呪霊を孕ませる特異体質   作:LABO

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 【1997年10月30日(木)】

 

 

 母親について質問に行くつもりが、逆に呪霊討伐がバレていたことが発覚してから一週間経った。

 どうも柴さんは元呪術師らしく、任務で大怪我をおったことを期に、本業を離れて医者をやっているんだとか。

 

 いやぁ、帳の張り方教えよっか、とか言われたときは全身の毛穴がきゅっとなったが、しかし棚からぼた餅とはまさしくこのことである。

 あの後も暫く話した結果、偶に病院の仕事を手伝う代わりに結界術を教えてもらえることになった。

 

 これは大分来てる。神様が俺に強くなることを望んでいるな。

 勿論折角得た縁は最大限活用し、結界術以上のこともどんどん学んでいくつもりだ。

 式神関連の話とかな。

 

 

 早速来週末に初めてのトレーニング、いや鍛練がある。まずは俺の現状把握と、結界術の基礎の座学を行うらしい。

 

 なんかいよいよ呪術に本格的に関わるって感じがして、今からワクワクしている。

 

 

 

 

 

 

 [1997年11月9日(日)]

 

 

 今日、俺は柴先生の自宅にやってきていた。

 

 

「…………凄い。確かに反転術式に成功してる」

「あ、やっぱ出来てましたか」

「うん、完璧なまでにね。それに呪力量・出力共に高水準、黒閃も経験済みとなると……なるほど将来有望ね」

 

 

 先生の庭で一通りの呪力操作を見せてみると、彼女は疲れたような顔をして溜息を吐いた。

 俺はそれを見て、澄ました顔をしつつも内面で狂喜乱舞していた。

 

 

(やっぱり俺ってセンスあったのか……!!)

 

 

 それは、今までは必死に自重していた、自身の才能への確信を持てたこと。

 しかもそれが、呪術師をして呆れさせるほどのものだということへの歓喜が故であった。

 

 

「でも……まさかあの、漁師一本って感じのお父さんが呪術関係者だったとはね」

「いやぁ、はは。まあお父さんの昔のことはあんまり聞けてないんで、どんな立場だったのかとかは知らないんですけどね」

 

 

 因みに今の話からもわかる通り、俺の知識の出処は死んだ父親だったということにした。

 流石に前世の記憶持ちとは言えないしね。

 しかしまぁ、そんな嘘がスムーズに通ってしまうあたり、やっぱ呪術界隈は逃げる人も多いのかなって勘ぐってしまったりもする。

 

 

 

「それでもよ。こんな才能を持つ子供を産んだのであれば、少なくともそれなりに優秀な血を引いていたんでしょうね」

「そういうもんですかね」

「そういうものよ。惜しむらくは君に生得術式が無いことかな。結局呪術の才能ってそこが八割だから」

「あー……」

 

 

 生得術式の有無について。それは以前から疑問だったが、俺には無いということがほぼ確定した。

 どうも、生得術式の自覚というのは四〜六歳で既に為されるらしいのだ。

 んで俺は六歳が終わるまで後一ヶ月とちょっと。呪力を扱い始めてから半年を過ぎたが、それ関連でうんともすんとも言わないってことは、つまりそういうことらしい。

 

 

 薄々勘付いていた事ではあったが、識者から改めて断定されるとちょっと悔しい。

 これでステゴロないし呪具利用で戦うタイプになることが確定したわけだが、まぁ、やれるだけやってみよう。

 

 

「……ふふ。そういうところはまだ子供ね。悔しさが顔に出てるわよ」

「そりゃあそうですよ。面と向かって才能無いって言われたようなもんなんですから」

「こればっかりはね。でも君に才能があるというのも事実。反転術式のアウトプットができるだけでも引っ張りだこよ」

 

 

 私も使えないしね。と、柴先生はおどけて笑ってみせた。

 

 

 

「じゃあ君の──愛人君の現状も把握できたことだし、次は帳の説明に入ろうか。お父さんからは帳についてどれくらい教わってる?」

「あー、えっと。結界術の一種で、外から中のことを認識できなくする、みたいな?」

「オッケー。大分ふんわり教わってるみたいね、まあ五歳の子に教えるならそんくらいか」

 

 

 うっ、ホントのことを言う訳にはいかないとはいえ、嘘をついているという事実に少し心が痛む。

 しかしそれもコラテラルダメージ。我慢しなくては。

 

 こほん、と先生は咳をすると、帳についての説明を始めた。

 

 

「基本的な用途はそれで間違いないよ。外から内側を認識できなくなることで、非術師の侵入を避ける。それと同時に呪霊を炙り出すってのがわざわざ呪霊を祓う度に帳を降ろす目的」

 

「ただそれはあくまで基本的な用途に過ぎなくてね。帳、というか諸々の結界術の根幹は『区切る』ことにある。色々条件を付けて区切って、内側の状況を有利にしたいってのが元々の発想なんだよ」

 

 

 ほー、参考になる。

 そしてこれについては、原作で羂索が色々行っていたのが当たるのだろう。

 

 

「条件付けってどんくらい融通が利くんですか?」

「うん。基本はその結界への出入りの禁止とか、逆に出入りの感知機能をつけれたりとかかな。術式持ちなら自分の術式効果に則ったルールを付与したりもできるけど、それについては愛人君は対処法を学んだほうがいいかも」

「ふむふむ」

 

 

 そこからは、俺が疑問を提示して、それに先生が回答していくという流れで授業(?)が行われた。

 

 時間の問題もあり、今日は実技を行うことは無かったが、かなり有意義な時間を過ごすことができた。

 特に原作ではあまり触れられていなかった、結界術の基礎部分の知識を補填できたのが大きい。

 

 早速これからは知識の備蓄と習得に励んでいくことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【1997年11月29日(土)】

 

 

 

 あれからおよそ一ヶ月が経った。

 柴先生が忙しいこともあって授業自体は三回程しか受けられなかったが、無事に最低限帳の張り方については習熟することができた。

 やってみたところ、どうにも帳ってのは呪詞ありきな技術だったなぁという感覚があった。

 呪詞というのは、原作でもあった『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』ってやつである。

 言霊というか、あれで帳というイメージを具体化して、呪力をもって現実に反映させるというか。ともかくそんなイメージである。

 

 つまり、これを反転術式のアウトプットにも当て嵌めるとすると、体外での維持にはイメージの明確な具現化が必要になると考えた。

 

 これは難しい話だ。ただでさえ正のエネルギーの生成に頭を使っているのに、そこにアウトプットのイメージを追加するとなると、右を見ながら左を見ろって言われているようなもんなのだ。

 ナルトよろしく影分身でもできたら、容易に解決できたのだろうが、まあ無い物ねだりしてもな。

 

 仕方がないので、今は弱そうな呪霊を祓う際に正のエネルギーでとどめを刺すことを意識しながらマルチタスクを鍛えている。

 ついでにモノに正のエネルギーを流すイメージを具体化できればなーという目的もある。

 

 

 あと、どうも柴先生が教える楽しさってモノに目覚めたようで、結界術だけではなく式神術や封印術についても簡単に教えてもらえることになった。

 それはまだまだこれからだが、呪詞に呪力を載せるのができるのであれば習得に問題は無さそうだ。

 

 要するに何を媒体に呪力を発露するか、ってだけみたいだからな。

 封印術については『縛り』への理解も求められるから少し難解だが、まぁそこは頑張ろう。

 

 いやぁ、やっぱ先達がいると技術の習得速度が段違いである。

 

 

 

 

 あ、それと一つ困ったことが起こった。

 

 というのも、俺の誕生日が十二月十五日なのだが、舞香ちゃんが誕生日会をやりたいとゴネ出したのだ。

 それも俺の家で。 

 

 今のところは母親がそろそろ臨月であることを理由に断っているが、少なくとも誕生日会の決行は避けられなさそうである。

 

 ……面倒くさい。俺あんま他人に祝われるのとか好きじゃないんだよなぁ。

 

 こんなこと前世じゃなかったなぁ。なんか、リア充ってこういうことなのかな。

 そういえば高校時代は、誰かが誕生日祝われているのを見て、面倒くさそうと思いながらもどこかで羨んでいたっけ。

 

 漠然とリア充とか勝ち組みたいな存在になりたいなみたいなこと思っていたが、それに付随する面倒臭さみたいなものを認識する必要もあるのかもしれない。

 

 

 

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