呪霊を孕ませる特異体質   作:LABO

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 [1997年10月17日(金)]

 

 

 朝四時。まだ日が昇る前に目を覚ます。

 すっかり朝が冷え込むようになったが、まだベッドで寝ていたい自分を押し殺して、ぐ、と起き上がる。

 

 

 先日の同級生女子二人と遊んだ日から、俺は生活習慣を大きく変えることにした。

 なぜなら、放課後という人の目の多い時間帯に廃神社に通い続けるのは、もろもろのリスクが高いと踏んだためだ。

 しかし、今更廃神社通いを辞めるのはなんだか嫌だ。行った日はほぼ毎日掃除しているのもあって、気分はもう管理人なのである。

 だから放課後は同級生や先生、町の人との交流、図書館での調べものなどに時間を割き、廃神社でのあれこれは早朝に行うことにした。

 

 

 と、いうことで。佐藤さんに先日買ってもらった、スポーティな運動服を着て街に繰り出す。

 廃神社への道のりはパルクールをしながらだ。

 この日課を始めたての時は、漁師とバッティングしないかという不安点もあったんだが、ちょっと観察してみたところ、どうやら漁師らは三時には出航して、五時過ぎくらいに帰ってくるというルーティーンをしているみたいなのだ。

 つまりこの四時という時間は、逆に人がほとんどいない穴場な時間帯ということになる。

 

 

「今日もランニングかい!偉いねぇ!」

「うん!おばちゃんもお仕事頑張ってな―」

 

 

 勿論、ゼロというわけではない。

 しかしこの時間に起きている人ってたいてい仕事の準備やら朝の支度やらで忙しいから、住宅地は普通にランニングの態でカモフラージュが容易なのである。

 つまり完璧、早起きは三文の徳という言葉にも頷ける部分があるというものだ。

 

 

 それに、だ。早朝ってのにはほかにも利点がある。

 

 

『きょうううう』

 

 

 そう。放課後に比べて、呪霊討伐も行いやすい時間帯なのだ。

 帳の張り方が分からない俺にとって、放課後に町中で見かける呪霊ってのはものすごく手を出しにくい存在だった。

 どこに人の目があるか分からないからな。

 だけど今は早朝。デフォルトで人の行き来が少ないので、ランニング中に多少変な動きをしても問題ないのだ。

 

 

「おりゃ」

『ギャア』

 

 

 こんなふうに。

 

 ああ、なんてストレスフリー。真の快適さとは早起きにこそその答えがあったのだ!!

 

 

 その後も、ちらほらいる呪霊をすれ違いざまに爆散させながら、今日も俺は廃神社へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【1997年10月17日(金)】

 

 

 最近日常が快適で快適で仕方ない。

 最初は必要に駆られてした生活習慣の変更だったが、まさかここまで自分にはまるとは思わなんだ。

 朝四時に起きてトレーニング兼神社の手入れ。その後学校行って、放課後は同級生と遊ぶなり自室で呪術関連のトレーニングをして、早めに飯食ってとっとと寝る。

 言葉にすれば単純だが、こっちに変えたお陰でコミュニケーションに回す時間も増えて人間関係がどんどん良好になっていくし、健康なサイクルだからか集中力が増して体のキレも良くなった。

 更には、今までは見過ごすしかなかった、町中に発生する呪霊も格段に祓いやすかったりと、まさしくいいことづくめなのである。

 

 

 それと関係あるのか分からないが、最近は佐藤さんとの関係も良好だしな。

 

 さて、そんな佐藤さん越しに聞いた話ではあるのだが、なんと母親のお腹の中の子の性別が女の子だって最近分かったらしい。

 もう今は妊娠八カ月目なんだとか。本来であればもう少し早く分かったそうなのだが、生憎赤ちゃんの姿勢が良くなかったため遅れてしまったそうだ。

 

 

 それを言われたとき、俺は正直複雑な気持ちになった。

 妹ができるって言われてもな。俺に対してあんな感じなのに、あの母親は果たしてちゃんと育てられるのか?

 俺がたまたま前世の記憶を持ってるからなんとか生きれただけで、下手したら衰弱死の可能性だってあっただろうに。

 

 まぁそんなことを、嬉しそうに話してる佐藤さんに言いはしなかったけどね。

 だからその分、もしもネグレクトするようだったら俺が守ってあげないとな、と思った。

 

 

 

 でも俺って、なんであんなに母親に嫌われてんだろうなぁ。

 今更聞けないけどさ。物心ついたときには嫌われてたから、きっかけに心当たりも特にないんだよな。

 

 

 

 

 それはそなたがうつわをころしたからよ

 

 

 

 

 

 【1997年10月20日(月)】

 

 

 

 昨日舞香ちゃんの誕生日会があったので行ってきた。 

 前世を通してもそういう催しに出るのは初めてだったので緊張したが、行ってみれば意外と楽しかった。

 

 そして今までの交流からなんとなく察しはついていたのだが、舞香ちゃんち、というより鈴木さん宅も中々の太い家だということが発覚した。

 どうも佐藤さんと同じく医者らしい。鈴木パパと佐藤さんを含めて、この島には三人の医師が常駐しているんだとか。

 

 いやぁ。頭の下がる思いだ。

 更にそんなこんなを話している中で、先日書いた疑問について有益な情報を手に入れた。

 

 なんと三人の医者のうち、もう一人は女医さんらしいのだが、その人が俺のお産に立ち会った方なようなのだ。

 

 

 つまりだ。その人は、俺が物心つく以前の母親を知っているということ。

 

 話を聞いてみたい。そう思った。

 

 鈴木パパにその人──柴さんとの都合をつけれないか聞いてみたのだが、何やら諸々の事情から三人は折り合いが悪く、連絡先を交換し合ってないらしい。

 

 

 訳を聞いても話を濁された。なんだってんだよ。

 

 

 だがその代わり、柴さんの次のシフトが木曜日ということを聞いたので、ならばと正面からお話を聞きにいくことにした。

 

 ただ基本ワンオペらしいので、暇そうな時間帯を狙って行こうと考えている。

 

 

 保険証いるかな。てかそもそもどこにあんだろ、家で見たことないわ。

 

 

 

 

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