天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……ゼロって言うメチャつよなおっさんにボコボコにされたかな」

ディンガ「野蛮な人だね。大丈夫かい?博士」

マキナ「うーんまぁ…なんとか大丈夫かな。因みに今回はサプライズゲストが登場しちゃうよ」

ディンガ「それは楽しみだね」




第八十三話 天才くん、聞こえてる

「で、こっからどーするし?エルねぇ」

 

「取り敢えずはナツたちを探せねばな」

 

「そうね………。ジェラール、貴方も一緒に来なさい」

 

「ああ…」

 

ミッドナイトとの戦いを終え、一息をついていたレティたち。妹分からの問いにエルザはナツたちとの合流が望ましいと答える隣では、同意をしながらもジェラールに視線を向けたイッシュが僅かに寂しさを堪えるかのような眼差しと彼にも同行を求める

 

「ジェラール…!!」

 

「エルザたちも一緒よ」

 

不意に聞こえた声に気付き、振り向けば、此方側に駆けてくる小さい影が二つ。その二つの中でも自分と同じ背丈の少女にレティは抱き付いた

 

「ウェンディ!無事だった…!良かったし!」

 

「レティちゃん!良かった!」

 

互いに生存を喜び合うレティとウェンディ、僅かな時の中で彼女たちはマナツという共通の友人を中心に友情が生まれていた

 

「君は……」

 

(そうだよね……わたしなんか覚えてないよね……)

 

視線を向けたジェラールの中には自分が居ないと悟り、ウェンディは俯き、表情を曇らせた。しかし、そんな彼女を優しく包み込むかの如く、暖かい手が頭に触れた

 

「あの子も貴方の知り合いよ。許してあげてね?ウェンディ。今のジェラールはエルザのことも、私やレティのことも覚えていないの。だから、ちょっとだけ今は……ね?」

 

「イッシュさん……はい、そうします」

 

語りかけるイッシュの言葉に頷いたウェンディは記憶が混濁しているジェラールを今だけは見守ることに決め、納得した

 

「もしかして、アンタ!ニルヴァーナの止め方まで忘れてんじゃないでしょうね!!!」

 

「最早、自律崩壊魔法陣も効かない。これ以上は打つ手がないんだ……すまない」

 

「ふざけんなし!勝手にニルヴァーナを目覚めさせたクセに!!何で何時もそんな勝手なことばっかり…!!」

 

ニルヴァーナが止められないと知り、レティはジェラールの胸倉を掴み、かつての彼と何も変わっていないと問い詰めるが、その手に触れる温もりがあった

 

「やめるんだ、レティ」

 

「エルねぇ……」

 

誰よりもジェラールに苦しめられたであろうエルザに咎められ、レティは掴んでいた手を離し、外方を向く。彼女の中では今も尚、兄のように慕っていた頃のジェラールと悪人だった頃のジェラールの両方が存在しており、かつての自分自身とも戦っているのだろう、その瞳は複雑に入り乱れた感情が見て取れる

 

「……なに?この異様な魔力は」

 

「唯ならぬ気配だ」

 

刹那、ニルヴァーナ全体が揺れたことに異質なモノを察知したイッシュとエルザは表情を顰めた

 

「まさか……ニルヴァーナを…!?」

 

「なに…!?まさか…撃つのか…!!」

 

「そんな…!!やめてぇーーーっ!!!」

 

ニルヴァーナの狙う先は化猫の宿(ケットシェルター)。一つのギルドに向けられた無慈悲な砲撃を前にウェンディの悲痛な叫びが木霊した

 

札魔法(カードマジック)・爆雷点火!!」

 

その時だった、誰もが諦めかけた瞬間。その声は響き渡った。ニルヴァーナが放った光線目掛け、雷を伴う爆発が命中し、更に其処へ飛来する巨大な影をエルザたちの視界は捉えた

 

「あれは……!!」

 

「間に合ったみたいね……どうやら……。どうだい?なかなかに不思議(ワンダー)だったろ?」

 

その巨大な影の上から聞こえた頼もしい声にエルザは笑う。別件の為に最初は不参加だった者、それでも尚、駆けつけた頼もしい仲間の声、その声を聞いたのだ。それを笑わずにいられるだろうか?答えは否である

 

「カナがどうして…」

 

戸惑いを見せるイッシュの問いに応える代わりに巨大な影基魔導爆撃艇から飛び降りた女性、カナは彼女たちの前に降り立つ

 

「偶然、近くを通りかかってね。そしたら、これまた偶然にも魔導爆撃艇天馬(クリスティーナ)が通りかかったから、乗せてもらったのよ。それで?状況は?」

 

「あまり……芳しくはない。しかし、カナの協力は嬉しい限りだ」

 

「そう言ってくれると有り難いよ。ヒビキ!エルザにイッシュとレティ、ウェンディにシャルル……あとその他一名を確認したわ」

 

状況を聞き、カナは額に触れ、頭上のクリスティーナに乗るヒビキに呼び掛ける

 

『……カナさん…あとはみんなに託す…!!ニルヴァーナの足のようなものが6本あるだろう?その足、実は大地から魔力を吸収しているパイプのようになっているんだ。その魔力供給を制御する魔水晶が各足の付け根付近にある。その6つを同時に破壊することでニルヴァーナの全機能が停止する。一つではダメだ!!他の魔水晶が破損部分を修復してしまう……タイミングはキミたちの頭の中にアップロードをしておいた』

 

「分かったよ。エルザにイッシュはその誰かさんを連れて破壊に向いな。イッシュは其処のお嬢ちゃんを守るんだ」

 

状況を把握したヒビキはカナに作戦の概要を伝え、そのタイミングを動ける者たちに伝達していく

 

『無駄なことを……聞くがいい!光の魔導士よ!!俺はこれより、全てのものを破壊する!!手始めにお前たちの仲間を破壊した。滅竜魔導士二人と、氷の造形魔導士、星霊魔導士……それと猫四匹に白衣のガキ、あとは銃を使うガキにケモノのガキもいたっけな』

 

しかし、その時だった。絶望的な状況を伝える声に念話は奪われ、強引に回線が切断されたのだ。それでも尚、カナは理解していた、如何なる状況でも信じるべき者は誰であるかを彼女は理解していたのだ

 

「マキナ…アンタは強い子だ。倒された?そんなヤワな子じゃないハズだよ!さぁ…早く起きな!」

 

「そうだし!寝てる場合じゃねぇかんな!!さっさと起きねーと、マナの野菜スティックはレティが食べてやる!!」

 

「グレイ…立ち上がれ…お前は誇り高きウルの弟子だ…こんな奴等に負けるんじゃない…」

 

「私…ルーシィなんて大嫌い…ちょっとかわいいからって調子にのっちゃってさ…バカでドジで弱っちいくせに…いつも…いつも一生懸命になっちゃってさ……死んだら…嫌いになれませんわ……後味悪いから返事しなさいよ」

 

「我が弟子……バレルよ。キミの帽子は揺るがぬ男の信念の象徴……誇り高き天馬の竜よ、今一度……羽ばたくのだ…!」

 

「ナツさん……マナちゃん……スコルくん…」

 

「オスネコたち………」

 

「ナツ……マキナ……」

 

「立て………立ち上がるんだ……!!お前たちは…!!」

 

聞こえる、念話を通じて、瓦礫の中に居ようと、傷だらけになろうと確かに聞こえる声。息が荒かろうと、死にかけだろうと、自分たちを鼓舞する声は確かに届く

 

 

 

 

 

「「聞こえてる!!!」」

 

 

 

 

 

その声は確かに届いていた。今にも倒れてもおかしくはない、それでも立ち上がるのが彼等の強さ、明日に向かう為の足があるならば、如何なる時も立ち上がる。それが彼等の強さなのだ

 

「ネエちゃんが来たのに……ぶっ倒れてる場合なんかじゃねーかな……六個の魔水晶の位置は確かに把握したよ…」

 

「へっ……同時に壊すだろ?聞いてたさ…」

 

「運が良いやつは…ついでにゼロも殴れる…でしょ?」

 

「レーちゃんめ……帰ったら、野菜スティックいっぱいごちそうしてもらうもんね…」

 

「ウェンディのギルドは……やらせねぇ……!!」

 

「シャルルにいーところを見せてやるんだ……!!」

 

「可愛い弟がこんにゃに頑張ってるんだから……あたしも…寝てられんないわね……」

 

「お供するよ……マイレディ……キミの道が僕の道だ…」

 

「おやっさんにそこまで言われちゃあ……やらねぇワケにはいかねーぜ……だよな?トリガー…」

 

「あたりめーだ……俺はバレルと何時も一緒だぜ…」

 

立ち上がる理由は一つ、仲間のギルドを守りたいと思うが故に。自分たちを呼ぶ声が聞こえるが故に、彼等は立ち上がる。それ以外に理由は不用である

 

『もうすぐ…念話が切れる…頭の中に僕が送った地図がある…各魔水晶に番号をつけた…全員バラけるように…』

 

「1だ!!」

 

念話が切れるよりも早くに反応したのはナツ。一番が良いという理由は分からないが、彼也の理由があるのだと理解出来る

 

「じゃあ、ボクは6がいいかな。不吉な数字って興味が湧くし、なんかよからぬことが起こりそうな気もするしね」

 

「おや、獣の黙示録とはオシャレだね」

 

何時もながらに物騒な事を言い放つマキナ。最早、慣れ親しんだ空気に突っ込みを放とうとする者はおらず、反応したディンガに至っては褒めている始末だ

 

「アタシは4番がいーな!」

 

「絶壁てめぇ!!4番は俺だろーが!4はファンキーな数字だからな!!」

 

「誰が絶壁だコラァ!!」

 

同じ番号を選択したが故に歪み合うマナツとスコル。その際に禁句を放たれたマナツが吠えたのは言わずもがなだ

 

「2は俺が行く」

 

「あたしは3に行くわ!マナツ!一緒に来て!」

 

グレイが2番に行くことを宣言すれば、ルーシィは3に向かう同行者にマナツを指名する

 

「えー……4番じゃないのー?」

 

当の本人は自分の希望した番号ではないことに不服そうに唇を尖らせる

 

「だから4番は俺だ!!つーワケだ、ルーシィは絶壁のお守りを頼むぜ」

 

「あっ!また絶壁って言った!4番はアタシだもん!」

 

「はいはい、一緒に行くわよー」

 

「マナ。良い子だから大人しくしにゃいとダメよ」

 

スコルと4番を取り合うマナツを引きずりながら、ルーシィとリアンは3番に向かう

 

「5は任せてくれ。行くぜ?トリガー」

 

「ああ…!」

 

『バレルには私が同行しよう。5番は私の役割だと香りが告げている』

 

「助かるぜ…おやっさん」

 

『さすがは先輩!』

 

『なんてイケメンなんだ…マイスター』

 

『一生ついていきます!ティーチャー!』

 

「だーかーら、呼び方を統一しやがれ」

 

5番に向かうのはバレルとトリガー、一夜に寄る天馬組。その際に呼ばれ方に一貫性がないのは今に始まったことではないが、突っ込みを放ったトリガーも呆れていた

 

『マキナ!ネエちゃんは他の奴らの様子を見てくるよ!しっかりとやりな!』

 

『私は4に向かう。スコル、それまでに魔力は回復させておけ………それともう一人いる…6つ目に向かう者を増やしても構わないか?マキナ』

 

「あー……その人は1にいかしてよ。ボクは大丈夫だからさ」

 

『…………わかった』

 

そのもう一人が誰かを知っているかのようにマキナが飛ばした指示にエルザはその人物が誰かを伝えようとはしなかった。そして、完全に念話が切断されるとマキナは頭のゴーグルに触れ、意味深に笑う

 

「さてと……こういう時はなんて言うんだっけか………ああ…そうだ。燃えてきた(・・・・・)




ニルヴァーナの破壊、それを止める為に動き出したマキナたち。その咎の炎は何を意味する…?

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