天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マナツ「前回のあらすじ!今日は前回に大活躍した超美少女のアタシが担当するね!六魔の一人、エンジェルの卑劣な行いに怒ったアタシとルーシィは、すっごく強い魔法でエンジェルをやっつけたよ!」

リアン「えらいわね、マナ。頑張ったご褒美に野菜スティックをあげるわね」

マナツ「わーい!野菜だーいすき!」

ルーシィ「甘やかしすぎよっ!!アンタは!」

マキナ「ルーシィだけが八つ裂きになる展開を期待していたのに残念かな」

ルーシィ「発想がエグいわっ!!」


第七十八話 天才くん、リベンジマッチをする

「私…来なきゃよかったかな…」

 

沈みゆく夕陽が照らす樹海を見渡せる岩場、其処にウェンディはいた。呟くように口にしたのは後悔の言葉、抱え込まれた膝の間には寂し気な瞳が浮かぶ

 

「まーたそういう事言うの?ウェンディは」

 

「だって…」

 

不満を口にするウェンディを咎めたのは、相棒のシャルル。それでも尚、俯き、自信なさ気にする彼女の肩に手が置かれた

 

「だってもへったくれもねーし。ネガティブな感情は闇に落ちる……スコルを見たっしょ?あのバカは元が前向きだから、余計に後ろ向きなことには鬼弱なワケ。アンタはマナとバレルを救った、それだけは忘れちゃなんねぇの」

 

「そうよ。もしも、マナになにかあったりしたら、あたしが闇に落ちていたわ。ウェンディはあの子を助けてくれた……それだけは確かよ。ありがとう」

 

「レティさん……リアン…」

 

「バレルは自分ではハードボイルドを気取ってるけど、爪が甘ぇ……今回はそれで招いた失敗みたいなもんだ。そんな失敗ばっかりなアイツををアンタは助けてくれたんだ……感謝してやらねーこともねぇ」

 

「トリガー……」

 

優しく笑うレティとリアン、慣れないながらも一応は感謝の言葉を口にするトリガー。彼女は今、一人じゃない、頼もしい仲間がいる。それだけで心は僅かではあるが晴れやかになっていた

 

「あら、ヤケに素直ね?ちんくしゃにしては」

 

「テメーだけは嫌いだ」

 

「だから、ケンカはやめなさいっての!メスネコども!」

 

暗い雰囲気を和やかにする為か、揶揄い混じりにトリガーに声を掛けたリアン。その様子を見ていたシャルルはケンカしていると判断したらしく、二匹を咎める

 

「でも一つだけ忠告しておくし……レティたちが知ってるジェラールはウェンディが知ってるよーな優しいヤツなんかじゃない……。確かに昔は優しかったかもしれないけど……アイツはレティたちの人生を狂わせた張本人だ。ウェンディには悪いけど、レティはアイツを絶対に許さないし、許すつもりもないってのだけは覚えておくし」

 

「レティさんとジェラールに何があったかは知らないです……だけど、私は確かに救われたんです……それは今でも私の中に…」

 

ジェラール、その名を口にするだけでレティの中にある辛い記憶が甦る。一度は大好きな姉貴分を傷付けようとした、根が純粋だった故にジェラールの言葉に耳を傾け、彼女の大切なものを奪おうとした。辛い記憶に蓋をして、自分は強いと言い聞かせ、笑顔さえも忘れていた。それは姉も同じだった、自分を導き、誰に対しても優しかった姉は何時からか笑わなくなり、親友だった筈の姉貴分を手に掛けようとまでした。しかし、それは突然のように終わりを告げ、彼女も、姉も、姉貴分と同じギルドに身を置くようになっていた。だが、知り合ったばかりの少女が慕うジェラール、それが自分の知る彼だと思うと怒りが湧き上がり、憎しみが溢れ出す

 

「レティ。はしたないわよ、やめなさい」

 

「………!?イッシュねぇ……何時から……てか本物だよね?まーたニセモンの可能性もありえる……」

 

憎しみに囚われかけていたレティを引き戻したのは姉の声。目の前に視線を向ければ、九尾の姿になり、尻尾の風の力で浮かぶイッシュがいた。偽物かもしれないと疑念の眼差しを向ければ、本人は首を傾げた

 

「なんの話よ。こっちはマキナに事情を聞いたエルザがジェラールを探しに行ったまま、帰って来ないから、アンタと合流しようと思っただけよ。ヒビキだった?彼の魔法で頭に直接、座標みたいなのが送られてきたから、探しにきてあげたのよ」

 

「あっ、そうなん?そいつはさん---って!!イッシュねぇはジェラールが憎くないワケ!?レティたち、鬼ヒドイ扱いされたんだよ!?それにシモンだって…!」

 

最初は納得しかけていたレティだったが、当然のように姉が口にした名に驚きながら、今はもう会うことが叶わない大事な仲間の名を口にしながら、その瞳には涙が滲む

 

「確かにジェラールがしたことは許されないわ。でも、今の私たちには自分の道を歩く為の足がある。何時かはジェラールの道と私たちの道が交わることがあるかもしれないし、交わらないかもしれない。だけど、彼もまた自分の道を歩こうとしている。レティ、アンタが知るジェラールは最初から悪い人だった?」

 

「………そ、それは……」

 

記憶の中のジェラール、最初から彼が悪人だった訳ではなかった

 

『レティは小さいけど、頑張り屋だな。きっと何時かは強くなれるよ』

 

小さくて、一人では何も出来なかった自分を妹のように可愛がってくれた

 

『お腹空いてるのか?ほら、俺の分を食べろ』

 

お腹が空いてる時は自分の食糧を分け与えたりしてくれた

 

『レティは本当にエルザとイッシュが大好きなんだな。二人と一緒に魔導士になりたいのか……レティなら、きっと出来るさ』

 

夢を語れば、笑わずに聞いてくれた。記憶の中にいたもう一人のジェラール。悪人だった頃とは違う彼、兄のように慕っていた頃の彼は優しく笑う少年だった

 

「…………レティの道もジェラールと交わるかな……そしたら、昔みたいに……エルねぇとジェラにぃ(・・・・・)と、ミリアーナにショウ……ウォーレンにイッシュねぇ……それから、シモンも…」

 

「レティが信じてあげれば…きっとね…」

 

優しく笑ったイッシュはレティを包み込むように抱き締める。何時かは交わる道、それが何時かは分からないが仲間たちと笑いあえる未来、それが来ることを信じ、レティの気持ちは僅かに晴れやかな気分になっていた

 

「姉妹愛ね……はっ!ハッピーが呼んでるわ!!行かなきゃ!待ってるのよ!ハッピー!お姉ちゃんが行くわよ!」

 

「こんなヤツ等と戯れてる場合じゃねぇ!!バレルのトコに行かねーと!おい!たぬきにきつね!ウェンディとシロネコは任せたからな!」

 

「なんなのよっ!アンタたちは…!!」

 

美しい姉妹愛に涙していたリアンは何かを思い出したように飛び去り、同じように相棒のことを思い出したトリガーも飛び去る。身勝手極まりない二匹にシャルルの叫びが木霊した

 

「さぁ、ウェンディとシャルルもいくわよ」

 

「は、はい!」

 

「仕方ないから一緒にいくわ」

 

「早くいけし」

 

「あ?なんか言ったか?」

 

「ぴえ……!ご、ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツ……なにやってるかな、こんなトコで」

 

ニルヴァーナの光を目指していたマキナは、森の中で蔦に絡まった状態で身動きの取れなくなっていた見覚えのある桜髪を見つけ、呆れた眼差しと共に声を掛けた

 

「おー!マキナ!丁度よかった!ん?スコルはなんで動かねぇんだ?ああ、それと助けてくれ」

 

「質問に質問で返さないで欲しいかな。というか、何をどうやったら、そうなるワケ?」

 

質問に質問で返答されるという奇妙な出来事にため息を吐き、助けを求めるナツに絡まった蔦をドランバスターで斬り裂く

 

「ディンガ〜おいらも助けてよー」

 

「おやおや、仕方がない弟だ。しかしだ、これがリアンに見られる前でよかったね」

 

「あい……リアンに見られたら、二時間はお説教されちゃうよ……」

 

同じように蔦に絡まったハッピーが助けを求めれば、兄貴分のディンガは肩を竦めながらも愛用の巨大スパナを振り、飛ばした斬撃で蔦を斬り裂く。救出されたハッピーは姉貴分が居ないことに安堵し、胸を撫で下ろした

 

「あら、にゃに?ハッピー。お姉ちゃんがいたら不都合でもあるの?」

 

「不都合ってワケじゃないけど、リアンはおいらを子ども扱いしすぎるから………あい?リアン?」

 

「おや、マイレディ。何時の間に」

 

唐突に聞こえた声、目の前に現れた姉貴分に、ハッピーは目を疑い、何度も自身の目を瞬きさせ、ディンガは頭のガスマスクに触りながら呑気に呟く

 

「ハッピー?お姉ちゃん、オハナシがあるんだけど」

 

「お、おいらはないよ……」

 

優しく笑い掛けながらも、瞳の奥が笑っていないリアンに何かを感じ取ったハッピーは露骨に目を逸らす

 

「正座」

 

「あ…あい…」

 

優しい声色ではあるが明らかに怒気の含まれた一言。それに歯向かえないと本能で判断したハッピーはリアンの前に正座するしか選択肢が他に存在せず、大人しく従った

 

「リアン。今はハッピーの説教に時間を割いてる暇なんかねーかな」

 

「む……仕方ないわね、マキがそういうなら今だけは見逃すわ」

 

「ありがと〜!マキナ〜」

 

しかし、今は一刻も余談を許さない状況。それを理解していたマキナが助け船を出せば、僅かに不服そうにはしたが、状況が悪い方向に向かっていることは理解していたらしく、リアンは渋々ながらもハッピーを解放した

 

「それで、マキ。マナたちは一緒じゃないの?あの後、どうにゃったのよ」

 

「ヒビキさんからの情報だと、残る敵はコブラにホットアイとミッドナイト、ブレインの四人みたいかな。エンジェルはマナツたちが、レーサーはグレイとリオンが倒したみたいだよ」

 

マナツたちと別行動を取ってから、事の顛末を見届けていなかったリアンが状況を問えば、ヒビキから情報を得ていたマキナが現在の戦力図を説明していく。その説明をする為だけに光ペンを懐から取り出し、空中に描くのは気遣い上手と名高い彼也の配慮に他ならない

 

「にゃんですって?マナが六魔将軍(オランシオンセイス)の一人を倒したの?知らない間に成長したのね、あの子も」

 

耳を疑う話、知らぬ間に成長していたリアンの相棒の少女が敵の一人を倒した、その話を聞き、相棒の成長に笑顔を見せる

 

「あっ、また情報が……ふむふむ、なるほどね。ホットアイはジュラさんと一緒らしいよー。なんかニルヴァーナで悪人から善人に変わったみたいかな。んで、シェリーとかいう人は其処のバカとおんなじ理由で戦闘不能に、イヴとレンはミッドナイトに倒されて、一夜さんは行方不明みたいかな」

 

「最後だけ、にゃんだか曖昧ね……」

 

その時、ヒビキから得た情報に新たな動きがあったらしく、自分が聞いた情報をマキナは頭の中にインプットする。唯一人、扱いが雑な一夜に関する突っ込みを放つリアンの表情は苦笑が浮かぶ

 

「しかしだ、一人が此方側に寝返ったということはだ。残るは三人ということになるね」

 

「問題はその三人かな。ナツにはブレインを任せたいかな」

 

「ん?なんでだ?」

 

問題となる三人、ブレインとミッドナイトにコブラ。その中でもリーダー格と呼べるブレインをマキナはナツに任せようと考えていた。その意図が理解出来ず、腕を組み、首を傾げるナツ。それに対する白衣の少年の反応は頭の上のゴーグルに触れ、意味深に笑っていた

 

「ブレインはリーダー、リーダーは強い、その強いのをナツが倒したとしたら、どうなるかな」

 

「…………グレイとエルザよりも俺が強いってことか!!なるほどな!よし!いくぞ!ハッピー!」

 

「あいさーーっ!」

 

態々、説明口調で解説しながらも、明らかにナツの闘争心を煽るマキナ。しかし、その意図に気付かないナツは上手い具合に乗せられ、ハッピーと共に駆け出していく

 

「………来る!この匂いは…!!ヤベーのが現れる前兆かな!」

 

「「わっ!?な、なんだぁ!?」」

 

思考を巡らせていたマキナ、何かに気付くと前方のニルヴァーナに視線を向けた状態で叫ぶように声を挙げた。その言葉にディンガたちもまた視線を向けようとした瞬間、樹海全体を巨大な揺れが襲った

 

「マキナ殿、此処にいたか。どうやら、ニルヴァーナが最終段階に入ったようだ」

 

「かなりの大きさ……デスネ!」

 

「ジュラさんにホットアイのおじさんかな。ボクも把握してるよー、それに関しては」

 

揺れが収まると同時に姿を見せたのはジュラと敵側から寝返ったホットアイの二人、いきなりの登場にディンガとリアンが警戒を見せる中、自然に受け入れたマキナは彼等が持ってきた情報も把握していることを口にする

 

「ややっ…!見たまえ、博士。何かが歩き出したようだよ」

 

「ルーシィの足音じゃないのー?」

 

「あたしは巨人かっ!!」

 

空を飛び、揺れの正体を探っていたディンガが何かが歩き出したことを告げれば、マキナは呑気にルーシィの足音ではないかと口にする。それを聞きつけたかのようにルーシィが姿を見せ、突っ込みを放つ

 

「リアンとマキナだ〜!」

 

「あら、マナ」

 

「後ろにバレルとトリガー、ヒビキさんもいるかな」

 

茂みが動き、ひょっこりと顔を覗かせたマナツは相棒と幼馴染を見つけるや否、花が咲いたような満開の笑顔で一匹と一人に飛びついた。その背後にはバレルとトリガー、ヒビキも確認出来る

 

「レティさんはどこだ?」

 

「ウーちゃんとアニキもいなーい」

 

「レティとウェンディ、シャルルにはイッシュが一緒かな。ナツには頼みごとをしてるよ、グレイとエルザは多分どっかにいるかな」

 

「そっかー」

 

姿の見えない仲間たちの所在を気にするバレルとマナツ、その疑問に持ち得る情報をマキナは可能限りで開示していく

 

「それよりも!マキナ!アレはなんなのよ!?またアンタの発明!?」

 

「侵害だなー、さすがの天才のボクもあんなに邪魔なだけのデケェのはつくったりしねーかな。ニルヴァーナだよ、アレは」

 

「「ニルヴァーナ!?」」

 

地響きの正体である巨大な何かをお騒がせばかりの科学者の発明品と疑ったルーシィが問えば、返ってきたのは予想もしていなかった答え。巨大な何かの正体が件のニルヴァーナである事を知り、その場にいた全員が驚きの声を挙げた

 

「そう、アレが……アレこそがニルヴァーナの正体かな。魔法であると同時に建造物でもある超古代魔法にして、古代の遺物…!それがニルヴァーナ…!!」

 

ニルヴァーナの正体、それが魔法であると同時に建造物であると判断したマキナ。その結論に誰もが驚きを隠せず、それを魔法と呼んでもいいのかさえも理解に苦しんでいた

 

「みんな!ここに居たし!」

 

「レーちゃん!」

 

瞬間移動を使い、空に開いた穴から顔を出したレティ。友人の無事を確認したマナツは嬉しそうに彼女の名を呼んだ

 

「イッシュねぇとウェンディにシャルルはもうあの鬼ヤバ建造物の中に潜入済みだし!みんなも早く来て!」

 

既にイッシュとウェンディ、シャルルがニルヴァーナの中に潜入していることを報告したレティに導かれ、マナツたちは空に開いた瞬間移動用の穴に飛び込んでいく

 

相棒(ディンガ)。あそこまで飛んでくれるー?」

 

「おや、猫の手を借りたい状況かい?そこまで言うなら、いくらでも協力させてもらうよ、博士(マキナ)

 

固有魔法の有魔法の(エーラ)を発動させ、翼を広げたディンガは相棒の背を掴み、宙に浮かび上がる

 

「なる早でお願いするかな」

 

「了解した」

 

今日日聞かない死語を放つマキナに対し、ディンガは彼を掴んだ状態で勢いよく翼を羽ばたかせる。その時速は熟練魔導士が魔道四輪を走らせるのと大差が無く、瞬く間に歩み出したニルヴァーナに迫っていた

 

「ぐっ……か、体が……」

 

「ナツ!?どうしたの!?」

 

「わ、わかんねぇ……」

 

「ハッピー!これを受け取るかな!」

 

ニルヴァーナに辿り着いたマキナはコブラを前に苦しむナツの姿を捉え、白衣から取り出した一本の注射器を投げ渡した

 

「マキナ!これなにー!」

 

「コブラの毒に打ち勝つ為のワクチンかな!」

 

「なに!?どうやって、そんなものを!」

 

注射器の中身は毒に対抗する為のワクチンだと告げたマキナ、そんな物が存在している事を知らなかったコブラは驚き、冷静だった表情に僅かな変化が見えた

 

「どうやって?毒を喰らったのは、ナツだけじゃないからね。バレルの治療をした時に血を抜いて、成分を分析して、更におにーさんと戦った時におにーさんの細胞とそのヘビの細胞をすこーしいただいたかな。それ等を元に造ったのが対コブラ用ワクチン。此れを再現出来てしまう……頭脳が我ながら恐ろしいかな。でも出来るのがボクかな……何故かって?天才だからに決まってるかなー!」

 

科学的に解析した魔法又は現象を起こす発明を生み出してしまう彼の頭脳。正に魔法と科学の融合、其れ即ち魔科学である

 

「ふんっ、毒を攻略されたからなんだってんだ。こっちにまだ隠し球がある……毒竜爪牙!!」

 

「一刀竜・竜速天!!」

 

意味深に笑ったコブラが毒を纏った毒竜の鉤爪を速度特化の無数の飛ぶ斬撃で相殺させるマキナ。此処に毒と斬撃、二頭の竜が紡ぐ戦いの舞台が幕を開けた

 

「〝X(見えないもの)〟が見える時……全ては終わりを告げる。瞬きしてると見逃すよ……〝X(見えないもの)〟が見えるのはこっからだよっ!!」




斬撃対毒、空中戦を制するのはマキナか?将又コブラか!?勝敗は如何に!

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