天才は妖精の尻尾にいる。   作:田中滅

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マキナ「前回のあらすじ、妖精の尻尾の魔導士にして天才科学者であるボクことマキナは……ニルヴァーナをぶっ壊したけど、なんか評議院と一悶着あったかな」

ディンガ「正しくはホットアイ……いや、リチャードさんがだけどね」

レティ「つーか、今回はレティたちの感動話なのになんでマキナが題名なワケ?フツーはレティたちじゃん」

イッシュ「レティ、細かいことは気にしないのよ」


第八十五話 天才くん、評議院を撹乱する

「私たちの本来の目的は六魔将軍(オラシオンセイス)ごときではありません」

 

「ごとき!?ごときと言ったか!?今!」

 

ラハールの告げた本来の目的、其れを遮ったのは土の中から飛び出したクロドア。まさかの存在の再登場にマナツたちは目を丸くした

 

「あっ、喋る杖だ」

 

「生きていたようだね。なかなかにしぶとい杖だ、研究対象に相応しいね」

 

「ぬおっ…!?さっきのちびっこ科学者…!?」

 

クロドアの正体に興味津々なマキナとディンガ、その興奮は覚めずに両眼をキラキラと輝かせている

 

「丁度いーかな、不思議杖のおっちゃん」

 

「なんだ?科学者小僧」

 

「おっちゃん…!?おっちゃんなの?アレは…!?」

 

普通にクロドアを「おっちゃん」呼ばわりするマキナ、其れに訂正する様子も見せないクロドア、その様子を見守っていたルーシィは驚きながらも突っ込みを放つ

 

「我々の目的……評議院への潜入…破壊…エーテリオンの投下…類に稀を見ない大悪党………貴様だ、ジェラール!来い!抵抗する場合は抹殺の許可も下りている」

 

記憶を失っていたとしても、過去に犯した罪は消えない。其れはジェラールの歩いてきた道であり招いた結果、そして、記憶を失っでも尚、罪の意識は消えてないことはジェラール自身も理解していた

 

「その男は危険だ、二度とこの世界に放ってはいけない…絶対にだ!!!」

 

「待ってください!!」

 

「ジェラールは……ジェラにぃは記憶を失ってるし…!!」

 

ジェラールの引き渡しを要求するラハールに抗議するウェンディとレティ。かつての彼に救われた過去がある二人故に思うところがあるのだろう、その二人の前に一つの影が踊り出る

 

「ウェンディ……レティ…はしたないわよ。刑法第13条で……認められてないのよ、それは」

 

「でも!だとしても…!!レティは認めない!!シモンがいなくなって…ジェラにぃまでいなくなるなんて…!レティは…!イヤだ!!」

 

「わたしは……ジェラールに助けてもらった!!今度はわたしが助ける番なんです!!だから!だから!ジェラールを連れて行かないで……!!」

 

「やめなさい…!!これ以上は…ジェラールが惨めになるだけよ…!!」

 

(止めなければ…私が止めなければ…ジェラールが行ってしまう…レティが泣いている………イッシュが……自分の気持ちを殺してまで…ジェラールを見送ろうとしている……せっかく…悪い夢から目覚めたジェラールを……もう一度暗闇の中へなどに行かせてもいいのか?本当に……私はそれで良いのか…?)

 

前に進む、何も知らないジェラールは過去の自分が犯した罪の為に前に進もうとしている。だが、エルザはそれでも良いのか?と葛藤していた。妹分が、親友が、自分たち也に進もうとしている。自分はなにを?自分はなぜ?葛藤は決意に変わる

 

(行かせるものか!!!)

 

覚悟を決めたエルザが動いた。その様子を観察していたマキナはクロドアに視線を映す

 

「あーーーっ!こんなとこに六魔将軍(オラシオンセイス)の七人目がいるかなー!」

 

「にょーっほっほっほっ!!我こそは誇り高き六魔将軍(オラシオンセイス)の七人目!クロドア!評議院よ!私を捕まえないことには六魔は終わらぬぞ!!」

 

「なに!?六魔なのに七人目だと…!?」

 

マキナの態とらしい声に反応したクロドアが名乗りを挙げるとジェラールを連れて行こうとしていた役人たちが一斉に振り返った。その隙を狙っていたと言わんばかりに頭のゴーグルに触れたマキナは意味深に笑う

 

「今だ!ナツ!」

 

「さすがはマキナだ!!行かせねぇ!!そいつは仲間だぁ!!連れて帰るんだーーっ!!」

 

「ちょっ!?ナツ!マキナ!!相手は評議院よ!?」

 

評議院を相手に暴れ出すナツとマキナ。戸惑いを見せるルーシィだったが、木の上に座っていたスコルが飛び降りてきた

 

「そう言って止まるタマかよ?あいつらが!グレイ!まだ行けるよなぁ?」

 

「当たり前だろーが!ナツとマキナに続け!!」

 

「よーし!暴れちゃうよー!」

 

「さすがは私の弟だ!姉ちゃんも加勢するよ!」

 

「はぁ……結局はこうなるのね…はしたないけど…私も私のやりたいようにさせてもらうわ!」

 

「そうこなくっちゃ!さっすがはイッシュねぇ!ジェラにぃは連れて行かせねーかんな!!」

 

「その者を逮捕するのは不当だ!」

 

「悔しいけど…!その人がいなくなると、エルザさんが悲しむ!!」

 

「さすがはおやっさん!トリガー!おやっさんに続くぞ!」

 

「おうよ!バレル!」

 

「もう!どなっても知らないんだから!」

 

「あいっ!」

 

「ディンガ!ハッピーを援護よ!」

 

「おやおや、元気だね?マイレディは」

 

「お願い……!!ジェラールを連れていかないで……!!」

 

次から次へと騒動に参加していく者たち、その騒動は評議院を相手にした公務執行妨害。許されざる罪、あってはならない事。しかし、それはジェラールも同じ、居場所を無慈悲に奪われ、明日に進む足を彼は奪われようとしている

 

「もういい…………もういい!!!そこまでだ!!」

 

女王の一喝。騒動を鎮静化する為に放たれた一言は全員の動きを止め、風に靡く美しくも情熱的な色をした緋色の髪に目を奪われた

 

「…騒がせてすまない…責任は、全て……私がとる…」

 

本当は誰よりも止めたい筈だった、誰よりも先に彼の手を掴みたかった。だが、それは許されないこと、気持ちを、心を、押し殺した彼女は緋色の髪の下に涙を隠す

 

「ジェラールを……連れて…いけ……」

 

行ってほしくない、側にいてほしい、話がしたい、昔のように笑いあいたい。その全てを封じ込め、別れを告げる

 

「そうだ…」

 

連行される背中を見送ろうとした時、ジェラールが歩みを止めた。そして、何かを思い出したようにエルザに視線を向けた

 

おまえ(・・・)の髪の色だった」

 

「!」

 

「さよなら…エルザ」

 

一言だけ、それが意味するのが何であるかはマキナたちには理解出来なかった。それでもエルザに、イッシュとレティにはその一言が何を意味するかを気付かせるには時間は必要なかった

 

「………思い出したのね……」

 

「また………またきっと……会えるよね……会えるよね…!?ジェラにぃ!!」

 

涙を流すイッシュ、去り行く背に呼び掛けるレティ。ジェラールは其れに応えるかのように手を振り、何も告げずに連行されていく

 

『イッシュ……イッシュ・フラクタルよ!私は!』

 

『あのね……レティはね……レティ・フラクタル……イッシュおねーちゃんの妹だよ…』

 

『イッシュにレティか!よろしくな!おまえは?』

 

『エルザ……ただのエルザだよ』

 

『それはさみしいなぁ』

 

『ちょ…何よぉ』

 

『綺麗な緋色…そうだ!スカーレットにしよう!』

 

『しようって、オマエそんなの勝手に』

 

『鬼ウケんだけど…勝手すぎて』

 

『鬼?エルザちゃんは鬼なの?おねーちゃん』

 

『エルザ…スカーレット…』

 

『おまえの髪の色だ。これなら絶対に忘れない』

 

過去、其れは遠い記憶。過去、其れは歩んできた道。過去、其れは進むべき道を決める為の指針。何時かは混じり合い、交差する其れらを人々は、一言で、このように呼ぶ。そう…〝未来〟と…

 

「うぅっ…うわぁぁ…ああああぁ」

 

この日、妖精の女王と呼ばれた一人の女性が泣いた。今まで溜め込み、鍵をしていた過去を、隠していた感情を、鎧に纏った強さを、全てが溢れる程に彼女は涙を流した。まるで雨のように、滝のように、大粒の涙を流し続けた。その日の空は朝焼けに染まり、まるで緋色の髪の少女を彷彿とさせる暖かくも情熱的な緋色に染まっていた




六魔討伐も終わり、宴の為に化猫の宿を訪れたマキナたち。そこには何故かクロドアの姿もあり……そして、ギルドに隠された優しい嘘に少女は涙を流す……

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