天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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この作品のコンセプトは賑やかな雰囲気と時にシリアスな雰囲気を混ぜ合わせたギャグ系シリアスコメディです(コメディ:9 シリアス:1)



第七話 天才くん、報酬に驚く

「もぐもぐ……はぐはぐ……」

 

「アンタ……前から思ってたけど、その小さい体の何処に入るの?」

 

移動中の馬車内、乗り物酔いで死に掛けている竜兄妹を他所に大量の食べ物を口に放り込んでいく白衣の少年を呆れた眼差しでルーシィは見ていた

 

「如何なる仕事も腹が減ってはなんとやらって言うからねー。ボクは食べるれる時に食い溜めするようにしてるんだよー」

 

「ふぅん……それにしても初仕事なんだから、気を引き締めていくわよ!アンタたちもシャキッとしなさい!」

 

「「うぅ………」」

 

マキナの答えに相槌を返した後、初仕事に張り切りを見せるルーシィは今まさに死の淵を彷徨う二名に声を掛けるが、帰ってきたのは唸り声のみだ

 

「嫌がってた割には乗り気ね。相手はエッチなおじさんなのよ?大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ!こー見えても色気には結構な自信があるのよ」

 

「ネエちゃんの足元には及ばないかなー」

 

「ネコには判断できないです」

 

「あたしを差し置いて、色気をアピールするなんて生意気よ。もぎ取るわよ」

 

「アンタらはあたしが嫌いなの?兎に角!今回はあたしが体を張るんだから、取り分は5−1−1−1−1だからね」

 

胸元を見せ、色気をアピールするルーシィに対し、澄ました顔のマキナとハッピー、自分よりも可愛いものを認めようしないリアン。彼等の言い分に文句を言いつつ、ルーシィは今回の取り分を自分が一番もらうと口にする

 

「ルーシィは1でいいの?」

 

「謙虚ね」

 

「あたしが5に決まってるでしょうが!!」

 

「デウスとエクスの分はボクと同じ扱いみたいだねー」

 

「我々は博士の発明ですからね」

 

「あの無駄乳に欲望でも詰まってるんじゃねぇか?アイツ」

 

悪びれる素振りも見せず、ルーシィの取り分が少ない方と決める二匹。その姿にデウスとエクスの取り分が無い事に気付いたマキナが二体に声を掛ければ、気にする素振りも見せずに苦笑する

 

「ねぇ、確かナツは前にドラゴンに育てられたって聞いたけど……マナツも同じドラゴンに育てられたの?イグニールだっけ?」

 

「うぷっ……アタシは…イグニールじゃないよ……花のドラゴンに育てられたの……名前は…ラベンダリア……花が大好きな優しいドラゴンだったの……うぷっ……」

 

「へぇ〜ドラゴンなのに花好きだなんて、ロマンチックなのね。ラベンダリアは」

 

「自慢のお母さんだよ……うぷっ…」

 

意識を手放しそうになりながらも育ての親のことを話すマナツは嬉しそうだった。その姿を見ながら、マキナは頭のゴーグルに触れる

 

(親か………ボクはなんで捨てられたのかな…)

 

マキナには生まれて直ぐの記憶が存在しない。特に家族についての記憶、自分の名前、何もかもが彼には存在しない。カナに拾われ、名を与えられてからは彼女の弟としての生活を送り、父と呼べる人物にも恵まれた。それでも不意に知りたいと思う時がある、自分が何処の誰で、何者なのかを知りたいと思う時がある。姉に話せば、今迄に受けた愛情を裏切ってしまうと感じ、話せないが何時かは知りたいと思っているのである

 

「着いた!!」

 

「「うぷっ…馬車にはもう乗らない……」」

 

「乗り物酔いです」

 

「あい!何時も通りです。というか馬車に乗る度に同じこと言ってるよ?」

 

乗り気酔いに苦しむナツとマナツを聴診器片手に診察するマキナ。その背後ではハッピーが何時も通りの二人に突っ込みを放つ

 

「それよりも先ずは腹拵えだね!あっ!あの草食べれるかな!」

 

「マナ?レストランに美味しいサラダとプリンがあるから、其方を食べなさい」

 

「プリン!わーい!」

 

意識を回復させたマナツが道端の草に興味を示すが、即座にリアンが素早い動きでシロツメのパンフレットを見せれば、彼女の興味はプリンに移る

 

「自分の花とかは食べれないの?そしたら、食あたりしないで良くなるじゃない」

 

「…………ルーシィって残忍だね」

 

「人の心がないよな」

 

「なんで罵倒されてるのよっ!?」

 

ルーシィの放った疑問に対する答えは竜兄妹からの辛辣な罵倒だった。納得のいかない彼女は切れ気味に問いを投げかける

 

「お前は自分の出したプルーや牛を食うのか?」

 

「食べるかーっ!!」

 

「要するにそれと同じだよ。アタシたち滅竜魔導士は自分と同じ属性の魔法とか素材は食べたりできるけど、自分の出す魔法は食べられないの」

 

「不便ね。まぁ、それはそうと行くわよ!マナツ!」

 

「あれ?アタシも行く流れ?やっぱり」

 

「マナツ!ルーシィになんかされたら、直ぐに兄ちゃんを呼べよ!?分かったな?」

 

「なんであたしが何かしないといけないのよ!!」

 

疑問が解決し、気を取り直したルーシィがマナツの手を引き、何処かに向かう姿を見送っていたナツが妹の貞操を心配するも、何かをしそうなルーシィにその気が無いために杞憂だった

 

「もぐもぐ……はぐはぐ……」

 

「このお魚のムニエルなかなかね。ちょっとシェフを呼びなさい」

 

「リアンは偉そうかなー。にしてもマナツもルーシィも遅いねー、この野菜スティックとかすごくマナツ好みなのにー」

 

「だな!それはそうとこの脂っこいエビフライはどうするよ?そうだ!ルーシィに残していとやるか!」

 

「あい!名案だね!ルーシィって、脂っこいのとか好きそうだし」

 

女子二人を待つ間、レストランで腹拵えをしているマキナたち。思い思いの料理に舌鼓を打つ中で、一番小柄な少年の傍には既に大量の皿が積み上げられているのは言わずもがなだ

 

「野菜スティックあるの?ちょうだいだ〜い!」

 

「というか誰が何時、脂っこいの好きだなんて言ったのよ……」

 

噂をすればなんとやら、元気よく登場したマナツはメイド服に身を包み、愛らしく笑いながら、目の前にある野菜スティックにかぶりつく。ルーシィはナツに脂っこいのが好きそうと言われた事に苦笑している

 

「マナツは何を着ても似合うねー。メイド服も可愛いよー、何処の美人さんかと思ったよー」

 

「ホント!?嬉しいなぁー!ありがとぉ!マキナ!」

 

「似合ってるわよ。まぁ、元から可愛いあたし程じゃにゃいけど!」

 

「やっぱりあたしたちって何を着ても似合っちゃうのよね〜。お食事はおすみですか?ご主人様。まだでしたらごゆっくり召し上がってくださいね」

 

メイド服姿のマナツにマキナが素直に感想を述べると彼女は嬉しさを現す様に彼に飛び掛かり、ルーシィは恥じらう素振りを見せてはいるが割と乗り気でメイドになり切っていた

 

「どうしようかなー、メイド作戦は冗談だったのに乗り気だよー?」

 

「でもよ〜マナツがノリノリなんだぜ?ルーシィは兎も角として、あの期待に満ちた眼差しを裏切れねぇよ」

 

「兎も角とは何よ!」

 

「メイドってなにするんだろー?リアンは知ってる?」

 

「エッチなおっさんをしばき倒すのよ」

 

「違うのでは?」

 

「アホしかいねぇのかよ」

 

冗談だった筈のメイド作戦に乗り気なルーシィは兎も角ながら、初めての体験に期待で慎ましやかな胸を膨らませるマナツを前に今更ではあるが冗談でしたと言えない空気にマキナは苦笑し、ナツも冷や汗を掻く

 

「取り敢えずだ!依頼者の家に行こうぜ!」

 

「あい!」

 

「話を逸らすんじゃないわよっ!」

 

「「ぐもっ!?」」

 

ナツとマキナの顔面に突っ込みと共に綺麗な回し蹴りが放たれる。床に減り込んだ二人を見捨て、ルーシィはマナツたちと依頼者の家に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、よくお越し下さいました。私が依頼主のカービィ・メロンです」

 

依頼者の屋敷の客間に通された一行は、主人であるメロン氏と謁見していた。然しながら、彼の名前を聞いたマキナたちの興味は依頼よりも其方に移っていた

 

「美味そうな名前だな!」

 

「メロン!」

 

「じゅるり……」

 

「メロンは好きよ。にゃぜかって?美味しいからよ」

 

「デザートに丁度いいかなー」

 

「博士!それにナツたちも失礼ですよ!というかマナツは涎を拭きなさい!」

 

「すまねぇな、メロンさん。コイツらはアホなんだ」

 

「本当にごめんなさい…後で叱っておきます」

 

メロンの名に反応を見せるマキナたちにデウスが注意する隣で、申し訳なさそうにエクスとルーシィが頭を下げる

 

「アハハハ、よく言われるんですよ。それにしてもまさかあの有名な妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士さんに受けてもらえるとは……」

 

「あい!ナツとマナツは「竜兄妹(ドラグニルブラザーズ)」って呼ばれてるんだよ」

 

「なんと!その字は耳にしたことがあります!となると……もしや、貴方は」

 

天才(ジーニアス)って呼ばれてるかなー。ちなみにネエちゃんは奇術師(ディーラー)って呼ばれてるよー」

 

「おお!その字も聞いたことがあります!天才的な頭脳を持つ魔導士と駆け引きに長けた女性魔導士の姉弟!「不思議姉弟(ワンダーアルベローナ)」!もしや其方の変わった服の方が?」

 

「違うよー?ネエちゃんはこんなよく分からない趣味の服は着ないかなー。この人は赤の他人だよー」

 

「よく分からない趣味とは何よ!?というかあたしも仲間でしょ!同じ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士よ!」

 

「ぐもっ!?」

 

有名な魔導士が目の前にいる事に興奮を隠せないメロン。姉の事を話しながら、自分の姉と間違われたルーシィを切り捨てるマキナに物理的な突っ込みが飛び、彼は高級そうな床に減り込んだ

 

「では本題に…私の依頼したいことはただ1つ。エバルー侯爵の持つ本、『日の出(デイ・ブレイク)』の破棄又は焼失です」

 

「焼失?依頼内容と違うかなー。確か依頼書には盗ってくるって書いてたよー?」

 

「実質的に他人の所有物を無断で破棄することは変わりがありません……ですが、そうしていただく他ないのです。勿論!報酬はお支払いします!200万J!」

 

依頼内容に違いがある事に気付いたのも束の間、多額の報酬に全員が目を見開く

 

「に!?」

 

「ひゃ!?」

 

「く!?」

 

「まん!?」

 

「かなー!?」

 

「驚きましたね…」

 

「全くだぜ」

 

報酬の値上がり、其れを知らずに依頼を受けた彼等は驚きを隠せずに驚愕する。既に知らせていた筈の連絡が行き届いていなかった事にメロンは首を傾げた

 

「おや…私は確かに知らせた筈でしたが…もしや入れ違いになったので?」

 

「そうみたいだねー。それにしても200万Jかー、内訳はどうするー?」

 

「簡単だよ!マキナ!先ずはアタシとリアンが50万!アニキとハッピーが50万!マキナとデウス、エクスが50万だよ!」

 

「にゃるほど。残りがルーシィの取り分ってことね?マナは賢いわね」

 

「えっへん!計算は得意だからね!」

 

「すげぇぞ!マナツ!」

 

「あい!」

 

「あたしの取り分が残ってないんだけど!?」

 

内訳を話し合っているとマナツが提示した内容に誰一人として、違和感を感じていなかったがルーシィだけは自分の取り分が無い事に異議を申し立てる

 

「それにしても急な値上げなんて、どうしたのかなー?200万も支払ってまで破棄したい本ってことかなー」

 

「理由を話すには時間をいただく必要がありますが………どうか、ここは私の願いを聞き入れてもらえませんか……どうしても、日の出(あの本)の存在が私には許せないのです」

 

マキナの鋭い指摘に、言葉を濁しながらも本の存在が許せないと口にするメロン。その真意に触れる事は依頼内容に無いと判断したマキナは頭のゴーグルに触れ、何時もの笑顔を浮かべる

 

「だそうだよー?ナツ」

 

「よーし、燃えて来たァ!!仕事に行くぞ!」

 

「天才に不可能はないかなー!」

 

「潜入とか草生えるー!」

 

「あらやだ枝毛」

 

「あい!頑張っていこー!」

 

「潜入の意味を知ってるのかしら……」

 

「博士!はしゃぐと転びますよ!」

 

「やっぱり……アホばっかりだぜ…」




メイドとして潜入することになったマナツとルーシィ、然し彼女たちに放たれたのは予想外の一言……!

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