天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……遂にラクサスと対峙するも、その強さを前に最強の刃を解放したかな」

ディンガ「おや、前書きで博士を見るのは久しぶりだね。元気だったかい?」

マキナ「元気か元気じゃないかで言うと、元気ではあるかな。コラボでも前書きはやってたりするからねー」

ディンガ「確かに。しかし、疑問に思うのだけれど、この前書きは誰に対してのコーナーなんだい?」

マキナ「そりゃあ、読者のみんなだよー。読者は宝だからねー」


第六十五話 天才くん、雷を斬る

「いくよ…ドランバスター(・・・・・・・)

 

その手に握られた一振りの大太刀。眩いばかりの輝きを放つ刀身には、竜の意匠が装飾され、斬撃の滅竜魔導士であるマキナに相応しい得物と呼べる

 

「なんだ……その剣は…!テメェの最強はあの変則二刀流のハズだろっ!!」

 

「前はそうだった(・・・・・)。だけど、ボクも日々、強くなる為に努力は惜しんでないんだよ…アンタが誰かを笑ってる間にボクは研究を重ね、自分に馴染む最強の刃を研いだ……この刀に切れないものは存在しない。改めて……〝X(見えないもの)〟が見える時……全ては終わりを告げる。瞬きしてると見逃すよ……〝X(見えないもの)〟が見えるのはこっからだ」

 

再び告げられる決まり文句。二度目に告げられた其れは、マキナが今から放つ一撃に全てを賭けようとしている事を意味していた

 

「なんで……なんで……分からねぇ!!!今のギルドがどんな状況かを理解してんのかっ!!」

 

雷鳴にも似た怒号を放ち、雷を放ち続けるラクサス。それを躱していたマキナの中で何かが音を立てるように切れた

 

「知るかっ!!そんなもんっ!!!ギルドの評判がなんだってんだ!!その目ん玉を開けやがれ!!みんなが同じ場所で笑い合って、騒ぎあうのがギルドだ!!そんなことも分からねぇヤローがギルドを語るなっ!!!!自惚れも大概にしやがれっ!!バカアニキ!!」

 

大きく円を描くように足を動かし、握った大太刀に力を込める。刹那、僅か一瞬の間に起きた現象にラクサスは反応が遅れ、気づいた時には白衣の少年は忽然と姿を消していた

 

「一刀竜」

 

見当違いの方向、天井近くから聞こえた声。その声の主は大太刀を持つ手を後方に引き、重力と共に落下する姿は正に飛竜の如く。その猛きに姿にラクサスは言葉を失う

 

竜焔天(りゅうえんてん)!!!」

 

重心を加えた斬撃は摩擦熱を発生させ、発火現象を起こし、雷諸共ラクサスを斬り裂いた

 

「がっ……舐めんな……テメェなんざに負ける俺じゃねぇ………俺は最強だ……誰よりも強ェんだ………消えろ」

 

殺意に満ちた眼差し、今までとは遥かに異なる瞳。ラクサスの中でマキナの存在が完全に弟分とは異なる存在に切り替わった瞬間を意味していた

 

「鳴り響くは召雷の轟き……天より落ちて、灰燼と化せ……」

 

突き上げられた拳に集う魔力は雷となり、ラクサスの体を包み込む。高い魔力はマキナが対峙した如何なる魔導士を凌ぎ、戦意を刈り取ろうしている

 

「レイジングボルト!!!」

 

落雷はマキナに落ち、辺りを煙と砂塵が舞い、白衣の少年を呑み込んだ

 

「ラクサス……終わったかよ」

 

「ああ……お前はどうだ?ガルム。聞くだけ無駄か」

 

デウスとエクスと対峙していたガルムが声を掛ければ、その背後には無残にも放置された二体の姿が確認出来た

 

「はんっ……あんなガラクタに負ける俺じゃねぇ」

 

「次はカナのヤローだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我が骨を媒介とした刃を持ち出したにも関わらず、敗北するとはな。人の子よ、己の力は我が力……今こそ、真なる〝竜の力〟を解放する時だ。喰らえ、雷を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「食べる………雷を……ああ、そうか……そうだった………ニィちゃんの雷は……」

 

内なる声に導かれ、マキナは頭上に迫る雷を見上げ、大太刀を掲げる。本来ならば、有り得ない行動、不確か且つ不鮮明。だとしても、この行動には意味があるからこそ、マキナはその手を下げようとはしない

 

「一刀竜・避竜針」

 

大太刀を避雷針代わりにマキナの頭上に落雷し、その全身を致死量と呼べる程の雷が駆け巡る。本来ならば、死んでも可笑しくはない行動にマキナは更なる行動に移る

 

いただきます(・・・・・・)

 

駆け巡る雷をナツが火を喰らい、マナツが植物を食すかのように自らの体内に吸い込み始める。他者の魔法を喰らうことは魔導士には有り得ない筈、しかし、マキナはその行いを止めようとはしない

 

「なっ……なんだ……何をした!!」

 

「何がって……食べた(・・・)

 

「は……はぁ!?」

 

まさかの衝撃発言に素っ頓狂な声を挙げるラクサス。当の本人は未だに口を動かし、食べる動作を止めようとしない

 

「ふぅ……ごちそうさま…食べたら力が湧いてきた!」

 

「ふざけやがって!他人の魔法を喰うだぁ!?舐めんのも大概にしやがれっ!!ガキがっ!!」

 

「ふざけてないよ…前にナツがエーテリオンを食べたから、前例はある。だからこその賭けだった………それにだ、竜の肺は竜の力を喰らう……同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の魔力は適合力が高い」

 

「同じ………ああ、そうか…そうだったな……だからこそ、俺たちは義兄弟だった……同じように〝竜の魔水晶〟を持つ滅竜魔導士…だがな…お前の雷と俺の雷は年季が違ェんだよ!!」

 

刹那、ラクサスの八重歯は鋭く、腕には鱗にも似た紋様が浮かび、巨大な魔力が溢れ、息を吸い込む、肺を膨らませる

 

「雷竜の咆哮!!」

 

「一刀竜・竜雷天!!」

 

雷の咆哮と雷の斬撃が衝突し、大聖堂の床を抉り、壁は風圧で崩れ、その衝撃は大地も揺らす

 

「いい加減にくたばれ……此奴で最後だ。全てを消し去ってやるよ!!!お前も!!ジジイも!!ギルドの奴等も!!全て消えやがれェェェェ!!」

 

雷だけでは決着しないと理解したラクサスは、体から凄まじい魔力が溢れ、その魔力にマキナは何かを悟り、距離を取る

 

「どうしたぁ?マキナ」

 

「ガルム…今すぐに止めろ!アレは!アレだけは打たせちゃいけない!!街が吹っ飛ぶ!!」

 

「ハハッ!ソイツは最高じゃねぇか!!やっちまえよ!ラクサ---がっ!!」

 

笑い飛ばそうとしたガルムの顔面をマキナは殴り付けた。小さな手からは硬い金属を殴った為に血が滲むが、怒りで痛みを忘れた彼の瞳は鋭さを増していた

 

「ふざけんなっ!!!仲間だろうがっ!!!!お前を作ったのは、仲間を笑う為じゃない!!守る為だ!!なのに!お前は仲間を見下して、笑って、蔑んだ……!!デウスとエクスがお前を止めようしたのは、お前を倒す為じゃない!!お前に仲間を守る力を思い出して欲しかったからだ!!!お前はモノじゃない!!〝心〟がある生き物だ!!!いい加減に目ェ覚ませ!!この駄犬!!!」

 

何時もならば、何時もの彼ならば、情け無く笑って見せる少年。自分の知る少年は小さくても大きな一人の魔導士となり、信念を口に出来るまでに逞しくなっていた

 

「………安心しろ。ラクサスには誰も殺せねェよ」

 

「ガルム……どういう意味かな…それは…」

 

「見てりゃわかる」

 

臨戦態勢を解いたガルムはラクサスが誰も殺せないと口にし、その意味が理解出来ないマキナは首を傾げる

 

妖精の法律(フェアリーロウ)!!!」

 

刹那、ラクサスを中心に街全体を覆い尽くす眩い光が広がる。全てを呑み込み、全てを喰らわんとする光。其れはかつてのファントム戦でマカロフが放った術者が敵と認識したもの全てが標的となる超絶審判魔法と呼ばれる強大な魔法、ラクサスは勝利を確信した

 

「はぁはぁ………これで……俺は……ジジイを超えた!!今日からは俺が!!」

 

「あれ?なんともない……なんで?」

 

「なにっ!?そんなバカな!!どうなってやがる!!俺は確実に!!」

 

煙が晴れ、姿を見せたマキナは無傷の状態で佇んでいた。ラクサスは有り得ない物を見たかの如く、両目を見開いた

 

「ラクサス……もうやめねぇか。それがお前の答え(・・)だ」

 

答え(・・)、それが意味するのはラクサスの中でマキナも、ギルドの仲間たちも、マグノリアの住民たちも敵と認識されていなかった事を意味する

 

答え(・・)だぁ!?ふざけんなっ!!!何故だ!何故!誰もやられてねぇ!!」

 

「ラクサス……キミがマスターから受け継いだのは力や魔力だけじゃないってことだよ。確かに妖精の法律(フェアリーロウ)は術者が敵と認識したもの全てが標的となる超絶審判魔法だよ………でも、それは逆に術者が大切に想うモノには効果がない………キミの中にある仲間を想う〝()〟に魔法は確かに応えた。だからさ、もう終わりにしようよ……ニィちゃん」

 

「うるせぇ!!!何が家族だ!!俺は俺だ!!ジジイの孫でも!!マキナのアニキでもねぇ!!ラクサスだぁぁぁぁ!!」

 

怒り、その先に足を踏み入れてしまったラクサスには義弟(マキナ)の声も届かない。掛け違えたボタンは掛け直すことも叶わない、自分では彼を止められない。マキナは傷だらけになりながらも、瞳から涙を流し、白衣の袖を濡らす

 

「ラクサス………もうやめな……アンタが今、殺そうとしてんのは…私の弟でアンタの義弟だ。大丈夫だ、アンタが何回間違おうが私はアンタを止める……こうやって、アンタを抱き締めてやる……だから、昔みたいに優しいアンタに戻ってくれ」

 

その涙を、〝(マキナ)〟の内なる叫びを、何かを感じ取った女性は黒髪を靡かせ、ラクサスを背後から抱き締めた。優しく語りかけ、かつての彼に、自分が愛した彼を取り戻そうと、彼を抱き締める

 

「うるせぇ……うるせぇうるせぇ……うるせぇうるせぇうるせぇ………うるせぇんだよ!!!何奴も此奴も!!!!俺に説教してんじゃねぇ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

「ネエちゃん!!大丈夫!?」

 

自分を抱き締めていたカナを振り解き、ラクサスはその身に轟く魔力を収束させていく。吹き飛ばされた姉を心配し、駆け寄ったマキナは傷だらけの体で彼女を受け止める

 

「マキナ!無茶すんじゃないよ!アンタの方が怪我してんだよ!?」

 

「それでもネエちゃんが傷付くよりはマシかな」

 

「全く……ホントに不思議(ワンダー)な弟だよ……アンタは。こうなったら、あのバカを二人で止めるよ!準備は良いね?」

 

「あいあい」

 

自分に笑い掛ける(カナ)に軽く返事を返し、手にしていた大太刀を異空間に収納し、両手を打ち鳴らす

 

物質魔法(アポートマジック)!!発明No.009!爆裂魔水晶(ボムラクリマ)!!」

 

札魔法(カードマジック)!!爆破(エクスプロージョン)!!」

 

マキナが物質移動(アポーツ)させた魔水晶(ラクリマ)が連鎖的に発生する爆発し、追随する様にカナの投げた(カード)が爆発を始める

 

「雷竜方天戟!!」

 

二つの爆発は重なり合い、巨大な爆風を生み、ラクサスも雷の槍を投擲する

 

「「不思議爆閃光(ワンダーインフェルノ)!!!」」

 

衝撃が重なり合い、大聖堂だけには飽き足らず、街全体を揺らす。爆風は雷の槍を呑み込み、周辺を砂塵が舞う

 

「滅竜奥義」

 

そして、砂塵が舞う向こう側から聞こえたのは幼いながらも逞しい声。その眼前にあるのは巨大な()、身の丈以上はある其れを彼は足で蹴り上げ、走り出す

 

独眼竜天(どくがんりゅうてん)!!!」

 

次の動きに移ろうとしたラクサスよりも速くに動いたマキナは落下すると同時に空気摩擦の力で静電気を帯びた斬撃をその身に刻み込む

 

「無茶するね、アンタは……」

 

「ネエちゃん…………ニィちゃん…は…」

 

「安心しな……アンタの勝ちだ。だから今は休みな?ネエちゃんが運んでやるよ」

 

「うん……」

 

「ガルム」

 

事切れた様に、寝息を立てるマキナを背負ったカナはゆっくりとギルドに歩みを進め、一部始終を見ていたガルムに呼び掛けた

 

「アンタはラクサスを頼むよ」

 

「………ああ」

 

こうして、小さな科学者の戦いは終わった。辛く、苦しく、険しい戦いは終結し、勝利を讃えるかのように鐘の音が鳴り響いていた




目を覚ましたマキナの前にはラクサスの姿があった。本音の先にある心を理解した彼が出した答えとは…

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