天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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この作品のコンセプトは賑やかな雰囲気と時にシリアスな雰囲気を混ぜ合わせたギャグ系シリアスコメディです(コメディ:9 シリアス:1)


第六話 天才くん、チームを組む

「いいトコみつかったなぁ!」

 

此処はマグノリアの運河前に位置する家賃七万J(ジュエル)の借家。その一室に念願のマイホームを手にしたルーシィは一糸纏わぬ姿で入浴中だ

 

「7万Jの家賃にしては間取りもいいし収納スペースも多いし、真っ白な壁!ちょっとレトロな暖炉に!(かまど)までついてる!そして何より一番ステキなのは!」

 

風呂上がり、夢に見た一人暮らしを満喫しつつも家の中を見て廻っていたルーシィは世界に期待を抱くかの様に自室の扉を開く

 

「よっ!」

 

「あい!」

 

「な、生魚………恐るべし……」

 

「マキ!マナの容態は!?」

 

「食あたりです」

 

「あっ…どうもです」

 

「よぉ、邪魔してるぜ?無駄乳」

 

「あたしの部屋――――!!!」

 

そこには我が物顔でソファに座りフランクに手を挙げてお菓子を頬張るナツと魚を食い散らかしてるハッピー、生魚を食べた為に食あたりを起こしたマナツ、相棒の容態をマキナに問うリアン、律儀に御辞儀するデウスと相変わらず口の悪いエクスが普通に居座っていた

 

「なんであんた達がいるのよ!!」

 

「「ぐもっ!?」」

 

ナツとマキナの顔面に突っ込みと共に綺麗な回し蹴りが放たれる。想像していなかった来客に興奮気味の彼女は壁に減り込んだ二人を睨み付ける

 

「いやだってよぉ……ミラから部屋、つーか家が決まったって聞いたから………」

 

「子どもに回し蹴りは酷いかなー」

 

「聞いたら何!?勝手に入ってきても良い理由にはならないわよ!あと子どもだからって、ダメなことはダメ!」

 

「勝手にじゃないよー。きちんと大家さんには許可を貰ってるよー?冷蔵庫の修理とお風呂の修理をする条件付きだけどねー」

 

「大家さん!?」

 

まさかの大家の裏切りという事実を知り、驚愕するルーシィ。彼女は辺りを見廻し、思い思いの過ごし方を満喫する仲間たちを眺める

 

「良い部屋だね」

 

「ハッピー?爪を研いじゃダメよ。それはそうとルーシィ、紅茶をお願いできる?温度は適温にしてくれるとありがたいわ。ほら、あたしって猫舌でしょ?だから、どうしても熱いのは苦手にゃのよね」

 

「ハッピーを注意してくれるのはありがたいけど、図々しい自覚ある?リアン」

 

「あっ!プリン!ねぇ!ルーシィ!プリン食べていい!?」

 

「冷蔵庫を漁らないでくれるかしらぁ!?まぁ……プリンくらいなら、あげるけど…」

 

「やったー!マキナ!プリンもらったー!」

 

「良かったねー」

 

爪を研ぐハッピー、彼を注意しながらも自分に紅茶を淹れろと告げるリアン、冷蔵庫から見つけ出した好物を前に花が咲いた様に笑うマナツ、幼馴染の姿に笑顔を見せるマキナ。側から見れば和む光景であるが忘れてはならない、彼等は不法侵入である

 

「とにかく……!まだ引っ越してきたばっかりで、家具も揃ってないのよ。遊ぶものなんて何もないんだから紅茶飲んだら帰ってよね…」

 

「残忍な奴だな」

 

「あい」

 

「人の心がないかなー」

 

「お茶菓子はクッキーがいいわ」

 

「プリンおいしー!」

 

「紅茶飲んで帰れって言っただけで残忍と人の心がない…って…」

 

部屋を荒らされた被害者であるにも関わらず、ナツとハッピー、マキナの発言、更にお茶菓子までも要求するリアンにルーシィの怒りは頂点を迎えそうになるが素直にプリンを食べるマナツの姿に込み上げる怒りを抑え、紅茶を口に運ぶ

 

「そーいや、ルーシィって星霊魔導士なんだろ?」

 

「そうよ」

 

「初めて見た!あのエロ牛以外にも契約?してる星霊って何人くらい居るの?」

 

「6体。星霊は1体、2体って数えるのよ。こっちの銀色の鍵がお店で売ってる『時計座のホロロギウム』『南十字座のクルックス』『琴座のリラ』、そして、こっちの金色の鍵が、黄道十二門っていう(ゲート)を開ける超レアな鍵『金牛宮のタウロス』『宝瓶宮のアクエリアス』『巨蟹宮のキャンサー』」

 

「あのエッチな牛は金色なのね」

 

「アニキ!今確かにカニって言ったよ!」

 

「カニかー!美味いよなー!特に燃えてる時が!」

 

「ええーっ!違うよー!中身に野菜をぶち込んだ時だよー!」

 

「リアンはどんなカニが好き?」

 

「そうね……やっぱり蒸しガニかしらね」

 

「ボクは生きてるカニを煮えたぎる鍋に放り込む時が一番好きかなー」

 

「また訳の分からないトコなところに食いついたわね……というか!アンタの発想はエグいわ!!」

 

巨蟹宮の話題から蟹の話に傾れ込む面々にルーシィは呆れながらも、約一名だけ発想が明らかに残忍な白衣の少年に突っ込みを放つ

 

「そういえばまだハルジオンで買った鍵の契約をしてなかったわ。特別に星霊魔導士と星霊との契約の流れを見せてあげる!」

 

「「「おぉ!!」」」

 

「契約というと……血判かしら…」

 

「血判!?」

 

「痛そうだなぁ…ケツ」

 

「マキナー。ゲッタバンってなに?」

 

「ちょっと違うかなー」

 

「血判とかはいらないのよ。まぁ、見てなさい」

 

契約イコール血判という発想に行き着くリアンにハッピーが戦慄し、其れを尻の事だと解釈するナツ、血判の意味が理解出来ないマナツにマキナがやんわりと突っ込みを放つ中、ルーシィは軽く咳払いし、持っていた鍵を構える

 

「我、星霊界との道を繋ぐ者! 汝、その呼びかけに応え、(ゲート)をくぐれ! 開け、仔犬座の扉・ニコラ!」

 

詠唱と共に鍵から光が溢れ、やがて形となった光は生物の姿を形成していく

 

「プーン!!」

 

真っ白な小さな体に、螺旋状の鼻、二足歩行で小刻みに震える生物。明らかに星霊とは呼び難い謎生物の登場に誰もが言葉を失う

 

「「ど………どんまい!!」」

 

「失敗じゃないわよ!!」

 

「………虫だ!」

 

「マナ。これは虫じゃないわ……きっと魚よ」

 

「どう見ても違うかなー。仔犬だから犬だよー、ところでこのドリルみたいな鼻を回してもいいー?」

 

「回すなっ!!」

 

失敗としか取れない現状にナツとハッピーに慰められながらも突っ込みを放つルーシィ、その背後ではニコラを前に虫だと騒ぐマナツをリアンが魚だと訂正するも、明らかに何方も不正解である事をマキナが告げながら、プルーの鼻を回そうとしていた

 

「ニコラはあまり魔力を使わないし、愛玩星霊として人気なのよ」

 

「人間のエゴが見えるよ〜」

 

「人は醜い生き物よ。まぁ、あたしは可愛いけど」

 

「わたあめとか食べるかなー?」

 

「ププーン!」

 

「おぉ!反応した!餌付け成功だね!マキナ!」

 

人間の醜さを垣間見るハッピーとリアンを他所に幼い二人はプルーにわたあめを差し出し、餌付けしていた

 

「まぁ、いいわ。契約に移るわよ」

 

「ププーン」

 

「月曜は?」

 

「プゥーゥン」

 

「火曜」

 

「プン」

 

メモ帳を片手に呼び出しても構わない日を聞くルーシィ、其れに鳴き声という名の相槌で答えるニコラ。側から見ると地味な絵面に何かを期待していた面々は紅茶を片手に見守る

 

「地味だねー」

 

「博士がやるみたいに製造番号を刻印とかはしないんですね」

 

「俺等、機械動物(アニマギア)を星霊と同じにすんじゃねぇよ。だいたい、有機物に製造番号があるかよ」

 

「はい! 契約完了!」

 

「ププーーン!」

 

目の前の光景を見守るしか出来ない面々、時間だけが過ぎて行く中、契約を終えたルーシィがメモ帳を閉じる

 

「随分と簡単にゃのね」

 

「うんうん、もうちょっとなんかあると思ってた」

 

「確かに見た感じは簡単に見えるかもしれないけど、割と重要なのよ?今のやり取りも。星霊魔導士は契約………つまり約束ごとを重要視するの。だから私は約束は絶対破らない……ってね!」

 

「約束は大事だねー。ボクもネエちゃんとの約束は守ってるからねー」

 

「偶には良いことを言うわね!マキナも!そう…約束は大事よ。そういえば名前決めなきゃね」

 

「ニコラじゃないの?」

 

「名前かー!はい!アタシ!良い名前を考えたよ!ドリル虫!」

 

「それよりもドリルちゃんにしなさい。響きが可愛いわ、あたし程じゃにゃいけど!」

 

「鼻ドリル三号が良いかなー」

 

「気は確かなの?アンタたち……実は最初から決めてたのよ……おいで!プルー!」

 

前々から考えていた名でニコラ基プルーを呼ぶとルーシィに飛び付く

 

「ぷるぷるしているからでしょうか?」

 

「安直なヤツだぜ」

 

「語感が可愛いから良いのよ。というか、アンタたちの名前って誰が付けたの?やっぱりマキナ?」

 

名前に文句を言うデウスとエクスに突っ込みながらも、思い出した様にルーシィは二匹に名の由来を問う

 

「カナさんですよ。博士は別の名前を考えていたみたいです」

 

「犬一号と犬二号だっけか」

 

「ネエちゃんの付けてくれた名前の方が格好良かったからねー」

 

「………………良かったわね」

 

「「全くだ」」

 

ネーミングセンスのないマキナの発明に同情するルーシィ。その時、彼女に抱かれていたプルーが腕の中から抜け出し、ナツとマナツの前に歩いていく

 

「な……なにかしら?」

 

「新手の儀式かしらね」

 

「きっと呪いの舞いだよー。踊り切ったが最後、召喚者が死に至るとかの類いかなー」

 

「「怖いわっ!!」」

 

踊り出すプルーを前にルーシィ、リアンが疑問符を浮かべているとマキナが何時もと変わらない笑顔で物騒な事を言い放つ。其処に一人と一匹からの突っ込みが飛んだ

 

「プルー!お前!良いこと言うなー!」

 

「ホント!ナイスアイデアだね!」

 

「なんか伝わってるし!!」

 

「あたし、偶にマナが理解出来ないわ」

 

「あい」

 

プルーの踊りから何かを感じ取った竜兄弟を前にルーシィは驚愕し、リアンとハッピーは互いの相棒の感性に難色を示す

 

「忘れてたけど本題を話しても良いかなー?」

 

「本題?あたしに用事があったの?単なる住居不法侵入じゃなくて?」

 

思い出した様に口を開いたマキナに疑いの眼差しを向けるルーシィ。短いながらもそれなりに信頼できると思っていた彼女からの問いに、マキナは頬を膨らませる

 

「失礼だなー。折角の名案なのにー」

 

「そうだよー!ルーシィって変なヤツだけど頼りになるもんね!」

 

(変なヤツ呼ばわり!?)

 

「悪気はないから許してあげてね……」

 

まさかの変な奴呼ばわりに軽くショックを受けているルーシィにリアンが優しい言葉を掛ける

 

「てな訳だ!俺たちでチームを組もう!」

 

「チーム?」

 

「ギルドのメンバーは仲間だけど、仲が良い人たちとチームを組む事が出来るの!一人じゃ出来ない事もチームなら一緒に乗り越えられるんだよ!だからさ!ルーシィも一緒に行こうよ!」

 

「ボクとネエちゃんも同じチームだよー。S級の依頼がない時はネエちゃんも参加するよー」

 

「カナさんも!?じゃ、じゃあ参加しようかしら………」

 

「ハッピー。アレが姉の名声を利用する弟の姿よ」

 

「あい!醜いです」

 

「アレで悪気がないのが博士なんですよね…」

 

「また騒がしくなりそうだぜ」

 

憧れの魔導士も同じチームに在籍していると知ったルーシィが乗り気になる姿に、姉の名声を利用するマキナを見ながら二匹と二体は其々の感想を述べる

 

「仕事に行くぞォ!」

 

「もう♡せっかちなんだからぁ〜。シロツメの街かぁ〜うそ! エバルー公爵って人の屋敷から本1冊取りに行くだけで20万J!?」

 

「ネエちゃんにたくさんお土産買わなきゃだー」

 

「シロツメ………なんかおいしいのあるかなぁ…じゅるり…」

 

「マナ?女の子がはしたないわよ」

 

ナツの取り出した依頼書片手に盛り上がるルーシィ、姉に土産を買おうと思っているマキナ、訪れた事のない街のグルメに涎を垂らすマナツ。反応は様々ながら、チームとしての形を取りつつある

 

「ん? 注意、スケベで女好きで変態……ただいま金髪のメイド募集中…………はい?ねぇちょっと?これはどういうことかしらぁ?」

 

「察しの通り金髪だからかなー」

 

「メイド服の準備しておくねー!」

 

「ハメられたぁ!人の心はないの!?このちびっ子どもっ!」

 

「星霊魔導士は契約を大切にするんだよな?」

 

「約束は守らなきゃよね?ルーシィ」

 

「あい!」

 

自分が騙された事に気付き、けらけらと笑う幼い二人に詰め寄るルーシィの背後から、先程の彼女の言葉を口にするナツとリアン、それに彼女は肩を落とす

 

「うぅ………五分前の自分を殴りたい…」

 

「取り敢えず、ハッピーにご主人様って言えよ。練習になるだろ」

 

「エクス。流石にルーシィさんでも、猫を相手に言わないだろ」

 

「ご主人さまー!」

 

「マナツが言うんですか!?」

 

エクスの提案にデウスが突っ込みを放つと、何故かマナツがハッピーを御主人様呼びする。その姿に何かを閃いたルーシィは立ち上がった

 

「そうよ!マナツも一緒に!」

 

「ダメだ。マナツに危ないことはさせない、というか嫁になんか出すかーーーぁっ!」

 

「過保護かっ!!」

 

「リアンもやろうよー!」

 

「構わにゃいけど、高いわよ?あたしは」

 

「賑やかだねー」

 

「博士は呑気過ぎますよっ!?」

 

「アホばっかりだぜ」

 

かくして、此処に妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強と後に呼ばれるチームの前身が誕生したのであった

その頃、ギルドで依頼者から報酬吊り上げの連絡があった事を彼等は知らなかった




チームを組んだルーシィはナツとマキナたちとシロツメの街へ、そこで聞かされた美味しい話とは……

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