TS憑依ソフィーのアトリエ 不思議な魂の錬金術師 作:不思議シリーズマン
時は過ぎ、ロジーの旅立ちから半年が経過した。オレことソフィーは錬金術で調合した物を商品として商売をしながら、プラフタに錬金術を教えてもらう日々を送っていたのだった……!!
『誰に説明しているのですか?』
「ナチュラルに心読まないでもらえませんかねプラフタさんや」
今日も今日とで錬金術に勤しんでいるオレ。日が経つにつれてプラフタがスパルタになっていくので今は現実逃避をしていたところだ。
『ソフィーは日常の思考が単純なので分かりやすいのですよ』
「そうなの!?」
『錬金術に関してだけは驚くほどのスピードで頭が回るようですがね』
「褒められてるのか貶されてるのかわからねぇ……」
この半年間で大きく変化があったことと言えば、ミナさんの帰郷だろう。不作の時期も終わりそこそこの路銀を稼いだので冒険者を護衛に雇って帰って行った。2ヶ月弱で帰郷を決意したのだがその大きな理由はオレの調合品だった。
『特化型促進剤』
今まで素材入手の都合から数が揃えられなかった『万能促進剤』をデチューンした物で、あえて機能を制限することで一つの目的に特化させた栄養促進剤だ。分かりやすく例えるなら、スマホの連絡機能だけを使えるようにした子供用携帯みたいなもんかな。
ともかく、ミナさんの故郷で作られている食物が育ちやすいように特化させた促進剤が完成したので彼女の目的は達成されることになったのだ。我ながらなかなかいい物ができたと自負している。もちろんプラフタの協力が無かったら思いつきもしなかったのでプラフタ様万歳である。
次に大きな変化は、キルヘンベルを訪れる人が増えたこと。特に冒険者の増加が著しく、これもまた原因はオレ。腕のいい錬金術士がいると噂になっているらしく、薬や護身用グッズを求めてやってくる人が増えた。そのままキルヘンベルの風土を気に入って家を構える人もいて、あのいけすかない町長が喜んでいたのは昨日のことのように思い出せる。腹立つなぁ。
まあ、とりあえずはこんなもんかな。個人的なことと言えば、日々の素振りや畑仕事が功を奏し筋力がついたぜ。緑ぷにまでなら杖でぶっ飛ばせるようになりました!!いやー、錬金術士ってなんだっけなー。魔法の球を飛ばして攻撃するより全然強くなっちまったよ。そのうちFPを杖に纏わせてぶん殴ることが出来るようになりたいね。ほら、【ソフィー2】のオーラブロウとかチャージストライクみたいに。
『ソフィー、そろそろ休憩は終わりですよ。次はドナーストーンの調合です』
「はいよ……カーエン石以外の鉱石ってあんまり手に入らないから慎重に使わないとな」
『むしろ、カーエン石がアトリエの裏手で採取できることに驚きですが……』
この半年間のオレの課題は、レシピ通りに色々な物を作ること。【ソフィー】が書き記してくれたレシピをそのまま使って調合が完璧に出来るようになることを目標に訓練している。
レシピ通りでいいなら簡単では?と思う奴ら、いつか終末の種火を喰らわせてやるから覚悟しとけよ。
プラフタ曰く、手っ取り早く錬金術の腕を上げるならこれが1番らしい。今までは素材入手の難しさから敬遠していた方法だったけど、冒険者の客が増加したことで懐が温まってきたお陰でホルストさんの所で冒険者達に素材採取の依頼を出し様々な素材を買い取って調合をしている。やっぱ世の中金だよなぁ!?ということを再認識する日々でした。
『やはりソフィーは素材を投入するタイミングが上手ですね。無駄がないと言いますか、品質を上げるポイントをよく理解しているようです』
「今日までずっと意識してやってることだしな」
いえ、すいません。不思議シリーズのパズル調合がクッソ楽しかったのでやり込んでただけなんです。現実でもパズルをイメージしてぐるこんしてたら上手くいくんだよなぁ。プラフタに褒められてるのでやはりイメージは悪くなかったのだ!!
『(自信の無さ、時折見せる焦りはきっと前世の記憶で見たであろう錬金術士のレベルの高さから起因するものでしょうか。懐かしいですね……【ソフィー】と出会った頃の私も彼女の実力には驚かされる毎日でした。
歳はとりたく…………いえ、500年経っていたとしても眠っていただけで体は本、実質の年齢は人間の範疇だったはず。忘れていたであろう昔の記憶も鮮明に思い出してしまいますね。きっと書き込まれたレシピ量の影響で……気にしてはいけません。
それにしても、
ドナーストーンなんて初めて調合するからクッソ楽しみだ!!この前はレヘルンまで調合できたし、素材を買えるってすげー!!ああもう当分これでいいや、わざわざ危ない場所に採取に行かずともここで構えていれば素材の方からやって来る……っとと、危ない危ない。直接採取に行かないといい品質の素材は手に入らないしな、あと数年は我慢しよう。
コンコンッ
「ん?プラフタ」
『ええ、大人しくしておきます』
「今出まーす……ッ!?」
「やぁ、こんにちは。僕の名前はメクレット。こっちが」
「アトミナよ」
「「ここが錬金術師のアトリエであってる?」」
おいおい、嘘だろ。なんで、なんで……コイツらがもうキルヘンベルに来てんだよ。
「ッ……あ、ああ、あってるよ。【エルレンマイヤーのアトリエ】にようこそ。それで何のようだ?」
メクレットとアトミナ。【ソフィーのアトリエ】の序盤から【ソフィー】の元を訪れる双子の旅人。錬金術士を求めてこの地方を旅している……が、
その正体は、ラスボスのルアード。500年前にプラフタによって敗れこの2人、ホムンクルスの体に魂を分割して生き延びている本物の根絶の錬金術士。
この2人の厄介なところは、いくら殺そうとしても、どれほど時間がかかってもやがてその肉体が再生してしまう事。肉体がぐちゃぐちゃにされて各地へ引き剥がされようといつか絶対に全ての肉が集結し完全に元に戻る。意味がわからないと思うがぶっちゃけオレにも分からん。
「実はね、僕達は錬金術士を訪ねたくてこの地方を旅してたんだ」
「まさかこんな田舎に居るとは思わなかったけど。しかもまだ子供だし」
「こらアトミナ、失礼だろ?……ごめんね」
「……別に構わねえよ。立ち話もなんだ、遠路はるばる来てくれたんだ。茶くらいだすさ、上がってけよ」
たとえ相手の正体がルアードだとしても……いや、ラスボスだからこそここはいつも通りに接さないといけない。下手な反応をすれば貴方のこと知ってますよと教えているようなものだ。
そしてオレは紅茶を用意して2人に差し出す。どうやらプラフタのことは気づかれていないらしい。ホムンクルスである2人は自然ではなく人工的な命であるためか錬金術を使えず戦闘能力も皆無だ。
コイツらをどうにかしようと思えば、今すぐ大量のフラムで爆散させ世界各地……それこそ大陸を渡るくらい遠くに点在させると言う方法がある。そうすれば少なくともオレの代じゃこの2人は目的を果たせないだろう。
……本当に最後の手段になるがな。
「で、錬金術士に何のようだ?別にこの地方以外なら錬金術士なんていくらでもいるだろ?オレみたいな素人じゃない熟練達がよ」
「うーん、僕たちもそう思ってアダレット王国のメルヴェイユまで行ったんだけどさ、僕達の願いが叶わなかったんだよねー」
「だからここまで来た。最後の希望」
「おいおい、メルヴェイユって言ったら国の首都だろ?公認錬金術士の総本山じゃねえか」
け、結構手広く行ってやがるなコイツら。メルヴェイユは【リディ&スールのアトリエ】の舞台だ。25歳になった【ソフィー】が赴き、公認錬金術士としての能力を最大限発揮する場所。何が『世界を救うのは辞めた』だ、めちゃめちゃ救ってるだろ……って言いたくなるくらい【ソフィー】が活躍する。
「そうなんだよ、だからいける!!って思ってたんだけどさ。まさかの収穫なし。誰も『知識の大釜』について知らないんだよ〜」
「ソフィーは知ってる?」
「はぁ?なんだそりゃ。名前からしたら……錬金術の釜か?」
嘘です。ごりごり知ってます。教えるわけないだろ。
「『知識の大釜』っていうのはね、錬金術の才能が無い人でも錬金術が出来るようになる錬金釜なんだよ」
「へぇ……そんなものがあったのか」
「しかも、元々錬金術が出来る人はより良い調合ができるようになるすごいもの」
「錬金術士なら皆欲しいものだな……で、そんな夢みたいなものが本当にあんのか?」
「「あるよ」」
おおう……急に息合わせないでくれ。ビビっちゃうだろ。
「これでも旅人だからね。色んな文献を漁って調べたんだ」
「この地方にあるのは調べがついた。後は探すだけ」
「そこで君だよソフィー!!よかったら『知識の大釜』を探すのを手伝ってくれないかな?」
「ソフィーにもいい話。もっと錬金術が上手になる」
はぁ……何も知らなかった【ソフィー】なら善意とノリでYESと言ったんだけど、オレはどうしたもんかね。YESというのは簡単だけど、上手くはぐらかし続ける自信がない。この2人は性格こそ個性があるが中身……本質はルアードだ。下手な事をし続ければいつか気づかれるだろう。
「うーん……ごめん、今は無理だ」
「えぇー!!なんでさ」
「意気地なし?」
「ちげぇよ!?オレはな、自分の実力で良い錬金術士になりたいんだ。もし本当にそんなすげぇ物があっても……オレは成長できない」
「ふぅ〜ん……ソフィーは上昇志向が強いんだね」
「すごい。私たちと同じくらいの年齢なのに」
「その年で旅してるアンタらの方がすげぇよ。まっ、そういうわけでわりぃが協力はできそうにねぇ」
これはオレの本音だ。本音だからこそこの2人に勘付かれることはない……はずだ。
「そういう事なら仕方ないや」
「頑張ってねソフィー」
「……え、いいのか?アンタらも結構頑張ってここまで来てくれたのにそんなあっさり」
「だって断られたものは仕方ないしさ。それに」
「今じゃなくてもいい。もっとソフィーが成長したらまた頼みにくる」
「お、おう……まあ歓迎はするけどよ。一応これでも店なんだ、旅のお供も売ってるから見てけよ」
なんだ、何が目的だ?なんでコイツらはこうも楽観的なんだ?ほぼ無限の寿命があるからか?なぜ、なぜ……ッ、ダメだ落ち着け。
「へぇ!!すごいや、その年齢でこれほどの爆弾が作れるなんてね」
「薬も上々。優秀」
「じゃあこれ貰うよ。いくらだい?」
「こっちも買う。いくらあっても無駄にならない」
「毎度あり」
うーん、ルアードから錬金術を褒められるのは光栄だが複雑だなぁ。
「安くないかい?そこらの薬屋が泣いちゃうよこれ」
「ウチのは傷の治りだけだからな。病とかは薬屋に任せてる。それにウチは開店時間が短いからさ、客も冒険者達が多いし」
「なるほど。田舎なのに活気があると思ってたけど、これは理由がわかるわ」
そう言って2人は商品を買って行った。しかも、ランク分けしてるとはいえ品質の良いものを一目で見抜いて選んでいった。流石はルアード……
「これだけ錬金術が出来るなら、別の頼み事をしてもいいかい?」
「これ、作って欲しい」
「……あぁ〜、『摘み取り軍手』か。調合は多分いけるけど素材が足りない……か。アレはあるから……これとこれ持って来てくれりゃいけるぞ」
「うっ……結構危険地帯だね、これ」
「私達は弱いから、無理かも」
「別にアンタらが取りに行く必要はないだろ?冒険者に依頼でもすればいいじゃないか。品質は保証すんなよ?」
「「分かった。またくる」」
そう言って2人は去って行った。念の為、街に入るまで見送ってから家に戻る。
「……プラフタ」
『お疲れ様でしたソフィー。まさかあの2人が来るとは思いませんでしたが』
「つっかれたぁ〜、いやしてぇ〜」
『はいはい、よく頑張りましたね。偉いですよ』
マジで疲れたので、昼間っからベッドにダイブする。気を張りすぎも疲れるんだよほんとにさぁ!!
『それにしても、ソフィーの事をいつ知ったのでしょう?』
「おおかた、冒険者達の噂話だろうよ。オレまだキルヘンベルから出た事ねぇし、この地方は多分オレ以外に正統派な錬金術士も居ないだろうからな」
『なるほど……しかし困りましたね。どうするのですか?』
「依頼は受ける。『知識の大釜』関連の話は受けない。この2つを徹底すればいい……はず」
『あの2人は、諦めませんよ』
「分かってる。最後の手段も考えてる。だから今は様子見だ、少なくとも……後2年は大人しくしてもらおうと思ってる。どうせ2年ぐらいならアイツらは待つだろ」
今日はもう店じまいだ。疲れたし、また売り物の調合をしないとだし、疲れたし……疲れたし。
『ソフィー、まさかとは思いますがあの2人から『根絶の錬金術』を学ぼうなんて考えていませんよね?』
「考えてるよ。ルアードが正気だったらな」
『ソフィー!!』
「無理なのは分かってる。だけどさ、『根絶の錬金術』も……立派な技術だ。周囲への悪影響さえどうにか出来れば錬金術の歴史が覆るくらいにはすごい技術なんだよ。それに……いや、未来のことはいいか」
『未来?……そう、そういう事ですか。ですが今は今です。ルアードは……魅入られてしまっています。今のソフィーにはまだ対抗できませんよ』
「だから保留にしてんだ……プラフタ、頑張ろうな」
『……はい、頑張りましょう。ソフィー』