ディンガ「僕とリアンも姉を止めるために博士とは別行動だ。今回、出番はないけれど、無理は禁物だよ?博士」
マキナ「言われなくてもわかってるかな」
「……………」
「ディンガ」
マキナと別れ、目的の人物ならぬ猫が居るであろう場所に足を進める白衣を靡かせた
「……どうしたんだい?マイレディ」
僅かに反応が遅れたが、何時ものように冷静な態度と変わらない呼び方で彼女に向き直るディンガ。しかし、その手は頭のガスマスクに触れているのをリアンは見逃さなかった
「理由はどうあれ、今は集中しなさい。強さに固執して、周りにある大事なモノも見ようとしない
「………いやはや……キミには敵わないね。僕は期待していたんだ、何時かは昔みたいにフェルマが笑ってくれるんじゃないかって……。兄さんやキミ、それに彼と過ごしていた昔のように楽しい毎日を送れる日が来るんじゃないかって……けれど、彼女はそれを望んでいない……もう、僕は彼女にとっては取るに足らない存在なんだろうね……不甲斐ないよ、姉の苦しみに気づいてあげられない弟……なかなかどうして、上手くいかないものだね…姉弟というのは……」
「バカね、アンタは」
「え?」
内に秘めた想いを曝け出すディンガ、其れを聞いていたリアンは呆れたように肩を竦めた後に苦笑し、皮肉を言うかの如く罵倒する。まさかの罵倒に不意を突かれたディンガは素っ頓狂な声を挙げた
「ホントにバカ、信じられないくらいに大バカ、呆れるくらいにおバカよ。フェルマがアンタを嫌ってる?そんなワケないじゃない。あの子はちょっと不器用で、嫌味で、協調性に欠けてて、あたしに比べると可愛くにゃいかもしれない……でもね、あの子は、フェルマは何時もディンガの幸せを願ってる……にゃぜか、分かる?アンタが血を分けた弟だからよ」
「……………リアン。やっぱり、キミは誰よりも優しいね。それに可憐だ」
「ふふっ…惚れ直した?」
苦笑するディンガを揶揄うように妖艶な笑みを浮かべ、悪戯っ子のように問う
「ああ……それに吹っ切れたよ。キミの言葉は何時も僕を奮い立たせてくれる……ありがとう」
頭のガスマスクに触れた後、愛用の巨大スパナを取り出したディンガは自分の体に魔力を流し込んでいく。刹那、その姿は赤い短髪に猫目が特徴的な白衣の青年に姿を変えていく。他の人間と差異があるとすれば、頭には猫耳が、臀部からは尻尾が生えているところくらいだ
「あら、久しぶりに本気になったわね?良いわ、乗り掛かった船だし……マナたちの命が懸かってるからにはあたしも出し惜しみはしにゃい。行くわよ、ディンガ」
青年に変化したディンガの隣に並び立つようにリアンも姿を黒髪ポニーテールが特徴的な猫耳美少女に姿を変化させる
「ふぅん?なに?姉に会いにくるのに、恋人同伴とか……結婚の挨拶にでも来たの?アンタは」
マグノリアの活気に溢れた街中、件の存在を見つけたディンガとリアン。その場所、マグノリアが一望可能な展望台に、彼女、フェルマは佇んでいた
「フェルマ、今日はキミと姉弟喧嘩をしにきた。キミに何を言おうと無駄だとは理解している……なにせ、キミは分からず屋だ。だからこそ、僕は決めた。キミを殴ってでも止めようと……それが僕にしてあげられるキミに対する唯一の反抗だ」
「はぁ?笑わせんじゃないわよ。アンタとわたしが喧嘩?何時から対等になったのよ……ホント、そういうのがムカつくのよ。良いわ、相手してあげる……覚悟は出来てんでしょうね?愚弟に愚妹」
「誰が愚妹よ、こーんなに可愛いあたしを捕まえて……姉弟子で義姉だからって調子に乗らにゃいでほしいわ」
「アンタの生意気なとこが昔から大っ嫌いよ、わたしは」
そう告げ、フェルマも姿を変化させていく。茶髪をベースに白と黒のメッシュが特徴的なボーイッシュな雰囲気を纏う女性となったが、ぴこぴこと動く猫耳と左右に揺れる尻尾はディンガやリアンと共通している
「さぁ、実験開始だ」
「あたしの前に跪きなさい」
「答えの決まってる解答が如何に安易なのかを証明してあげるわ」
そして、
「
先ず最初に仕掛けたのは、リアン。十八番とも呼べる半月を描く様に脚を動かすと同時に放たれた斬撃にも似た衝撃波を飛ばし、早期決着を試みた
「
「……っ!」
微笑みながらも冷たい眼差しのリアン、その姿にリアンは僅かではあるが恐怖にも似た感情を抱く
「それにまだまだ、爪が甘いのよ。本物はこうやるのよっ!!見てなさい……
「…くっ!?…きゃぁぁぁ!!」
「リアン!?」
そして、フェルマは高く掲げた足を踏み込み、一気にリアンへと肉薄し、その腹部に蹴りを叩き込む。その時間は僅かに数秒、まるで一瞬の出来事にディンガは蹴り飛ばされたのがリアンであると気付くのが遅れた
「弱いわね、それでS級なんて笑わせんじゃないわよ。アンタがわたしと対等?勘違いも度を超えると呆れるわ。身の程を知りなさい」
「……分かってるわよ……そんなことは……!でも、でもね……負けられないの…!アンタにとって、ラクサスが大切なように……あたしにとってはマナが大切。だから!あの子を傷付けることは何があろうと許さない!!」
「そうだね、僕もマキナと約束してきたんだ。キミを止められるのは、他の誰でもない………僕たちだ!」
例え、何があろうと仲間は見捨てない。その揺らがぬ信念はリアンにも、ディンガにも受け継がれていた。フェルマの前に立つのは、知能が高い故に誰からも理解されずに孤独感に苛まれ、一人で寂しさを紛らわしていたあの頃の面影は姿形もない。巨大スパナを刀剣宛らに構え、リアンを庇う姿は一人前の魔導士そのもので、フェルマの頭の中に存在する彼とは異なっていた
「ディンガ。それがアンタの答えってワケね?姉に逆らうとどうなるかをまだ理解出来てないみたいね…!」
「それはキミだ。弟を見縊らないでもらえるかい?覚悟をしたまえ」
互いに向き合うフェルマとディンガ。姿に差異はあるが、二人は双子。姉弟であると同時に誰よりも近しい存在、故に彼等は火花を散らす
「
「
フェルマが弧を描くかのように足を動かせば、ディンガは巨大スパナを腰に携えると柄の部分に手を掛ける
「
「
フェルマの放った無数の衝撃波とディンガの放つ飛ぶ斬撃が打つかり、大地が揺れる程の衝撃を生み出す。其れはまるで空間同士が揺れているかのように錯覚に陥りそうになるくらいに高密度の魔力が互いを打ち消そうと衝突する
「なんで……なんでよ…!アンタも!兄さんも!!なんで、わたしから離れようとするのよっ!!!何時だって、貧乏くじを引くのはわたし!家族のためを思っても、アンタは自分から外の世界に飛び出した!!兄さんだって!!わたしたちを捨てた!!なのに、家族?笑わせないで!!!」
「違う!!僕が外の世界に飛び出したのは、リアンが手を差し出してくれたからだ!それに兄さんは僕たちを見捨てたりなんかしない!兄さんは何時も僕たちのことを第一に考えてくれていた!!自分のことしか考えてないのはキミだ!!いい加減に目を覚ますんだ!!このバカアネキ!!!」
ぶつかり合う二人の感情、冷静なディンガと嫌味なフェルマ。相反する双子は似ているようで似ていない、其れは誰の発言だったかは誰も覚えていない。しかし、それは間違いだった。二人は他者を思う時間が、互いを理解する時間が足りていなかってたに過ぎない。故に彼等は似ていた、だからこそのぶつかり合い。蚊帳の外になったリアンは其れを眺めているだけしか出来なかった
『ケンカはよくないよ!仲良くしなきゃだよ!』
「そうよね……マナ。いい加減にするのはアンタたち二人よ!!バカ姉弟!!」
脳裏に浮かぶ相棒の言葉、何時も喧嘩をする誰かの側に寄っては花が咲いたような笑顔で全てを仲裁してしまう彼女の姿が瞼の裏に浮かんだ。そして、気付いた時には体が動き、二人の間に割って入る自分がいた
「リアン!いきなり、危ないじゃないか」
「何のつもりかは知らないけど……負け犬ならぬ負け猫は大人しく這いつくばってるのがお似合いよ」
「別にアンタたちの喧嘩には微塵も興味ないわ。でもね、我慢できないのよ……ディンガも、フェルマもあたしにとっては大事な家族。二人が争うのにゃんか見てられない……だから、これでトドメよ…!ディンガ!」
「ああ…何処までもお供するよ…マイレディ!」
魔力を高め、巨大スパナに流し込むディンガ。その肩に手を置き、瞳を閉じるリアン。何をするつもりかは分からないが、フェルマの本能が告げていた、今から放たれる技はかなりの威力だと、しかし、不思議なことに防御体制を取ろうとはしなかった
「「
ディンガの斬撃、リアンの衝撃波、二つが一つとなり、強大な力を伴う
「あ〜あ………負けちゃったわね……ホントに笑えない…ねぇ、ディンガ……兄さんはホントにわたしたちを見捨てたワケじゃないのよね……」
「ああ、再会することがあれば、僕が其れを証明してみせる。約束だ」
「そう………約束よ……」
それだけ告げ、フェルマはゆっくりと瞼を閉じた。気が抜け、緊張の糸が切れたらしく、猫の姿で眠りについた彼女を猫に戻ったディンガが背負う
「重くないの?それ」
「仮にも姉だよ。偶には背負ってあげないとね」
「そっ…好きにしなさい。ん?にゃにあれ」
遙か上空、浮かぶのは残り人数を示したカウント表示、徐々に減りゆく表示に気付いたリアンが表情を歪めた
【
「5人……!?なにがあったら、そんなことになるのよ!!」
「雷神衆だろうね。博士は未だにラクサスの元に向かっている途中だと……おや?表示が増えた」
【
ギルドに向かいながらも表示を確認していたディンガは人数に変化が生じた事を告げる。一気に9人も増えた、其れが何を意味するかは何となくではあるが察しが付いた。故にディンガは苦笑してみせた
「マナツが起きて騒いでるに違いない。行ってあげよう」
「マナが?それをにゃんで言わないのよ!行くわよ!」
相棒が目覚めている可能性があると知り、リアンは足早に駆け出した。其れを追いかけ、ディンガも追随し、二匹はギルドに向かった
「リーダス……!?おい!しっかりしやがれ!!何があった!!」
「意外だな。お前が来るとは……仲間に興味が無いと思っていた」
「テメェの仕業か……フリード!!!」
奥歯をぎりっと噛み締め、拳を握り締める。仲間意識が皆無に見えても、実は誰よりも仲間意識の高い彼は目の前に姿を見せたフリードに視線を向ける
「スコル。お前は今の
言葉巧みにラクサス配下に降るように誘導しようとするフリードを前に、スコルは首から下げた銅のドックタグを口に含む
「ファンキーじゃねぇな、ソイツは…。俺は誰からの指図も受けねぇ!俺は俺だ!テメェをぶっ飛ばして、術式を消してやらぁ!!」
【
術式の魔導士・フリード、其れに対するはファンキーな獣魔導士・スコル。圧倒的な強さを前にスコルの更なる魔法が牙を向く!
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