天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……なんかすげぇ棒切れに出会ったかな」

ディンガ「なんとも興味深いね、量産したいものだ」

マキナ「金の匂いがするかな。ネエちゃんにお酒をいっぱい買ってあげられるね」

ディンガ「はっはっはっ、博士は守銭奴だね」

デウス「ディンガもでしょうに」

エクス「やれやれだ」


第八十一話 女狐お姉さんとたぬき妹ちゃん、妖精女王に助太刀する

 

「「つ………杖が喋ってる!!すっごく不思議(ワンダー)!!」」

 

「目を輝かせてる場合かっ!!」

 

興味深い喋る杖基クロドアを前に両眼をきらきらと輝かせているのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)が誇る天才児と相棒の赤猫。科学者を生業とする彼等には未知なる遭遇は格好の研究素材との出会いの場なのだ。しかし、今は敵を前に好奇心を抱いている場合ではないことを誰よりも理解しているであろう常識人のルーシィの突っ込みは冴え渡っていた

 

「わぁ……ちょーまずそー……木だけど…あれは食べたくないなぁ」

 

「マナ。良い子だから、変なことは考えないのよ」

 

「そうよ!あんなの食べたりしたら、お腹壊すだけじゃすまないわ!」

 

花の滅竜魔法を扱うマナツは花を咲かせる植物を補給源とするが故に野菜の他に木なども食べるのだが、流石にクロドアは見た目が不味そうとの理由から、食べるのを断念していた。その様子に彼女を過保護に甘やかす一匹と一人は諭すように彼女が考えていそうなことを真っ向から否定していた

 

「そーだよ、あの棒切れはボクが研究するかな」

 

「興味深い……頭をカチ割りたいね」

 

「アンタたちも少しは自重しなさい!」

 

頑なに研究材料と主張するマキナとディンガに対しては容赦ない突っ込みを放つルーシィ。その様子から見て理解出来るように彼女の中のマナツが如何に甘やかすべき存在であるかは容易に理解可能だ

 

「それで棒切れ。お前、ブレインがどうたらとか言ってやがったが、なんか知ってやがる口か?」

 

「エクス、こちらはクロドアさんだ。棒切れなどという呼び方は失礼だろう」

 

「敵相手にさん付けしてんじゃねーよ。アホか?お前は」

 

高圧的に問うエクスを咎めるようにクロドアに敬称を付けるデウス。それに対するエクスの反応は冷ややかだった

 

「如何なる相手にも敬意を払うのは当たり前だろう。ですよね?博士」

 

「えっ?ごめん、聞いてなかった」

 

如何なる相手であっても敬意を払うべきだと主張するデウスはマキナに同意を求めるがクロドアの構造に興味深々な彼は何も耳に入っておらず、首を傾げた

 

「棒切れ!さっさとこのデケェ街を止めろ!」

 

「そうだテメー!!ウェンディのギルドになんかしやがったら、へし折るぞゴラァ!」

 

「六人なのに七人目ってことに気付いてねぇのか?コイツらは…」

 

クロドアを地面に叩き付けるナツ、それにメンチを切るスコルを見ていたトリガーは表情を引き攣らせ、呆れたようにため息を吐く

 

「落ち着けよ、トリガー。六人も七人も変わらないって言うだろ?」

 

「そ、そうだな!似たようなもんだよな!」

 

何処から取り出しのか不明だが、コーヒーを嗜むバレルが冷静に話し掛けるとトリガーは先程までの呆れた様子が嘘のように意見を覆す

 

「ぬぇい」

 

「あ!逃げた!逃げたよ!アニキ!」

 

「待ちやがれ!棒切れ!」

 

すり抜けるようにナツの手から逃げたクロドアを追うマナツたち。元が杖故に逃げる姿は中々に滑稽であるが、その杖は曲がりなりにも敵である

 

「凶暴な小僧どもめ……そろそろ奴等のギルドが見えてくる。早めにゴミを始末しとかんとな」

 

「それって、化猫の宿?」

 

妖しく笑うクロドアにルーシィが問えば、その答えと言わんばかりに頭部の飾りがけたけたと揺れる

 

「その通り、まずはそこを潰さんことには始まらんからなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「舞え!剣たちよ!!」

 

「イッシュねぇ!あそこにエルねぇが!」

 

「確認したわ……それにジェラールもね」

 

エルザを探す為に別行動をしていたフラクタル姉妹は、高らかな女王の声を聞き、戦場に急ぐ。レティが姿を確認し、声を挙げれば、イッシュもその姿を確認した後、もう一人の存在、かつての仲間でもあった青年の姿を捉えた

 

「イッシュねぇ。今はジェラールよりもエルねぇの方が優先だし。あんなヤツに構ってる暇なんかねーかんな?気にするだけ無駄じゃん」

 

「分かってるわ……接収・妖狐!」

 

自分を諭すかのように今はジェラールよりもエルザに助太刀をする方が優先だと口にする妹に従い、イッシュはその姿を妖狐の姿に変化させる

 

「スパイラル・ペイン」

 

「三尾・風来怒涛!」

 

「……!?」

 

エルザを巻き込まんとするミッドナイトが起こした竜巻をイッシュの尾の一本から放たれた突風が相殺する。何が起きたかを理解出来ずにいるミッドナイトは周囲を見渡し、相対する者とは別の誰かを探す

 

「イッシュ……レティ…助かった」

 

「バトル・オブ・フェアリーテイルの時とは逆ね?あの時は貴女が私を助けてくれた。これはその恩返しよ、エルザ」

 

「つーか、最初にエルねぇを見つけたのはレティだかんな?なにを自分が真っ先に駆けつけましたみたいな顔をしてんの?いくら、イッシュねぇでも手柄の横取りは鬼許さねーかんな……へ?」

 

親友と妹分の救援に感謝を述べながら、剣を杖代わりに立ち上がるエルザ。助けたのは、何時ぞやの礼だと告げるイッシュに対し、自分が誰よりも褒められるべきだと主張するレティに視線が集中する

 

「レティ…今はそんなことを言っている場合ではない。戦いに集中しろ」

 

「それ以上なんか言ってみなさい…あとで、なにがあっでも知らないわよ?」

 

「ぴえ……ご、ごめんなさい…って!今はビビってる場合じゃねーし!行くよ!イッシュねぇ!エルねぇ!」

 

「そうね。ボウヤに見せてあげるわよ、私たちのやり方(姉妹の戦い方)を」

 

「そうだな……私たちには私たちのやり方がある…!」

 

「そうと決まれば…前にもやったフォーメーションでいこーじゃん!」

 

何時ものように涙目になるレティだったが、直ぐに切り替えるとイッシュとエルザの隣に並び立つ。その姿は正に三位一体、彼女たちだからこその構図が其処にはあった

 

「スパイラル・ペイン!」

 

「レティ!!」

 

「あいよっ!!任された!瞬間移動(テレポート)!!」

 

「消えたっ……!?」

 

不規則な動きのレティと規則的な動きのイッシュが加わったことにより、三位一体としての成立する最高の布陣(コンビネーション)は優勢だったミッドナイトを翻弄する

 

「狙いは化猫の宿って聞いたけど、其処を狙うのは何故?」

 

「なに…!ウェンディのギルドを…!?」

 

攻撃の手を休めずに冷静に問うイッシュ、その中に出たギルドに名を聞いた瞬間にエルザの顔から血の気が引いていく

 

「その昔、戦争を止める為にニルヴァーナを作った一族がいた。その名をニルビット族……しかし、彼等の想像以上にニルヴァーナは危険な魔法だった。だから自分達の作った魔法を自らの手で封印した。悪用されるのを恐れ、彼等は何十年、何百年も封印を見守り続けた。そのニルビット族の末裔のみで形成されたギルドこそが化猫の宿さ」

 

「だから、ニルヴァーナを封じる持つニルビット族を滅ぼすと?外道ね」

 

苦虫を噛み潰したようにミッドナイトを睨みつけるイッシュ。彼の行いは正に外道、自分も許されざれることをしてきたが彼がやろうとしている事は外道以外の何者でもない

 

「外道?キミはそこのジェラールに心を歪められたんだろう?同じ穴の狢じゃないか。一度はエルザまでも手に掛けようとした……それでもその男を守るのか?」

 

かつての自分に語り掛けられているかのように心が騒つき、罪悪感に押し潰されそうになる。真っ当に生きる為に歩み始めたが、根本的に自分のルーツは闇だったのかもしれないと、揺らいだ気持ちがその手が止めた

 

「私は……イッシュが誰よりも優しいことを知っている…、私は…レティが誰かの為に一生懸命になれることを知っている…そして…!ジェラールの中の〝 ()〟を知っている…!!」

 

その言葉にイッシュの揺らぐ気持ち、ジェラールは失われた記憶が奮い立つ。剣を手に立つ女王は緋色の髪を靡かせ、その身に紫色の衣を纏う

 

「まだ分からないのかい?キミの攻撃は僕には届かない…!」

 

ミッドナイトの魔法はあらゆる物を曲げる屈折(リフレクター)、エルザの斬撃も、イッシュの属性魔法ですらも曲げてしまう。しかし、この場にはその魔法に左右されない者が存在していた

 

「へぇ?ホントに届かない系?そんじゃあ……これならどうなワケ!瞬間移動(テレポート)!!」

 

「ぐっ……な、なに…!?」

 

頭上から聞こえた生意気な声。その声の主は瞬間的に姿を消したかと思えば、ミッドナイトが魔法を使うよりも前に目の前に姿を現し、即座に消える。何が起きたかを理解出来ない彼は目を丸くしており、驚きを隠すことが出来ずにいる

 

「そうか!ヤツの屈折(リフレクター)は魔法や武具を曲げることは出来ても、人間の体は曲げることが出来ない!対するレティの魔法は空間そのものを移動することで自分の動きを悟らせない……よくやった!レティ!」

 

「にははぁ〜!レティにお任せってね!」

 

「直ぐに調子に乗るクセは後で追求するとして……あの子が今は一番の対抗手段ってワケね」

 

「そうだとしても、本気を出せば衣服で彼女を絞め殺せるんだよ」

 

「させるワケがないでしょう?」

 

立ち上がったミッドナイトはレティの服を操ろうと動く。しかし、それを良しとしないのは他ならぬイッシュ、その動きに呼応するように彼女も動いた

 

「三尾六尾複合・怒涛雷鳥!!」

 

雷を伴う暴乱の嵐が吹き荒れ、ミッドナイトの視界を奪うかの如く遮る。妹には触れさないと彼女也の気持ちが魔法には現れている

 

「ぐっ…!あの小娘を狙えば、次はあの女狐が攻撃を仕掛けてくる……!隙がない…!?」

 

「当たり前よ。私とレティは姉妹、考えている事は目を見れば分かるわ」

 

「は?レティはわかんねーけど?」

 

「黙ってろ」

 

「ぴえ……ご、ごめんなさい……」

 

自らの油断が招いた結果に狼狽えるミッドナイトに妖艶な笑みで答えたイッシュだったが、実は然程の通じ合いはなかったと理解し、レティを睨みつける

 

「なるほどな。今ので理解した、ミッドナイトの魔法が曲げられる空間は常に一ヶ所、自分の周囲または敵の周囲のどちらか一ヶ所のみということか。ならば!この悠遠の衣は、伸縮自在の鎧……その魔法は効かん!」

 

「今よ…!」

 

「まだだ……本当の恐怖はこれからだ!真夜中こそ歪みは極限状態になるんだ…!」

 

刹那、その音は鳴り響いた。真夜中を知らせる音、深夜零時を伝える合図はニルヴァーナ全体に確かに、その鐘の音を響き渡らせた

 

「な……なんだ……!?」

 

「は…!?なにアレ!?チートじゃん!ありえないし!」

 

「巨大化…!?どうなって…!」

 

自分たちの三倍はあろうかという体格にまで巨大化したミッドナイトを前にエルザ、レティ、イッシュの三人は驚きを隠せない

 

「もう、どうなっても知らないよ」

 

その言葉と共にミッドナイトが魔力を込めた右手を振り下ろした瞬間、魔力が爆発を発生させ、地面を大きな揺れが襲う

 

「「くっ…!」」

 

「ぐあっ…!?」

 

「ジェラール…!!」

 

体制を崩した所にミッドナイトが操る触手がジェラールの腹部を貫き、嗚咽にも似た呻き声が挙がる

 

「イッシュ…!」

 

「準備は出来てるわ…五尾六尾複合・水面鳴動!」

 

エルザの呼び掛けに応えたイッシュの五本目と六本目の尾が重なり、発生した地面から湧き上がる無数の間欠泉がミッドナイトの視界を奪う

 

「視界が…!?」

 

「レティ…!行くぞ!」

 

「あいよ!エルねぇ!瞬間移動(テレポート)!!」

 

視界を奪われ、動きが鈍った僅かな隙を見逃さないとばかりにレティがエルザに触れ、その姿を眩ます。何処に、何処に行ったと視界を巡らせるミッドナイトだったが、気付いた時には既に遅かった

 

「「閃光一閃!!」」

 

「幻覚が効かない…のか…」

 

(幻覚……!?今のが…?)

 

閃光の如き一太刀を浴びせられたミッドナイトが自分が斬られた事に気付いたことにより、空間が正常に戻っていく

 

「残念だが目から受ける魔法は、私には効かない」

 

「レティに幻覚見せてーなら、もうちょっとマシなのにしろし」

 

エルザは義眼である右眼だけでミッドナイトを見ており、レティも完全に目を閉じてはいるがエルザの背中にしがみついていた

 

「そ…そんな…僕は最強なん…だ……父上をも越える…最強の…六魔…誰にも負けない最強の…魔導士」

 

「誰にも負けたくなければ、まずは己の弱さを知ることだ。そして常に…優しくあれ」

 

「最強は軽々しく使っていい言葉じゃないのよ。本当に最強なのは誰かを笑うような人じゃない……本当に最強なのは、誰かの為に涙を流せる人よ」

 

 

 




六魔の全滅…それが意味する本当の最悪とは…!今……ゼロが目覚める…

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