呪霊を孕ませる特異体質 作:LABO
【1997年4月7日(月)】
若干期間が空いた。というよりも、ただ単純に書くことが無かっただけなのだが。
呪霊との初戦闘からおよそ一ヶ月。今日は小学校の入学式だった。
母親は妊娠による体調不良を理由に来なかった。だから一人で出席したのだが、なんともまあ向けられる視線がしんどいことこの上なかった。
狭い島であることもあり、新一年生は俺を入れて三人しかいなかった。
しかも後の二人は女の子で、結構なインドア派っぽいから、まあ友達になることは無いんじゃないだろうか。
小学生の女の子と仲良くなる方法なんて知らないし。
そして一つ気になったのが、母親が佐藤と同棲し始めたのがもう既に村中で話題になっていることだ。
少なくとも小学生の親連中は認識してるっぽいから、『売女』やら『尻軽』なんていうまあ汚い言葉がちらほら聞こえてきた。
不幸中の幸いに、一人で出席している俺にまでそういう言葉が飛んでくるわけではなかった。
あくまで俺は“可哀想な子”扱いらしい。
んでまぁ、初日ということで学校自体は早めに終わったが、俺はその後も暫く学校にいることにしていた。
何故か。それは図書館を利用するためだ。
というのも、今は一九九七年、まだこんな日本の端にある島にはパソコンというものは普及していないのだ。
昨年は「Windows95」が日本で発売を開始し、本州の方では爆発的な普及が始まったらしいが、逆に言うとここまで来るのはまだまだ先だと言うことだ。
つまり図書館は、現状唯一となる情報収集できる場所なのだ。
今回はこの島のことを調べた。
青原島と言う名前らしいこの島は、一〇平方キロメートルくらいの小さな土地だった。
人口は一九九六年で二〇五人。なら父親が死んだから今は二〇四人か。
なんて不謹慎なことも思いながら読み進めた。
んで得た情報を総括すると、この青原島は、前世で言うところの青ヶ島にあたる島なんじゃないかということがわかった。
なぜあたる島、と述べたかといえば、この島は調べたどの文献にも『最南端の有人島』と記載されていたからだ。
おや?と思い青ヶ島について調べてみると、この世界には青ヶ島という言葉が欠片も存在していなかった。
なのでこの島は、呪術廻戦原作において描写されていない、架空の島なんじゃないかというあたりをつけた。
一つ疑問なのは、確か呪術廻戦では渋谷だとか新宿だとかの地名はリアルのものが使われていた記憶があることだ。
なぜ青原島だけオリジナルのものが使われているのか。しかしこの疑問については解決する方法が無く、したところで大して有用でもないだろうと考えたので、一旦保留にすることにした。
とまあ、学校での話はこんなものか。
後は最近の呪霊関連のことをまとめておく。
えーっと、まずここ一ヶ月で、俺は七体の呪霊を討伐した。
討伐というとあれだが、実質は七体全部最初の一体と同じように攻撃を避けてカウンターで潰しただけだ。
恐らく全員だいぶ弱い奴らだったんだろう。原作でも田舎より都会のほうがなんとやら、みたいな話が出ていた気がするし。
最初は俺が優秀なのかとも考えたが、明らかに弱すぎるし、そもそも比較対象が居ないから調子には乗らないようにちょくちょく自分を戒めている。
んで、この世界が呪術廻戦の世界であるならば、鍛錬方法についても一新することにした。
今までは運動神経の強化に重きをおいてパルクール擬きみたいなことやっていたが、それよりもまずはやっておくべきことがあるのだ。
すなわち、『黒閃』を経験することである。
原作では、曰く『0.000001秒以内の誤差で打撃と呪力が同時に衝突すること』で発生すると言われている。
これを経験するとしないとでは、呪力関連の習熟度に大きな差が出るとされており、ならばとまずはここから通ることにしたのだ。
故に今は、只管木や地面、岩に向かって呪力を込めたパンチやキックを繰り返している。
傍から見たらヤバイ光景だが、神社周辺には人が全く来ないので多分見られない。それに最悪見られたら格闘家ごっことでも言い訳すればいい。
兎も角今は黒閃を発生させることだけを目標に、それを繰り返す日々を過ごしている。
因みにこの鍛錬をやり始めてもう二週間くらい経つが、まだ一度も発生していない。
だが全く無駄というわけでもなく、細かな呪力操作はぐんぐん上達しているように感じる。
最終的には、反転術式習得も目指したいところである。
【1997年4月25日(金)】
また期間が空いた。
でももうなんとなく、俺はこんくらいのペースでしか日記をつけれないズボラ人間であると言うのが分かってきた。
なのでこれからは、半年とか空かない限りスルーしようと思う。
さて。で本日日記を書いているということは、勿論書くに値するナニカがあったということなのだが、これまた良いことと悪いことが一つずつ起こった。
流れ的に、まずは悪いことの方から書いていこうと思う。
と、いうのも、どうやら学校の悪ガキっぽいやつに目をつけられてしまったようなのだ。
きっかけは体育の授業だ。
うちの小学校は、全校合わせて一六人の超小さい規模なため、一部授業は全校で共通して行われることがある。
そして今日は来月末に行われる運動会に向けての、初めての合同練習だったのだ。
四年生に、濱井君という男の子がいる。その子の親はこの村でも有数の有力者、というかそれこそ漁業組合を仕切っている人物らしく、親の権力を後ろ盾に大分好き勝手やっていたのだ。
悪ガキというか何というか。しかしその親まで悪い人物ではなさそうで、両親には上手く隠してやっているようだ。
そんな子と、どうしても人数や男女比の都合上かけっこを一緒に走ることになってしまった。
本来なら小学一年生と四年生が一緒に走ったら、そりゃ勿論圧倒的大差をつけて四年生が勝つに決まってる。
俺だって最初はテキトーに抜いて走って、事なかれで終わらせるつもりでいた。
しかしだ。隣のレーンに並んだとき、濱井君は他の人には聞こえないような声量で俺に向かってこんなことを言ってきたのだ。
『お前のかーちゃんばいたなんだってな。父ちゃんがいってたぞ』
『ならお前はばいたの子供だ。あんまちょーしのるなよ』
…………これは流石にカチンと来ても可笑しくないよな?
と、予め整理しておきたいのは、俺は決して手を出したり、大声で言い返したわけではないということだ。
むしろその逆で、ムカついたからこそ
すなわち、見下していたちびっ子にかけっこで負けるという、なんとも情けない結果をプレゼントしてやった。
あ~、今思い返してもスッキリする。あの惨めな負け顔。どうやら濱井君には噛ませ犬の才能があったようだ。
しかし、これで確実に目をつけられたのは間違いないだろうなとも思った。
自分の中の冷静な部分が、やっちまったなと溜め息をついていた。これで万が一にも母親に迷惑が行ったらどうなることやら。濱井家の親御さんはまともであることを願うばかりである。
まあそういう意味での、後顧の憂いを作ってしまったというのが悪いことだ。
そして次が良いこと。
なんと、ついに黒閃を発生させることに成功したのだ!!!!
経緯としては、今日も今日とて岩に向かって呪力パンチを打ち続けていたのだが、今日は珍しく集中することができていなかった。
というよりは考え事に没頭していたというべきか。
勿論それは濱井君関連の内容で、これから色々と想定される可能性(いじめとか親越しの圧力とか)について思考を巡らせている最中だった。
今となっては、それがむしろ肩の力を抜くことに繋がって良かったのかもしれない。
気付いたときには鈍い衝撃音と黒い火花が発生しており、今まではどんなに呪力を込めて殴ってもビクともしなかった大岩に大きな亀裂が入っていた。
これはキマったね。原作では東堂が『呪力の味を理解する』と語っていたが、ホントにそんな感じがする。
なんだろう。イメージとしては、めちゃくちゃ暑い日、喉が渇いてる時にキンキンに冷えた水を呷る感覚に似てるかもしれない。
細胞の一つ一つが満たされるというか、呪力が染み渡る感覚というか。
爽快感があるわけではないが、脳みそが冴えに冴えて堪らなかった。
その後はもう、黒閃ジャンキーだ。
ナナミンが黒閃を連発するならその日の内に、って言ってたから、もう一回出そうと頑張ったら二回出た。
これ結構凄いんじゃないだろうか。
そして、黒閃を出した成果について。
これはもう感覚で分かった。明らかに呪力の巡りが昨日までとは違っている。
身体強化のキレも半端ないし、なんなら今まではできてなかったモノに纏わせるみたいなこともノリですんなりできるようになってしまった。
これはハマる。ここに来て、俺は強くなる楽しさみたいなものに目覚めてしまったのかもしれない。
この調子なら反転術式も半年くらいで使えるようになるかもしれないな!ガハハ!
【1997年4月28日(月)】
週明けに、早速イジメ(?)、始まりました、、、。