TS憑依ソフィーのアトリエ 不思議な魂の錬金術師   作:不思議シリーズマン

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第1話

「ソフィー、薬を作ってくれ!!急患だ!!」

 

「山師の薬でいい?」

 

「ああ!!」

 

「作り置きがあるからそこの棚から取ってくれ。品質は左の列からE.D.C.Bだから」

 

「助かるよ」

 

 

お医者さんは大変だなぁ。こんな小娘の手まで借りないといけないだなんて。

 

 

「ソフィーちゃん、頼んでたものできたかしら」

 

「そこに積んである。代金は適当に置いといて」

 

「いつもありがとうね」

 

 

ゼッテルくらいエリーゼに頼めばいいのに。まあ本職は違うし仕方ないか。

 

 

「やっぱソフィーはすごいな!!」

 

 

まだまだ。全然足りない。

 

 

「あの歳でラミゼルの婆さんに負けず劣らずの錬金術師だもんなぁ」

 

 

ばあちゃんにはまだ勝てないよ。

 

 

「あの子が居てくれればキルヘン・ベルは安泰だ」

 

 

ずっとこの街にいる気はないよ。いつか旅に出ないとだから。

 

 

「キルヘン・ベルのソフィー・()()()()()()()()ここにありってな!!」

 

 

そう、オレはエルレンマイヤーだ。ノイエンミュラーは捨てた。

だってオレは皆が知ってるソフィー・ノイエンミュラーにはなれないから。

さてと……今日もクッソ忙しいんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

オレが物心ついた時、それは「私」が「オレ」になった瞬間だった。その頃にはすでに両親の姿はなく故に顔も覚えていない。オレの家族はラミゼル・ノイエンミュラーという祖母一人だ。

オレがここまで認識した瞬間、気づいたことがある。

 

 

「これ【ソフィーのアトリエ】じゃん」

 

 

ソフィーのアトリエ。25周年を迎えるアトリエシリーズの1作品で主人公のソフィー・ノイエンミュラーはアトリエシリーズの人気投票で一位になるほどの人気を持つ。アトリエシリーズ、その中でも不思議シリーズ一作目を誇る名作中の名作だ。

 

それはいい。よくはないけど、もっと良くないのはオレの名前。どう考えたってオレがその【ソフィー】になっている。祖母であるラミゼルは年相応にお婆さんと言った感じだがその髪色や雰囲気は、【ソフィーのアトリエ2】に登場するラミゼル・エルレンマイヤーを想像させる。

つまりオレは本当にソフィーで、これから訪れる数々のイベントをこなさなければならないということになる。

 

 

「いや、無理だが?」

 

 

ソフィーの良さはその性格だ。明るく周りを和ませることができ、祖母の錬金術に憧れて錬金術で他の誰かを幸せにしたいと考えるとてもいい子だ。

 

対してオレは独善的とまではいかないがそこまで願えるほどお人好しじゃない。どうしてオレがソフィーになってしまったのか全く分からないけれどなってしまったからにはソフィーとしての責任は果たさなければならない。

【ソフィーのアトリエ】ではソフィーは亡き祖母の錬金術に憧れて自らも錬金術を行うようになる。しかしそれは見様見真似であり失敗続きのまま16歳まで成長したところから物語が始まる。

 

今のオレが大体3.歳程とするならあと10年弱で祖母は亡くなりオレは一人になる。ソフィーにはモニカとオスカーという幼馴染が居たが、2人と関係を持つかどうかはこれからのオレ次第というわけだ。

祖母は何の気無しにオレを育ててくれている。感謝しているしかなりの愛情を持って接してくれていると実感できる。

祖母の名前はラミゼル・ノイエンミュラー。旧姓はエルレンマイヤーといい、公認錬金術士という優れた錬金術士の称号を持つ。

 

さて、ここからややこしい話をしよう。

【ソフィーのアトリエ2】において、ソフィーは夢の神様が作った夢の世界に訪れることになる。そこには過去から未来まで多種多様な人間が集まる世界であり、意外な人間関係が明らかになることがある。

それがソフィー・ノイエンミュラーとラミゼル・エルレンマイヤーの2人だ。両者共にある10代後半という若い年齢にも拘らず、その関係はラミゼルがソフィーの祖母である。

細かい説明を省くが、夢の神とラミゼルの過ごしてきた時間を【現代】とおくとソフィーは彼女達にとって未来の人間ということになる。未来でラミゼルはとてもすごい錬金術士になったと孫であるソフィーから聞いたラミゼルは困惑もあったが、共に数々の旅をしていく中で公認錬金術士を目指すようになり今のソフィー、つまりオレの祖母になるという流れだ。

 

……ばあちゃん、死んでほしくないなぁ。

 

錬金術があれば延命も永遠の命も実現できる。それなのに、自分の死期を知っているはずのラミゼルがそれでも延命をしなかったのは……何か理由があるのだろう。オレは祖母の決めたことを認めてあげたいけど、それが命に関わるのなら考えざるをえない。でも今のオレはただのガキ、信じてもらえるわけがない。

 

 

「ソフィー、ご飯にしましょう」

 

「うん」

 

 

繰り返して言うがオレは今3歳程度だ。物心ついたタイミングでオレがソフィーに憑依したが都合のいいことにそれまでのソフィーの記憶がある。だからおそらくオレの魂と本当のソフィーの魂が混ざっているんだと思う。

 

ごめんなさい、ソフィー。事故とはいえ君の人生を奪ってしまった。だからオレにできる贖罪は、いつかオレの魂だけ抽出して人形に移しソフィーに体を返すことだ。オレはそのために錬金術を学ぼうと思う。

オレは君のように多くを幸せにできないから、君を言い訳にさせてもらうよ。

だから……

 

 

「ばあちゃん、話があるの」

 

「どうしたんだい?」

 

「ばあちゃんが知ってるソフィーって、ばあちゃんのこと、何て呼んでた?」

 

「何を言って……!!ソフィー、貴方どうして」

 

 

ばあちゃんは絶句した顔でオレのことを見ている。そりゃそうだ、だって【ソフィー】はばあちゃんのことを【おばあちゃん】と呼ぶのだから。

 

 

「知ってること、全部話す……聞いてくれる?」

 

「ええ、聞かせてちょうだい」

 

 

そしてオレは全部話した。

オレという異物が【ソフィー】になり変わってしまったこと。これから起こること。【ソフィーのアトリエ】【ソフィーのアトリエ2】【フィリスのアトリエ】【リディ&スールのアトリエ】のオレが覚えている限り【ソフィー】が登場する不思議シリーズのストーリー。

ばあちゃんは黙ってそれらを聞いた上で、教えてくれた。

 

 

「そうね、あたしが出会った【ソフィー】は今のソフィーとは違う性格だね」

 

「ッ……ごめん、なさい。オレは貴方から、大切なことお孫さんを奪ってしまいました」

 

「そんなこと言わないでちょうだい。確かにソフィーは【ソフィー】とは違うけれど、それでも大切なあたしの孫。今のソフィーなままでいいじゃないか」

 

「……でも」

 

「あたしとしてはね、昔出会った【ソフィー】が弟子を持つようになって、公認錬金術士になって、プラフタを人間に戻せたって事実が1番嬉しい。友人、だからね」

 

「あっ」

 

 

そうだ、【ソフィーのアトリエ2】で最終的に2人の関係は友人に落ち着いたんだった。

 

 

「あの子は友人、そしてソフィー、貴方はあたしの孫。これは変わらないもの。だから好きにしなさい」

 

「……ばあちゃん、いいの?」

 

「ええ。それでソフィー、貴方に夢はあるの?」

 

「夢……錬金術士?」

 

「それは【ソフィー】の夢でしょう。貴方の夢を聞かせて」

 

 

難しいことを言いってくれる。オレ自身の夢か、【ソフィー】に体を返したいという思いは今も変わらない。この先錬金術を学ぶのならプラフタとも出会うし彼女のための体も用意する。だったらやっぱり、そうなる。

 

 

 「ううん、オレはオレの意思で錬金術士になりたい。だからばあちゃん、教えてくれる?」

 

「……わかった。でもあたしが教えるからには容赦はしないよ。それこそ【ソフィー】を超える錬金術士になってもらうからね」

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

 

 

 

 

 

それから、5年が経つころにはばあちゃんの体調が悪くなってきた。

 

 

「悪いねぇ」

 

「気にしないでばあちゃん。オレが好きでやってることだから」

 

 

体を起こしている時間が減ってきて、オレが世話をする時間が増えた。簡単なレシピの錬金術くらいなら片手間にできるようになったので、ばあちゃんの付き添いもなくなり言葉で教えてもらうことのほうが多くなった。

 

 

「ソフィーはすごいねぇ。5年でここまで化けるなんて思ってもみなかったよ」

 

「ばあちゃんの教え方が良かったんだよ。本当に感謝してる」

 

 

ばあちゃんの教え方がいいのは本当のことだ。でもオレはそれを全く活かせていない。

【ソフィー】は本格的に錬金術を学び始めて一年もしないうちに賢者の石の錬金に成功している。賢者の石とは錬金術士が目指す万能の素材、といったところかな。まあごく限られた者しか調合出来ない錬金術士の憧れと言ったところだ。アトリエシリーズの主人公達は軽々と作った上複製までして乱用してるけどな。

 

オレが【ソフィー】より才能に乏しいのは明確になった。そもそもオレはばあちゃんが昔作ったレシピを元に錬金術を学んでいるので、新しいレシピを自ら作るという錬金術士に最も重要な閃きの練習を一切してない。限界が来るとは思ってたけど意外とかかった。

あとは素材を自分で取りにいかないのも原因の一つだ。まだ10歳にすらなってないからね?街で手に入るものでしか調合させてもらえないんだよ。

具体的にいうと、錬金レベルは25近くだが成長のレシピに辿り着けてないような状態だ。

 

 

「本当はもっといい素材を取りに行きたいんだろう?」

 

「えっ……まあ、うん。でも今はばあちゃんともっと一緒にいたい」

 

「……そうかい。嬉しいよソフィー」

 

「ねぇ、ばあちゃん。ばあちゃんはなんで錬金術で延命しなかったの?」

 

「そうさねぇ……ソフィーにもいつかわかる時が来るよ」

 

「またそうやってはぐらかす……いいけどさ。じゃあまた調合に戻るよ、ハロルの兄貴にアプコール頼まれてるから」

 

「ああ、頑張ってね」

 

 

ったく、若いくせに昼間っから飲んだくれて……あのバカ兄貴、金だけは一丁前によこすんだもんなぁ。

 

 

「ケホッ、ケホッ……(ソフィー、ごめんね)」

 

 

 

 

 

 

一年がたった……ばあちゃんが死んだ。

 

 

「……」

 

「ソフィー、そろそろ行くぞ。風邪を引く」

 

「……」

 

「気持ちは分かる。今日はもう休んでろ」

 

「うるせぇよクソ兄貴、もうちょっと……もうちょっとだけだから」

 

「……5分で済ませろ」

 

 

ばあちゃんの葬式は教会で厳かに行われた。キルヘンベルの皆から慕われていたばあちゃんは街中から見送られた。ばあちゃんは皆から愛されてたんだなって、実感が湧いたけど……同時に、本当にばあちゃんがいなくなってしまったんだって認識してしまった。

 

今オレはばあちゃんの遺体を埋葬した外れの森で兄貴分のハロルさんと墓標を前に感傷に浸っている。というよりはここを離れたくないオレを心配して一緒にいてくれてるんだ。雨が降っている中で傘も差さずに濡れているオレを帰らせようとしているけど、ごめん。

 

 

「ばあちゃん……オレ、立派な錬金術士になる。【ソフィー】なんかよりもっとすごい錬金術で……オレの夢を叶えるよ」

 

「……別れは済んだか?」

 

「うん、ねぇ兄貴」

 

「なんだ」

 

「ばあちゃんの遺言でね。オレがエルレンマイヤーを名乗ってもいいって。だから、今日からオレはソフィー・エルレンマイヤーを名乗ることにする。だからホルストさんとかマルグリットさんとかに広めてほしい」

 

「それはいいが、お前はこれからどうするんだ。まさか1人で生活して行く気か?」

 

 

ようやく顔を上げたオレを見て怪訝な顔で聞いてくる兄貴は、オレのことを本当に心配してくれてるのが分かる。

 

 

「今までばあちゃんの看病をしながら生活できたんだ。大丈夫だよ」

 

「違う。俺が言っているのは……」

 

「わかってる。オレにはモニカやオスカー、兄貴だっている。オレ1人じゃどうにもならないことがあったら、ちゃんと頼るよ」

 

「……ソフィー」

 

「ああ、オレはソフィー、ソフィー・エルレンマイヤーだよ。ばあちゃん、オレ頑張るから……じゃあね」

 

 

そしてオレはアトリエに帰って1人になってから、今世初めて泣いた。いつもより感情がこもってたのは……【ソフィー】も一緒に悲しんだからかな。ごめんな【ソフィー】。いつか絶対、お前に体を返すから。

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