呪霊を孕ませる特異体質   作:LABO

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26・ヒトトナリ

 

 

[1998年4月26日(日)]

 

 

 

 俺の心からの叫びは、草原に虚しく溶けていった。

 

 

「………嘘だ、俺は信じないぞっ」

 

 

 叫んだ勢いのままに、地面にど、っと膝をつく。そのまま地面に両手をつくと、青々とした草花から涙のように水滴が飛んだ。

 そのまま四つん這いで項垂れていると、こんな気持ちにさせた張本人が背中に手を置いた。

 

 

「心中測りかねる、が。妾が言えるのは、神名偽に嘘や間違いは無いということだけじゃ。そもそもこれは其方の肉体から引き出した情報なのじゃぞ」

 

 

 探女はとん、とん、と優しく、慰めるように背を叩く。

 その割に、事実だぞ、と念押しをかけてくる彼女はきっとサドなんだろう。

 

 ただ、彼女の術式の強力さは、この領域によって身を以って思い知っている。

 そして何より、術式を今自覚()()()()()ことによって、他ならぬ自分自身が、それ(孕ませ)が事実であると、本能で納得してしまっていた。

 

 

「…………まぁ、そうだよなぁ……………ちなみにさ、今じゃないって選択肢はない?」

 

「うーむ………無いの」

「それってなんで?」

「彼奴が強力な術式を持つ呪霊だからじゃ。呪霊操術においては、手持ちの呪霊の強さがそのまま術者の強さに直結するからの」

 

 

「っ、じゃあ、俺って今七歳だけど?そもそもセックスできなくない?」

「出来ないのであれば出来るようにするまでよ。妾にそれが出来ぬとでも?」

 

 

「じゃあせめて、せめてハジメテはあのー……探女がいい、んだけど。そういう男心とかへの配慮ナンカハソノ……」

「それも無理じゃ。彼奴を止めているのは妾の術式であるからの。呪霊を孕ませるという事象が未知である以上、術式が解除される可能性も考慮すると妾が一番はあり得ない」

「………ナルホドネ」

 

 

 ぐうの音も出ない正論による論破に、俺は肩を落としてため息を吐くことしかできなかった。

 そうだよな。探女がやれって言うってことは、少なくとも今ここではそれが最善なんだよな……。

 

 つまりだ。今この場で問題となっているのは、俺自身の感情や生理的な嫌悪感だけでしかない訳で。

 これから先原作にも関わって行きたいと考えている以上は、こんな機会を逃すことはありえないのだ。

 

 

 …………よし、決めた。

 

 

 

「…………分かった。やるよ、やってやる。ただ絶対に勃たないから、そこら辺は探女がどうにかしてくれ」

「任せるのじゃ」

「ありがとう。────それと!」

 

「……?」

 

 

 俺はあえて言葉をそこで切り、探女と視線を合わせた。

 ()()する前に、一度大きく息を吸って、吐き出した。

 

 

「────為人の次は探女、お前だからな。絶対俺のものにするから、覚悟しとけっ!」

 

 

「………ぶふっ」

「何笑ってんだ!!」

 

 

 

 一体何が面白かったのか分からないが、探女はゲラゲラと大声を上げて笑った。

 

 ………カッコつかねぇなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり笑った後に、天探女は掌印を結んだ。

 

 

「では、これから其方に神託を与える。効果は二つで、『生殖への肉体の適応』と『為人との性交の強制』じゃ」

 

 

「了解。ん……それ掌印?」

「然り。本能だけではなく、今回はそれを経ての肉体の適応までを行う必要があるからの」

「なるほどね。出力を上げるための掌印か」

「うむ。それに今回は念のため呪詞も唱える。其方も()()しておいた方がよいのじゃ」

「覚悟?」

 

 

 天探女はそれには応えず、目を閉じて己が内で呪力を発露させた。

 領域展開時に勝るとも劣らぬその呪力の()()()に、愛人は思わず息を呑んだ。

 

 

「『今は(とほ)御祖(みおや)の神よ、之も我が畏れなれば』」

 

 

 呪詞が唱えられると、天探女の呪力出力が爆発的に高まった。

 愛人が寒気すら感じるその渦から目を離せずにいると、不意に目を開いた天探女と視線が重なる。

 

 

「『神名偽』───術式に適応し、支配を完成させよ」

 

 

 その言葉は、不思議なほどすんなりと愛人の耳に届いた。

 次の瞬間、『神託』が愛人の頭の中を支配する。

 

 

『為人と性交をしなければ』

 

『あいつを支配下におかなくては』

 

『だが今の私では不可能だ』

 

『そのために成長しなければならない』

 

 

「…………っこれ……っ神託ってよりか、洗脳ッ」

「肉体まで影響を与えるには、それほどの()()()()が必要になるということよ。特に人間には呪霊と違って強固な理性があるからな────っと」

 

 

「もう、聞こえておらぬか」

 

 

 神託は、段々と愛人の思考能力すらも奪っていく。愛人の脳内では、自分は術式を喰らっている、という客観的な視点はもう既に消え去っていた。

 見えるのは、不動で佇んでいる為人だけ。

 醜悪であるはずのその容貌も、今の愛人にはまるで極上の雌のように見えていた。

 

 

 あれを支配しなければ。あれを性交で──犯して、犯し尽くして、必ず屈服させてやる。

 愛人の思考は、獣のような鋭い眼光の内側で、どんどん野性的に変化していく。

 それに付随して、彼の脳下垂体前葉では、急速に性腺刺激ホルモンが生成されていった。

 

 

 愛人の視界が赤く染まる。その下腹部は、年嵩からはあり得ないほどに大きく膨らんでその興奮を主張していた。

 

 

「グルルゥ……」

 

「ほほ……これ、獣……」

 

 

 天探女の熱を帯びた呟きは、もう愛人には届いていなかった。

 鼻息荒く、為人に狙いを定めた愛人は、本能で呪力を扱って、その下半身に纏う服を破り去った。

 彼の激しく怒張した下半身が自由になる。

 

 そして、ぐぐ、と身を屈めると───残像が残るほどの初速をもって、動くことの出来ない為人に飛びつき、そのまま地面に強く押し倒した。

 

 

「ガァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……いや怖、速すぎるじゃろ」

 

 

 

 

 

 後に愛人が天探女に聞いた話では、そのときの呪力運用は本能で最適化されており、高専時代の五条悟に迫るほどの高効率で行われていたという。

 

 

 

 

☆ 

 

 

 

 R18必至な光景を前に、天探女は瞬きすることすら惜しむほどに、その光景を詳細に観察していた。

 そこには、()()()()()()()()()()()()()()()という期待も多分に含まれている一方で、未知への探究心もまた強く存在していた。

 

 

 愛人本人はまだ実感していない、彼の持つ異常性。

 呪霊としての魂を持ちながら人間としての肉体を持ち、その二つが違和感なく共存している。

 

 そして呪霊を孕ませるという、天探女が持つ知見の限りではありえない、イカれにイカれた呪霊操術。

 

 見てみたい。人と呪霊が交配するとどうなるのか。呪霊を孕ませるとは一体、どういう結果をもたらすのか。

 そしてそんな異常を抱えた──こんな普通な少年が、どんな人生を送り、どんな最期を迎えるのか。天探女はそれを知りたくて知りたくて仕方がなかった。

 

 山園愛人という少年は、()()()()彼女がもっている好奇心や、哲学者的な事実への猜疑心や反骨心を強く、強く刺激する存在なのだ。

 

 

 故に、天探女は観察する。

 

 本当は自分が一番になりたかったが、もしもがあったらたまらない。

 愛人には伝えなかったが、為人は天探女にとっての試金石でもあった。

 

 呪霊である彼女にとっては、記憶の連続性こそが何よりも己が己であることを示すアイデンティティである。

 もしも呪霊を孕ませ、支配するという過程の中で、それが失われるようならば、天探女は支配されることを望まない。

 他の方法を探して愛人に憑き纏い、彼の人生を観察する。

 

 しかしもし、この()()で、己の記憶の連続性が失われないことが証明されたのであれば───天探女はそこまで考えて、何故か下腹部が疼くのを感じた。

 

 

「………?」

 

 

 はて。呪霊には疼くような器官は存在しない筈だが───と、そこまで考えたところで、天探女は、本能の限りに腰を振っていた愛人の()()を感じ取った。

 

「ガッ!アァ!」

 

 

 相も変わらず獣のような声を上げる一方で、その体は小刻みに痙攣していた。

 少し考えて、天探女の中で合点がいく。

 つまり、終わりが近いのだ。

 

 

 彼女は考察を一時中断して、まずは顛末を見守ることにした。

 愛人の声が、少しずつくぐもったソレに変わっていく。

 腰の動きが早くなり、そして快感が強まっているのか、少し不規則になった。

 

 

 そして────

 

 

 

「グァッ!!」

 

 

 

 一際大きい声を上げたと思うと、愛人は腰を強く()()()()()

 それに合わせて、為人の体内からび、びと粘着質な水音が鳴る。

 

 どさり、と愛人は為人に凭れかかる。

 脱力して動けない様子の彼を、天探女は抱き上げて為人から引き離す。

 一度その頭を優しく撫でた後、天探女は改めて視線を為人へ向けた。

 

 

 

「………さて、どうなるか」

 

 

 

 

 

 

 呪霊が孕むという未知に対して、天探女は予め、二つの仮説を立てていた。

 一つは、孕まされた呪霊が母胎となり、子として新しい呪霊が産まれるという説。

 

 そしてもう一つは、呪霊はあくまで体内に愛人の精を持つだけでそこに妊娠や出産といった行為は付随しないという説。

 

 天探女はそのどちらもが有り得ると考えていた。しかし一方で、どちらの推測にも矛盾を感じていた。

 

 

 前者の仮説について。

 そこに生じる矛盾は、そもそも呪霊は個として完結した存在であるという点だ。

 一部の例外を除き、呪霊は子を産んで増えるという行為を行わない。

 何故なら、生殖とは、あくまで寿命という終わりがある生物だからこそ行う、種としての生存方法であるから。

 基本個で完結する呪霊には、種族という概念が存在しない以上、子となる呪霊が産まれるとは考えにくかった。

 

 そして、後者の仮説について。

 そこに生じるのは、『孕む』という行為に当たるのか、という矛盾である。

 孕むとは、天探女の認識では腹に子を宿すこと、である。

 つまり、精を体内に持っているだけの状態では、孕んでいると言えない可能性が高いのだ。

 

 

 幾らかの思考実験を経て、天探女は、一つ目の仮説の方が可能性が高いと考えた。

 故に考慮するのは、産まれるであろう呪霊について。

 

 そいつは一体、どんな性質を持って生まれるのか。

 母胎と同じ呪霊なのか。それとも、愛人の要素を一部引き継ぎ、変質した新たな個として生まれ落ちるのか。

 

 

 そこまで考えたところで───天探女は、未だ神託により、本能で静止している筈の為人が、不自然に痙攣しているのに気がついた。

 

 

 

「………始まったようじゃぞ。愛人、起きているかの?」

「………起きてるけど、ダルい。後金玉があつくていたい」

「今は我慢するのじゃ。あ、それと卒業おめでとう」

「卒業て………でも今はツッコむ元気もない……」

 

 

 天探女がぐったりとしたままの愛人と話す間にも、為人の痙攣は終わらず、寧ろ強く、大きくなっていく。

 

 軽口を叩きながらも、天探女は油断無く身構える。

 

 神託で静止しているにも関わらず動くというのであれば、それは本体の意志とは関係なく起こる肉体の反応である可能性が高い。

 つまり、為人の体内では確実に何かが巻き起こっているのだ。

 

 

 と、痙攣が始まって十数秒で、為人の呪力に変化が起こった。

 それまでは全身に漲っていた呪力が、為人の下腹部に向けて集まっていく。

 収縮に次ぐ収縮。次第に、体を維持する呪力すらも下腹部に集まっていき、為人の体は、末端からぽろぽろと崩れていく。

 

 

「……………なるほど」

 

 

 一足先に、天探女は全てを理解する。

 それに遅れる形で、為人の体は完全に崩壊を迎え、そこには宙に浮かぶ球体だけが残った。

 

 

「………なるほどって?」

「………そろそろ顔を上げよ、愛人。この可能性は考えていなかったのじゃ。面白いの」

「面白いって………ぐっ、あー…………ん?あれは────」

 

 

 

「─────呪胎?」

 

 

 

 愛人が呟いた瞬間、球体───為人が変化した呪胎に、小さな亀裂が走る。

 何が起こるのか、と愛人は訝しげに目を細めるが、その間にもびき、ぱき、と殻の割れる音と共に、亀裂は大きく広がっていく。

 

 

 そして。

 一際大きな亀裂が走ると、中からどろりと()()()()()()ナニカが産まれ落ちた。

 

 

「…………終わり?」

「………そのようじゃが………動かぬの」

「…………あ、もしかしてまだ神託続行中とかなんじゃない?」

「あそっか。『破』───っとぉ!?」

 

 

 天探女が為人に与えた神託を解いた瞬間。

 それまで微動だにしなかった為人(推定)は、急激な加速を以て、天探女に抱えられていた愛人に接近した。

 

 その速度は、天探女の全速力よりも速く────愛人に出来たのは、顔を僅かに上げて、迫る為人(推定)を視界に入れることだけだった。

 

 

 無限にも思える一瞬の内に、愛人は走馬灯を見ているかのような心地の中で、為人(推定)姿を観察した。

 

 まず目に入ったのは、先程までとは似ても似つかない程に端正に整った顔。

 目も口も、大和撫子とはまさにこれ、と言わんばかりの美貌を、為人は最大限に緩めて、頬を赤らめていた。

 

 そして肉体も、通常の人間のようで───え、なんかついてね?なんかデカくね?ん?あれっておっぱ───

 

 

 そこまで考えたところで、愛人を強い衝撃が襲った。

 

 

「おごぁ!!」

 

 

 

 一拍遅れて、愛人は自分が地面に叩きつけられたことに気がついた。

 背中の痛みに顔を顰め、気怠い体をなんとか起き上がらせようと踏ん張る、

 しかし、体全体に重みを感じて動くことができなかった。

 

 

 そうだ、俺は為人に襲われて───。

 重たい頭を動かして、なんとか自分の体を見る。するとそこには────。

 

 

 

「えへへ。あいじんっ!好き〜♡」

 

 

 

「………えっ」

 

 

 

 巨大な胸をこれでもかとばかりに押し付ける、為人(全裸の美人)がいた。

 

 

 

 

 




大変申し訳ないのですが、R18は書けそうにありませんでした
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