエクス……どうだったー?お祭り気分のマグノリアはー?」

 

「相変わらずさ、色々な露店にたくさんの観光客。今年も賑やかになりそうだよ」

 

「そっかー」

 

「で?博士、話を戻すが〝ファンタジア〟の準備は進んでるのかよ」

 

「本番までには何とか形にはなると思うよー」

 

〝ファンタジア〟、それは収穫祭の日に行われる大パレード。マキナは近年、このパレードの締めに魔科学を用いて創り出す発明でのフィナーレを任されている。地道に仕事の合間を縫いながら、進めてきた今回の発明、それはマグノリアの住民、妖精の尻尾の仲間たち、大好きな姉、相棒たち、見てもらいたい相手は数あれど、彼が誰よりも見て欲しい相手は依然と強さだけを追求し、自分とは異なる道を歩んでいる

 

「そういえば……ルーシィがミス・フェアリーテイルコンテストに参加するみたいだよ」

 

「優勝はネエちゃん以外にありえねぇかな。もしくはマナツ」

 

「おや、こればかりは納得が出来ないね。優勝はリアン一択だよ。彼女以上に可憐なレディは存在しないからね」

 

「こういう奴等が組織票を入れるんだよな」

 

「博士もディンガも身内には甘いからな」

 

ミス・フェアリーテイルコンテスト。其れは収穫祭のもう一つの目玉行事であり女性魔導士たちにとっては戦場とも呼べる。マキナは姉と幼馴染以外に投票するつもりは無く、ディンガも恋人しか眼中に無い為に他の参加者への興味は皆無である

 

「楽しい日になると良いかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お祭りー!うわーい!リアン!あっちにおいしそうなのがあるよ!」

 

「マナ、はしゃいでると転ぶわよ」

 

収穫祭当日、賑やかな街並みにはしゃぎ回るマナツの肩に乗りながらも彼女を咎めるリアン。その後ろをついて行くルーシィは保護者に見えなくもない

 

「妹は元気いっぱいだっていうのに……アンタはまだ調子悪いの?」

 

「おおう…おう……祭りだぁ……食えるモンかたっぱしから食うぞぉ……」

 

元気溌剌な妹とは違い、調子が悪そうなナツはルーシィからの指摘も他所にハッピーと共に露店に向かっていく

 

「あい!リアンがおこづかいくれたから、ナツにお魚買ってあげるよ」

 

「ハッピーってお小遣いもらってたの!?」

 

「可愛い弟にひもじい思いはさせられないわ」

 

「どんだけ過保護なのよ!?」

 

小遣い制だったハッピーの懐事情を知り、其れを与えていたのが今日も過保護なリアンにルーシィが吠える

 

「そうだよ、食べ過ぎは良くねぇかな。調子が悪い時にバカ食いは良くないよー」

 

「そうよね!流石はマキナ!アンタからも----って!!どっから持ってきたのよ!?その大量の食べ物はっ!!」

 

医学の心得がある為に診断を下すマキナであるが、その手には大量の屋台飯があり、誰よりも収穫祭を満喫していた

 

「博士。その煮干しの串刺しは何処に?僕も食べてみたいよ」

 

「わたあめの隣にあったから、案内するかな」

 

「すまないね」

 

「マナはお腹を冷やすから、冷たいものを食べ過ぎないようにするのよ?ちょっと、聞いて---にゃぁぁぁ!マナぁぁぁぁ!!」

 

「や、屋台飯……恐るべし……」

 

屋台飯に盛り上がるマキナとディンガを見ながら、相棒に冷たいものは駄目だと注意を促すリアンであったが、道端に蹲る相棒を前に悲鳴を挙げる

 

「デウス。マナツはどしたの?」

 

「焼きそばの屋台の鉄板にこびりついた焦げを食べたらしいです」

 

「なるほどー、じゃあ診察するね」

 

死にかけている幼馴染を前に、デウスに理由を聞いたマキナは冷静な態度で彼女に聴診器を当てる

 

「マキ!容態は!?」

 

「食あたりです」

 

「ミス・フェアリーコンテスト……でたい……」

 

「ダメだよー」

 

執念でコンテスト参加を希望するマナツにドクターストップならぬ幼馴染ストップが掛かり、彼女は医務室に連行されていく

 

「おや、マキナ。もうすぐコンテストなのに、どうしんだい?」

 

「あっ、ネエちゃん。マナツを医務室に送ってくるねー。大丈夫だよー、ネエちゃんの勇姿は絶対に見るから」

 

ギルドの医務室に向かう道中、呼び止められたマキナが視線を動かすと珍しくも露出を控えたカナが酒瓶片手に佇んでいた

 

「なんて優しいんだい!アンタは!賞金が出たら、なんでも食べさせてやるからね!姉ちゃんに任しときな!」

 

「わぁー、楽しみかな。がんばってねーネエちゃん!」

 

賞金という名のごちそう代を手に入ると解り、マキナはコンテストに向かう姉の背を見送る

 

「優勝はカナ前提なんですよね…博士は」

 

「リアンは出ないのかい?」

 

「マナを看病するのが先よ。それにミスコンに出なくても、あたしが可愛いことは周知の事実よ」

 

「おや、これは一本取られたね」

 

「相変わらずですねぇ…リアンは」

 

「つーか、その自信はどっから来んだよ」

 

意外なことにコンテスト参加を拒否したリアンの辞退理由を知り、ディンガは納得し、デウスは呆れ、エクスは何時も通りに悪態にも似た文句を吐く。正に三者三様な反応だ

 

「うぅ……アタシも出たいよぉ〜」

 

「何度も言うけど、ダメだよー。だから、今日はこれで我慢してねー」

 

「うみゅ?わっ!ちょっ!マキナ!」

 

そして、一方でマキナは未だに参加を諦めないマナツを抱き抱え、謂わゆるお姫様抱っこの体制を取る

 

「どうしたのー?」

 

「えっと……あの……重くない?」

 

「重くないよー。寧ろ、軽いかな」

 

「えへへ〜!マキナ大好き!」

 

「知ってるよー」

 

マナツからの発言にマキナは優しく笑い、ギルドに続く道を歩く。其れが、決別という名の兄弟喧嘩に発展するとも知らずに彼は一歩一歩踏み出すのであった




仲間たちと行動せずに一人で収穫祭を満喫しようとしていたスコル、そんな折、友人と逸れたという少女と出会い、成り行きで行動を共にすることになり、次第にスコルの中で何かが芽生えはじめる……

*書いてたら、収穫祭というイベントに絡ませたいのが浮かんだので、其方を先に書きまーす。カナの水着イベントはもうちょいお預けです☆

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