天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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イッシュ「前回のあらすじ、魅惑の妖狐こと私は……ビックスローのボウヤと激突。途中にエルザとレティの加勢もあって、なんとか勝利は出来たけど………二度と関わり合いになりたくないわね」

エルザ「まぁ、そう言うんじゃない。ビックスローはビックスローで良いところもある………かもしれんぞ」

レティ「エルねぇ、なんで疑問系だし。つーか、イッシュねぇは反省しろし!あんなのにやられそうになるとかよわよわのざぁこもいーとこだかんね!」

イッシュ「あ?なんか言ったか」

レティ「ぴえ……!ご、ごめんなさい!うわ〜ん!エルねぇ!イッシュねぇがいじめるぅ〜〜!!」
 
エルザ「泣くんじゃない……全く…仕方ないヤツだな


第六十四話 天才くん、兄貴分と刃を交える

『……………』

 

『よぉ、何をむくれてんだ?マキナ』

 

何時だったか、ラクサスと疎遠になり始めた頃。自宅の前でむくれていたマキナに呼び掛ける一人の男性、ちらりと視線を向けると、その大きな手が頭に触れる

 

『トーちゃん……』

 

『聞いたぜ?ラクサスのヤツとカナが喧嘩したらしいじゃねぇか。まぁ、俺的にはカナちゃんが嫁に行く心配しなくていいからばんばんバンザイだけどなぁ〜』

 

『………そんなんだから、ネエちゃんに嫌われるんだよ』

 

『なにーっ!!嫌われてんのかっ!?………まぁ、兎も角だ。お前はラクサスを信じてやれ』

 

『…………なんかすんげぇ父親みたいなこと言ってるかな』

 

『みたいじゃなくて、父親だろ!?お前の!』

 

他愛無い会話、義兄と疎遠になった日から、内に隠した想いを悟られないように笑顔の仮面を貼り付け、その本心を隠してきた。一人で抱え込み、今日という日を待ち侘び、想いを打つける為に歩んできた

 

「…………マキナ。まさか、お前が一番乗りとはな……大人しくしてりゃあ、お前は俺のギルドに入れてやるつもりだったんだがな」

 

カルデア大聖堂の広間、ラクサスを姿を見せたマキナに挑発にも似た文句を投げ掛けながら、腰掛けていた祭壇から立ち上がる

 

「興味ねぇかな…んなくだらねぇモンに。ボクはじっちゃん(マスター)のギルドが好きなんだ。お前なんかに大事な場所はやらないし、壊させない………ボクがお前を止める」

 

「止める?お前が?バカも休み休み言えよ。知ってるか?妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強は俺か、ミストガンらしいぜ。お前は候補にすりゃ、上がってねぇんだ。なのに、俺を止める?舐めんなよ……弱ェくせに」

 

対峙する中で、飛び交う様々な罵詈雑言。普段ならば、笑って受け流し、物騒な反論を返すのがマキナの仕返し方法だが、今だけは違った

 

「そうだね…ボクは弱いよ。でも、弱くても……守りたいものを守る力は持ってるよ。ラクサス……アンタはそれすらも見えなくなったおめでたいヤツだ。だから……ボクが…」

 

ゆっくりと息を吐き、頭のゴーグルに触れた後、その手に双剣を握り締め、眼前のラクサスを睨み付ける

 

斬る(・・)

 

刃を向け、放たれた言葉。其れはマキナの中でラクサスという存在が兄貴分から敵に切り替わった事を意味する。その刃を握る少年に、何時もけらけらと笑っていた弟分の姿は存在せず、仲間たちの為に過去を斬ろうとする魔導士が佇んでいた

 

「斬るだぁ……笑えねぇな…ガルム!力を貸せ!」

 

「ああ……格の違いを見せてやろうぜ…ラクサス」

 

その呼び掛けに応え、姿を見せたガルムは姿を変えていき、ラクサスの手の中で巨大な鋸として収まる

 

「特別にお前の土俵で戦ってやるよ。負けた言い訳を考えておくこったなぁ!」

 

「うるさい………ボクに剣術で挑もうなんざ、ありえねぇかな」

 

鋸に雷を纏わせ、斬り掛かるラクサス。その迫る刃に目も暮れずに、空高くに飛び上がるったマキナは双剣を構える

 

天才斬撃(ジーニアスラッシュ)!!」

 

十八番とも呼べる飛ぶ斬撃を繰り出すが、動きに無駄がないラクサスは、紙一重で躱し、雷を纏った鋸の刃を回転させ、威力を増大させる

 

「どうしたぁ?そんなもんか?」

 

「ちっ…!?…形態変則(リベレイションフォルマ)!!」

 

回転する刃を双剣で防いだ後に、大太刀と小太刀の変則型の二刀流に変化させ、次なる反撃に転じようとするマキナ。しかし、滅竜魔法の反動は幼い体に大きな負荷を与え、決着には一撃で決める必要がある

 

「はんっ……よーやく、本気か」

 

「〝X(見えないもの)〟が見える時……全ては終わりを告げる。瞬きしてると見逃すよ……〝X(見えないもの)〟が見えるのはこっからだ」

 

決まり文句を口にするという事は、引き下がることは許されない。その手に握られた二つの刃からは、血が滴り落ち、この戦いがマキナにとって、如何に辛いものかを物語る

 

「それよりも前に沈めてやるよ。お前も……お前の大事なモンも……神鳴殿でなぁ!」

 

「させない……お前はボクが倒す!!」

 

刃を振り翳す度に心が痛み、泣き、喚き、辛くなっていく。何処で、何を、間違えたのだろう。前のように笑い、優しく、撫でてくれた兄貴分は其処にいない。目の前にいるのは、敵だ。仲間たち、姉、相棒、幼馴染を脅かす敵なんだと言い聞かせ、刃を交える

 

「ラクサーーース!!俺と勝負しろーーー!!……ん?マキナ?ちょーどいいぜ!お前とも勝負だ!」

 

「邪魔しないでよ……ナツ」

 

不意に背後から聞こえた声、その声の主の名を呼び、マキナは辛そうな笑みで笑い掛ける。その姿には何時もの生意気ながらもけらけらと笑う彼の姿は見受けられない

 

「マキナ!ラクサスと勝負すんなら、俺も混ぜろ!」

 

「邪魔するなって言ってんだ!!!これはボクの!ボクがやらなきゃいけないことなんだ!!」

 

相変わらずのナツに対し、マキナは普段からは想像も出来ない様子で吠えた。余りの迫力にナツはたじろぎ、行く末を見守ることしか出来ない

 

(マキナ………お前………なんでそんなに辛そうなんだよ……)

 

肝心な事を話さず、本心を明かそうとしないマキナ。それでも、ナツには分かっていた。その笑顔の裏に隠された本当の彼を、否、ナツだけではない、誰もが知っていた。研究一筋だった少年が変わる為に歩み出した事を誰もが知っていたのだ

 

「アニキ!マキナはだいじょーぶ!?」

 

「マナツ!それにカナに……おめぇはミストガンか?」

 

「ナツ……状況はどうなってんだい、マキナは!」

 

名を呼ばれ、振り返るとマナツたちが佇んでいた。状況を聞こうと詰め寄るカナはナツに問いを投げ掛ける

 

「見りゃあわかるだろ?マキナとラクサスが戦ってんだよ。俺も混じりてなぁ〜」

 

「でもなんかマキナ……辛そうだよ」

 

「あいつのあんな顔……見たことない…」

 

刃を交えるマキナとラクサス。戦うことに疑問を感じ、辛さを押し殺しながらも、刃を振るう小さな背中にハッピーも、ルーシィでさえも、言葉を失う

 

「ナツ。頼みがある………ルーシィたちと一緒に神鳴殿を止めて欲しいんだ」

 

「マキナ……お前にやれるのか?ラクサスを」

 

普段なら、絶対に口にしない誰かに対する頼み事。マキナの中で、ラクサスと対峙出来るのは自分しか居ないと思っているからこその決断。ナツは真剣な表情で、小さな背中に問う

 

「………正直に言うと解らない、それでも譲れないんだ……ボクは誰よりもラクサスを知ってる……だから、ボクに任せてくれないかな」

 

それだけで全てを理解したのか、ナツは「任せた」とだけ告げ、マナツたちと神鳴殿を破壊する為にカルデア大聖堂を後にする

 

「不可能だ……出来たとしても死は免れねぇ!」

 

「不可能なんかじゃない……この世にある全ての事柄には必ず理由が存在する。其れは人の想いも同じだ…!ナツたちならやってくれるから任せたんだ…!」

 

「はんっ…バカも休み休み言えよ…!テメェなんかに俺が止められるかよっ!!マキナァァ!!」

 

再び、鋸片手に襲い掛かるラクサス。その瞳には目の前の敵を駆逐する事しか考えていない程に強さだけに固執した男の野心が燃えていた

 

超竜斬撃越刀(エクストリーム・ネオ)!!」

 

迫る刃を退けたのは巨大な飛ぶ斬撃。マキナの用いる最強の二刀流が生み出した〝X(見えないもの)〟がラクサスの手から鋸を叩き落とす

 

「ちぃ!!」

 

「やってくれるじゃねぇか……」

 

「ガルム……悪いけど、邪魔しないで」

 

変化を解き、唸るガルム。その姿にマキナは手から二振りを投げ、元のデウスとエクスに戻す

 

「お前の相手は私たちだ!ガルム!」

 

「遊んでくれや」

 

「ガラクタが粋がんじゃねぇぞ!」

 

デウスとエクスがガルムの気を引く間にマキナは手を合わせ、物質空間に魔力を流し込んでいく

 

物質魔法(アポートマジック)……まさか、最初に使うのが身内になるとは思わなかったけど……こっからは容赦出来ないよ」

 

その手に握られたのは、一振りの大太刀。鞘には大量の札が貼られ、その力を抑制するかのように封じられている。まるで、マキナの滅竜魔導士としての力を抑制している拘束具の如き、意味有り気な大太刀。魔力を流し込むと、札は剥がれ落ち、その刀身が露わになっていく

 

「いくよ…ドランバスター(・・・・・・・)

 




交差する二つの想い、斬撃は雷を斬り裂き、雷は斬撃を相殺する。二つの声が重なる時、その心意が露わになってゆく

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