天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……コブラとのリベンジマッチをする為にドランバスターを抜いたかな」

ディンガ「おやおや、博士の大立ち回りを間近で見れるとは……これは実に興味深いね」

マナツ「いいなー……マキナのかっこいいトコ、アタシも見たいのにー」

リアン「大丈夫よ、マナがピンチの時には見れるわよ。ねぇ?マキ」

マキナ「うん、マナツの為なら頑張るよー」

マナツ「わーい!ありがとー!」


第七十九話 天才くん、毒を斬る

「〝X(見えないもの)〟が見える時……全ては終わりを告げる。瞬きしてると見逃すよ……〝X(見えないもの)〟が見えるのはこっからだよっ!!」

 

その手に持つは、一振りの大太刀。鞘には大量の札が貼られ、その力を抑制するかのように封じられている。しかし、それも今となっては見せかけに過ぎない。魔力の上昇を切っ掛けに滅竜魔導士としての力を以前よりも制御可能となった白衣の少年は頭のゴーグルに触れ、両眼を見開く

 

「斬撃竜の一撃は万物全てを斬り裂く〝X(見えない斬撃)〟を放ち、その前に立ち塞がる凡ゆる概念を斬り裂く…こうなったが最後、本気を出した博士は誰にも止められない」

 

「なるほどな……お前も俺と同じ新世代(・・・)の滅竜魔導士か。その身に竜の魔水晶(ラクリマ)を埋め込むことによって、竜殺しの力を得た者……それこそが新たなる滅竜魔導士の在り方!そうだろ?科学者!」

 

ディンガがマキナを担ぎながら、彼の滅竜魔法についての解説を行うと、コブラもまた自らの滅竜魔法に関する情報を開示し、新たなる滅竜魔導士の在り方を問う

 

「な〜るほど………滅竜魔導士の在り方ね、それは面白い発想かな。だけどね、ボクにとっては滅竜魔法(こんなの)は副産物に過ぎないんだよ。滅竜魔法は如何なる原理だろうと竜殺しの魔法、如何なる経緯で力を得ようと根幹自体は揺らがない。新世代?旧世代?馬鹿々しいにも程があるね。人が魔法を使い続ける限り、魔法は科学が発展していくように様々な進化を遂げてゆく………今はアンタやボクが新世代かもしれない……だけど、直ぐに技術は進化する、それが世界だ」

 

しかし、彼は大太刀を手にその在り方を一蹴した。科学を扱うが故に進化論には敏感な彼の中には新世代も旧世代も存在しない、世界が如何に進化を遂げるかによって、あらゆる技術は進化していく。それは魔法も例外ではない、使い手の力量次第では魔法は如何様にも化け、あらゆる力に転ずる。それをマキナは誰よりも理解し、身に染みていた。彼が得意とする魔法の真髄は物質を移動させることに特化し、攻撃には向いていない。されど、彼は持ち前の頭脳を元にそれを改良し、魔科学と名付けるに至った。かつて、この世に魔法と科学を両立させた者は存在しない、その功績はマキナ・アルベローナという一人の少年が成し得た誰にも真似が出来ない領域と呼べる。故に彼は進化の先にある新たな世界を知りたい、見てみたいという想いが人一倍強かった。それを笑う者は如何なる者であっても彼は許さない、魔法と科学が手と手を取り合う世界に、新世代も、旧世代も存在しない。その全てが発展の為に必要不可欠な歯車であるからだ

 

「世界がどうあるかなんかは知らねぇ……コイツが居る場所が俺の居場所だ。キュベリオス!!」

 

マキナの力説も彼の耳には意味を持たない戯言。自分の居場所は相棒の側、それだけは揺るがないコブラは毒蛇のキュベリオスに呼びかけ、口から吐き出された紫色の霧を口に含み始めた

 

「博士…もしや、あれは…!」

 

「うん、間違いないね。ボクが斬撃を食べるみたいに毒を食べてる。コブラの魔力の源は毒そのもの……そして、あの蛇はその為に毒を提供している。互いが互いを必要と認識し、協力しあう関係性……間違いなく、あの蛇はコブラの相棒だ」

 

その行動に見覚えのあるディンガが問えば、マキナは冷静に行動に関する答えを導き出し、尚且つ、キュベリオスが自分たちにとってのディンガたちに該当する存在であると判断する

 

「ならば、僕たちもやるべきは一つだ。いくよ?博士!」

 

「うん。おもいっきり空にぶん投げて…!」

 

「なにをしようと無駄だ……お前の声は筒抜け……聴こえてるぜ」

 

勢いをつけ、空高くに飛び上がったディンガは担いていたマキナを指示通りに遙か上空に放り投げる。しかし、聴力に優れたコブラには既に筒抜けであり、その動きを察知し、彼よりも遥か高くに飛び上がろとする

 

「そうはさせないよ。博士を傷付ける者を僕は許さない…!」

 

「てめっ…!さっきのネコか…!」

 

それを阻まないとばかりに姿を人間体に変化させたディンガは巨大スパナを腰に携えると柄の部分に手を掛ける

 

「一刀猫・速猫天如!」

 

「なに…っ!?」

 

ディンガの放った飛ぶ斬撃がコブラに襲い掛かり、行手を阻む障壁と化す。聴こえていた筈だった、それでも尚、科学を嗜む彼等は予想の遥か先を見ており、一人と一匹の連携は互いを信じ合うが故に隙を与えようとはしなかった

 

「滅竜奥義」

 

そして、遥か上空から聞こえたのは幼いながらも逞しい声。その眼前にあるのは身の丈以上はある大太刀を手に落下する白衣の少年の姿だ

 

「独眼竜天!!!」

 

次の動きに移ろうとしたコブラよりも速くに動いたマキナは落下すると同時に空気摩擦の力で静電気を帯びた斬撃をその身に刻み込む

 

「ぐああぁぁーっ!!(こいつ……この戦いの最中に全く関係ないことを……ありえねぇ……こんなヤツがいるかよ…フツー…)」

 

最強の斬撃を味わったコブラはキュベリオスと共に地に落ち、少年は白衣を棚引かせながらも頭のゴーグルに触れ、大太刀を鞘に納刀する

 

「博士。差し支えなければだが、キミが戦いの時に何を考えていたかを教えてもらえるかい?でなければ、今の技もコブラに読まれていたはずだろう?」

 

ディンガの問いは的を射ていた、コブラは毒の滅竜魔導士である前に他者の心を読む体質。しかし、マキナの斬撃を回避することは敵わず、敗北したのだ。これは明らかに斬撃を放つ際にマキナが他のことを考えていたと推測可能である

 

「う〜ん、別に……フツーのことだよ?わたあめ食べたいなぁっていうフツーの考えかな」

 

首を傾げ、考えていたことを口にするマキナ。戦いの最中に好物を食べたいと考えられるのは彼くらいだろう、それは決して普通ではないのだが、彼にとっては普通なのだから不思議である

 

「オーケー、把握した。キミはそういう性分だったね」

 

「だって、なんか頭を使い過ぎて糖分が足りなくなってるよーな気がするかな。あと、絶対に手を離さないでね?一応、動いてるから乗り物よ---あっ!」

 

呆れながらも、マキナを掴んだ状態で空を飛ぶディンガ。当の本人は頭の中に糖分が足りなくなっていることを危惧しながら、乗り物と認識しているニルヴァーナの上には降ろさないで欲しいと告げようとするが、何かを思い出し、大きな声を挙げた

 

「どうかしたかい?博士」

 

「マナツに酔い止めあげるの忘れてた……どーしよ!?」

 

「あっ!マキナだー!おーい!」

 

幼馴染に酔い止めを渡すのを忘れていたことを思い出したマキナが慌てた様子で目を白黒させていると、ニルヴァーナの上にある古代都市から聞き覚えのある声が聞こえ、視線を動かすと、其処には元気よく手を振るマナツの姿があった

 

「…………なんで!?」

 

彼女が乗り物酔いをせずに元気に溢れた姿を見たマキナの表情は驚きが打ち勝つ。今までは自分が作った酔い止め無しでは立つことも出来ない程だったにも関わらず、今の彼女は手を振っているのだ

 

「何がどうなっているんだい?リアン」

 

「ウェンディがトロイアって魔法をかけてくれたのよ。にゃんでも、一時的に乗り物酔いを抑える効果があるらしいわ」

 

「えへへー、いっぱい動けるんだよ!」

 

トロイアの効果で乗り物酔いをしなくなったマナツは元気に満ち溢れ、所狭しと動き回る。その様子を微笑ましそうにリアン見守っている

 

「おや、博士もお役御免というワケだね。ん?博士?」

 

「…………」

 

「どうしたのー?」

 

ニルヴァーナに足を付けた途端に、微動打にしないマキナ。異変に気付いたディンガが声を掛けても反応が無く、マナツが顔を覗き込む

 

「酔った………きもちわるい………た…助けて……」

 

「わっ!とっと……仕方ないなー、マキナは」

 

顔色が悪くなり、ふらふらとおぼつかない足取りにマキナは吸い込まれるかのようにマナツの慎ましやかな胸元に倒れ込む。幼馴染の情けない姿に一度は苦笑したが、直ぐに花が咲いたように笑うと彼女は優しく抱き止めた

 

「おやおや、博士が乗り物酔いとは滅竜魔導士は興味深いね。そういえば、フェルマに聞いたのだけれど、ラクサスも乗り物に弱いようだよ」

 

「乗り物に強い滅竜魔導士が出て来ることはあるのかしらね、この先」

 

「進化を続けていれば有り得なくはないが、今の所は有り得ないだろうね……おや?」

 

乗り物酔いに苦しむマキナを看病するマナツ、その様子を見守っていたディンガ。何かを感じ、その表情を僅かに顰めた

 

「ほう……その頭脳にはなかなかの利用価値がありそうだな」

 

その視線の先に佇むは六魔将軍を率いるブレイン。彼の視線は未だに息も絶え絶えなマキナに向いており、マナツは彼を庇うように抱き締める力を強くする

 

「ブレインだったかい?博士をどうするつもりかな」

 

「マキに触れてみなさい、容赦はしないわよ」

 

そして、マキナを奪うことを良しとしない者たちは他にもいた。赤い髪の青年と黒髪の美少女、臀部から生えた尻尾が揺れてはいるが、その視線ははっきりとブレインを捉えていた

 

猫格闘(キャットアーツ)

 

一刀猫(いっとうびょう)

 

リアンが弧を描くかのように足を動かせば、ディンガは巨大スパナを腰に携えると柄の部分に手を掛ける

 

月華美刃(・・・・)!」

 

速猫天如(・・・・)!」

 

「ぐっ……!?」

 

二つの斬撃はブレインを吹き飛ばし、大量の砂塵を巻き上げる。目眩しとなった其れはマキナたちを覆い隠し、その姿を完全に消している

 

「うぷっ………こーなったら……いちかばちか………デウスとエクスがいる方向に……物質移動(アポーツ)…!!」

 

本来はマーキングしていない場所には飛ぶ事は不可能に等しいが、魔力を感知してさえいれば、僅かな距離を移動することも不可能ではない。故に自らの発明品であるデウスとエクスの存在が感じられる場所に転移をマキナは試みたのだ

 

「マキナ!マナツ!よかった!無事だったのね!」

 

「わっ!ルーねぇ!?苦しいよぉ〜」

 

転移した先にはルーシィと未だに気絶中のスコル、グレイとフラクタル姉妹に加え、ウェンディとシャルルが居り、マナツの無事を確認したルーシィは彼女を抱きしめた

 

「無事ではねーかな………酔い止め……くれ……」

 

「まさか毒ですか!早く治療しないと!」

 

「毒ではないよ、乗り物酔いだ。ほら、博士…これを飲みたまえ」

 

乗り物酔いに苦しむマキナをウェンディが治療しようとするが、呆れたように白衣から酔い止めを取り出したディンガは彼の口に放り込む

 

「うぅ………治ったかな」

 

「ふわぁ〜……おん?どこだぁ?ここは……って!ゴラァ!このもやし!よくもさっきは俺を殴りやがったなぁ!?」

 

酔い止めの効果で体の自由が効くようになったマキナが肩を回していると、遂に気絶から回復したスコルが目を覚ますと同時に気絶の元凶に喰って掛かる

 

「耳元でギャーギャーうるせーかな、もっかい眠らすぞ」

 

「あん?出来るもんならやってみろや!もやし!」

 

「あわわ!ケンカはダメですよ!?」

 

「あー……まーたやってる……なんで、こーなるのかなぁ?レーちゃん」

 

「決まってるし、男はバカだからじゃん?そんなの」

 

「状況を理解してんのかしら……このおチビちゃんズは」

 

敵陣の中に居るにも関わらず、額を突き合わせるマキナとスコル、それを止めようとするウェンディ、その様子に呆れるマナツとレティ。その構図に一抹の不安を覚えたルーシィの冷静な突っ込みが決まる

 

「はしたないわね」

 

「使い方あってんのか?それは……」




六つの祈りが消える時……零から新たなる最凶が呼び覚まされる……

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