TS憑依ソフィーのアトリエ 不思議な魂の錬金術師   作:不思議シリーズマン

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第2話

 

 

ばあちゃんが死んだ翌日、泣き疲れてたオレは気がついたらばあちゃんのベッドで寝てたらしい。うん、昨日で全部吐き出した。だから今日からしっかりしなきゃな。

 

オレは適当に身支度を整えると、ばあちゃんの遺品整理を始めた。 

 

 

「……思ったよりすることないな」

 

 

オレが全部話してからというもの、ばあちゃんはオレに【ソフィー】の話をしてくれるようになった。【ソフィーのアトリエ2】の舞台である夢幻世界エルデ=ヴィーゲでの、ばあちゃん自身の体験談だ。オレはそれを懐かしい気持ちで聞いていたがばあちゃんはそれについて話しながらも自分の荷物を片付けるようになっていた。

 

終活……していたんだと思う。

 

だからオレはあんまりすることがなかった。せいぜい普段着ていた服とかを倉庫の一角に収めたくらい。他のものは一つを除いて綺麗さっぱり片付いていた。

 

 

「プラフタ……」

 

 

オレの目の前には、ばあちゃんが唯一片付けなかった一冊の本がある。

ページを捲るが当然白紙。なぜならこの本は書き込むことで意味をなすからだ。

 

【ソフィーのアトリエ】で本格的に錬金術を始めた【ソフィー】は自身が思いついた最初のレシピをこの本に書き込んだ。すると眩い光と共に本が浮き喋るようになったのだ。実はこの本、とある錬金術士の魂が封じられていて錬金術のレシピを書き込むことでその本質を取り戻していく。それがプラフタ、500年前の偉大な錬金術士にして、不思議シリーズの主人公【ソフィー】の生涯の相棒であり家族だ。

 

 

「どうすっかなこれ……本当ならこの本見つけるのは6年後のはず。今プラフタを目覚めさせたらなんか問題が……あっ、ありすぎる」

 

 

まずジュリオ、レオン、フリッツ、ロジーがキルヘン・ベルに来ない。コルネリアもいつからこの町に住んでるかわからないから関係が持てない。今の状態で色々始めてもメンバーは揃わない、武器は作れない、防具は揃わない、プラフタを人形にできない……

あっ、魂結の石って20年周期でしか手に入らないからどのみち無理なんだ。

 

ふむ、無理ゲーすぎる。

 

 

「あと6年、待っててくれ」

 

 

オレはプラフタの本を金庫代わりの宝箱に入れ、部屋全体が見渡せる上の方に置いた。どうやらこの状態でも周りの声などは聞こえるらしいのでこれからのオレを見てほしいという願いを込めてだ。

 

 

「次はこれかな」

 

 

視線を移せばオレの身長よりも長い杖が壁に立てかけてある。ばあちゃんが若い頃に使っていたらしい杖をオレが補強したものだ。昔のばあちゃんに合わせてあるから今のオレじゃあ大きすぎて使いこなせない。

だからこれから毎日素振りをやろうと思う。キーファを適当な長さに削ればそれっぽくなるでしょ。【ソフィーのアトリエ】だとアイテムキャラだが、【ソフィーのアトリエ2】なら杖でぶん殴る方が強い時がなぜかあったからな。それにこれから素材集めで町の外に出ることも増えるだろうし体は鍛えておいて損は無い。

 

 

「錬金釜良し、キッチン良し、ベッド良し……」

 

 

クヨクヨしてても仕方ない。さっきも言ったけど、今日からオレ1人なんだ。オレがしっかりしなくてどうする。

 

 

「本棚良し、机良し、外の井戸良し」

 

 

【ソフィーのアトリエ】?いいや違うね。今日からこの家は【エルレンマイヤーのアトリエ】だ。そうだ、看板も変えておこう。

 

 

「悪いがオレは守銭奴でな。ちゃんと値段はつけさせてもらうぜ……まっ、適正価格の2割くらいでいいや」

 

 

生きるのにはお金が必要だからね、仕方ないね。それでも搾り取りたいわけでもないし生活ができるお金があればいい。

 

 

「そうと決まれば早速素振りだ!!いっくぞー!!」

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…」

 

 

無理だ、無理すぎる。30回振れないってマジ?流石にもうちょっと振れるだろオレ。あっ、オレ今10歳の女の子だったわ。大人が振り回すような棒持って振り回せるわけなかったんだ。いや、でも俺毎日錬金釜で中身かき混ぜてるしもうちょっと行けると思ったんだけどな。

 

 

「……あっつ、お風呂行こ」

 

 

この程度で汗だくになるとかなんという不覚。せめて6年後に爆弾を投げれるくらいの筋力は確保したいんだけどなぁ……

 

あー水被るだけでこんなに気持ちいいとか最高かよ。シャワーとか作れたらもっといいんだけど水は井戸水だから無理だよなぁ。 

 

布でしっかりと体をふいておかないとアトリエにある本たちが悲惨なことになる。生活の基準が錬金術なオレはそれらを守るために自然と人間力が上がった気がするよ。少なくとも齢10歳ですることではないけどね。

 

そういや今日はモニカやオスカーが来ないな。

二人はいわゆる幼馴染で5歳くらいのころに教会で知り合った。モニカは良家のお嬢様で金髪金眼のかわいい女の子、未来では眼鏡をかけていたけど今はまだ眼鏡をつけてない。オスカーは町の八百屋のマルグリットさんの息子。恰幅がいいのが未来だけど、もうすでにその片鱗を見せつけてきている。植物と会話ができるらしい。

10歳なこともあって二人ともオレの記憶より精神的にも肉体的にも幼い。純粋さが輝いているよ。むしろオレが錬金術ばっかりで外に出ないからいつも外で遊ぼうで二人に両腕を拘束されてアトリエから連れ出される始末だ。遊びまわって少しずつ体力がついてきてるからありがたいんだけどな。

 

 

「親御さんに止められたかねぇ」

 

 

唯一の家族が亡くなった翌日だ。気を使わせている自覚はあるが、そんな気遣いがオレにはうれしい。まあそのうちこっちから顔を見せに行けばまたいつも通りに遊べるさ。

 

 

グウゥ~……

 

「そういや昨日から何も食ってない。なんか食べないとな」

 

 

でも疲労でだるいなぁ…まあいいやとりあえず水だけ飲んでおこっと。その気になれば焼き菓子でもなんでも調合すればいいからね。

 

じゃあ調合しよっか。そろそろ近場くらいには採取に行きたいと思ってるから爆弾を作っておきたい。うにはマルグリットさんから買えるし火薬はアトリエの裏手からカーエン石が取れる、とりあえず出来合いのものでいいよね。

 

 

「あれ、このうに……クリティカルついてる。助かるわ」

 

 

そう。なんとこの体、素材の特性を認識することができるのだ。流石は【ソフィー】の目だよ。早いうちに素材を集めて全能の力をストックしておきたい。コルネリアが来るまで物の複製ができないから中和剤を経由して錬金粘土やゼッテルにいい特性をつけまくっておきたいよね。品質はこの際考慮しないしそもそもこの辺でとれるものはたかが知れてる。リフレッシュオイルの調合ができればいいんだけどまだレシピを思いつかないんだよなー。忘却のナーセリーに調査に行く以外で何か閃けないかなって試してみたけど一向に思いつかない。やっぱ個人じゃ限界がある。

 

別にレシピは固定じゃない。一つの閃きさえあれば無限のレシピを思いつくことができる。【ソフィーのアトリエ】で賢者の石を作れる【ソフィー】がなぜ【ソフィーのアトリエ2】で最初からレシピを考えているのかを想像すると簡単だ。

別の場所へ行けば別の素材がある。違う素材でも効果が同じなら調合のやり方を変えれば同じものを作れる。作りたいものの素材がいつもそこにあるとは限らない、それで唸るようなら作り方自体を変えてしまえばいいだけなんだ。だからたとえ同じものでも再度レシピを考える必要がある。

 

錬金術とはよく言ったものの、実際のところそれは魔法だ。差別化する点としてオレ達錬金術士は自然の力を借りるところがある。素材を知り、その声を聞き、その力を借りる。そうすることで素材から全く違う物を調合することが可能になる。

これはまあばあちゃんからの受け売りなんだけどな。基本であり錬金術の大前提だからこそ軽視してはならない、ってね。

 

イメージは【ソフィーのアトリエ】の調合システムであるあのパズルでいい。素材を混ぜるという工程をあのパズルに素材を当てはめていくというイメージで行うことでその成功率は格段に上がる。【ソフィー】が今までうまくいってなかったのはこのイメージが固まってなかったのが原因じゃないかと思う。しかしただ当てはまるだけじゃダメだ。混ぜる速度、釡の温度、などリアルだからこそ自分の感覚でこなさなければならない。小さい頃から錬金術に触れているオレはもう余裕だから片手間にやっているがそれでも1時間はかかる。応用が効く代わりに時間がかかるのが錬金術のデメリットかな。

ただ紅茶を淹れたいなら普通に淹れた方が早い。わざわざ調合するのは魔法的な効果を期待するからだな。

 

言っとくがオレはソティーなんて名付けてないからな。名付けたのはあくまで【ソフィー】のセンスで、オレがソティーなんてつけたわけじゃない。【ソフィー】はお菓子やお茶の調合品に自分の名前を文字ってつけたがる癖がある。ソティーやソフィナンシェがいい例だ。オレにもその傾向があるのは、憑依する時に【ソフィー】の魂とオレの魂が一つに溶け合ったことが原因のはずだ。片付けが苦手などの生活力はオレがゴリ押しで矯正したが、センスとかそういうのは【ソフィー】に引っ張られる。だったら才能も【ソフィー】に寄って欲しかった。

 

 

「よし、出来たな。じゃあ次」

 

 

うに袋は5回も使えるのに素材次第でトゲが周りを巻き込むしシンプルに威力も高い。複製ができない以上数を確保しておきたいからたくさん作っておこう。

 

 

 

 

3日後

 

 

「や、やばい……栄養不足だ……」

 

大変まずい事になった。毎日の素振りが祟って上半身が筋肉痛で悲鳴を上げている。それに運動後に調合した焼き菓子と普通の水ばかりで生活していたせいか体が重い。冷蔵庫などこの世界観的に存在しないため食料は高い頻度で買いに行かないといけないので、普通に食べるものがない。調合すれば作れるけど調合するほど体力がもたない。

 

もうちょっと調合の頻度を下げないとほんとに死んでしまう。無理してるつもりはないが10歳の体には無茶だったか…!!

 

 

「ソフィー、俺だ」

 

「!!」

 

 

救世主!!兄貴流石っす!!

 

紹介し忘れてたけど、ハロルの兄貴。時計屋の店主だけどコンプレックスで仕事してない。ばあちゃんと兄貴のお父さんが知り合いでその縁でオレらもよく接していた。粗暴で突き放すような言葉が多いがその実、心配性で面倒見がいい。本当のお兄ちゃんみたいだ。結構年離れてるけどね。

 

 

「マルグリットさんから様子見て来いって頼まれてな。入るぞ………おい、何してんだお前」

 

「腹減って動けなくて……」

 

「バカか?」

 

「お、お恵みを……」

 

「あれから街に来てないと思ってりゃ、そういうことかよ……」

 

 

兄貴が心底冷たい瞳でオレのことを見下ろし、パンを投げてきた。オレはそれを神速で拾うと食べ始めた。

 

 

「うんま」

 

「落ち着いて食え」

 

 

3日ぶりのまともな食事!!!!うますぎる!!!!

 

 

「食い終わったな?」

 

「ありがとう兄貴。やっぱ持つべきは優しい兄貴だよな」

 

「よし、そこに直れ。ふんっ」

 

「いった!?何すんだよ」

 

「ガキが。葬式の日にお前が言ったこともう忘れたのか?ちゃんと頼れ。婆さんが報われんだろう」

 

「ぐっ……はい、すみませんでした」

 

 

ゲンコツいてぇ……兄貴意外と強いんだな……

 

 

「次同じ状況を見つけたらこのアトリエは封鎖する」

 

「なっ、横暴だ!!」

 

「どこでそんな言葉覚えてくるんだ全く……お前の生活態度次第だ」

 

 

兄貴はそういうと、食料の入ったバスケットを置いて帰って行った。

あんなに素直に面倒見のいい性格だっけ?

 

まあいいや、錬金術の練習ができないのは困るからまともに生活するしかないなぁ。はぁ、パンうめぇ。

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