TS憑依ソフィーのアトリエ 不思議な魂の錬金術師 作:不思議シリーズマン
やっとフィリスをプレイし始めました…………期限って、なに……
「ソフィー、もっと腰を入れるんだよ」
「こ、こう?」
「そうそう。それからこうして……」
さらに3年が経った。13歳になったオレは格段に錬金術の腕が上がったと自惚れるくらいには成長を実感している。何より、オレが知識で知ってる以外のレシピを発想できるくらいだからだ。
兄貴から脅しのような形で生活習慣の改善を強要された結果劇的に改善されたし毎日杖を振って運動しているおかげか身長も伸びてきた。正確な数字は分からないけど多分【ソフィー】くらいはあるんじゃないか?だから多分ここら辺がオレの身長の限界なんだろうな。そもそも13歳女子にしてはデカい。胸も膨らんできたし、否が応でもオレは女の子なんだと実感してきた。
「畑仕事ってすっごいキツい……」
「ソフィーはよくやってる方だよ。女の子なのにオイラより体力があるんじゃないか?」
「そりゃ、毎日杖振ってりゃあな」
今日はオスカーに畑の作り方について学んでいる。畑、とは言ったものの実際は家庭菜園程度のものだが、それでも大きめのスコップを使って土を掘り返している。
錬金術で最も大切な閃き、錬金術の経験だけではどうにもならず一時期スランプに陥りかけたオレを救ったのはオスカーに連れて行かれた植物観察だった。植物と会話ができる(らしい)オスカーは植物側がどういった思考をしているのかを懇切丁寧に教えてくれた。オレ自身知識では知っていても、目の前でされると異様な光景だったが植物の思考という未知の領域を知ったことで大きすぎる閃きを得た。
そしてオレは気づいた。オレに圧倒的に足りないもの、【ソフィー】を超えるための新たな訓練。『非日常』だ。
今のオレが【ソフィー】に勝っている部分は錬金術の経験、大人レベルの精神構造、体力、そして町からの信頼だ。それらを最大限活かす方法は、どんなことでもとりあえずやってみる、ということだ。しょーもな、と思うだろうが新たなことを知るというのは自分の世界が広がるということだ。今までなんとなしにやっていたこともいろんな経験を経ることで新たな角度から新しい発見があり、それがレシピの発想にあたる。
「ふぅ……今日はここまでかな」
「ありがとうオスカー、はいこれ、マルグリットさんに頼まれてた小麦粉とお駄賃ね」
「おう。また明日な!!」
「ああ、じゃあまた」
今日オレが畑に蒔いた種は錬金術で調合したものではない。だから普通のものしか生えてこないけど、何をどうしたらいろんな植生の植物が育つ種を調合できるのかわからない。思いつかない、の間違いか。
「にしてもオスカー……逞しくなったな。太ったって意味で」
数年前はまだあそこまでじゃなかったんだけどな。どんどんオスカーになってく……【フィリスのアトリエ】の時は驚いたなぁ。
「よし、じゃあ調合するか」
最近は精力的に調合をしていない。閃きのための非日常を過ごす事をメインにして調合は義務的に少しやっているだけだ。そして今からオレがやろうとしているのが、ゼッテル、ラーメル麦粉、中和剤赤を使ったループ調合だ。普通は特性厳選で使うことが多いが今は品質上げに注力している。品質上昇関連の特性は抽出しているのでここ一年くらいはずっとこれをしている。外に出れないから素材の入手が限られるし、調合頻度を増やせないのがネックなんだよな。最低限、腕を鈍らせないようにしないとな。
「こんなもんだなー。そろそろエリーゼのところにゼッテル卸そうかな。流石に溜まりすぎだわ」
はい、ぐるこーん、ぐるこーん
と釜をかき混ぜ続けて今日のノルマを終えた。ゼッテルは重ねればいいけど麦粉と中和剤は嵩張るから面倒なんだよなぁ。【ソフィー】は失敗品を適当に片付けてる気持ちがよくわかる。
「ん……?」
物音がした。森が近いから動物かと思ったけど、特有の足音がしない。
町の住人ならノックをしてくるし、ここら辺まで散歩に来るお婆さんやガキどもの雰囲気でもない。どこか重々しい感じ。
「ああ、こんなところまでわざわざご苦労なことだ」
オレは杖とアイテムを持つと入り口に向かう。まったく……せめてオレがいない時に来るとかそういう下調べくらいしてこいよな。
「こんにちは強盗君、先手必勝だよ」
「え、ちょ、はっ、うわぁぁぁぁぁ!?!?!?」
10秒で片付いた。杖で小突いたらすぐこけたし、そのまま脳天に1発。警戒してアイテムを使う必要すらなかった。
「ガキだと思って油断しただろ?多少有名になったのか知らねぇけど、お前みたいなのはたまに来るんだわ」
「ぐぅ……ゆ、許してくれぇ」
「はぁ?13のガキの家に強盗に来といて何言ってんだ」
「まだ何もしてないだろ!?」
「あのさぁ、そもそもお前誰よ?キルヘン・ベルは小さい町だから住民同士は殆ど交流がある。それでお前の格好、町の水準から考えて3段階くらい下の服装ってことは近くの町の人間でもない。素人丸出しでナイフ一本持って来るようなヤツはこの辺住んでないんだよ」
「口悪!?女の子がしていい口調じゃない!!」
「立場が分かってないのかな?」
強盗犯の背中に腰掛けて没収したナイフで手遊びしているオレは、コイツの言い分にど正論で返した。反論しようとしているが返す言葉がないようでオレの下で唸っている。
「狙いは金か?オレの調合品か?それともオレ自身か?さあ、きりきり吐いてもらおうか。オレが嘘だと感じたらうに袋からうにを一つずつ足に落としていくからな」
【ソフィー】がオレを見たら卒倒しそうだ。今のオレ、完全に輩だからなぁ。でもこうしないと図にのるバカが多いんだよねぇ。
「どうせアレだろ?品質の良いモノをたまに卸すオレを目の敵にしたどっかの商会が借金のカタにちょっかいかけて来てるんだろ」
「違う!!私の村を救って欲しくて……それで、この町に奇跡を起こす魔法使いがあるって聞いたから……」
「なに?」
……話が変わって来たな。てかなんだその噂、オレは錬金術士だぞ?
「ふぅん……わかった。話は聞いてやる。丁重にもてなしてやるが、手足は縛らせてもらう」
「えぇ!?」
「お前一応強盗犯だからな?優しくしてやる義理なんてないわ」
適当に手足を縛った後、椅子に座らせて膝にうに袋を乗せてやった。下手に身動きをしたらトゲが弾けて大変なことになるだろうよ。主に息子。
「で?」
「私の村が最近不作で……このままじゃ冬を越えられないし水の蓄えも微妙で、出稼ぎに出た男達が盗賊に襲われたって話を聞いて……居ても立っても居られなかったんだ!!」
「ん???……アンタ、女の人か。まあ関係ないよ、手荒な真似は悪かったと思うけどオレにだって生活がある。犯罪行為に走った時点で覚悟は決まってたはずだ」
「そ、それは……」
オレは聖人じゃない。【ソフィー】ならきっと内心で怒りつつその村を救おうとか考えて錬金術で実際になんとかしてしまうだろう。だがここにいるソフィーはオレだ。運が悪かったな。
「話は終わりだ。善良な一市民としてアンタを突き出す。その後の事は町長にでも判断してもらうんだな」
「待って、魔法使いに会わせて欲しい!!」
「魔法使いなんかいないよ。ここにいるのはちょっといろんなことができるだけの錬金術士だ」
そこでオレは話を打ち切り、木材を運ぶ用の台車に強盗犯を乗せて町へ向かった。
台車に縛られた大人がオレに運ばれてくるのをみた住人達が心配してくれる。笑って誤魔化し教会で事情聴取、解放された後オレすぐにアトリエに帰った。少しイライラして来たので暇つぶしに何かいつもと違うモノでも調合しようか。素材はえーと、あ、あっちだな。
それでは本日2度目のぐるこーん、ぐるこーん。
「どいつもこいつもオレの事を魔法使いだなんだって。錬金術士だって……それに、まだ全然大成もしてないし。え、おいし。さすがオレ」
気晴らしに調合したヴェーグルサンドとソティーで夕食をとる。味優先で素材をぶち込んだからマジで美味い。その代わり何時間もかかるのが難点かな。
あの人を引き渡した後めちゃめちゃ心配されたけど、事の経緯を話したら妙に納得され、無茶はしないように、と諌められた。カフェのマスターのホルストさんが今日は町にいた方がいいと言ってくれたけど、こんな時だからこそオレはアトリエを守らなくてはならない。だから断った。
「ふぁ……気を張って疲れたかな。ねよ」
◆
「いやだ」
「まあまあそう言わずに」
翌日。早めに寝たからかいつもより早い時間に起きたオレは日課の一つである素振りをした後、身支度を整えて町に繰り出そうとしていた。そんな時誰かのノックが聞こえた。
ドアを開けるとそこにいたのはホルストさんと昨日の強盗犯。オレはつい身構えてしまったが、ホルストさんが直々にここまで来ているということもあり話を聞くことにした。
その内容は端的にいうと「かわいそうな境遇だから許してやれ、ついでに助けてやれ」とのことだ。ホルストさんは町長の代理できたらしく、彼は乗り気ではないらしい。
あの町長逃げたな……前に正論で論破したせいかあの町長はどうもオレのことが苦手らしく今回もどうせオレに頼み事をしたくないとかで逃げたんだろう。
ああ、それと強盗犯の様子だが何故か身なりが整っている。元々美人だったのが辛い旅で霞んで行ったらしかった。一言も発することなく俯いているだけだがね。拘束もされてないし。
この町で荒事なんて起こるはずないのでみんな性格が温厚なのだ。それに襲われたと言ってもオレが多少戦えることは周知の事実であり、怪我等の被害も出てない。さらには他人事なので楽観的に捉えている、といったところだと思う。
「あのなホルストさん。不作は別にどうとでもできるんだよ」
「えっ…」
「そうだと思いましたよ」
万能促進剤を何個か作ればいいだけの話。実際すでにレシピはあるし何回か調合も経験した。素材もあるし作ろうと思えば今すぐでも作れる。オレの言葉に希望を見出したらしい強盗犯が目線を上げオレを見てくる。地味に背高いなコイツ。
「オレが対処しない理由は3つ。一つ、ソイツに対する印象がとっても悪い」
「ぐっ……昨日のことは謝るから……!!」
「却下だ。二つ、理由がない」
「ソフィーならそういうと思いましたよ」
【ソフィー】ならこんなこと言うわけないんだけどな。
「そして最後、三つ目。どうせ帰り道で死ぬだろ。ほっとけ」
「なっ、私はここまで来れたんだ、帰りだってきっと!!」
「1人では厳しいでしょうね。冒険者に依頼を出しておきましょう。そうすれば安心では?」
「誰が報酬を払うんだ?不作、なんだろ」
そう、どのみち八方塞がりなんだ。今回はここまで
そして村は不作、冬を越えることができないレベルだとすると金なんて持っているわけがない。ツケにしても次の作物が育つまで待ったとして、それらをここまで運んでくることができるのか。
「じゃ、じゃあ私は一体……どうすれば……」
オレの論に納得してしまったのか、女は崩れ落ちて泣き始めた。ホルストさんが空気に耐えられず口を挟もうとしてくるが何を言っていいのかわからない、そんな感じだ。
「……はぁ」
仕方ないなぁ……マズイな、これじゃぁ口だけのツンデレ野郎だと思われても仕方ないけど、そろそろオレの中の【ソフィー】がうずうずして来てるらしい。それでもまあ簡単には助けないよ、結果的にコイツが助かるだけだ。
「なあアンタ、とりあえず数日この町で過ごしてみたら?」
「でも、早くみんなを助けないと」
「冬を超える貯蓄がないって話じゃなかった?それに男衆とアンタがいない分消費も抑えれるはず。一旦心の整理をつけてから出直して。一応明日までには促進剤を作ってあげる。その代わり、これ以上ゴタゴタ抜かすなよ?はい話終わり。ホルストさん、手間かかるけどすいません」
「あ、ちょ……」
無理やり話を遮り、そう言ってオレは扉を閉じた。
さてと……徹夜で調合してやるか。素材残ってたかなー。
なあ、ばあちゃん。オレ……上手くやれてるかな。ばあちゃんが居たらきっと怒られるんだろうなって思うけどそれなりに楽しくやれてると思うんだよね。