辺境惑星冒険譚 〜砂漠とロボと海賊と〜   作:明田川

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第十一話 整備

「国際規格品で助かりました、そうじゃなきゃ今頃泣いてましたから!」

 

「おお、直ったのか」

 

「それは歩いて見ないことには、なんとも…」

 

前回のこともあって自信を失っているらしいトバリだったが、傭兵達は何も気にせず機体へ乗り込んでしまった。前回は直立すら怪しかったというのに、転倒を恐れる気配すらない。

 

「システム側の調整も終わってるんだ、まあ大丈夫だろ」

 

『機体と接続します、遅延…無し』

 

整備や調整に使ったメモが貼り付けられたままコックピットに残っていたが、剥がさずにアナログな記録方法として使われていたバインダーをだけを足元に退ける。何枚も挟まれていた紙がパラパラと音を立てるが、それも聞き慣れたものだ。

 

『反応もそこまで悪くありませんね』

 

コックピットの計器を見ながら幾つかのトグルスイッチを弾き、外に居るトバリにサムズアップを見せてからハッチを閉じる。機体のカメラに意志が宿り、動作確認がてら周囲を見回した。

 

「どうですかー?」

 

「良好良好、システムの書き換えもあるがセンサさえ使えるなら問題無しだな!」

 

『歩行の最適化始めます、前進して下さい』

 

「了解、シャッター開けてくれ!」

 

「はいっ!」

 

空になった船のドック周辺は車両用の道路が整備されていたため、人型兵器を走らせるには丁度いい。少しずつ走り方を変え、重心や強度なども考慮しながら速力を上げていく。

 

「やっぱり第一世代は重いな、軽快に走ってはいるんだが」

 

『材料工学のブレイクスルー前に作られた代物ですから』

 

「コックピットの対G性能も低い、振動半端ねぇわ」

 

ここまで走らされることを想定していないのだろう、元々重機でしかなかったことを考えると無理もない。これ以上無理をさせるのも機体に悪いので、二人は速度を緩めて倉庫に戻り始めた。

 

「最適化出来たか?」

 

『脳波制御に応じた歩行モーションの変化はおおよそ終わりました、これ以上は専用の設備が必要ですね』

 

「充分動けるようになったんで良いだろ、この機体も久しぶりに歩いただろうしトバリに見て貰おうぜ」

 

そう言ってシャッターが開いたままの倉庫に入ると、いつの間にか入り込んでいた兵士達とトバリが話し合っていた。どうしたのかと思い機体から降りると、制服女がこちらに顔を向けた。

 

「傭兵さん、治安維持隊の方々からお話があるとかで」

 

「青色制服はそんな名前だったのか、何の用で?」

 

「ああいや、開催される大会の件で上からこんな提案があってな」

 

内密にしたい話らしく、彼女は部下であろう数人を警戒に回して倉庫の奥へと場所を移した。そこで語られたのは、傭兵にとって魅力的な依頼についてだった。

 

「大会でゲリラ狩りですか!?」

 

「そうだ、奴らはまだ死傷者を増やしたいらしい」

 

このようなことに耐性がないトバリは目に見えて狼狽えているが、対照的に傭兵は冷静そのものだ。

 

「治安維持隊から人型兵器の部品や武装の提供を受けて大会に参加、ゲリラが何かしらの妨害工作を行なった場合に鎮圧を行うというわけか」

 

「大会の中では部隊の人型を動かせない、出動が認められたとしても後手に回るのは確実だ」

 

今回の事件を見るにゲリラ側の内通者は必ず居る筈だ、それもこの街を手玉にとって人型兵器の強奪を成功させるほどの策略を練れる奴が。

 

「それで中に戦力を忍ばせておこうって算段か、それで俺を?」

 

「傭兵殿は私が推薦した、他の候補者も居るが治安維持隊の隊員が出場するのはあからさま過ぎると思っての判断だ」

 

候補者ということは他にも選ばれた人間は居るのだろう、だが丁度欲しかったものを使わせて貰えるなら是非も無い。

 

「トバリ、俺はこの話を受けてみたい」

 

「あー、えっと、良い…」

 

彼女の目が明らかに泳いだのを見て、傭兵はこの場で決めることをやめた。

 

「メカニックの意見はまだ固まってないらしい、返事はいつまでに?」

 

「そうだな、私としては3日以内に返答を貰いたい」

 

「了解、有意義な話し合いだった」

 

治安維持隊が帰っていくのを見送った後、傭兵とミナミは狼狽えるメカニックの方を見た。彼女は判断に困っているようで、どうすべきかと悩んでいる。

 

「治安維持隊はやっぱり怪しいか?」

 

「海賊に乗っ取られた統治機構にそのまま従ってる人達です、日頃お世話になっていても思う所が無いわけじゃありませんから」

 

「成る程、海賊のせいでこの建物も空っぽになってるんだもんな」

 

船の修理のために技術者が攫われ、この巨大な建物で彼女は一人だ。元々親と同じように宇宙船に関する仕事に就こうと勉強を続けていたので、その延長線上で機械の修理などを請け負っては生活費を稼いでいたらしい。

 

「私はスクラップの中に隠してもらって助かりました。だからこの場所を、家族が帰ってくるまで守りたい」

 

「じゃあどうするんだ?」

 

「…治安維持隊も利用して、大会を勝ちに行きます。一人じゃ絶対に無理だったけど、今は頼れる仲間と三人ですから」

 

彼女にとって傭兵達は大きな転換点となっていた。それもその筈で、彼らが来てから無理だと半ば悟っていた大会への出場が現実のものとなりつつあるからだ。多脚車両を乗り回して兵隊に認められる活躍が出来る上、完成度がお世辞にも高かったとは言えない機体の調整を完璧に熟している。

 

「良いねぇ、俺も憂いなく戦えるってもんだ」

 

「返答を待ってくれてありがとうございます、少しですけど踏ん切りがついた気がします」

 

「メカニックの信用を失ったパイロットは死ぬからな、これからもよろしくってことよ」

 

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