天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……遂に大勝利!いやぁ〜最強はボクであることが遂に証明されたかな!」

ディンガ「おや、博士。起きたのかい?昨日の夕飯と今日の朝ごはんに間食が二回分、お昼におやつ、夕飯があるよ」

マキナ「あっ、それはもう食べちゃった」

ルーシィ「どんだけ底無しなのよっ!?アンタはっ!!」

マナツ「よーし!あたしも食べるぞー!」

リアン「マナ。お願いだから、先に胃薬を飲んでからにして」


第六十六話 天才くん、夜空に打ち上げる

「んんっ……もぐもぐ……はぐはぐ……もぐもぐ……すぴ〜」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の医務室。目の前にある大量の食べ物を口に含んでいく少年の鼻からは提灯が発生し、寝息が漏れている

 

「寝るのか……食うのか……はっきりしろよ。食い意地だけはちっとも変わらねぇな」

 

「てか、どういう胃袋してんのよ。寝てるのに働いてるとか有り得ないわよ、普通は」

 

「そうかぁ?これはこれでマキナらしいじゃねぇか……」

 

「おや、珍しいお客だ。お揃いで博士の見舞いに来てくれたのかい?博士に代わって、感謝するよ。ありがとう」

 

扉が開き、動作を止めようとしないマキナを前にラクサスは一匹と一体の相棒たちと呆れたように苦笑する。その久方振りに見る優しい眼差しを前に、付き添っていたディンガは頭のガスマスクに触れ、呑気に問いを投げかけた後に眠っている?相棒の代わりに感謝を述べる

 

「……ディンガ………俺はマキナを、ギルドの仲間たちの命を、脅かした…ジジイに言われたよ…今日限りで破門らしい……俺はギルドを抜ける…。マキナに伝えといてくれ」

 

「そうかい…それは残念だ。博士も寂しがると想うよ」

 

「わたしも一緒に行くつもりよ。ラクサスだけじゃ頼りないし、なにより、一人で列車に乗れないのよ?この人」

 

「それは心配だね、ラクサスのことは任せるよ。フェルマも体には気をつけてね」

 

「誰に言ってんのよ?アンタは……あと、リアンにはもうちょっと鍛えるように言っときなさい。それから、アンタはマキナとリアンを甘やかし過ぎないようにしなさい。分かったわね?最後に……兄さんに会う時があったら、わたしは元気にしてるって言っといて」

 

「俺からは……デウスとエクスに博士(・・)をよろしくとだけ伝えてくれや」

 

「ああ………伝えておくよ」

 

一人(ラクサス)一匹(フェルマ)一体(ガルム)の言葉に其々の反応を示したディンガは寂しい気持ちを抑えながらも、貼り付けた笑顔で、彼等の背を見送る

 

「…………強くなったな、流石は俺の()だ。これからも、頑張れよ……マキナ」

 

「…………」

 

何かを察していたのだろう、眠っている筈のマキナにラクサスは優しい言葉を掛け、医務室を後にする。その背が見えなくなると、小さな手が動きを止める

 

「博士……起きていたんだね」

 

「ずるい…ずりぃ……ニィちゃんはいつも……あんなの嫌いになんかなれねぇかな…ホントにずりぃ……」

 

翡翠色の瞳から、手の甲に溢れ落ちる涙。何度目になるかも分からない程に溢れ、袖を濡らす雫は壊れた蛇口のように止まらない。最後まで、悪人のままで居てくれたなら、こんなにも寂しさを感じずにいられた。なのに、最後の最後で見せた兄貴分としての顔と声に、マキナは溢れる想いが止まらなくなっていた

 

「キミはどうしたい?このままで終わりにしたいかい?それが答えなら、僕は止めないが……違うだろう?」

 

優しく背を撫で、語りかける相棒(ディンガ)の言葉にマキナは側に掛かっていた白衣に袖を通し、頭にゴーグルを身に付ける

 

「ディンガ!屋根の上まで連れてって!ボクはまだ、ニィちゃんに伝えなきゃいけないことがある!!」

 

「任せたまえ」

 

医務室の窓を開き、ディンガに掴まれる形で飛び立つマキナ。街は収穫祭のフィナーレを飾るパレードの華やかな雰囲気に包まれ、騒がしくも楽しい空気に誰もが酔い痴れる

 

「満開に咲かすよーーっ!!」

 

「レティ!」

 

「おまかせっ☆」

 

高らかに響くマナツの声と共に咲き誇る花弁を筆頭にアマノが散らばせた植物の種子をレティが観客たちの頭上に瞬間移動させると、色彩艶やかな花々が降り注ぐ

 

「負けてられっか!おい!セイラン!協力しやがれ!どらぁぁぁぁぁ!!」

 

「ああ!見せてやるぜ!おりゃぁぁぁぁ!!」

 

負け時と傷だらけの体で空高くに放り投げた岩をセイランと共にスコルが殴り付け、降り注ぐ欠片に変え、季節外れの雪が降り始める

 

「…………」

 

「ラクサス」

 

その様子を物陰から見守っていたラクサスたちに声を掛ける影があった。振り返れば、其処には酒瓶を手にした見覚えのある女性と彼女の肩に座る黒猫が佇んでいた

 

「カナ……リアン。お前たちは出ないのか?」

 

「今回は見なきゃならない晴れ舞台があるからね」

 

「あたしは振り付け担当だから、今回の出番はにゃいのよ」

 

「そうか……マキナと仲良くな」

 

「ああ……アンタも風邪なんか引くんじゃないよ。フェルマ、それにガルム…ラクサスを頼んだからね」

 

「分かってるわ」

 

「心配すんな」

 

去り行く背に優しく声を掛けるカナ。その背に言いたいことは数あれど、今の彼女には何もできない、だからこその言葉だった

 

「にゃに……あれ……やーね、おじいちゃんったら」

 

「ナツなんかボロボロじゃない…ハッピーは頑張ってるみたいだけど」

 

「最後に良いもんが拝めたぜ…暫くはネタに困らねぇな」

 

コミカルな動きを見せるマカロフ、ボロボロのナツに付き添うハッピー。その姿にリアンはフェルマとガルムと笑い合う

 

「マグノリアのみんなーーーっ!!それに来てくれたお客さんたち!今日は収穫祭最終日だけど……まだまだ楽しんでほしいかな!何時もは迷惑ばっかで……どうしようもない妖精の尻尾(ボクたち)だけど!これからもよろしくねー!さぁ!行くよ!不思議(ワンダー)なフィナーレかな!」

 

「あいあい」

 

「起き抜けにこき使ってくれるじゃねぇか」

 

「エクス!文句を言うな!怪我をしているのは博士もだ!お前だけではない!」

 

妖精の尻尾(ギルド)の屋根から響き渡る幼くも元気に溢れた声。その声の主に全ての人の注目が集まり、少年の側では赤い猫が準備を進め、黒い機械狼が悪態を吐き、白い機械狼が咎めていた。何時もと変わらないマグノリアが誇る天才組のやり取りに観客たちは笑いが止まらず、「もっとやれー!」という声が飛び交い始める

 

「それじゃあ、ご期待に添いまして………いざっ!ポチッとな♪」

 

声援に応えるように彼は何時も通りにけらけらと笑いながら、白衣から取り出したボタンを押す。その瞬間、耳を劈かんばかりの轟音が響き渡り、空高くに浮かび上がるのは一つのマーク。妖精の尻尾(ギルド)の〝証〟であると同時に〝家族の絆〟を意味するマーク。そのマークの意味を知る青年は唖然となるが、優しく頬を緩ませる

 

「しっかりと見たぜ……お前の晴れ舞台…やっぱり、すげぇな…お前は…流石は…俺の弟(マキナ)だ…」

 

そう呟き、街を去ろうとするラクサス。その袖をフェルマが引っ張り、ガルムが口で噛む。相棒たちの行動を疑問に思った彼が振り向けば、マキナは勿論ながら、マカロフやナツ、マナツたちは右手を上に上げて、人差し指と親指を立てていた

 

(〝例え、姿が見えなくても、遠く離れていようと、ボクはキミを見てる〟何処にいたって……〝心〟は共にある……またきっと……会おうね……ニィちゃん!!)

 

「じーじ……マキナ…またな…」

 

別れを告げ、ラクサスは新たな一歩を相棒たちと踏み出す。カナはその背が見えなくなるまで、リアンと共に見送り、その手はマキナたちと同様に右手を掲げ、親指と人差し指を天高くに伸ばしていた

 

「カナ?もしかして……泣いてるの?良い女がだいにゃしよ?」

 

「そんなんじゃないよ……ちょっと…飲み過ぎたんだ……強い酒をね…。ラクサス………今でも……私は……」

 

その先をカナは胸に仕舞う、何時かは分からないが、この気持ちを告げるのは今ではない。だからこそ、彼女は去り行く背を見送る

 

またね(・・・)

 

その呟きは幻想的な夜の空に消えていく。其れが届いたかは誰にも分からない、それでも、届いていたと願いたい。世界は何処までも繋がっている

 

「あばよ………妖精の尻尾(家族たち)…」




収穫祭も終わってから数日、ラクサスの去ったギルドには静寂が訪れる筈もなく………何時もの騒ぎがカムバック!しかし、今日はなんか違う?なにがどうなってるんだぁ〜!?

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