魔女夜行録   作:えらいこっちゃ

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災難な目に遭う私


よろしくです

「つまり、空腹状態の私は脳内はまともな計算が出来ずに、飛行中に落下を伴う危険性があると言う訳です。」

 

「うーん、理解できるような、出来ないような。」

 

 まぁ、ぶっちゃけ飛行自体は出来ると思います。伊達に十年近く魔術について研鑽を積んでないですからね。

 

 しかしこれ以上の空腹は御免被ります。それに私は自分の空腹を抑えてまで人助けをするほど出来た魔女見習いではありません。まずは目先の問題から解決しなければなりません。

 

 ですが私は無一文。目の前で苦い顔をしているバンディちゃんがどの程度家出用の資金を持っているかは不明ですが、年下に集るなんて真似恥ずかしくて出来ません。つまりどっちにしろ資金問題は解決してないのです。

 

 進んだように思えた展開は、実は停滞したまま。悩む人数が1人から2人に変わっただけでした。いや、私は魔女見習いなので2.5人くらいでしょうか。いくら私の叡智があったとしても無から生み出す錬金術は不可能なのです。

 

「いや、別に一食くらいなら移動賃として払うけどさ。」

 

 腹の音を鳴らしながら悩む私を見て、バンディちゃんはそう言いました。

 

「いやいや、流石にバンディちゃんに奢らせる訳にはいきませんよ。」

 

「…あー、もしかしてアタシの事知ってた?流石にここには居ないと思ってたんだけど。」

 

 いや知りませんけど。バンディちゃんは領家の出とかなのでしょうか。ここ数年は下界と隔離されて暮らしていましたからそんな事情は知りませんが。

 

「余裕で初対面です。なんなら第一村人ですよ。」

 

「?」

 

 また頭に疑問を浮かべるバンディちゃん。なんでしょうか、先程から会話が上手い具合に滑り合いますね。同じ言語のはずですが…流石に私が森暮らししてる間に言語が変わったなんて事ないと思いますが。

 

「まぁ、知らないならそっちの方が好都合だしいいか。」

 

 何が好都合なのでしょうか。魔術を修める身としてこの手の謎は是非とも解き明かしたいですね。ですが思春期の心を解明すること程困難なことはありません。

 

「それより、手間賃くらいなら遠慮しなくても払うよ。」

 

 懐から何かが入っている革袋を取り出しながらそう言います。バンディちゃんには少なくとも私よりは経済的余裕があるようです。

 

「後、言っていいか微妙だから黙っていたけど、無一文で悪臭のする服に身を包んでいる時点でもう体裁を気にしてる場合じゃないと思うんだけど。」

 

「ぐぬっ。」

 

 なかなか痛いところを突いてきますね…。そうなんです、先程から年上の威厳がどうやら言っていますが、現状私は身に纏う衣服すら文化人か怪しいレベルなのです。

 

 なんなら今の状況は結構深刻で、今日の宿すら怪しいと言う逸らしてきた現実が過ぎります。

 

「で、ですが私は年下には優しくする主義なのです。ここでバンディちゃんの手を借りるのは矜持に反します。」

 

 理由は私が若いため庇護の範囲を年下にすることで私の負担を減らしつつ、なんとなしの優越感位浸るためです。

 

「え?あーそっか、言ってなかったっけ。」

 

 それからバンディちゃんは人差し指を自分の顔に向けると口を開きました。

 

「アタシ、こう見えても貴女より一回り歳上なのさ。」

 

 不意に聴覚が研ぎ澄まされたかのような錯覚に陥ります。音を全て聞き逃さないように、それから脳が先ほどの言葉を反芻して、それから紡ぎ出された言葉を出します。

 

「はい?」

 

____

 

 ただひたすらに、目の前に広がる宝物(食事)に手を伸ばします。

何よりも先に、街付近の川から採れた新鮮な魚の焼き身が、香ばしく私の鼻腔を通り過ぎます。

 

 口に入れるとその脂身に詰まった旨みが解放され、口の中に広がり、私の見えない飢えを少しずつ遠ざけていきます。

 

 それから口内をリフレッシュさせるよう、街で採れた野菜からなるサラダにフォークを向けます。爽やかな緑で構成されたサラダには、特別なドレッシングなどは一切加えられていません。

 

 ですが、食事を通してサラダという存在があるだけでその内容は遥かに高位に仕上がります。味覚が再び初々しく再生され、またメインディッシュを美味しく仕上げるのです。

 

 そのまま一先ずの区切りを付けるためにコップに注がれている水を口へと運びます。魔道具によって冷やされた水が、心地良い冷涼感を与えてくれます。

 

 そこまで一息に動作を終わらせて、漸く1度手を止めます。

 

「ああ、幸福です。」

 

 空腹は食事の幸福度を上げます。これを論文にまとめて魔術学会に発表をしましょう。

 

「随分美味しそうに食べるねぇ。」

 

 私の向かいに座わり、水のみを机の上に置いているバンディがそう発言します。

 

「ふぁい。ふぁふぁりひょくひはふきでふね。みひゃさへてふひふぁひひゃふ。」

 

「はいはい、まずはゆっくり飲み込んでから話しなよ。」

 

 おっと、これは不躾でしたね。久々の食事にテンションが上がってました。

 

 私は言われた通りに口に詰まった魚を咀嚼し、飲み込み、それから話をし直しました。

 

「失礼しました。やはり久々の食事だけあって嬉しさは一頻りですね。」

 

「そっか、それは良かったよ。」

 

 バンディは珍しいものでも見てるかのように、好奇と喜びの混じったような目で見てきます。

 

「はい、本当によかったです。バンディが年上で。」

 

 自分の口周りについた汚れを拭ってから、一先ず食事からバンディに視線を移します。

 

「改めて見ても、全く成人してるとは思えませんね。」

 

「よく言われるよ。」

 

 よく見ても私と同じくらいの年齢。大多数の人からはそれ以下の年齢で見られるでしょう。小柄な体躯と可愛らしい顔立ちはまさしく少女のようにも見えます。でも確かに、雰囲気などは大人びて見えますね。会話していた感じた違和感はこれでした。

 

 さて、衝撃の事実は今より少し前、彼女は実はバンディちゃんではなくバンディでした。彼女の可憐な容姿に騙されかけましたが、そのカミングアウトは私の問題を全て解決してくれたため無問題です。

 

「しっかし、さっきまで奢られるのを渋っていた人物と同一人物とは思えないなぁ。」

 

「私は年下には優しくしますが、そうでなければ話は別です。あ、できれば今日の宿分の追加料金も要求したいです。」

 

「図々しいなぁ…。」

 

 仕方ないのです。今は藁にも縋りたい程状況は緊迫しているのです。正体が分かった今私の辞書から遠慮の二文字は消え去りました。

 

 私は何か含みのある視線を向けてくるバンディから顔を逸らし、再び食事に専念します。うん、やはりこの魚は美味しいですね。

 

「ふぁ、ひふのわふれへはしひゃけほ(あ、言うの忘れてましたけど)。」

 

 それから口に含んだ魚身を飲みこみ、続きを話します。

 

「んぐ…私、アルデックがわかりません。森に篭りきりだったので。」

 

「え?…いや、さっき行けるか雰囲気醸し出していたよね?」

 

 それ、見栄張っていただけなんですよね。その事を告げると、バンディは今まで見た中で一番大きなため息をした後がくりと項垂れました。

 

「…そっかぁ……。」

 

 何やら憂鬱な様子です。ですが騙していたのはお互い様ですからね。これでイーブンって所ですね。

 

「故意的に黙っていたテルンに非がありそうだけどねぇ〜。」

 

 いや、そんな事ありません。騙していたのがどちらかでは無く、騙されたのが誰なのかが大事なのです。よってこれはセーフでしょう。

 

 ん?なんか私名前で呼ばれませんでした?

 

「呼んだわよ、私が。」

 

 

 声は正面で凹んでいるバンディからではなく、背後から聞こえたものでした。靄に包まれたかの様に、脳に厭らしく響くこの声には心当たりがありました。最悪ですね。

 

「はぁ…今日は厄日ですね。」

 

 ため息を大きく吐き出し、それから大きく息をします。心なしか空気も染められている様に感じられました。

 

 私の声反応して、俯いていたバンディが顔を上げあてこちらを見ます。

 

「ん?どうかした_っ!!」

 

 そして私の後ろに居るであろう存在に気付いたのか、先程までの日常的な会話を行なっていた雰囲気は惜別を告げます。それと同時にバンディの姿が陽炎の様に揺らめき、私の視界から消えました。

 

 そして、彼女の位置は私のすぐ側、後ろへと移動していたのです。その後、見えない後ろから何かが振り抜かれた、恐らく金属製の物でしょう。得物の振り抜く音に遅れて空気の振動が音を立てて発生します。

 

「へぇ…避けるか今のを。」

 

 陽気に話しかけて来た時とは別人の様に、しかし確かに彼女のものと分かる声色でその低い声は発せられました。

 

「あらあら、怖いわぁ。私も仲良くお話ししたいだけなのにね。」

 

 相変わらず変わらぬ余裕を含んだ声が、今度は少し遠くから聞こえます。

 私は自分の席に立て掛けていた杖を握り、食事のテーブルから離れます。

 

「折角ありつけた食事だと言うのに…どうしてくれるんですか?アステラ。」

 

 気づくと辺りには霧が満ちていた。しかし私が通ってきた森とは比べ物にならない程魔力に満ち満ちている、ドス黒いまでの濃度の魔力の霧です。

 

 これ程の魔力濃度の霧が自然発生する訳もありません。発生源は言わずとも明快でした。

 

「うふふふ、うふふふふふふふ。」

 

 何が楽しいのか、アステラは笑い続け、少し離れた場所で両手を頬に当て、体を艶かしく動かしていました。

 

「あぁ、挨拶がまだでしたわ。そちらの物騒な方は初めまして、テルン。貴女とは…三ヶ月程ぶりかしら?改めて、会えて嬉しいですわ。私の名前は_」

 

 長々とまた意味の無い口上を続けるその隙を縫い、私は次へと行動を移します。

 

 一瞬の間、その時間を使ってバンディへと視線を向けます。彼方も私の視線に気づき、お互いに目を配らせます。

アイコンタクトです。今日あったばかりなので高度なものは出来ませんが、大体の意思は伝わったでしょう。

 

 私は杖を掲げ、その矛先をアステラに向けます。

 

「キモいです。『箒星(ほうきぼし)』。」

 

 粒子が身体を包み、地を突き抜ける流星へと変化しました。

 

 




どうも、粒子に包まれた私、遂に名前が解禁されたテルンです。みなさんご存知可愛い魔女見習いことテルンです。上で読んだ内容は忘れていいので私の名前だけ覚えてくださいね。

さて、また意義のないなんちゃって次回予告ですが。なんだか展開が急ですよね。恐らくこれを書いた人はその場の勢いだけで書いているのでしょう。愚かですね。私の叡智を分けてあげたいです。

今回実はバンディに騙されていた私でしたが、それ以上に厄介な奴が出て来ました。面倒臭いので次回は三行くらいで帰っていて欲しいですね。

次回「帰ってください」

そのまんまです。タイトルセンスも皆無ですね。では私はアステラを吹き飛ばす必要があるのでこの辺りで終わります。次回もよろしくです。
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