TS憑依ソフィーのアトリエ 不思議な魂の錬金術師 作:不思議シリーズマン
「どうしてあの女の子から2つ分の魂を感じるの?」
「不思議……」
「お話ししてみたい……」
「でも場所が遠いからここまで呼ぶこともできないし」
「いつかあの子と喋るのが、今の私の夢……かな。あっ、でも夢を覗くだけならいいよねっ」
「万能促進剤5つ完成っと」
いくら調合に慣れていると言っても、何時間も釜をぐるぐるとかき混ぜ続けるのは辛いものがある。日課に加え家事に炊事まで1人でこなしているオレは意外と取れる時間が多くなく調合が完了するまで2日も使ってしまった。
「やっべ……疲れた。オレの睡眠も促進してくれないかなこれ」
同じ体勢で作業してたから全身が痛いしとっても怠い。このまま寝てしまおうかと思ったけどまだ寝るには早い時間だ。仕方ない、夜風にあたりにでも行こう。
「ふぅ……少し肌寒いな」
アトリエの前にはなぜかベンチが設置してあるのでそこに座ってキルヘンベルの町を一望する。うん、夜でも相変わらず綺麗だな。視覚的に空の方が見える面積が大きいのも相まって絶景って言える。
「それにしても、慣れたとはいえ町とアトリエの移動が面倒になってきた。旅人の靴を作りたいけど、5つの地方を全て巡らないといけないの無理ゲーすぎるし。町までひとっ飛び〜、みたいな道具欲しいなぁ」
帰り道なら妖精の道標でいいんだけど、行きもってなったらもうちょっと便利な……ん?
「飛ぶ……飛ぶ……?あっ、待って、あれなんだっけ!?あのチートの塊やつ……!!」
確か爆速でフィールドを駆け抜けるアイテムがあったはず。うわっ、大事なとこど忘れしてやがる!!後1ピースでちょうどパズルが完成するって勢いなのに……
「やっぱ10年もオレで生きてりゃ記憶は抜けてくよな……はぁ、メモってもいいけどメクレットとアトミナに見られたくないし。まあ、そもそもオレな時点で記憶なんてなんにも当てにならないしいいか」
レシピを知っている、ということだけが大きなアドバンテージだと思っておこう。まあオレが今使ってるレシピは記憶そのままではないし【ソフィー】の丸パクリじゃないからいいのだ……いいよな?大まかな必須素材と必要カテゴリさえ覚えていれば大体は適当でもなんとかなる。
「……あー、なんか眠くなってきたなー。そうだっ、万能促進剤は冷ますために夜風にでも当てないとなー。盗まれるのが怖いけど外に置いとこっとー」
我ながら大根役者だよ。また同じ気配が近くからしただけなんだけどね……ったく、懲りないねぇ。まあいいや、寝よ。
◆
コンコンッ
「はーい」
翌日、予想通り外においた万能促進剤がなくなっているのを確認したオレは、突然のノックに返事をして扉を開けた。
「おはようソフィー。少しいいかしら?」
「モニカ?おはよう、何かあった?」
来客はどうやらモニカらしい。最近は教会の手伝いをし始めたらしくシスターのパメラとよく話してるのを見かける。さらには眼鏡をかけるようになってオレの知るモニカに近づいてきたんだよなぁ。まだ右腕のよくわからんアレはつけてないけど。
「教会で保護してたあの女性が居なくなったの。ソフィーなら何か知っているかなって思ったのよ」
「ああ、多分帰ったぞ」
「えっ?教会に?」
「いいや、住んでたとこ。昨日の夜にまた来た気配がして気がついたら万能促進剤が無くなってたんだよなー」
「はぁ!?た、大変じゃない!!えっと、どうすればいいのかしら……」
良家のお嬢様なので文武両道の優秀なモニカだが、実際に動き回るようになったのはつい最近。まだこういう時の判断力が身について無さそうだな。いやね、こんなこと言ってるけどオレ13歳でモニカはまだ14歳だからこれでも上出来なはずだよ。
「とりあえず大人に知らせるのがいいと思う。オレもそうしようと思ってたところだし」
「そうね、じゃあ一緒に行きましょ……でもなんで杖を持ってるの?それにポケットにもいろいろ詰めてるみたいだけど……」
「ん?あー、まあ一応……ね」
「……変なソフィー」
そしてオレ達は教会に向かった。道中、冒険者がいつもよりも多く居た気がしたが焦ったモニカに腕を引っ張られて移動していたためあまり周りを見る余裕がなかった。
「あら〜。ソフィーちゃん、久しぶり〜」
「ああ、パメラ。久しぶり」
「元気そうで何よりだわ〜。でもたまにはお祈りに来てもいいのよ〜?」
「……ま、まあ今度行くよ……」
「それ、前に会った時にも聞いた気がするわ〜」
「うっ……でも、お祈りしたいって気持ちがないのに神様に祈るのも違くない?」
「………………むむむ、確かにそうかも。じゃあソフィーちゃんがお祈りしたいって思えるように私頑張るね」
「え、あ……うん。オテヤワラカニオネガイシマス…………ハハッ」
相変わらずパメラと話すのはなんかむず痒い……正体が幽霊って事を知ってしまっているのもあるけど、こうのほほんとした性格はオレの得意な相手じゃない!!それにパメラが悪意のない純心100%で言ってくれてるのがわかるから余計にやりづらいんだよなぁ。オレのためを思ってくれてるのがよく伝わるし。
「それよりも、今どんな感じ?」
「捜索隊として冒険者の皆に協力を募ってたところよ。たくさん集まってくれたわ〜」
「へぇ〜」
さすがキルヘンベルの街だ。住民の温厚な気質は冒険者達の間でも癒しなのか、この街の一大事とあらば、って感じの奴らが一定数いるらしい。この街は田舎、と言えるほど辺境にありあまり冒険者が訪れることのない街だが、故に一部の冒険者からは余計ないざこざも起きず住民も優しい憩いの場、として知られているらしい。ソースはうちに医薬品を補充しに来た壮年の男性冒険者だ。ちなみに常連の太客。ここら辺も一定時期になるとあどみらぷにとか現れて危ないからね。
「お集まりいただきありがとうございます。これから依頼についての説明を始めますので冒険者の皆様は噴水前に集合してくださいませ」
「あら、町長さんじゃなくてホルストさん?」
「どうせ責任重たすぎて逃げたんだろあの無能町長」
「こらソフィー、本当のことでも口に出しちゃダメよ」
本当のことってモニカも認めてるじゃん……まああの町長、本当に使えないしホルストさんが実質的なリーダーみたいなところはある。地域ごとの店舗経営者会議とかは町長が仕切ってるみたいだけどな。
「今回の依頼内容はご存知の通り、南東方面へ帰郷を試みている女性の護衛になります。ただし対象者が負傷している場合、もしくは所持しているであろう薬品が破損している場合はキルヘンベルまで強制的に連行していただきます。報酬に関しましては…………うちの店で1日に限り飲み放題券の発行でどうでしょう?」
「「「「おおおおお!!!!」」」」
おいおいマジかよ。それ、結構な損になるはずだろ?ホルストさん太っ腹だなぁ……うん、やっぱよくない気がする。
「ちょっと待ったぁ!!」
「ちょ、ソフィー!?」
俺は群衆の中から声を上げる。その声に驚いた人は道を開けてくれ、そこを通ってホルストさんの隣にオレが立った。
「ソフィー……?」
「報酬に関しては、オレ、ソフィー・エルレンマイヤーが追加に与える事を約束する!!内容は、山師の薬と護身用うに袋を1人2つずつ!!前払いでここに用意してある」
「「「「「「!!!!!」」」」
オレの宣言に、冒険者達から歓声と困惑の声が上がる。
「オレの要望はただ一つ!!対象者の女はオレの調合品を持って里帰りし、故郷を救う算段だ。だが女自身に戦闘能力はなく、ただその使命感のみで行動している。彼女が持っている薬品はオレが作ったものであり、そのためオレの大切な顧客である……この意味がわかるか!!」
「「「「「「おおおお!!!!」」」」」」
「そうだ!!オレの薬、爆弾にどれだけテメェらが世話になってるかよぉく思い返せ!!彼女はテメェらの同胞だ!!必ず生き残らせろ!!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」
どうだ見たか。これが今までために貯めたオレの知名度、信頼度だ。ちゃんと商品を販売するアトリエとして活動していたから売り上げの大半はよく怪我をする冒険者達。つまりここにいる大体の冒険者は一度はオレの世話になっているという事。その借りを返す時だよなぁ?口調がいつもからより悪くなってんのは気にするな。場の空気に当てられただけだよ、モニカのドン引きな表情が見えるのはもうご愛嬌だ。あれ、マルグリットさんとハロルの兄貴の姿も見える……後で絶対怒られるやつじゃん?あっ、終わった……ま、まあ人命第一。ばあちゃんもそう言ってた。
「ソフィー、ラミゼルさんが見たらゲンコツじゃ済まないわよ」
「おいおい……オレの普段の努力のおかげでこんなにやる気になってるんだぜ?」
「そうだなソフィー、お前の普段の行いという物をよく思い知ったよ」
「ええ……これは少しお説教が必要ですね」
アッ…………兄貴、ホルストさん……?
「ど、どうしてそんなに怖い顔をされてるんでしょうか……あの、何故見てるんです!?」
「そこに座れ」
「いやいや兄貴、ここ石畳」
「ソフィー?」
「アッハイ」
結局オレは冒険者達を見送る事もできず、日が傾くくらいまで説教され続けた。ちなみに前払いのアイテムはモニカがいつのまにか配ってた。
後日聞いた話によると怒られてるオレは当分酒の肴だったらしい。クソがッ。